「義務の一覧は読んだ。書面交付、60日以内の支払い、ハラスメント対策——名前は知っている。でも、本当に怖いのはそこではありません。怖いのは『うちは、もう違反しているのではないか』という漠然とした不安です。
フリーランスエンジニアを業務委託で複数活用していると、契約の交わし方も支払いのタイミングも案件ごとにバラバラになりがちです。ニュースで企業名が公表された事例を目にするたびに「これ、うちでもやっているかもしれない」と胸がざわつく。けれど専属の法務担当はおらず、顧問弁護士に全件を相談する余裕もない。義務の解説記事をいくら読んでも、「自社が今どれだけ危ないのか」「もし指摘されたら会社はどうなるのか」までは分からないのです。
この不安の正体は、情報が「予防(何を守るべきか)」に偏っていて、「リスク診断(自社は今どれだけ危ないか)」と「インシデント対応(指摘されたらどうするか)」が欠けていることにあります。義務リストは地図にはなりますが、いま自分が崖のどこに立っているかは教えてくれません。
本記事では、フリーランス新法の違反リスクを発注企業の視点で自己診断します。まず自社が規制対象かを確認し、違反になりやすい7つの盲点をYES/NOでチェックできるようにします。そのうえで「違反したらどうなるか(勧告→命令→企業名公表→罰則の流れ)」と「もし指摘されたら何をすべきか(是正4ステップ)」を具体的に整理します。施行1年で445件の指導・勧告という最新動向もふまえ、漠然とした不安を「具体的な対処手順」に変えることをゴールにします。
なお、本記事は条文の正確な解釈までを保証するものではありません。自社の個別事情に当てはめた最終判断は、公正取引委員会の窓口や弁護士など専門家への確認を前提としてください。
フリーランス新法の違反は「他人事」ではなくなっている

フリーランス新法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆるフリーランス・事業者間取引適正化等法)は2024年11月1日に施行されました。施行当初は「まだ様子見だろう」という空気もありましたが、状況はすでに変わっています。
公正取引委員会の発表によれば、施行から約1年(2024年11月〜2025年9月の11か月間)で、発注事業者に対する指導・勧告は445件に達しました。内訳は勧告が4件、指導が441件です。勧告を受けた企業には出版大手の小学館や大手楽器店の島村楽器などが含まれ、業界としてはアニメ制作、ゲームソフト開発、フィットネスクラブ、出版、放送などで違反が目立ったと報じられています(企業法務ナビ「施行1年で指導・勧告が445件」)。
さらに2026年2月27日には、公正取引委員会が中部電力に対して勧告を行いました。弁護士や医師ら39名に法務助言や健康相談などの業務を委託する際、報酬の支払期日などの取引条件を書面・電磁的方法で明示していなかったことが理由です。これは全国で8件目の勧告であり、電力会社としては初めてのケースでした(公正取引委員会「中部電力株式会社に対する勧告について」)。誰もが名前を知る大企業ですら、足元の業務委託でつまずいている——これがいまの現実です。
ここで注目したいのは、違反内容の偏りです。勧告・指導の大部分は「取引条件の明示義務違反」と「報酬の支払遅延」に集中しています。つまり、難解な条文の解釈ミスではなく、「契約条件をきちんと書面で渡していなかった」「支払いが遅れていた」という、ごく日常的な運用の穴が違反として摘発されているのです。
これは裏を返せば、自社の盲点も「特別なこと」ではなく日常の発注フローの中に潜んでいる可能性が高い、ということです。「うちは大丈夫」という感覚ではなく、具体的にどこが危ないのかを点検しなければなりません。次の章から、自社の状況に当てはめて診断していきましょう。
まず確認|自社はフリーランス新法の規制対象か
不安を煽られる前に、まず冷静に確認すべきことがあります。それは「そもそも自社の取引がこの法律の対象なのか」です。対象でなければ過度に心配する必要はありませんし、対象であればリスク認識を確定させて次の診断に進めます。空振りの不安を一度ここで整理しておきましょう。
発注する側(業務委託事業者)の定義
フリーランス新法で義務を負うのは、フリーランス(特定受託事業者)に業務委託をする「業務委託事業者」です。ここで重要なのは、自社の規模は問われないという点です。従業員を多数抱える大企業はもちろん、従業員を使用しない一人法人や個人事業主であっても、フリーランスに業務委託をすれば一定の義務(取引条件の明示義務など)が課されます。
「うちは小さい会社だから関係ない」という思い込みは危険です。会社の大小ではなく、「フリーランスに発注しているかどうか」が起点になります。
相手が「特定受託事業者」に当たるか
次に確認するのは、発注先が法律の保護対象である「特定受託事業者」に当たるかです。特定受託事業者とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものを指します。具体的には次のとおりです(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索))。
