「プロジェクトが終了したのでフリーランスとの契約を打ち切りたい」「契約書には10日前予告で解除可能と書いてあるが、新法施行後に本当にこの条項のままで大丈夫なのか」――こうした疑問を抱えて検索された方も多いのではないでしょうか。
2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、6ヶ月以上の業務委託を中途解除または更新拒絶する場合、原則として30日前までの予告が義務化されました。この義務に違反すると、行政指導から事業者名公表、さらには命令違反による罰金まで段階的な制裁が科される可能性があります。
しかも、施行から1年で公正取引委員会の指導・勧告件数は445件に達しており、運用は決して緩いものではありません(公正取引委員会)。発注企業の法務・人事・事業部の実務担当者にとって、「うちの契約運用は大丈夫か」を確認することは喫緊の課題です。
ところが、既存契約書の多くには「10日前予告で解除可」「即時解除可能」といった旧条項が残っていることが珍しくありません。新法施行後、これらの条項に従って解除を進めると、適法な手続きを踏んでいるつもりが違反となる可能性があるのです。
本記事では、フリーランス新法の30日前告知義務に絞り、対象となる契約の見極め方・告知の具体的な手続き・例外として即時解除が認められる5つのケース・違反時のリスク・既存契約の見直しチェックリストを、発注企業の実務担当者が「明日から何をすればよいか」が分かる形でまとめています。最後にはQ&A7問と10項目のチェックリストも用意していますので、自社の運用見直しの叩き台としてご活用ください。
フリーランス新法で「6ヶ月以上の契約」に課される特別ルールとは

フリーランス新法の中途解除・更新拒絶に関するルールは、すべての業務委託契約に適用されるわけではありません。まずは「自社の契約が対象になるか」を判定し、影響範囲を明確にするところから始めましょう。
法第16条第1項が定める30日前告知義務の3要件
フリーランス新法第16条第1項では、以下の3要件をすべて満たす場合に、解除または不更新の30日前までの予告が義務付けられています。
- 特定業務委託事業者であること:従業員を1人以上雇用している、または役員が複数いる発注者は「特定業務委託事業者」に該当します。法人発注者の多くはこれに当たります
- 6ヶ月以上の業務委託契約であること:契約期間が6ヶ月以上の場合に対象となります。複数回の更新を重ねて結果的に6ヶ月を超える場合も含まれます
- 解除または更新拒絶であること:契約期間中の中途解除と、期間満了時の更新拒絶の両方が対象です
つまり、「法人発注者」が「6ヶ月以上のフリーランス契約」を「途中で打ち切る、または更新しない」場合、原則として30日前までの予告が必要になります。逆に、これらの要件を1つでも満たさない契約は、本義務の対象外です。
「6ヶ月以上」の起算点と、更新を重ねて結果的に6ヶ月を超えるケース
「6ヶ月以上」の判定で実務上の混乱を招きやすいのが、短期契約の更新を繰り返しているケースです。たとえば「3ヶ月契約を2回更新」する場合、契約書上は3ヶ月ごとに区切られていますが、実質的に6ヶ月以上の継続的業務委託として扱われ、30日前告知義務の対象になる可能性が高くなります。
公正取引委員会のQ&Aでは、形式的な契約期間ではなく、当事者間の合意や実態に基づいて「6ヶ月以上」を判断する旨が示されています(公正取引委員会 Q&A)。社内で契約期間を判定する際は、「同一フリーランスとの取引開始日から現時点までの累積期間」を起算点とするのが安全です。
対象から外れる契約
以下の契約は30日前告知義務の対象外となります。
- 30日以下の短期契約:施行規則第4条により、契約期間が30日以下の短期契約は予告義務の対象外です
- 個人発注者の契約:従業員を雇用しておらず役員も1人のみの個人事業主からの委託は、特定業務委託事業者に該当しません
- フリーランス側からの解除:本義務はあくまで「発注企業側」からの解除を対象としています。フリーランスから契約終了を申し出る場合は本義務の対象外です
- 業務委託以外の契約:請負・準委任以外の契約類型(雇用契約・売買契約等)は対象外です
自社の契約をリスト化し、上記の判定軸で「対象/対象外」を仕分ける作業が、第一の実務アクションとなります。
30日前告知の具体的な手続きと書式
対象契約を特定したら、次に確認すべきは「実際にどうやって告知するか」です。期間・方法・記載事項・社内フローを、解除予定日から逆算して整理しましょう。
認められる告知方法と証跡保全の観点
告知方法は書面(書面交付)または電磁的方法(電子メール・FAX・SNSメッセージ等)に限られます。口頭による予告は法律上認められていません。実務的には以下の3つの観点で方法を選定するのが望ましいでしょう。
