マーケターを採用しようと求人を出したものの、なかなか応募が集まらない、または採用エージェントへの費用が高くて踏み切れないという状況に悩んでいる企業担当者の方は少なくありません。Webマーケティング人材の需要が急増する中で、正社員での採用はますます難しくなっているのが現実です。
そのような状況で注目されているのが「複業採用」という方法です。複業人材とは、本業を持ちながら他社のプロジェクトにも参加する専門家のことで、業務委託契約を通じて即戦力として活躍してもらえるのが大きな特徴です。
ただ、複業採用が有効だと分かっていても、「具体的にどのプラットフォームを使えばいいのか」「何を事前に決めておかないといけないのか」「失敗しないためにどんな点に注意すればいいのか」といった実務的な疑問は尽きないものです。
本記事では、マーケターを複業採用するための具体的な5つのステップを中心に、正社員採用との違い・向いているケース・失敗しやすいパターンと対策・主要なプラットフォームの特徴まで、意思決定に必要な情報をまとめて解説します。
マーケター採用がこれほど難しい理由

複業採用を検討する前に、まず正社員採用がなぜこれほど難しいのかを整理しておきましょう。採用難度の背景を理解することで、複業採用を選択する判断軸が明確になります。
求人数に対して求職者が圧倒的に少ない市場
マーケティング職は、日本全体で見ると求人数が求職者数を大きく上回る売り手市場が続いています。dodaの転職市場動向データ(企画・マーケティングの転職市場動向 2026上半期)によると、企画・マーケティング職種の求人倍率は高い水準を維持しており、優秀なマーケターは複数の企業からオファーを受けられる状況です。
優秀な人材ほど現職の待遇が良く、転職市場に出てくる頻度が低い傾向があります。転職潜在層へのアプローチなしには、自社の条件に合う候補者を見つけることすら難しいのが実情です。
スキルの多様化で要件設定が難しい
「Webマーケター」と一口に言っても、SEO担当・広告運用担当・SNSマーケター・コンテンツマーケター・マーケティングオートメーション(MA)担当など、職種は細分化されています。
求人票に「マーケティング全般」と書いてしまうと、自社が本当に必要としているスキルを持つ人材に響かず、応募が集まらないという状況になりがちです。一方でスキル要件を絞りすぎると、候補者プールがさらに狭まります。どの領域をカバーするマーケターが必要かを自社で定義する専門知識がないと、採用自体が迷走します。
優秀層のフリーランス・複業志向が高まっている
市場価値の高いマーケターほど、正社員として一社に縛られる働き方ではなく、複数の企業のプロジェクトに関わる複業・フリーランス志向が強まっています。複業プラットフォーム「複業クラウド」の運営会社(Another works)が公表したデータによると、サービスリリースから5年間で累計導入企業数は2,500社を超え、登録する複業人材は累計80,000名以上に達しています(出典: Another works、2024年)。優秀な人材が正社員転職市場ではなく複業プラットフォームに流れているのは、もはや無視できないトレンドです。
複業マーケター採用とは?正社員採用との違い
複業採用の仕組みと、正社員採用との違いを整理します。
複業採用とは何か
複業採用とは、業務委託契約を通じて、複数の仕事を掛け持ちする専門人材(複業人材)に特定の業務を依頼する採用形態です。雇用関係を結ばないため、社会保険や労働保険の対象外となり、企業にとっては固定費を抑えながら高度なスキルを持つ人材を活用できます。
「副業」と「複業」は使われることがありますが、複業はより対等・継続的なプロフェッショナルとしての参画を指すことが多く、単純な副業よりも専門性と関与度が高い傾向があります。
正社員採用との比較
比較項目 | 正社員採用 | 複業採用(業務委託) |
|---|---|---|
採用コスト | 人材エージェント利用で想定年収の35〜40%(例: 年収600万円の場合、210〜240万円) | 成約手数料なしのプラットフォームも多く、月額固定費のみのケースも |
採用期間 | 平均3〜6ヶ月 | 最短1〜4週間 |
解除の柔軟性 | 解雇規制があり難しい | 契約期間満了または合意解除で対応可能 |
稼働時間 | フルタイム(週5日) | 週1日〜週4日など柔軟に設定可能 |
教育コスト | 高い(育成に時間がかかる) | 低い(即戦力が前提) |
情報共有リスク | 比較的低い | 秘密保持契約(NDA)が必要 |
複業採用が特に有効なケースは以下のとおりです。
- 特定のプロジェクト(サイトリニューアル・新施策立ち上げ等)にのみ専門知識が必要な場合
- 社内にマーケターが不在で、まずは試験的に外部人材を活用したい場合
- 週5日の稼働が必要なほどの業務量がまだない場合
- 正社員採用の前に、実務を通じて相性を確認したい場合
一方、以下のケースでは複業採用が向かないこともあります。
- 機密性の高い社内情報へのフルアクセスが前提の業務
- 週5日のフルタイム稼働が不可欠な業務量がある場合
- 教育・育成を通じた長期間の関与を想定している場合
マーケター複業採用の具体的な手順5ステップ