- 従業員を使用しない個人(いわゆる一人のフリーランス)
- 代表者1名以外に役員がおらず、かつ従業員を使用しない法人(一人法人)
ここでいう「従業員を使用しない」の判定には目安があります。週の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の継続雇用が見込まれる労働者を雇っていなければ「従業員を使用しない」と扱われます。なお、同居の親族(家族従業員)は従業員に含まれません。
つまり、外部のフリーランスエンジニアや個人のデザイナー、一人で活動する士業などに発注しているなら、その相手はほぼ特定受託事業者に該当し、自社は規制対象になると考えてよいでしょう。
委託期間や相手によって変わる義務の範囲
注意したいのは、自社に課される義務の範囲が「どんな取引か」によって段階的に変わる点です。大まかには次のように整理できます。
- すべての業務委託に共通: 取引条件の明示義務(給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する)
- 発注側が従業員を使用している場合(特定業務委託事業者)に加わる義務: 報酬の60日以内の支払い、受領拒否・報酬減額・買いたたきなどの禁止行為、募集情報の的確表示、ハラスメント対策の体制整備 など
- 委託期間が一定以上(おおむね6か月以上など継続的な委託)の場合: 育児介護等への配慮、中途解除・不更新時の30日前予告 など、さらに踏み込んだ義務
この段階構造を踏まえた簡易判定としては、次のように考えると分かりやすいでしょう。
- フリーランス(従業員を使わない個人・一人法人)に発注しているか → NOなら対象外。YESなら少なくとも明示義務の対象。
- 自社は従業員を使用しているか → YESなら支払期日・禁止行為・ハラスメント体制整備などの義務も加わる。
- 委託は継続的(おおむね6か月以上)か → YESなら解除予告などの義務も加わる。
多くの中堅IT・受託開発企業やスタートアップは「フリーランスに発注している」「従業員を使用している」の両方に該当するため、明示義務・支払期日・禁止行為・ハラスメント体制整備まで幅広く対象になります。義務の範囲が確定したら、次は「その中で自社がどこを踏み外しがちか」を診断していきましょう。
違反になりやすい7つの盲点|自社の違反リスクを自己診断する

ここからが本題です。実際の勧告・指導で多い違反類型を「やってしまいがちな盲点」として7つ挙げます。各項目をYES/NOで確認し、YES(またはどちらとも言い切れない)が一つでもあれば、そこが優先的に火消しすべきリスク箇所です。前章で見たとおり、違反の大半は明示義務と支払関係に集中しています。まずは自社の発注フローを思い浮かべながら、率直にチェックしてみてください。
盲点1|契約条件を口頭・チャットだけで済ませている
「いつもの人だから」「急ぎだったから」とSlackやメールの一言、あるいは口頭で発注していませんか。給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示しないことは、最も摘発件数が多い明示義務違反に直結します。中部電力の勧告も、まさにこの取引条件の未明示が理由でした。
診断: 発注のたびに、給付内容・報酬額・支払期日を記載した書面(電磁的方法を含む)を相手に渡しているか? いいえ/曖昧 → リスクあり
明示すべき項目や発注書のひな形については、書面交付義務とは?発注書ひな形で具体的に確認できます。
盲点2|支払サイトが検収日起算で60日を超える
自社の従業員を使用している発注事業者は、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う義務があります。「月末締め翌々月末払い」のような商習慣は、検収日からの起算で60日を超えてしまうことがあります。
診断: 給付を受領した日から60日を超えて支払っている取引があるか? はい/自信がない → リスクあり
起算日の数え方や判定の具体例は、60日支払いルール(判定チェック付き)で確認してください。
盲点3|振込手数料をフリーランス負担にしている
見落とされがちですが、重要度が高まっている盲点です。フリーランス法の運用基準が改正され、2026年1月1日以降は、フリーランスとの合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬から差し引くことは「報酬の減額」や「買いたたき」に該当します(公正取引委員会の注意喚起)。「合意してもらっているから大丈夫」という従来の運用は通用しなくなりました。
診断: 報酬の振込時に、手数料を報酬額から差し引いていないか? 差し引いている → リスクあり
盲点4|「やり直し」「相見積」を一方的に強いている