- 証跡保全:相手の受領を客観的に立証できる手段を選ぶ。電子メール(送信ログ・既読確認)、書面(配達証明付き郵便)が安全
- 業務フローとの整合:日常的なやり取り手段に合わせる。普段Slack等のチャットでやり取りしているフリーランスへの内容証明郵便は、関係性を悪化させる恐れがあります
- 社内承認との両立:上司決裁・法務確認のリードタイムを踏まえ、決裁から発信までの導線を整える
通常のプロジェクトであれば、電子メール(CCに法務・上司を含める)で必要事項を明記して送信し、社内システムに送信ログを保管する形式で十分な証跡となります。ただし、関係がすでに悪化している案件・係争リスクが高い案件では、書面による配達証明付き郵便を併用するのが安全です。
告知に必須の記載事項
予告通知に最低限含めるべき事項は以下のとおりです。
必須記載事項 | 内容例 |
|---|---|
対象業務委託契約の特定 | 契約締結日・契約番号・業務内容 |
解除または不更新である旨 | 「下記契約を○年○月○日付で解除いたします」 |
解除予定日 | 通知日から30日以上後の日付 |
通知日 | 文書発信日 |
発注者・受託者の名称 | 双方の正式名称 |
加えて、推奨される記載事項として「解除・不更新の理由」「予告期間中の業務の取り扱い」「報酬の精算方法」「成果物・データの返還方法」があります。これらは法律上の必須記載ではありませんが、明記することでトラブルを未然に防ぐ効果があります。
特に「理由」については、フリーランス側から開示請求があった場合の対応負荷を考えると、最初の通知に含めておくほうが効率的です(詳細は後述)。
解除予定日から逆算する社内タイムラインの例
解除予定日から逆算して、社内決裁・通知・引き継ぎを以下のスケジュールで進めるのが現実的です。
タイミング | 実施事項 |
|---|---|
解除予定日の45日前 | 社内で解除方針を確定(事業部長・法務承認) |
解除予定日の40日前 | 予告通知文書を作成・法務レビュー |
解除予定日の35日前 | 上司決裁取得・通知方法の最終確認 |
解除予定日の30日前 | フリーランスへ予告通知発信(証跡保全) |
解除予定日の30日前〜解除予定日 | 引き継ぎ実施・成果物受領・最終報酬精算 |
解除予定日 | 契約終了 |
「30日前」というのは法律上の最低ラインですので、確実な遵守のために45〜60日前から社内検討を開始することを推奨します。特に、年末年始やゴールデンウィークなど営業日カウントに影響する時期は、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
予告後に理由開示請求を受けた場合の対応
フリーランス新法第16条第2項は、予告を受けたフリーランスから理由開示請求があった場合、発注企業は遅滞なく理由を開示する義務を定めています(公正取引委員会パンフレット)。
理由開示請求があった場合は、以下を意識して対応してください。
- 記載すべき理由:「プロジェクト終了」「予算縮小」「成果物の品質に関する継続的な懸念」など、客観的に説明可能な事実ベースで記載する
- 開示時期:「遅滞なく」とされており、明確な日数規定はないものの、請求から7〜10営業日以内の対応が望ましい
- 開示方法:書面または電子メールで、記録が残る形で対応する
- 回避できるケース:第三者の権利侵害に関わる場合等、合理的理由があれば開示を控えることも認められています
なお、予告通知の段階で理由を併記しておけば、後から開示請求対応の手間が省けます。実務上はこの方法が効率的です。
例外的に30日前告知が不要となるケース
フリーランス新法施行規則第4条は、30日前告知を要しない例外として5つのケースを定めています。「うちはこれに該当するから即時解除できる」と判断する前に、それぞれの適用条件を正確に確認しましょう。
災害等のやむを得ない事由
天災地変・火災・大規模なシステム障害など、発注者が事業継続不可能となり、予告が困難となった状況がこれに該当します。
注意すべきは、「経営不振」「資金繰り悪化」「業績悪化」は本要件に含まれない点です(植野法律事務所)。経営判断による契約打ち切りは、原則として30日前告知の対象になると理解してください。
「やむを得ない事由」を主張する際は、発生事象の客観的記録(被災証明・公的機関の認定等)と、予告が困難であった理由の説明資料を保全しておく必要があります。
フリーランス側の責めに帰すべき事由
フリーランス側の重大な債務不履行があった場合、即時解除が認められます。ただし、ハードルは高く、「契約の目的達成が不可能なほどの重大な債務不履行」が必要とされています。