マーケターを複業採用するための手順を、失敗しやすいポイントを添えて解説します。
ステップ1 ― 業務要件と成果指標を定義する
複業採用で最も失敗しやすいのが、業務要件と成果指標を曖昧にしたまま採用活動を始めてしまうことです。複業人材は時間が限られているため、「何をどこまで担当してもらうか」が明確でないと、期待と現実のギャップが生まれます。
定義すべき項目は以下のとおりです。
- 業務内容: 具体的に何をしてもらうか(例: 月次のSEO記事作成3本・広告運用の週次レポート作成)
- 業務範囲(スコープ): 何は含み、何は含まないか
- 稼働時間・稼働日: 週何時間・何日稼働できるか
- KPI/KGI: 成果の指標(例: 3ヶ月後の自然検索流入数〇〇件増加)
- 報告・連絡の頻度と方法: Slack・週次ミーティング等の連絡手段
- 契約期間: 初回3ヶ月契約など試行期間を設けるケースが多い
この段階を丁寧に行うことが、採用後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ最大の対策です。
ステップ2 ― 複業プラットフォームを選定・登録する
業務要件が定まったら、自社の条件に合う複業プラットフォームを選定します。プラットフォームによって料金体系・登録人材の職種・対応業務の幅が異なります。
主要なプラットフォームは後述の「マーケター複業採用に活用できるプラットフォーム」で比較していますので、そちらも参照してください。プラットフォーム選定では以下の点を確認します。
- マーケター専門か、総合型かどうか
- 成約手数料の有無と料金体系
- スカウト機能と掲載機能のどちらが使えるか
- カスタマーサクセス(担当者サポート)の充実度
ステップ3 ― 求人票を作成してスカウトまたは掲載する
プラットフォームに登録したら、求人票(ジョブディスクリプション)を作成します。複業人材は複数の企業からオファーを受けているため、求人票の質が採用成否に直結します。
求人票に記載すべき項目:
- 業務内容(具体的に): 「Webマーケティング全般」ではなく「週2日・月10〜20時間で、SEO記事の企画と月次パフォーマンスレポートの作成を担当」のように具体化する
- 求めるスキル: 経験年数・使用ツール(GA4, Search Console, 広告管理画面等)
- 稼働条件: 週何時間、リモート可否
- 契約形態・報酬: 時給または月額の目安
- プロジェクトの背景・目的: 自社のフェーズと取り組む理由を伝えると共感が得やすい
スカウト機能がある場合は、プラットフォームに登録している人材の経歴を確認し、合致する人材に直接メッセージを送ることで、より能動的なアプローチが可能です。
ステップ4 ― 面談・選考で見極める
複業採用では正社員採用ほど長い選考プロセスは必要ありません。ただし、以下の点は面談で必ず確認しましょう。
スキル確認:
- 過去の実績・成果(数字で語れるか)
- 使用ツールと習熟度
- 自社の課題に対する初期仮説(思考プロセスの確認)
稼働条件の確認:
- 本業の繁忙期・稼働可能な時間帯
- 他社の複業案件との兼業状況(情報セキュリティの観点から競合他社との兼業は避ける)
コミュニケーションスタイルの確認:
- 定例ミーティングへの参加可否
- 報告・連絡の方法と頻度についての考え方
選考スピードも重要です。良い人材は複数の企業からオファーを受けているため、「良いと思ったら当日か翌営業日以内に次のステップを連絡する」ことが採用成功率を高めます。
ステップ5 ― 契約・キックオフ・稼働開始
面談で合意に至ったら、業務委託契約(秘密保持契約を含む)を締結します。契約書には以下を明記します。
- 業務内容・成果物の定義
- 稼働時間・報酬額・支払い方法
- 契約期間と更新条件
- 秘密保持・知的財産権の帰属
- 競合他社との兼業禁止範囲(必要に応じて)
契約締結後、稼働開始前にキックオフミーティングを設けることをお勧めします。目的・KPI・報告ルール・使用するツール・社内の関係者紹介など、業務を進める上で必要な情報を共有するオンボーディングの場です。この場を設けることで、最初の数週間の「何から始めればいいか分からない」という状況を防げます。
複業マーケター採用で失敗しないための注意点

複業採用を始めてから「思っていたのと違う」という状況になる前に、よくある失敗パターンと対策を把握しておきましょう。
業務範囲・成果指標を曖昧にしたまま始める
最も多い失敗パターンです。「マーケティング全般をお願いします」という形で複業人材に依頼すると、何を優先すべきかが分からず、期待する成果が出ないまま契約期間を終えることになります。
対策: ステップ1で解説した業務要件定義を、採用前に必ず行います。「3ヶ月後に何がどう変わっていれば成功か」を言語化することが出発点です。
稼働時間の期待値のずれ
「週10時間でお願いします」と合意していたのに、実際に依頼する業務量が20時間分あった、という状況が起きがちです。複業人材には本業があるため、稼働時間のオーバーを強いることはできません。
対策: 業務量を時間換算して積算し、複業人材が担当できる稼働時間の範囲内に収まるかどうかを事前に確認します。複業開始後も月次で業務量と稼働時間のバランスを確認する習慣を持つと良いでしょう。
