「フリーランス新法の対応状況を確認してほしい」と経営層から指示を受けたものの、自社の既存契約書・支払サイト・発注フローが本当に法令適合しているのか、どこから点検すればよいか分からない――そんな状況に置かれている発注企業の調達・総務・法務担当者は少なくありません。
フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称「フリーランス保護法」「フリーランス新法」)は2024年11月1日に施行され、その後も2025年10月の解釈ガイドライン改正、2026年1月の取適法(旧下請法)改正と、関連する制度変更が続いています。条文を読み込んで対応するにはあまりに範囲が広く、また法律の専門家でない実務担当者にとっては、社内のどの書面・どのフローを修正すべきかが結びつきにくいのが実情です。
本記事では、発注者に課された7つの義務を「自社の発注実務として今すぐ点検できる」チェックリスト形式に分解しました。1項目ごとに Yes/No で判定できる粒度に整理しており、社内会議の配布資料や経営層への報告書のたたき台としてそのまま活用できる構成です。
加えて、契約書・社内規程レベルでの改訂チェック、対応優先順位マトリクス、2026年1月から始まる取適法(旧下請法)改正との関係整理まで網羅し、「責任者として自社の対応状況を一通り報告できる状態」までを射程としています。
法律の条文解説そのものはコンパクトに留め、深掘りしたい論点(書面交付の詳細・60日ルールの例外・ハラスメント体制構築など)は関連記事へリンクしていますので、必要に応じて参照してください。
フリーランス保護法で発注実務はこう変わった

まずは前提となる制度の全体像を、実務担当者が押さえるべき最小限の粒度で整理します。条文解説そのものは関連記事に譲り、ここでは「自社が対象か」「違反するとどうなるか」を即答できる材料を提供します。
2024〜2026年の主要変更ポイント
外部人材活用に関連する制度変更は、ここ数年で立て続けに進んでいます。実務担当者として押さえておくべきタイムラインは次の3点です。
時期 | 変更内容 |
|---|---|
2024年11月1日 | フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス保護法)施行 |
2025年10月 | 公正取引委員会・厚生労働省による解釈ガイドラインの改訂 |
2026年1月1日 | 下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」に改正・施行 |
フリーランス保護法は「個人で業務委託を受ける特定受託事業者」を保護対象とする一方、2026年1月施行の取適法は資本金区分に基づく従来の下請法を改編したもので、両者は適用対象が異なります(政府広報オンライン「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、政府広報オンライン「2026年1月から下請法が『取適法』に!」)。
自社が法律の適用対象かの即答チェック
フリーランス保護法の発注者側(特定業務委託事業者)の適用対象は、ごくシンプルに整理できます。
- □ 自社に従業員(短時間勤務者を除く)が1人以上いる、または役員が2人以上いる
- □ フリーランス(個人事業主または一人法人で従業員を使用しない者)に業務を委託している
上記の両方に該当する場合、自社はフリーランス保護法における「特定業務委託事業者」として、後述する7つの義務をすべて遵守する必要があります(厚生労働省 フリーランス特設ページ)。
なお「フリーランス」かどうかは、相手側が法人化していても「従業員を使用していない一人法人」であれば該当します。一人法人と取引している場合も対象となる点は見落とされやすいため要注意です。
違反時に発注企業が負うリスク
法令違反が発覚した場合、発注事業者には以下の段階的なリスクがあります。
- 公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁による調査・助言・指導
- 改善されない場合の勧告
- 勧告に従わない場合の命令
- 命令違反時の罰金(50万円以下)と社名公表
実害としては罰金額そのものよりも、社名公表による信用低下や、フリーランス側からの取引停止・拡散リスクのほうが大きいというのが実務上の評価です(公正取引委員会 フリーランス法 Q&A)。
なお、業務委託エンジニア・業務委託デザイナーといった外部人材を継続的に活用する企業ほど、取引数が多いだけに「うっかり違反」のリスクが累積します。本記事のチェックリストは、まずその累積リスクを棚卸しする目的で活用してください。
発注実務チェックリスト【全7義務・全25項目】
ここから本記事の核となる、7つの義務を全25項目のチェックリストに分解した実務点検パートです。各項目は社内会議で「対応済み/要修正」と書き込める粒度で記述しています。
