業務システムのSaaS型 vs 受託開発型を徹底比較|自社に最適な選び方ガイド

「業務システムを入れ替えたいけれど、SaaSにすべきか、受託開発で作るべきか分からない」――こうした悩みを抱えている方は少なくありません。
SaaS企業の営業担当者は「SaaSなら低コストですぐ使えます」と言い、開発会社は「御社の業務には受託開発が必要です」と勧めてきます。ベンダーごとに正反対のことを言われると、どちらの言葉を信じればいいのか判断がつかなくなるものです。
実は、SaaSと受託開発のどちらが優れているかという問いに、万能な正解はありません。大切なのは、自社の業務特性・予算・体制に合った選択をするための「中立的な判断軸」を持つことです。
本記事では、受託開発を手がける秋霜堂株式会社の実務知見をもとに、SaaS型と受託開発型の業務システムを6つの比較軸で整理し、業務領域別の選択ガイドや判断チェックリストを提供します。「SaaSを選ぶべきケース」も率直にお伝えしますので、社内提案の根拠づくりにお役立てください。

目次
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
SaaS型と受託開発型の業務システム――基本の違いを整理する
業務システムの導入方法を検討するにあたり、まずは「SaaS型」と「受託開発型」の定義を整理しておきましょう。ベンダーによって使う用語がバラバラで混乱しがちですが、ここで共通言語を押さえておくと、後の比較がスムーズに進みます。
SaaS型とは――クラウドで提供される業務ソフトウェア
SaaS(Software as a Service)は、ベンダーがクラウド上で開発・運用するソフトウェアを、インターネット経由で利用する形態です。会計ソフトのfreeeやマネーフォワード、顧客管理のSalesforce、グループウェアのGoogle Workspaceなどが代表的な例です。
初期費用が低く、月額・年額のサブスクリプション料金を支払うことで利用できます。ソフトウェアのアップデートやサーバー管理はベンダー側が行うため、自社でインフラを持つ必要がありません。一方で、機能やデータ構造はベンダーの設計に従うため、自社固有の業務フローに合わせたカスタマイズには限界があります。
業務システムとは?の記事で基本的な概念を解説していますので、あわせてご参照ください。
受託開発型とは――自社業務に合わせてゼロから構築するシステム
受託開発型(カスタム開発)は、開発会社に依頼して自社の業務要件に合わせたシステムをゼロから構築する方法です。画面設計やデータ構造、業務フローの組み込みまで、すべて自社の要件に合わせて設計・開発します。
自社業務に最適化できる反面、初期の開発費用が高くなりやすく、開発期間も数か月から1年以上かかることがあります。詳しくは受託開発とは?をご覧ください。
「カスタム開発」「スクラッチ開発」「パッケージ開発」との違い
受託開発の周辺には似た用語がいくつかあります。混乱しやすいポイントなので、ここで簡単に整理します。
- カスタム開発: 受託開発とほぼ同義で、自社の要件に合わせてシステムを開発する手法全般を指します
- スクラッチ開発(フルスクラッチ開発): 既存のフレームワークやテンプレートを使わず、完全にゼロからコードを書いて開発する手法です。詳細はフルスクラッチ開発とは?で解説しています
- パッケージ開発: 既製のソフトウェアパッケージを土台にカスタマイズして導入する手法です。SaaSと受託開発の中間的な位置づけといえます。パッケージ開発とは?もあわせてご確認ください
本記事では、受託開発型にスクラッチ開発・カスタム開発を含む広い意味で使用し、SaaS型との比較を進めます。
6つの比較軸で見るSaaS型 vs 受託開発型の業務システム

SaaS型と受託開発型を比較する際、「コストが安いのはどちらか」「早く導入できるのはどちらか」といった表面的な比較だけでは判断を誤ります。ここでは、社内提案や稟議書の根拠としても使える6つの比較軸を提示します。
初期費用とTCO(総所有コスト)で比較する
SaaS型は初期費用が低い(月額数千円〜数万円から始められる)点が大きな魅力です。しかし、ユーザー数が増えるにつれて月額料金が積み上がり、5年間のTCO(Total Cost of Ownership: 総所有コスト)で見ると受託開発型を上回るケースがあります。