成果物の受領を理由なく拒む(受領拒否)、相場より著しく低い報酬を一方的に定める(買いたたき)、いったん決めた報酬を後から減らす(報酬減額)、必要な範囲を超えてやり直しをさせる——これらは禁止行為です。「クライアントの都合で仕様が変わったのに、追加費用なしでやり直してもらった」といったケースが該当しうるため注意が必要です。
診断: 発注後に、相手の責に帰さない理由で受領を拒んだり、報酬を実質的に減らしたりしていないか? はい/心当たりあり → リスクあり
盲点5|契約の途中解除を予告なく行っている
継続的な業務委託(おおむね6か月以上)を中途解除する、または契約を更新しない場合、原則として30日前までにその旨を予告する義務があります。「来月から発注を止めます」と直前に伝える運用は違反になりえます。
診断: 継続委託しているフリーランスとの契約を、予告なく打ち切ったことがあるか? はい/フローが未整備 → リスクあり
予告の要否や例外については解除告知義務|企業の30日前ルールで確認できます。
盲点6|ハラスメント相談窓口を整備していない
発注事業者には、フリーランスに対するハラスメントを防止するための体制整備(相談窓口の設置など)が求められます。社員向けの窓口はあっても、外部のフリーランスが相談できる体制がない企業は少なくありません。なお、この体制整備に関する報告義務に違反すると後述の過料の対象になりうる点でも注意が必要です。
診断: フリーランスがハラスメントを相談できる窓口・体制を用意しているか? いいえ → リスクあり
具体的な体制整備の考え方はハラスメント規制と禁止行為で確認してください。
盲点7|実態が指揮命令下にある(労働者性・偽装請負リスク)
契約上は「業務委託」でも、実態として始業・終業時刻を管理し、業務の進め方を細かく指示し、専属的に働かせている場合、その関係は「労働者」と評価される可能性があります(労働者性・偽装請負の問題)。この場合、フリーランス新法だけでなく労働関連法令の問題にも発展しかねません。
診断: 業務委託のフリーランスに対して、勤務時間や作業手順を社員同様に指揮命令していないか? はい/グレー → リスクあり
7つのうち一つでも「リスクあり」が付いたなら、それが自社の優先火消しポイントです。特に盲点1・2・3(明示義務・60日支払い・振込手数料)は違反実態として件数が多く、影響範囲も広いため最優先で確認してください。では、もしこれらを放置して指摘された場合、会社には実際に何が起きるのでしょうか。
違反したらどうなる?勧告→命令→公表→罰則の実務フロー

「指摘されたら、いきなり罰金や逮捕なのか」——多くの方が抱く最大の不安はここでしょう。結論から言えば、フリーランス新法はいきなり罰則が科される仕組みではなく、段階を踏む設計になっています。流れを知っておくだけで、漠然とした恐怖はかなり和らぎます。各段階で会社に何が起きるかを順に見ていきましょう。
入口|行政調査・指導
きっかけの多くは、フリーランス本人からの申出(相談・申告)です。フリーランスは公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の相談窓口に申し出ることができ、これを端緒に行政が調査を行います。調査の結果、軽微な問題であれば、まず指導・助言が行われます。前述のとおり施行1年で441件の指導が出ており、実務上はこの段階が最も多い対応です。指導の段階では企業名は公表されず、是正すれば大事には至りません。
勧告と命令の違い・企業名公表のインパクト
指導で改善されない、あるいは違反が一定程度重い場合、行政は勧告を行います。勧告は「措置を取りなさい」という行政指導で、ここで実名が公表されることがあります。小学館・島村楽器・中部電力などの事例は、いずれもこの勧告の段階で社名が報じられました。
勧告に従わない場合、行政は命令を出すことができ、命令を出したことを公表できます。つまり段階としては「指導 → 勧告(公表されうる)→ 命令(公表されうる)」と進みます。
ここで実務上もっとも重いのは、罰金そのものよりレピュテーション(評判)への打撃である点を理解しておくべきです。社名が公表されれば報道され、SNSで拡散されます。「フリーランスを軽んじる会社」という印象は、エンジニア採用市場での候補者離れ、取引先との関係、そして肝心の外部人材からの信頼に直接響きます。罰金額の小ささに油断せず、公表リスクこそを重く見るべきです。
罰金・過料・両罰規定(個人も対象になる点)
罰則の具体的な内容は次のとおりです(フリーランス新法の義務と罰則(弁護士解説))。
- 50万円以下の罰金: 命令に違反したとき、行政の求める報告をしなかった・虚偽報告をしたとき、検査を拒否・妨害・忌避したとき
- 20万円以下の過料: ハラスメント対策の体制整備に関して行政の求める報告をしなかった・虚偽報告をしたとき
- 両罰規定: 違反行為をした個人(担当者など)だけでなく、その雇い主である法人も罰則の対象になる
金額自体は事業へのインパクトとしては大きくないかもしれません。しかし両罰規定により、担当者個人と法人の双方が処罰対象になりうる点は見落とせません。そして繰り返しになりますが、罰則に至る前の「勧告・公表」の時点ですでに会社の評判という最大のコストが発生します。だからこそ、罰則を恐れるよりも「指摘される前に直す」「指摘されたら速やかに是正して公表に至らせない」という発想が現実的です。次章で、いざ指摘された場合の動き方を見ていきます。