取引条件の書面明示(9項目チェック)
業務委託契約を結ぶ際、フリーランスに対して以下の9項目を書面または電磁的方法(メール・チャットを含む)で明示する義務があります(公正取引委員会パンフレット)。
- □ 給付の内容(業務内容・成果物の仕様)が具体的に明示されている
- □ 報酬の額が具体的金額または算定方法で明示されている
- □ 支払期日が具体的な日付で明示されている(「翌月末」は具体性不足)
- □ 発注事業者・特定受託事業者(フリーランス)両者の名称が明示されている
- □ 業務委託をした日(契約成立日)が明示されている
- □ 給付を受領する日/役務の提供を受ける日が明示されている
- □ 給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所が明示されている
- □ 検査を行う場合、検査完了日が明示されている
- □ 現金以外の方法で支払う場合、その支払方法の詳細が明示されている
書面の形式はメール・チャットツール(Slack・Teams 等)でも要件を満たします。ただし「断片的なチャットのやり取り」は「明示」とは認められない可能性があるため、9項目を1通のメールまたは PDF で整理して送付する運用に統一するのが安全です。
なお、書面明示は「直ちに」行う必要があります。実務的には「合意成立から原則1営業日以内」が目安です。書面明示義務の詳細はフリーランス新法の書面交付義務で深掘りしています。
報酬60日以内支払い(4項目チェック)
報酬は給付受領日(成果物を受け取った日/役務提供を受けた日)から数えて60日以内のできる限り早い時期に支払う必要があります。
- □ すべてのフリーランス取引で支払期日が給付受領日から60日以内に設定されている
- □ 支払期日の起算日が「検収日」ではなく「給付受領日」になっている
- □ 「翌月末払い」「翌々月10日払い」のような表記が、実際の日付で見て60日以内に収まっている
- □ 経理システム上の支払サイト設定がフリーランス向け案件では60日以内になっている
特に注意すべきは「翌々月10日払い」の場合です。月末納品で翌々月10日支払いの場合、納品から最大71日となり違反するパターンがあります。経理担当と連携し、フリーランス向けに支払サイトを分けた運用が必要です(業務委託契約書.com 60日ルール解説)。
60日ルールと例外(再委託の場合の起算日)の詳細はフリーランス保護法の60日ルールで解説しています。
7つの禁止行為(7項目チェック)
1か月以上継続する業務委託について、以下の7つの行為が禁止されています。自社の発注実務に該当行為がないか点検します。
- □ 受領拒否をしていない(フリーランス側の責に帰さない理由で成果物の受領を拒否していない)
- □ 報酬の減額をしていない(合意した報酬を発注者都合で減額していない)
- □ 返品をしていない(フリーランス側の責に帰さない理由で受領後に返品していない)
- □ 買いたたきをしていない(通常の対価から著しく低い報酬を不当に定めていない)
- □ 物品購入・役務利用を強制していない(自社商品・サービスの購入を取引条件にしていない)
- □ 経済上の利益提供を強制していない(協賛金・労務提供などを強制していない)
- □ 不当な給付内容の変更・やり直しをさせていない(仕様変更による無償手戻しを命じていない)
業務委託エンジニア・業務委託デザイナーの取引でよく見られる違反パターンは「仕様変更による無償手戻し」と「検収遅延による実質的な支払先送り」です。発注後に仕様変更が発生した場合は、追加報酬または納期延長の協議を必ず記録に残してください。
募集情報の正確性確保(2項目チェック)
求人媒体や自社サイトでフリーランスを募集する際、以下の精査を行う義務があります。
- □ 募集媒体(求人サイト・自社採用ページ)に掲載している報酬・契約期間・業務内容が実際の取引条件と一致している
- □ 古い募集情報を放置せず、条件変更時は速やかに媒体側を更新している
「最低保証額○万円」と謳いながら実際にはそれを下回る案件を提示する、といったケースは典型的な違反例です。
育児・介護への配慮(1項目チェック)
6か月以上継続する業務委託について、フリーランスから育児・介護との両立に関する申出があった場合の配慮義務があります。
- □ フリーランスからの育児・介護に関する配慮申出を受け付ける窓口・フローが社内に整備されている
具体的には、稼働時間の調整・オンライン面談への切り替えなど、業務遂行に支障のない範囲での配慮が求められます。「申出を受けたが対応しなかった」場合に違反となるため、申出受領フローと検討記録を残す運用が必要です。
ハラスメント防止体制(1項目チェック)