たとえば、1ユーザーあたり月額2万円のSaaSを50名で5年間利用した場合、ライセンス費用だけで6,000万円に達します。受託開発型の初期費用が仮に3,000〜5,000万円であれば、保守費用を加味しても5年TCOでは受託開発型のほうが安くなる可能性があるのです。
導入判断では初期費用だけでなく、5年間のTCOで比較することが重要です。費用の詳細な考え方についてはシステム開発の費用相場で解説しています。
カスタマイズ性――業務にシステムを合わせるか、システムに業務を合わせるか
SaaS型は、多くの企業に共通する標準的な業務フローに最適化されています。設定やオプションで調整できる範囲はありますが、根本的なデータ構造や業務フローを変えることはできません。そのため、SaaSに合わせて自社の業務プロセスを変える必要が出てくることもあります。
受託開発型は、自社の業務フローに合わせてシステムを設計できます。「このデータ項目がほしい」「この承認ルートにしたい」「他システムと自動連携したい」といった固有の要件に対応可能です。
ポイントは、「自社の業務にどれだけ独自性があるか」です。標準的な業務であればSaaSの仕組みに合わせることで業務改善にもつながりますが、競合との差別化に直結する業務プロセスを持つ場合は、システム側を業務に合わせるほうが合理的です。
導入スピードと立ち上げまでの期間
SaaS型はアカウント発行後すぐに利用を開始できるものが多く、導入設定を含めても数日〜数週間で本番運用に移行できます。「来月から使い始めたい」というスピード要求にはSaaS型が適しています。
受託開発型は、要件定義・設計・開発・テスト・リリースのプロセスを経るため、最短でも3か月、一般的には6か月〜1年程度の期間を要します。ただし、MVP(Minimum Viable Product: 最小限の機能を持つ製品)から始めて段階的に機能を拡張するアプローチを取れば、コア機能を2〜3か月でリリースし、実運用しながら改善を続けることも可能です。
データ主権・セキュリティの違い
SaaS型では、自社のデータはベンダーのサーバーに保管されます。データの保管場所や暗号化方式、アクセス制御のポリシーはベンダーの設計に依存するため、業界規制や社内のセキュリティポリシーとの整合性を事前に確認する必要があります。
受託開発型では、データの保管場所やセキュリティ設計を自社の要件に合わせてコントロールできます。「データは国内のサーバーに置きたい」「特定のデータは暗号化して保存したい」といった要件がある場合、受託開発型のほうが柔軟に対応できます。
医療・金融・官公庁など、データの取り扱いに厳格な規制がある業界では、この観点が選択の決定的な要因になることがあります。
スケーラビリティと将来の拡張性
SaaS型は、ユーザー数の増減に柔軟に対応できるスケーラビリティが強みです。事業拡大に伴うユーザー追加はプラン変更で即座に対応でき、インフラの増強はベンダー側が担います。
一方、SaaS型は機能面の拡張性に制約があります。「将来こういう機能を追加したい」と思っても、それがベンダーのロードマップに含まれていなければ実現できません。
受託開発型は、将来の機能拡張を見据えた設計が可能です。初期段階から拡張ポイントを設計に組み込むことで、事業の変化に合わせてシステムを成長させられます。ただし、拡張のたびに追加の開発費用が発生する点は考慮が必要です。
ベンダーロックインのリスク
ベンダーロックインとは、特定のベンダーのサービスに依存しすぎて、他のサービスへの乗り換えが困難になる状態を指します。Miletos社が2024年に実施した調査によると、SaaSを利用する企業の69.2%が「ベンダーロックインの状態にある」と回答しています(出典: Miletos株式会社「SaaSに関する調査2024」)。
SaaS型では、データのエクスポートが制限されていたり、独自のデータ形式を採用していたりすると、他のサービスへの移行が事実上困難になることがあります。導入前に、データのエクスポート機能やAPI連携の仕様を必ず確認しましょう。
受託開発型は自社でソースコードとデータを保有するため、ベンダーロックインのリスクは相対的に低くなります。ただし、開発会社固有の技術やフレームワークに依存した設計の場合、開発会社の変更が難しくなるリスクはあります。ソースコードの所有権やドキュメントの整備について、契約時に明確にしておくことが重要です。
以下の比較表に、6つの軸の要点をまとめます。
比較軸 |
SaaS型 |
受託開発型 |
|---|---|---|
初期費用 |
低い(月額課金) |
高い(数百万〜数千万円) |
5年TCO |