社内メンバーとのコミュニケーション設計不足
複業人材を「外部の人」として扱い、情報共有を最小限にしてしまうと、業務の背景や社内事情が分からないまま作業するだけになり、本来期待していた「専門家としての提案・判断」が発揮されません。
対策: 複業人材を準社員のように扱い、週次定例ミーティングへの参加や社内Slackチャンネルへの招待など、情報にアクセスしやすい環境を整えます。複業人材の活用実績の高い企業は「社内メンバーと同じように扱う」ことを重視しています(出典: KAIKOKU、2022年)。
情報セキュリティ・秘密保持の対応漏れ
業務委託の場合、雇用関係がないため、秘密保持契約(NDA)を別途締結する必要があります。また、業務委託先が競合他社とも複業契約を結んでいるケースが稀にあり、情報漏洩のリスクがゼロではありません。
対策: 契約締結時に秘密保持契約を必ず含め、競合他社との兼業状況を事前に確認します。機密性の高い情報へのアクセス権限は必要最小限にとどめることも重要です。
マーケター複業採用に活用できるプラットフォーム
マーケターを複業採用する際に活用できる主要なプラットフォームを紹介します。それぞれ特徴・費用感・向いているケースが異なるため、自社の状況に合わせて選定しましょう。
複業クラウド(Another works)
複業・業務委託に特化した総合型マッチングプラットフォームです。エンジニア・マーケター・デザイナー・営業など全職種を対象としており、累計登録人材は80,000名以上、累計導入企業数は2,500社以上を誇ります(出典: Another works プレスリリース)。
求人掲載とスカウトが月額固定費で無制限に行えるため、複数の職種を採用したい企業や採用人数が多い場合にコストメリットが大きいのが特徴です。成約手数料が不要なため、採用成功時の追加費用がかかりません。
こんな企業に向いている: マーケター以外の職種(エンジニア・デザイナー等)も複業採用したい企業。採用人数を増やしてもコストが固定費で収まる安心感を求める企業。
カイコク(KAIKOKU)
マーケティング領域に特化した複業マッチングサービスで、登録者数12,000人以上(累計支援実績2,500件以上)を誇ります(出典: KAIKOKU 公式サイト)。運営会社(BLAM社)自体がマーケティング支援事業を展開しているため、案件の要件定義のサポートが手厚いのが特徴です。
マーケターを起用してその後の業務改善まで一貫してサポートしてほしい企業に向いています。企業向けの平均予算は月10〜20万円程度です。
こんな企業に向いている: マーケター採用に特化して質の高い候補者を探したい企業。要件定義や採用後のフォローまでサポートを受けたい企業。
シューマツワーカー
スタートアップ・成長企業と複業人材をつなぐマッチングサービスで、最短5日で稼働開始できるスピード感が特徴です。副業人材の登録者数は約4.9万人(出典: シューマツワーカー 公式サイト)。
こんな企業に向いている: スタートアップ・小規模企業でスピーディーに採用を進めたい企業。プロジェクト単位での短期の人材補強を必要とする企業。
キャリーミー(CarryMe)
CXO・エグゼクティブレベルのハイクラス人材から、週1日のプロジェクト参加まで幅広い案件に対応するマッチングサービスです。デジタルマーケティング(広告運用・SNS・SEO・EC)や広報、事業開発などのコア業務を担える人材が登録しています。
こんな企業に向いている: 戦略レベルのアドバイスも含めた高度なマーケター人材を探している企業。月に数日の稼働でよいが、質の高い関与を求める企業。
プラットフォーム選定の判断軸
選定軸 | 確認ポイント |
|---|---|
職種の専門性 | マーケター特化(KAIKOKU等)か、総合型(複業クラウド等)か |
料金体系 | 月額固定か、成果報酬型か。成約手数料の有無 |
採用人数・職種数 | 複数職種を採用したい場合は総合型が有利 |
サポート充実度 | 要件定義〜採用後フォローまでサポートが必要かどうか |
スピード感 | 最短で稼働開始できる期間 |
まとめ ― 複業マーケター採用で即戦力を確保しよう
マーケターの複業採用は、正社員採用が難しい現在の市場環境において、即戦力を確保するための現実的な手段です。この記事のポイントをまとめます。
- 正社員採用が難しい背景には、求人倍率の高さ・スキルの多様化・優秀層のフリーランス志向がある
- 複業採用は正社員採用に比べてコストを抑えながら、即戦力のスキルを柔軟に活用できる
- 成功の鍵は採用前の業務要件定義(KPI/KGI・稼働時間・業務範囲の明確化)にある
- プラットフォームは職種の専門性・料金体系・採用人数・サポート体制で選ぶ
- 稼働開始後のコミュニケーション設計と情報セキュリティ対応は事前に整備する
複業採用では、採用してからではなく「採用前の準備」が成果を大きく左右します。まずは自社でマーケターに担当させたい業務を具体的に言語化することから始めてみてください。
複業採用の検討を進めるにあたって、外部人材活用の判断基準や業務委託契約のポイントをまとめたお役立ち資料もご活用ください。