フリーランスに対するハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)防止のための体制整備が義務付けられています。
- □ 既存の社内ハラスメント相談窓口がフリーランスからの相談も受け付けることになっており、その旨をフリーランスに周知している
既存の社内ハラスメント相談窓口をフリーランスにも開放する運用で要件を満たせます。重要なのは「窓口があること」だけでなく「フリーランスがその存在を認知していること」です。契約書または初回オリエンテーションで明示してください。
ハラスメント防止体制の構築と優越的地位濫用との関係はフリーランスへのハラスメントと優越的地位で解説しています。
中途解除の30日前予告(1項目チェック)
6か月以上継続する業務委託を中途解除する場合、原則として30日前までに予告する義務があります。
- □ フリーランスとの継続契約を中途解除する際、書面・メール・FAX等で30日以上前に予告する運用が定着している
予告期間を満たせない場合は、解除日までの報酬相当額の支払いが必要となるケースもあります。また、フリーランス側からの解除理由開示請求にも応じる必要があるため、解除判断の根拠資料を社内で保管する運用にしてください。
契約書・社内規程の改訂チェックリスト

7義務のチェックを終えたら、次は「文書レベル」での点検です。義務遵守を実効的に支えるのは、結局のところ契約書テンプレートと社内発注フローの整備です。
業務委託契約書の見直し7項目
既存のフリーランス向け業務委託契約書を以下の観点で再点検します。
- □ 報酬支払期日が具体的日付(または「給付受領日から○日以内」など起算日明示)で記載されている
- □ 検収プロセス・受領日の定義が明示されている
- □ 中途解除条項に「30日前予告」が明記されている
- □ 知的財産権・著作権の帰属に関する条項が両者の合意に基づき明示されている
- □ ハラスメント禁止条項が含まれている
- □ 相談窓口・連絡担当の連絡先が明示されている
- □ 育児・介護への配慮に関する条項(または社内フロー参照)が含まれている
業務委託契約書の条項ごとの記載例は業務委託契約書 エンジニア向け条項解説、知的財産・NDAの観点は業務委託エンジニアと結ぶNDAで詳しく扱っています。
社内発注フロー・規程の整備3項目
契約書だけでなく、日々の発注業務を支える社内インフラの点検も欠かせません。
- □ 発注書テンプレートが書面明示9項目をすべて反映している
- □ 経理・財務側で「フリーランス向け支払サイト(60日以内)」が別ルールとして設定されている
- □ 担当者・現場マネージャー向けにフリーランス保護法の遵守ポイントを周知する説明資料・研修が用意されている
発注書テンプレートの具体的なフォーマットは業務委託 発注書テンプレートで公開しています。
対応優先順位マトリクス|何から着手すべきか

チェックリスト全体を点検し終えると、対応が必要な項目が複数浮かび上がるはずです。これらを「即時対応/30日以内/3か月以内」の3段階で振り分けることで、社内リソースを無理なく振り分けられます。
即時対応必須(違反リスク高)
以下の項目が「要修正」と判定された場合は、新規契約・新規発注を一時停止してでも先行対応する価値があります。
- 既存契約・既存案件で支払期日が60日を超えているケース
- 書面明示が口頭合意やチャットの断片のみで済まされているケース
- 仕様変更による無償手戻しが恒常的に発生しているケース
これらは行政機関による指導・勧告の対象になりやすく、また該当フリーランスから直接通報されると公表リスクに直結します。
30日以内に対応(運用設計)
文書レベルの整備は30日以内をひとつの目安にします。
- 業務委託契約書ひな形の改訂(7義務を反映)
- 発注書テンプレートの整備(書面明示9項目を網羅)
- 経理側の支払サイト分離設定
契約書改訂は法務レビューが必要となるため、顧問弁護士または法務担当との並行進行を組み立ててください。
3か月以内に対応(社内浸透)
体制整備は急いでも形骸化しやすいため、3か月程度かけて社内浸透させます。
- 担当者・現場マネージャー向け研修の実施
- ハラスメント相談窓口のフリーランス周知
- 育児・介護配慮申出フローの整備
研修資料・周知文書は、本記事のチェックリストをそのまま転用しても構いません。
2026年の取適法(旧下請法)改正との関係
2026年1月1日からは下請法が「取適法」に改正されます。「結局フリーランス新法と取適法、どちらに従えばよいのか」という疑問は、実務担当者が最も混乱するポイントです。
フリーランス新法が優先適用される理由
取引相手がフリーランス(従業員を使用しない個人事業主・一人法人)である場合、原則としてフリーランス保護法が優先適用されます。