ユーザー数が多いと高額になりやすい |
初期投資後のランニングコストは比較的安定 |
カスタマイズ性 |
限定的(設定変更の範囲内) |
高い(業務フローに完全対応可能) |
導入スピード |
数日〜数週間 |
3か月〜1年 |
データ主権 |
ベンダー依存 |
自社でコントロール可能 |
スケーラビリティ |
ユーザー数の増減に柔軟 |
機能拡張の自由度が高い |
ベンダーロックイン |
リスクが高い傾向 |
相対的に低い(契約次第) |
業務領域別SaaS vs 受託開発の選択ガイド
「コア業務かどうかで判断する」という一般的なアドバイスは方向性として正しいですが、実際の判断にはもう一段具体的な指針が必要です。ここでは、業務領域ごとにSaaS型と受託開発型のどちらが適するかを整理します。
経理・会計システム――SaaS型が適するケース
経理・会計業務は、法令や会計基準に準拠した標準的な処理が中心です。freee、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計オンラインなどのSaaS型が高い完成度を持っており、多くの中小企業にとってSaaS型が最適な選択肢です。
税制改正や法令変更への対応もベンダー側が自動で行ってくれるため、自社で改修する手間がかかりません。ただし、独自の管理会計ルールや複雑な部門別配賦が必要な場合は、SaaS型の設定範囲で対応できるか事前に確認しましょう。
在庫・販売管理システム――規模と業務特性で判断が分かれる
在庫・販売管理は、企業ごとの差異が大きい領域です。標準的な入出庫管理であればSaaS型で十分対応できますが、以下のようなケースでは受託開発型が適しています。
- 独自のロット管理やトレーサビリティが必要
- 複数の倉庫・拠点間の在庫移動が頻繁に発生する
- 既存の基幹システムとのリアルタイム連携が必須
秋霜堂では、アパレル企業の品質管理システムを受託開発で構築した実績があります。アパレル業界特有の品質管理基準や検品フローをシステムに組み込み、業務効率を大幅に改善しました。このように、業界固有の管理基準がある場合は受託開発型が力を発揮します。
顧客管理(CRM)――SaaS+カスタム連携のハイブリッド型も選択肢
CRM(Customer Relationship Management)は、SalesforceやHubSpotなどの成熟したSaaS型製品が豊富にあります。基本的な顧客管理・案件管理・レポーティングであれば、SaaS型で十分に対応可能です。
一方、SaaS型CRMを土台としつつ、自社固有の業務システムとAPI連携させるハイブリッド型のアプローチも有効です。たとえば、SaaS型CRMと受託開発した業務システムをAPI連携し、営業情報と業務データを統合するといった構成が考えられます。
勤怠・人事管理――標準業務はSaaS、独自制度は受託開発
勤怠管理や給与計算は法令に基づく標準的な処理が多いため、SaaS型(ジョブカン、KING OF TIMEなど)で対応できるケースがほとんどです。
ただし、製造業のシフト管理や、独自の評価制度・報酬体系を持つ企業では、SaaS型の設定範囲で対応しきれないことがあります。その場合は、勤怠管理はSaaS型を採用し、独自制度の部分だけ受託開発で対応するという組み合わせも検討しましょう。
業界固有の業務システム――受託開発型が力を発揮する領域
業界特有の業務プロセスを持つ企業では、受託開発型が力を発揮します。秋霜堂の実績をもとに具体例を紹介します。
- 福祉業界: 福祉事業所向けのマルチプラットフォームアプリを開発。利用者や職員がスマートフォンで操作できるアプリを、iOS・Android両対応で構築しました。福祉業界特有の記録管理や連絡体制に対応するには、SaaS型では機能が足りないケースが多く見られます
- 芸能・広告業界: 動画校正システムを新規開発しました。校正ワークフローや承認フローが独自であるため、汎用的な動画管理SaaSでは対応しきれない業務プロセスをシステム化しています
- コンサルティング業界: SNSマーケティング支援システムをSaaSとして新規開発。MVP(最小限の機能)を2か月で構築し、実際に運用しながら機能を拡張するアプローチを採用しました
これらの事例に共通するのは、「その業界でしか使わない業務プロセス」が存在することです。汎用SaaSではカバーしきれない業務領域こそ、受託開発型の価値が最大化されます。
【判断チェックリスト】自社に合うのはSaaS型?受託開発型?