もし指摘されたら|発注企業の是正対応4ステップ

フリーランスからのクレームや行政からの調査連絡が来たとき、最もやってはいけないのは、慌てて場当たり的に対応することです。前章で見たとおり、フリーランス新法は段階的に進むため、指導・勧告の段階で適切に是正すれば、命令・公表という最悪のケースは十分回避できます。落ち着いて次の4ステップで動きましょう。
ステップ1|初動(事実確認・記録保全・窓口一本化)
まず、何が問題とされているのかを正確に把握します。指摘の内容(どの取引の、どの義務に関するものか)を確認し、関連する契約書・発注書・チャットのやり取り・支払記録などの事実を記録として保全します。この段階で重要なのは、現場の担当者が個別に相手と交渉したり、不利な約束をしたりしないよう、対応窓口を一本化することです。慌てた現場判断が、かえって状況を悪化させるケースは少なくありません。
ステップ2|該当取引の特定と影響範囲の把握
指摘された取引だけでなく、同種の問題が他の取引にも広がっていないかを確認します。例えば「あるフリーランスへの支払いが60日を超えていた」のであれば、同じ支払フローを使っている他の取引も同様の状態である可能性が高いからです。影響範囲を先に把握しておくことで、是正を一度で済ませ、再発と追加の指摘を防げます。
ステップ3|是正措置の具体例(書面・精算・条項改訂)
把握した問題に応じて、具体的に是正します。典型的な是正措置は次のとおりです。
- 明示義務違反: 不足していた取引条件を記載した書面(電磁的方法を含む)を速やかに交付する
- 支払遅延・減額: 未払い分・不当に減額した分(振込手数料を差し引いていた場合はその分を含む)を精算する
- 禁止行為・解除予告: 該当する契約条項や運用を見直し、適法な形に改訂する
是正にあたっては、相手のフリーランスに対しても誠実に説明し、信頼回復に努める姿勢が結果的にリスクを最小化します。
ステップ4|再発防止と専門家・行政相談窓口の使いどころ
その場の是正で終わらせず、なぜその違反が起きたのかを発注フローにさかのぼって見直します。書面化の手順がなかったのか、支払サイトの設定が古いのか、解除予告のルールが未整備だったのか——原因を特定して仕組みに組み込むことが、次章のテーマである「構造的なリスク低減」につながります。
なお、対応の途中で判断に迷う場合は、無理に自社だけで抱え込まず、弁護士や公正取引委員会のフリーランス法特設サイト・相談窓口を活用してください。早い段階で正しい道筋を確認することが、結果的に最短の解決につながります。
違反リスクを構造的に下げる|運用の仕組み化と外部活用
個別の火消しが一段落したら、次に目指すべきは「同じ違反を二度と起こさない体制」です。違反の多くは、悪意ではなく運用の属人化と仕組みの不在から生まれます。担当者の記憶や善意に頼っている限り、人が変われば同じ穴がまた開きます。リスクを構造的に下げる方向で考えましょう。
発注フローにチェックポイントを組み込む
最も効果的なのは、点検を「人の注意力」ではなく「発注フローそのもの」に埋め込むことです。具体的には、次のようなチェックポイントを発注プロセスの必須ステップにします。
- 発注時に、給付内容・報酬額・支払期日を記載した書面(電磁的方法)を必ず発行する
- 支払サイトを「検収日から60日以内」に固定し、振込手数料は発注側負担で設定する
- 継続委託には、解除・不更新時の30日前予告を組み込む
- フリーランス向けのハラスメント相談窓口を明示する
発注書・契約書のテンプレートを整備し、これらの項目を最初から埋め込んでおけば、担当者が個別に判断する余地が減り、ヒューマンエラーによる違反を大幅に減らせます。
自社で整備しきれない場合の外部活用という選択肢
とはいえ、専属法務がいない企業がこれらすべてを自前で整備し、案件ごとに運用し続けるのは現実的に大きな負担です。テンプレートを作っても、案件数が増えれば管理は煩雑になり、また属人化していきます。
そうした場合の選択肢の一つが、契約・支払い・ハラスメント体制などが標準化された外部のマッチングプラットフォームを活用することです。プラットフォームを介した取引であれば、書面交付や支払期日の管理といった義務対応の多くが仕組みとして担保されるため、発注企業が一件ずつ手作業で点検する負担を減らせます。自社単独での体制整備に限界を感じている場合は、こうした外部の仕組みを「リスクを構造的に肩代わりしてもらう手段」として検討する価値があります。
予防項目を漏れなく押さえたい場合は、フリーランス新法 企業対応チェックリスト15項目やフリーランス保護法 発注者の義務チェックリストで、業務工程別・義務別の予防詳細を確認できます。本記事の「診断と火消し」から、これらの記事の「項目別の予防」へと進むことで、リスク対応が一巡します。
よくある質問(FAQ)
