フリーランスエンジニアとして活動していると、収入が増えるほど確定申告の判断項目が増えていきます。開業初年度は会計ソフトの案内どおりに進めれば済んだ作業も、経費計上の判断・家事按分・源泉徴収と自主申告の混在などが絡み始めると、「これは大丈夫だろうか」と手が止まる場面が増えるはずです。
厄介なのは、多くの判断項目が「明確な白黒」ではなく「グレーの濃さ」で決まる点です。書籍や記事を読むほど「厳密に言えば全部ダメなのでは」という不安が募り、しかし税理士に依頼するほどの規模でもないと感じる。この宙ぶらりんな状態が「毎年ビクビクしながら申告する」原因になります。
不安を鎮める近道は、「ミスがバレたら何が起きるか」を金額として把握することです。加算税・延滞税の税率は国税庁が公開しており、税額 100 万円のケースに当てはめれば「怖い」の正体を数字に置き換えられます。数字が見えれば、優先的に見直すべき項目と、細かすぎて気にしても仕方ない項目の区別がつきます。
本記事では、フリーランスエンジニアが実務で迷いやすい 7 つのミスを発生頻度と追徴インパクトの 2 軸で優先順位付けし、4 種類のペナルティの税率と金額イメージ、そして「ミスに気づいた時に取るべき手続き」を、国税庁の一次情報と令和 8 年(2026 年)時点の延滞税率をもとに整理します。読み終えたときには、判断軸と対処手順が頭に入り、次の確定申告に恐れず臨める状態を目指します。
確定申告のミスで発生する4種類のペナルティ

まずは「怖さ」の正体を数字に置き換えます。確定申告のミスに対して課される追加負担は、大きく分けて 4 種類あります。それぞれの税率と対象を把握しておくと、後述するミスの深刻度を金額で判断できるようになります。
税率は 2026 年(令和 8 年)時点の国税庁公表値をもとに整理しています(国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき、国税庁 No.9205 延滞税について)。
過少申告加算税:本来より少なく申告した場合
期限内に確定申告はしたものの、本来より少ない税額で申告していたケースに課されます。税率は追加で納める税額の 10%が原則で、追加税額が「当初申告税額」または 50 万円のいずれか多い金額を超える部分については 15% になります。
たとえば当初申告税額が 30 万円で、追加で 100 万円納めることになった場合、50 万円までは 10%、50 万円を超える 50 万円分は 15% という 2 段階計算です。
重要なのは、税務署からの調査通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、この過少申告加算税は課されない点です。「バレる前に自分から直せば追加負担なし」という制度設計になっています。
無申告加算税:期限内に申告しなかった場合
期限(原則 3 月 15 日)までに確定申告を提出しなかったケースに課されます。税率は納めるべき税額の 15%が原則で、50 万円を超える部分は 20%、300 万円を超える部分は 30% と 3 段階で上がります。
こちらも自主対応で軽減があります。調査通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合、税率は 5% に下がります(国税庁 No.2024)。「申告そのものを忘れていた」ケースでも、税務署が動く前に自分から出せば負担は 3 分の 1 程度に抑えられます。
延滞税:納付が遅れた場合
税金の納付が期限より遅れた期間に対して、利息のように課されるのが延滞税です。加算税とは別枠で発生し、期限の翌日から納付日までの日数で計算されます。
令和 8 年(2026 年 1 月 1 日〜 12 月 31 日)の延滞税率は、納期限の翌日から 2 か月以内が年 2.8%、2 か月を超えた部分は年 9.1% です(国税庁 延滞税の割合)。2 か月を境に税率が 3 倍以上に跳ね上がる点が特徴で、修正申告や期限後申告をする際は「気づいてから 2 か月以内に納付を済ませる」ことが実務上のポイントになります。