理由は明確で、取適法(旧下請法)が資本金区分を要件としているのに対し、フリーランス保護法は資本金区分にかかわらず適用されるためです。資本金1,000万円以下の発注事業者でも、フリーランスへの委託であればフリーランス保護法の対象になります(弥生株式会社 フリーランス新法と取適法の違い)。
取適法のみ適用される取引パターン
逆に、取引相手が「従業員を使用する法人」である場合は、フリーランス保護法ではなく取適法(および従来の下請法)の対象となります。具体的には以下のパターンです。
- 取引相手が従業員を1人以上使用する個人事業主(雇用形態の個人事業主)
- 取引相手が従業員を使用する法人(資本金区分を満たす場合)
二重対応を避ける実務判断の考え方
実務上は「フリーランス新法の発注者義務を満たしていれば、取適法の主要要件もほぼ満たせる」という関係性にあります。書面明示・60日支払・禁止行為などの主要規律は両法でほぼ同じ構造のためです。
したがって、社内の契約書ひな形は「フリーランス新法基準」を最低ラインとして整備し、取適法のみ適用される取引(従業員ありの個人事業主・中小法人)でも同じひな形を流用するのが効率的です。
ただし2026年1月施行の取適法では「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」など新たな禁止行為が追加されているため、価格交渉プロセスの記録方法は別途見直しが必要です。
取適法かフリーランス新法かの適用判断チェック
自社取引ごとに以下の表を埋めることで、適用される法令を即判定できます。社内会議でも配布できる形式で記載しました。
取引先名(自社記入欄) | チェック1: 取引相手は従業員を使用しない個人事業主・一人法人か(Yes/No) | チェック2: 自社の資本金と取引内容は取適法の対象か(Yes/No/不明) | 適用される法令(自動導出) |
|---|---|---|---|
(例)山田太郎(個人事業主・従業員なし) | Yes | — | フリーランス保護法のみ適用 |
(例)合同会社○○(一人法人) | Yes | — | フリーランス保護法のみ適用 |
(例)株式会社△△(従業員あり、資本金500万円) | No | Yes | 取適法のみ適用 |
(例)株式会社□□(従業員あり、資本金1億円) | No | Yes(または No) | 取適法のみ適用、または対象外 |
(自社記入欄) |
「適用される法令」の自動導出ロジックは以下です。
- チェック1が Yes → フリーランス保護法のみ適用(取適法は適用されない)
- チェック1が No かつチェック2が Yes → 取適法のみ適用
- チェック1が No かつチェック2が No → 両法とも適用対象外(ただし民法・契約法の一般原則は適用)
- チェック1が No かつチェック2が不明 → 顧問弁護士・公正取引委員会窓口に確認
なおチェック2(取適法の適用判定)は、自社と相手の資本金区分・取引内容(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託のいずれか)の組み合わせで決まります。判断に迷う場合は政府広報オンライン「取適法」解説を参照してください。
チェック結果を社内で運用に乗せるための実務TIPS
ここまでで自社の発注実務の点検は一通り完了しているはずです。最後に、点検結果を社内で運用に乗せるための短い実務TIPSを紹介します。
経営層向け報告のまとめ方
経営層への報告では、以下の3点に絞ると意思決定がスムーズです。
- 全25項目のうち「対応済み」「要修正」「未確認」の件数サマリ
- 即時対応必須項目(違反リスク高)の有無と対応案
- 30日以内・3か月以内に必要なリソース見積もり(弁護士相談費用・研修コスト等)
詳細な条文解説は不要です。経営層は「リスクの量」「対応コスト」「いつまでに完了するか」の3点で意思決定するためです。
現場マネージャーへの周知方法
現場マネージャー(実際に外部人材に発注する担当)への周知は、本記事の「7つの禁止行為」セクションのみに絞ると効果的です。書面明示・60日支払などは社内ルール・テンプレートで自動化できる一方、「仕様変更による無償手戻し」「検収遅延」などは現場の判断で発生するためです。
15〜30分程度の説明会で「7つの禁止行為」と「違反時の社内エスカレーションフロー」のみ共有してください。
半年ごとの定期点検サイクルの作り方
法令対応は一度の改訂で完了せず、運用しながらズレを補正していく性質のものです。半年ごとに本チェックリストを再実施するサイクルを組むのが現実的です。
特に2026年1月の取適法施行後は、しばらく解釈ガイドラインの追加発表が続く可能性が高いため、半年程度で再点検することで運用のズレを早めに発見できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 個人事業主ではなく「一人法人」のフリーランスも対象になりますか?