Q. 違反したら必ず企業名が公表されるのですか?
いいえ。違反が判明しても、まずは指導・助言という形が一般的で、この段階では企業名は公表されません。実際、施行1年で出た445件のうち441件は指導です。公表が伴いうるのは、より重い「勧告」や「命令」の段階です。指導の段階で速やかに是正すれば、公表に至らせずに収束させられる可能性が高くなります。
Q. 過去の取引も遡って違反になりますか?
法律は施行日(2024年11月1日)以降の取引に適用されます。ただし、継続的に行っている取引であれば、施行後の運用が違反状態のまま続いていれば現在進行形の違反として扱われます。「昔から続けている運用だから」という理由で適法になるわけではないため、現在の取引が適合しているかを基準に点検してください。
Q. フリーランス側から直接訴えられることはありますか?
フリーランス新法そのものは行政による是正(指導・勧告・命令)の仕組みが中心ですが、それとは別に、契約上の債務不履行(未払い等)や不法行為があれば、フリーランスが民事上の請求を行うことは当然ありえます。行政手続きと民事請求は別物であり、行政から指摘がなくても、当事者間のトラブルが訴訟に発展する可能性はあります。
Q. 下請法(取適法)とフリーランス新法はどちらが適用されますか?
両者は対象や趣旨が異なり、取引の内容によって適用関係が変わります。2026年1月には改正下請法(取適法)も施行され、振込手数料の扱いなど、フリーランス新法と方向性をそろえる形での規制強化が進んでいます。どちらが適用されるか判断が難しいケースもあるため、自社の取引が複雑な場合は弁護士など専門家に確認することをおすすめします。
Q. 何から手をつければよいか分かりません。
違反実態として件数が最も多い「①取引条件の明示(書面化)」「②60日以内の支払い」「③振込手数料の扱い」の3点から確認するのが効率的です。次のまとめで整理します。
まとめ|まず診断すべき3つの高リスク項目
フリーランス新法の違反は、もはや一部の大企業だけの話ではありません。施行1年で445件の指導・勧告が出され、中部電力のような大企業ですら足元の業務委託でつまずいています。そして摘発の大半は、難解な解釈ミスではなく「書面を渡していなかった」「支払いが遅れていた」という日常の運用の穴でした。
だからこそ、漠然と不安がるのではなく、まずは違反実態として最も多い次の3点を診断してください。
- 取引条件の明示(書面化): 発注のたびに、給付内容・報酬額・支払期日を書面(電磁的方法)で渡しているか
- 60日以内の支払い: 検収日から60日を超える支払いがないか
- 振込手数料の扱い: 2026年1月以降、手数料を報酬から差し引いていないか(合意があっても違反)
この3点に「リスクあり」があれば、それが今日着手すべき火消しポイントです。万一フリーランスや行政から指摘されても、フリーランス新法は段階を踏む設計です。指導・勧告の段階で「事実確認 → 影響範囲の把握 → 是正 → 再発防止」の4ステップを冷静に踏めば、命令・公表という最悪のケースは十分に避けられます。
そして、火消しの先にあるのは「再発しない体制」です。点検を人の注意力ではなく発注フローに組み込み、自社単独での整備が負担であれば外部の標準化された仕組みを活用する——この発想が、漠然とした不安を「いざというとき慌てない準備」に変えてくれます。義務別の予防詳細はフリーランス新法 企業対応チェックリスト15項目へ、本記事の診断結果を手に進んでみてください。