具体例として以下が想定されます。
- 納品物の重大な瑕疵で修補不能なもの
- 機密情報の漏洩
- 法令違反行為(反社会的勢力との関係発覚等)
- 長期間にわたる業務放棄・連絡途絶
一方で、「成果物の品質が期待を下回る」「納期遅延が1〜2回発生した」程度のパフォーマンス不振は、本要件には該当しません。これらは通常の30日前予告で対応すべきケースです。
「成果物が期待値以下なので即時解除したい」というニーズは現場で頻繁に発生しますが、安易な即時解除は違反リスクを抱えます。30日前予告で対応するか、フリーランス側と協議の上で合意解除に持ち込むのが安全です。
再委託で元請契約が解除された場合の連動解除
発注企業が上位クライアントから受託した業務を、フリーランスに再委託しているケースで、上位の元請契約が解除等により消滅した場合、業務の「大部分」が不要となるときは即時解除が認められます。
このケースで重要なのは、「大部分」の解釈です。元請契約の一部のみが減額・縮小された場合は本要件に該当しない可能性があり、原則として30日前予告が必要となります。
実務的には、元請契約終了の通知書面・縮小範囲を示す資料を保全し、「業務の大部分が消滅した」ことを客観的に説明できる状態にしておきましょう。
30日以下の短期契約・断続契約の扱い
契約期間が30日以下の短期契約は、そもそも本義務の対象外です。30日プロジェクトの単発契約や、スポット案件の業務委託はここに該当します。
ただし、短期契約を繰り返して実質的に6ヶ月以上の継続的業務委託となっている場合は、実態判断で対象に含まれる可能性があります。同一フリーランスへの「3ヶ月契約を2回更新」「1ヶ月契約を6回継続」といったケースでは、30日以下の短期契約として処理せず、安全側で30日前告知を実施するのが妥当です。
例外を主張する際の証拠保全の重要性
5つの例外いずれにおいても、「即時解除が認められる事由」の存在を発注企業側が立証する必要があります。仮にフリーランス側から行政申出(後述)や民事訴訟が提起された場合、客観的証拠を提示できなければ違反と判定されるリスクがあります。
例外を主張する場合は、以下を必ず記録・保全してください。
- 事由が発生した日時・状況の客観的記録
- 関連する書面・メール・契約書
- 即時解除を決定した社内の意思決定プロセス
- 解除通知時点での説明資料
「例外に該当するから30日前告知は不要」という判断は、社内で法務承認を取った上で実行することを強く推奨します。
告知なし解除のリスクと制裁の段階
30日前告知義務に違反した場合、発注企業はどのようなリスクを負うのでしょうか。罰金額そのものよりも、行政対応プロセス全体と民事リスクの両面で経営インパクトを把握しておく必要があります。
行政対応の段階
フリーランス新法違反に対する行政対応は、以下の段階で進行します。
段階 | 内容 |
|---|---|
①助言 | 違反の疑いがある場合の改善助言 |
②指導 | 違反事実が認定された場合の改善指導 |
③勧告 | 指導に従わない、または重大な違反の場合の正式な是正勧告 |
④公表 | 勧告に従わない場合の事業者名公表 |
⑤命令 | 公表後も是正されない場合の命令 |
⑥罰金 | 命令違反・検査拒否の場合、50万円以下の罰金 |
罰金の金額そのものは決して大きくないように見えますが、実務上重大なのは「④公表」と「⑤命令」の段階です。
50万円以下の罰金と事業者名公表が経営に与える実質的影響
施行から1年で指導・勧告が445件に上ることからも、行政運用が着実に機能していることが分かります(企業法務ナビ)。勧告に従わない場合は事業者名公表に至るため、発注企業は通報・申出を前提に適法な手続きを徹底する必要があります。
事業者名公表が経営に与える実質的影響は以下のとおりです。
- 取引先からの信用低下:上場企業・大手企業との取引でガバナンス審査の対象となる
- 採用市場での評価低下:求職者からの評価に影響し、特にフリーランス・複業人材の獲得に支障
- メディア・SNSでの拡散:勧告・公表は報道対象となりやすく、企業ブランドへの長期的影響
- 株主・投資家からの懸念:上場企業の場合は IR 対応が必要
50万円という罰金額に比して、企業ブランドと採用力への長期的なダメージは桁違いに大きいと考えるべきです。
違反被疑事実申出制度(フリーランスからの通報窓口)
フリーランス新法では、フリーランスが違反の疑いを公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に申し出ることができる「違反被疑事実申出制度」が設けられています(厚生労働省)。