ここまでの比較軸と業務領域別ガイドを踏まえて、自社に当てはめて判断できるチェックリストを用意しました。各項目を確認し、どちらに該当するケースが多いかを数えてみてください。
チェック1――業務の独自性と標準化余地
- 自社の業務フローは、同業他社と大きく異なるか?
- 現在の業務フローをSaaSの標準機能に合わせて変更する余地はあるか?
業務の独自性が高く、標準化の余地が少ない場合は受託開発型が向いています。逆に、「実はやり方を変えてもいい」「むしろ標準的なやり方に合わせたい」という場合は、SaaS導入が業務改善のきっかけにもなります。
チェック2――ユーザー規模と将来の拡張計画
- 現在のユーザー数は何名か? 3年後・5年後の見込みは?
- 拠点の追加や事業領域の拡大を予定しているか?
ユーザー数が多い、または今後大幅に増える見込みがある場合は、5年TCOの試算で比較することが重要です。ユーザー数が少なく安定している場合は、SaaS型のコストメリットが明確になります。
チェック3――予算の考え方(初期投資型 vs サブスクリプション型)
- まとまった初期投資の予算を確保できるか?
- 月額費用として計上するほうが社内承認を得やすいか?
受託開発型は初期投資が大きい代わりに、長期的なランニングコストが安定します。SaaS型は初期費用を抑えられますが、月額費用が継続的に発生します。会社の予算体制や会計方針(資産計上 vs 費用計上)も判断材料になります。
チェック4――社内IT体制と運用リソース
- システムの運用・保守を担当できる人材が社内にいるか?
- 障害発生時の対応を自社で行う体制があるか?
社内にIT専任者がいない場合、SaaS型のほうが運用負荷が低く安心です。受託開発型はリリース後の保守・運用も必要となるため、開発会社との保守契約や、社内の運用体制を事前に計画しておく必要があります。
チェック5――導入スピードの優先度
- いつまでに新システムを稼働させる必要があるか?
- 「まず使い始めて、後から改善する」アプローチは許容されるか?
導入スピードが最優先であればSaaS型が適しています。ただし、受託開発でもMVPから始めるアプローチを取れば、コア機能を2〜3か月で稼働させることは可能です。
判断の目安: 5つのチェックのうち、3つ以上で「受託開発型が向いている」と判断された場合は、受託開発型を中心に検討を進めましょう。逆に3つ以上が「SaaS型で対応可能」であれば、まずSaaS型の選定から始めるのが効率的です。判断が拮抗する場合は、次のセクション以降の視点も参考にしてください。
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
受託開発会社が本音で語る「SaaSで十分なケース」

秋霜堂は受託開発を手がける会社ですが、お客様との打ち合わせの中でSaaSを勧めるケースは実際にあります。「受託開発会社がSaaSを勧めるなんて、自社のビジネスに反するのでは?」と思われるかもしれませんが、お客様にとって最適でない提案をしても、長期的な信頼関係は築けません。ここでは、私たちがSaaSを推奨する具体的な場面をお伝えします。
業務の標準化余地が十分にあるケース
「自社の業務は特殊だ」と感じていても、実際に業務フローを整理してみると、標準的なSaaSの仕組みで十分に対応できるケースは少なくありません。特に、経理・会計、勤怠管理、基本的な顧客管理といった領域では、SaaSの機能が十分に成熟しています。
このような場合に受託開発を選ぶと、本来不要な機能まで作り込んでしまい、開発費用と期間が膨らむリスクがあります。「自社の業務フローをSaaSに合わせて見直す」こと自体が、業務改善の契機になることも多いのです。
導入スピードが最優先のケース
「来月から新しい業務フローに切り替えたい」「制度改正に間に合わせなければならない」といった、時間的な制約が厳しい場合は、SaaS型一択です。受託開発は最短でも2〜3か月を要しますが、SaaS型であれば数日〜数週間で導入できます。
スピード重視でまずSaaSを導入し、運用しながら本当に必要な独自機能を見極めたうえで、将来的に受託開発に切り替えるという段階的なアプローチも有効です。
まず試して要件を固めたいケース