重加算税:仮装・隠蔽が認定された場合
売上を意図的に除外していた、架空の経費を計上していた、といった「仮装・隠蔽」が認定されると、過少申告加算税や無申告加算税に代えて重加算税が課されます。税率は過少申告のケースで 35%、無申告のケースで 40% と非常に重く、悪質な場合は所得税法違反として刑事罰の対象にもなり得ます。
「うっかりミス」と「隠蔽」は税務調査官の心証によって分かれるため、判断が難しい支出には後述のとおりメモや根拠を残しておくことが自衛策になります。
具体例:追加税額 100 万円のケースで見る金額感
抽象的な税率だけではイメージしづらいので、「本来より 100 万円多く納める必要があった」ケースで各ペナルティを試算してみます(延滞税は 1 年遅延と仮定、当初申告税額 30 万円のケース)。
状況 | 加算税・追加負担の合計目安 |
|---|---|
期限内・自主的な修正申告(調査通知前) | 加算税なし。延滞税のみ約 8 万円前後(1 年遅延の場合) |
期限内申告 → 調査通知後の修正申告 | 過少申告加算税 約 12.5 万円(50 万円まで 10%、超過分 15%)+ 延滞税 |
無申告 → 自主的な期限後申告(調査通知前) | 無申告加算税 5 万円(一律 5%)+ 延滞税 |
無申告 → 調査後の期限後申告 | 無申告加算税 約 17.5 万円(50 万円まで 15%、超過分 20%)+ 延滞税 |
仮装・隠蔽が認定された場合 | 重加算税 35〜40 万円 + 延滞税。刑事罰の可能性あり |
同じ 100 万円の追加納税でも、「気づいたタイミング」と「自主的に動くかどうか」で最終負担が 3〜4 倍変わることが分かります。逆に言えば、恐れて動かない方が長期的な負担は膨らみます。
フリーランスエンジニアがやりがちなミス7選(発生頻度・追徴インパクト順)

ここからは、フリーランスエンジニアが実務で迷いやすい 7 つのミスを、発生頻度と追徴インパクトの 2 軸で優先順位付けして解説します。上ほど「まず見直すべき」項目です。
ミス1:経費計上NGを経費計上している(プライベート支出・生活費)
もっとも頻度が高く、税務調査で最初に指摘されるのがこの項目です。事業と関連しない私的な飲食・衣服・家族旅行・美容などを経費として計上しているケースが該当します。
エンジニア職特有のパターンとしては、「勉強のため」を理由にしたゲーム機・サブスクリプション(動画配信)・ガジェットの購入、家族との外食を「情報交換」として計上、などが指摘されやすい支出です。
判断基準はシンプルで、「その支出がなければ事業収入が発生しなかった、と第三者に説明できるか」です。説明が苦しくなる支出は経費にしないか、後述の家事按分で一部だけ計上するのが安全な運用です。認定されれば過少申告加算税、悪質なら重加算税に接続します。
ミス2:家事按分の割合根拠が説明できない(家賃・光熱費・通信費)
自宅で作業するフリーランスエンジニアの多くが計上する「家賃・電気代・通信費・インターネット回線費」の一部按分。金額は大きくなりがちですが、按分割合の根拠を説明できないと否認されるリスクを抱えます。
参考にできる按分基準は、freee 公式の家事按分ガイドなどに整理されている「使用面積の比率」「使用時間の比率」「使用日数の比率」です。たとえば家賃なら「専用作業スペースの面積 ÷ 総面積」、電気代なら「作業時間 ÷ 24 時間 × 稼働日数 ÷ 30 日」といった算式で根拠を残します。
問題になりやすいのは、「なんとなく 50% にしている」「昨年と同じ割合を惰性で使っている」ケースです。按分割合の根拠は簡単なメモ書きで構わないので、算式と数字を残しておくと、後から税務署に聞かれても説明できます。
ミス3:源泉徴収済み報酬を二重に納税・控除漏れ
エージェント経由の準委任案件や、企業の広報記事執筆など、報酬から源泉徴収が引かれて振り込まれる案件を受けているエンジニアに多いミスです。源泉徴収された税額は、確定申告時に「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」として申告書に記入することで、算出税額から差し引かれます。