申出があった場合、行政機関が事実調査を行い、違反が認定されれば前述の段階的対応に進みます。施行から1年で445件の指導・勧告が発生していることからも分かるとおり、この制度は実際に機能しています(企業法務ナビ)。
「フリーランスは行政に通報しないだろう」という前提は、もはや成り立ちません。発注企業は通報されることを前提に、適法な手続きを徹底する必要があります。
民事上のリスク
行政対応とは別に、民事上のリスクも見落とせません。
- 損害賠償請求:30日前告知義務違反により、フリーランス側が予告期間相当の報酬を得られなかった場合、債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求のリスクがある
- 解除の無効主張:違法な解除として、解除自体が無効と主張される可能性。この場合、契約が継続している前提で報酬支払義務が発生する
- 慰謝料請求:解除によりフリーランスの事業継続に重大な影響が出た場合、慰謝料請求が認められる可能性
民事訴訟は時間とコストがかかり、解決まで企業の経営判断を縛る要因にもなります。
既存契約の見直しチェックリストとQ&A
ここまでの内容を踏まえ、自社の契約運用を見直すための具体的アクションを整理します。記事を読み終えた直後に社内で着手できる形で、チェックリストとQ&Aをまとめました。
既存契約見直しチェックリスト(10項目)
# | チェック項目 |
|---|---|
1 | フリーランス(個人事業主)への業務委託契約をすべてリストアップしたか |
2 | 各契約の「契約期間」「累積取引期間」「更新パターン」を整理したか |
3 | 6ヶ月以上の契約・実質的に6ヶ月以上の継続契約を特定したか |
4 | 自社が「特定業務委託事業者」(従業員1名以上または役員複数)に該当することを確認したか |
5 | 契約書の解除条項を確認し、「10日前予告」など旧条項が残っていないか |
6 | 解除条項に「フリーランス新法第16条に従う」旨の文言を追加できるか検討したか |
7 | 解除予告通知の社内ひな型(記載事項を網羅)を整備したか |
8 | 解除予定日からの逆算スケジュール(45日前から開始)を社内フローに組み込んだか |
9 | 理由開示請求への対応フロー(窓口・対応期限)を整備したか |
10 | 例外5ケースの判定基準と証拠保全方法を社内ガイドライン化したか |
このチェックリストを使い、自社の現状と整備項目を一覧化することから始めてください。法務・人事・事業部の三者で合同レビューを行うのが効率的です。
契約書ひな型修正のポイント
既存契約書ひな型に「10日前予告で解除可」などの旧条項が残っている場合、以下の方針で修正することを推奨します。
- 解除条項の書き換え:「本契約の中途解除または更新拒絶を行う場合、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第16条第1項に従い、解除日または契約期間満了日の30日前までに予告するものとする」と明記
- 例外条項の明文化:「ただし、同条同項ただし書に該当する場合はこの限りでない」と例外を明記
- 理由開示条項の追加:「特定受託事業者から解除・不更新の理由開示請求があった場合、当社は遅滞なく開示するものとする」を追加
- 既存契約への対応:すでに締結済みの契約は、覚書による条項変更または次回更新時の契約書差し替えで対応
ひな型修正後は、新規契約・更新契約から順次反映していくのが現実的です。
実務Q&A
Q1: 契約書に「10日前予告で解除可」と書いてある場合、その条項に従えば良いか?
A. 従ってはいけません。フリーランス新法第16条第1項は強行規定であり、契約書で短い予告期間を定めていても、30日前告知義務が優先されます。「契約書通り10日前予告で解除した」場合でも、新法違反と判定されるリスクがあります。
ただし、契約書の条項そのものが無効になるわけではなく、「契約書の予告期間を新法の30日に置き換えて運用する」という対応が必要です。契約書ひな型は次回更新時に修正することを推奨します。
Q2: 電子メール1通で告知してよいか? 内容証明郵便は必要か?
A. 電子メールで問題ありません。告知方法は書面または電磁的方法(電子メール・FAX・SNSメッセージ等)に限られますが、相手方が確実に内容を確認できる電子メールは認められています。なお、口頭による予告は法律上認められていません。
ただし、係争リスクが高い案件・関係が悪化している案件では、書面による配達証明付き郵便を併用するのが安全です。電子メールの場合は、CCに法務・上司を含め、社内システムに送信ログを保管することで証跡保全を行ってください。
Q3: フリーランス側から「即時解除に同意する」と言われたら30日前告知は不要か?