「何を作るべきか、まだ明確になっていない」という段階では、いきなり受託開発に踏み切るのはリスクが高いといえます。要件が固まらないまま開発を進めると、仕様変更が重なり、費用と期間が当初の想定を大幅に超えてしまうことがあります。
こうした場合は、まずSaaSで業務を回してみて、「SaaSでは対応しきれない部分」を具体的に把握してから受託開発を検討するのが合理的です。SaaSの運用経験が、そのまま受託開発の要件定義の土台になります。
SaaSか受託開発かの前に――要件定義の質が選択結果を左右する
ここまで「SaaSと受託開発、どちらを選ぶか」という比較をしてきましたが、実はそれ以前に重要なことがあります。それは「要件定義の質」です。
要件が曖昧なまま選択して失敗する2つのパターン
パターン1: 要件が不明確なままSaaSを導入してしまうケース
「とりあえず有名なSaaSを入れておけば大丈夫だろう」と安易に導入し、運用を始めてから「この業務フローには対応できない」と気づくケースです。カスタマイズの限界に直面し、結局は手作業やExcelで補完することになり、かえって業務が複雑化してしまいます。
パターン2: 要件が固まらないまま受託開発を発注してしまうケース
「何を作りたいか」が明確でない段階で開発を始めると、開発途中での仕様変更が頻発します。「やっぱりこの画面のレイアウトを変えたい」「この機能は不要だった」といった変更のたびに追加工数が発生し、当初の見積もりから費用が膨れ上がってしまいます。
どちらのパターンにも共通するのは、「SaaSか受託かを選ぶ前に、そもそも何を解決したいのかを明確にしていなかった」という点です。
「構想段階からの伴走」が選択の精度を上げる理由
SaaS型か受託開発型かを適切に判断するためには、まず自社の業務課題と要件を整理するプロセスが必要です。しかし、社内にIT専門チームがいない中小企業では、要件定義そのものが大きなハードルになります。
秋霜堂では、「構想段階からの伴走」を大切にしています。要件が固まっていない段階から調査・仕様検討に参加し、お客様と一緒に「何を解決すべきか」を明確にしていきます。この過程で、「この業務領域はSaaSで十分です」「この部分は受託開発が必要です」という判断を、具体的な根拠に基づいて提案できるのです。
手段(SaaSか受託か)の選択は、目的(何を解決したいか)が明確になった後に行うべきものです。逆にいえば、要件定義の質を高めることが、SaaSか受託開発かの選択精度を高める最も確実な方法だといえます。
選択を間違えたときの切り替えコストと対処法

「SaaSを導入したけれど業務に合わなかった」「受託開発で作ったシステムが使いにくい」――選択を間違えた場合の切り替えには、相応のコストとリスクが伴います。しかし、事前にそのコスト構造を把握しておけば、「失敗しても取り返しがつかないわけではない」と分かり、安心して意思決定に踏み出せます。
SaaS→受託開発に切り替えるときのコストとリスク
SaaSから受託開発への切り替えで発生する主なコストは以下のとおりです。
- データ移行コスト: SaaSに蓄積したデータを新システムに移行する作業が必要です。SaaS側のデータエクスポート機能が限定的な場合、データの抽出・変換に想定外の工数がかかることがあります
- 業務フローの再設計: SaaS型のワークフローに合わせて運用していた業務を、新システムに合わせて再設計する必要があります
- ユーザー再教育: 操作方法や業務フローが変わるため、利用者への研修が必要です
- 並行稼働期間: 安全に移行するため、旧SaaSと新システムを一定期間並行稼働させることが一般的です。この間は両方のコストが発生します
切り替え全体で、新システムの開発費用に加えて、数十万〜数百万円の移行関連コストが発生するのが一般的です。
なお、AI機能を中心としたSaaSの限界と切り替え判断については、AI SaaSの限界とカスタム開発で詳しく解説しています。
受託開発→SaaSに移行するときのコストとリスク
受託開発型システムからSaaSへの移行では、以下のコストが発生します。
- 業務プロセスの変更: 自社独自の業務フローに最適化されたシステムから、SaaSの標準フローに合わせる必要があります。業務プロセスの変更は技術的な作業よりも現場の抵抗が大きいことが多く、十分な準備期間と合意形成が必要です