はい、対象です。フリーランス保護法は「従業員を使用しない法人」も特定受託事業者として保護対象に含めています。合同会社や株式会社の形態であっても、代表者1名のみで従業員がいなければ対象となります。
Q2. 業務委託契約が3か月未満でも、すべての義務が適用されますか?
すべての義務が適用されるわけではありません。義務によって適用される契約期間の要件が異なります。
- 書面明示の義務:契約期間を問わず適用(1回限りの委託でも対象)
- 60日以内支払・7つの禁止行為:1か月以上の業務委託で適用
- 育児・介護配慮・中途解除30日前予告:6か月以上の業務委託で適用
- ハラスメント防止体制:契約期間を問わず適用
Q3. 検収が遅れた場合、60日ルールの起算日はどうなりますか?
起算日は「検収日」ではなく「給付受領日(成果物を受け取った日/役務提供を受けた日)」です。検収が遅れたとしても起算日は変わらず、検収遅延を理由に支払を延期すると違反となる可能性があります。検収プロセスは60日以内に完了するよう設計してください。
Q4. 仕様変更による無償手戻しは違反になりますか?
発注者側の都合で仕様変更が発生した場合、追加報酬を支払わずに対応させると「不当な給付内容の変更・やり直し」として禁止行為に該当する可能性があります。仕様変更が発生したら、追加報酬の協議または納期延長を必ず書面で合意し、記録に残してください。
Q5. ハラスメント相談窓口は社内に既存のものを使えますか?
はい、既存の社内ハラスメント相談窓口をフリーランス向けにも開放する形で要件を満たせます。重要なのは「窓口がある」だけでなく「フリーランスがその存在を認知している」ことです。契約書または初回オリエンテーションで明示してください。
Q6. フリーランス新法と取適法の両方が適用される場合、どちらに従えばよいですか?
取引相手がフリーランス(従業員を使用しない個人事業主・一人法人)である場合、フリーランス保護法が優先適用されます。フリーランス新法基準で契約書・運用を整備していれば、取適法の主要要件もほぼ満たせる構造になっているため、二重対応する必要はありません。
Q7. 違反が発覚した場合、どのような流れで処分が下されますか?
一般的な流れは「調査・助言・指導 → 改善されない場合の勧告 → 勧告に従わない場合の命令 → 命令違反時の50万円以下の罰金と社名公表」です。最初から罰金や公表に至ることは稀で、行政機関とのコミュニケーション過程で改善する余地があります。とはいえ調査・助言の段階で取引先からの信頼低下が起きるため、事前対応が最善です。
まとめ|チェックリスト運用で発注実務を法令適合に保つ
本記事では、フリーランス保護法の発注者義務を「7義務・全25項目」「契約書・社内規程の改訂10項目」「対応優先順位マトリクス」「取適法との関係チェック」の4軸に分解しました。それぞれを社内で点検することで、責任者として自社の対応状況を経営層に報告できる状態に到達できます。
実務的に重要なのは、一度のチェックで完了させようとせず、半年ごとに本記事のチェックリストを再実施する運用サイクルを組み込むことです。法令解釈は2026年1月の取適法施行後にさらに細かいガイドラインが発表される可能性が高く、運用しながら適応していく姿勢が現実的です。
また、契約書条項の具体的な記載例や、書面明示・60日支払・ハラスメント体制構築の詳細な実装手順については、本記事では網羅しきれていません。これら個別論点については関連記事を順次参照していただくか、より体系的に整理されたフォーマットで深掘りしたい場合は、業務委託契約書のテンプレート集と法的論点解説をまとめた「業務委託契約の法務ガイド」資料が役立ちます。発注者として押さえるべき契約書条項・支払フロー・トラブル事例を網羅していますので、本チェックリストと併せて社内整備にお役立てください。
なお、フリーランス保護法の各義務の条文ベースの詳細解説についてはフリーランス保護法 発注企業の義務も併せて参照ください。条文・解釈ガイドラインベースで義務の全体像を学べる構成になっています。