A. 同意があれば即時解除は可能ですが、書面で明示的な同意を取得する必要があります。
口頭での同意やチャットでの曖昧な合意では、後から「同意していない」と主張された場合のリスクが残ります。同意書(または合意解除契約書)を作成し、双方が署名・記名押印または電子署名する形式が望ましいです。同意内容には「30日前予告を要しない即時解除に合意する」「合意解除日」「報酬精算方法」を明記してください。
Q4: 30日前告知を出した後、予告期間中の業務はどう扱うか?
A. 原則として、予告期間中も契約は有効であり、双方の権利義務は継続します。
具体的には以下の対応が必要です。
- 契約上の業務を継続して発注する(または合意の上で業務を縮小する)
- 報酬は契約に従って支払う
- 引き継ぎ業務がある場合は、別途追加業務として依頼する
予告期間中にフリーランス側から「業務を停止して報酬だけ支払ってほしい」と申し出があった場合は、書面で合意の上で対応するのが安全です。
Q5: 業務委託契約と業務委託「以外」(例: コンサルティング契約)でルールに違いはあるか?
A. 契約名称ではなく実態で判断します。
「コンサルティング契約」「アドバイザリー契約」「顧問契約」などの名称が使われていても、実態が業務委託(請負・準委任)であれば、フリーランス新法の対象になります。逆に、雇用契約・売買契約・賃貸借契約などは対象外です。
判断に迷う場合は、業務遂行の指揮命令関係・成果物の納品の有無・報酬体系などを確認し、実態が業務委託に該当するかを法務とすり合わせてください。
Q6: 複数案件を同時並行で発注しているフリーランスの一部案件のみ解除する場合は?
A. 案件単位(契約単位)で判定します。
同一フリーランスと複数の業務委託契約を別個に締結している場合、解除する案件の契約期間が6ヶ月以上であれば、その案件について30日前告知が必要です。他の案件には影響しません。
ただし、1本の包括契約で複数案件をまとめて発注している場合は、契約全体での判定となり、解除する範囲・内容によって30日前告知の要否が変わります。実態を確認の上、法務と判断してください。
Q7: 海外在住のフリーランスへの告知は同じルールでよいか?
A. 基本的に同じルールが適用される可能性が高いですが、契約準拠法・契約締結地によって例外があります。
日本の法人が日本国内で締結した業務委託契約であれば、フリーランス側の居住地が海外であっても日本法の適用が原則となり、フリーランス新法も適用されます。
ただし、契約書で外国法を準拠法と定めている場合や、海外法人と海外で締結された契約の場合は、適用関係が複雑になります。海外フリーランスとの契約解除を検討する際は、契約書の準拠法条項を確認し、必要に応じて国際取引に詳しい法律事務所に相談してください。
まとめ|長期契約の終わらせ方を社内ルール化するために
ここまで、フリーランス新法における30日前告知義務について、対象契約の判定・告知の手続き・例外ケース・違反時のリスク・既存契約の見直しチェックリストを解説してきました。
最後に、記事を読み終えた直後に社内で着手すべきアクションを以下に整理します。
- 対象契約のリスト化:フリーランスへの業務委託契約をすべて棚卸しし、6ヶ月以上(または実質的に6ヶ月以上)の契約を特定する
- 契約書ひな型の見直し:「10日前予告」など旧条項が残っていないか確認し、解除条項・理由開示条項を新法対応に修正する
- 社内通知フローの整備:解除予定日から45日前に検討開始、30日前に通知発信、引き継ぎ完了までの社内フローを文書化する
- 予告通知ひな型の整備:必須記載事項を網羅した予告通知書のひな型を作成し、法務・事業部で共有する
- 例外5ケースの判定基準を社内ガイドライン化:即時解除を主張する場合の判定基準・証拠保全方法を文書化し、安易な即時解除を防ぐ
フリーランス新法は施行から1年で運用が着実に進んでおり、行政指導・公表事例も増えています。「うちは関係ない」「これまで通りで大丈夫」という前提を一度リセットし、現状の契約運用を点検することが、企業ブランドと採用力を守る最も確実な手段です。
なお、フリーランス新法は30日前告知義務以外にも、書面交付義務・募集情報の明示義務・ハラスメント防止措置義務など、発注企業が押さえるべき複数のルールがあります。業務委託の法律・契約リスクを総点検したい方は、お役立ち資料「フリーランス新法対応 業務委託発注の法律・契約リスク点検ガイド」もあわせてご活用ください。発注企業の実務担当者向けに、新法全般の対応ポイントとチェックリストを1冊にまとめています。
長期契約を適法に終わらせる手続きを社内ルール化することは、フリーランスとの良好な関係を維持しながら、企業として持続可能な外部人材活用を続けるための基盤になります。本記事のチェックリストとQ&Aを叩き台に、自社の契約運用を一度棚卸ししてみてください。