- データの変換・移行: 受託開発型で独自に設計したデータ構造を、SaaSのデータ構造に合わせて変換する作業が必要です
- カスタマイズの喪失: 受託開発型で実現していた独自機能の一部は、SaaS型では実現できない可能性があります。どの機能を諦め、どの機能を代替手段で補うかの判断が必要です
- 既存システムの廃止コスト: 保守契約の解約やサーバーの撤去など、既存システムの終了に伴うコストも考慮しましょう
MVPから始めて段階的に移行するという選択肢
「SaaSか受託開発か」を最初から100%正しく選ぶ必要はありません。リスクを最小化する方法として、MVP(最小限の機能を持つ製品)から始めるアプローチがあります。
具体的には、まず最も重要な業務領域に絞って小規模なシステムを構築・導入し、実際に運用しながら課題を洗い出します。そのうえで、次のフェーズでシステムを拡張・改善していくのです。
秋霜堂でも、コンサルティング企業向けのSNSマーケティング支援システムをMVPアプローチで開発した実績があります。MVPを2か月で構築して運用を開始し、利用者のフィードバックをもとに継続的に機能を拡張しました。最初から完璧なシステムを目指すのではなく、小さく始めて大きく育てるアプローチは、選択ミスのリスクを最小限に抑えます。
まとめ――自社に最適な業務システムの選び方
本記事では、SaaS型と受託開発型の業務システムを6つの比較軸で整理し、業務領域別の選択ガイドと判断チェックリストを提供しました。
最後に、判断のポイントを振り返ります。
- 6つの比較軸(初期費用・TCO、カスタマイズ性、導入スピード、データ主権、スケーラビリティ、ベンダーロックイン)で客観的に比較する
- 業務領域ごとに最適解は異なる: 経理・勤怠はSaaS型、業界固有業務は受託開発型が向きやすい。ハイブリッド型も有力な選択肢
- 判断チェックリストで自社の状況を5つの観点から確認する
- 手段の選択より要件定義の質が重要: 何を解決したいかを明確にすることが、選択の精度を高める最も確実な方法
- 失敗してもリカバリーは可能: 切り替えコストを事前に把握し、MVPアプローチでリスクを最小化する
SaaSか受託開発かは、どちらが正解というものではありません。自社の業務特性・予算・体制を踏まえた「自社にとっての正解」を見つけることが大切です。本記事で紹介した判断軸が、社内提案や意思決定の一助になれば幸いです。
画像指示
アイキャッチ推奨クエリ: "business software comparison technology"
本文内画像
挿入位置(h2見出し) |
検索クエリ |
備考 |
|---|---|---|
6つの比較軸で見るSaaS型 vs 受託開発型の業務システム |
"cloud computing versus custom software development" |
比較表の前後に配置 |
【判断チェックリスト】自社に合うのはSaaS型?受託開発型? |
"business checklist decision making" |
チェックリスト冒頭に配置 |
受託開発会社が本音で語る「SaaSで十分なケース」 |
"honest business consultation meeting" |
セクション冒頭に配置 |
選択を間違えたときの切り替えコストと対処法 |
"system migration data transfer" |
セクション冒頭に配置 |
作業時間削減
システム化を通して時間を生み出し、ビジネスの加速をサポートします。
システム開発が可能に
秋霜堂株式会社について
秋霜堂は、Web開発・AI活用・業務システム開発を手がけるシステム開発会社です。要件定義から設計・開発・運用まで一貫してご支援しています。
システム開発のご相談や、自社課題に合った技術的アプローチについてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
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作業時間削減
システム化を通して時間を生み出し、ビジネスの加速をサポートします。
システム開発が可能に