これを記入し忘れると、源泉徴収済みの税額を確定申告でもう一度納めることになり、二重に払いすぎる状態になります。逆に、源泉徴収されていない案件(発注元が源泉徴収対象外の個人事業主など)を「源泉徴収済み」として控除してしまうと、少なく申告する側のミスとして過少申告加算税の対象になります。
対策は、支払調書または報酬支払明細を発注元から取り寄せ、案件ごとに「源泉徴収の有無」「徴収額」を突合する運用です。会計ソフトの取引先マスターに「源泉徴収対象」フラグを設定しておくと、翌年以降の集計が楽になります。
ミス4:収入計上時期のズレ(発生主義と現金主義の混在、期ズレ)
12 月末に納品したが入金は翌年 1 月というケースで、「入金月」で計上してしまう(現金主義)ミスです。青色申告の場合は原則として発生主義(役務提供完了時点で計上)が求められ、税務調査で頻繁に指摘される項目です。
エンジニアの実務では「12 月の稼働分の請求書を発行しているが、入金は 2 月」というパターンが典型例です。この場合の売上計上は、原則として「12 月」に行います。翌年の売上として計上してしまうと、当期の売上を過少に、翌期の売上を過大に計上したことになります。
会計ソフト上では「請求日」ベースで自動仕訳するよう初期設定しておくと、期ズレを防ぎやすくなります。前受金・売掛金の残高を年末に一度チェックする習慣も有効です。
ミス5:消費税課税事業者の判定を見落として無申告扱い
売上が伸びてきたフリーランスにとって「消費税課税事業者になる年度」の見落としは、追徴インパクトが大きいミスです。
原則として、基準期間(前々年)の課税売上高が 1,000 万円を超えた翌々年から消費税の納税義務が発生します。また、特定期間(前年の 1 月 1 日〜 6 月 30 日)の課税売上高が 1,000 万円を超え、かつ給与等支払額が 1,000 万円を超えた場合も、翌年から課税事業者になります(マネーフォワード クラウド 消費税免除の要件)。
さらに、インボイス制度で適格請求書発行事業者に登録している場合は、基準期間や特定期間の売上に関係なく登録日以降は課税事業者として扱われます。登録は自動延長されるため、一度登録すると意図的に取消しない限り免税事業者には戻れません。
課税事業者判定の詳しい判断ステップは、フリーランスエンジニアの消費税、課税事業者になるべきか判断する5ステップで個別に解説しています。年末のタイミングで自身の売上推移とインボイス登録状況を確認しておきましょう。
ミス6:副業所得「20万円ルール」の誤解(住民税との関係、確定申告と申告不要の混同)
「副業所得が年間 20 万円以下なら確定申告は不要」というルールが一人歩きし、フリーランスと会社員の複業をしているエンジニアに誤解が生じやすいポイントです。
正しくは、20 万円ルールは「会社員が本業とは別に副業で得た所得」に限った所得税の特例です。所得(=収入 − 経費)が 20 万円以下でも、住民税の申告は別途必要です(タックスナップ 副業20万円以下でも確定申告・住民税申告が必要なケース)。
また、以下のケースは 20 万円以下でも所得税の確定申告が必要になります。
- 医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例未利用)の還付申告をする場合
- 副業が「事業所得」として規模が大きい場合
- 給与を 2 か所以上から受け取っている場合
フリーランス専業のエンジニアには 20 万円ルールは適用されません(そもそも本業として全所得を申告する必要があります)。会社員から独立した年に「独立前の会社員期間の副業分だけ 20 万円ルールで済ませてしまう」といった混同も発生しがちです。判断が曖昧な場合は、複業エンジニアの確定申告|按分・経費判断と20万円ルールの注意点で複業ケースの判断基準を整理しておくと安全です。
ミス7:期限遅れ・書類不備(e-Taxトラブル・添付書類不足)
最終週に慌てて e-Tax にアクセスして、マイナンバーカードの読み取りが上手くいかない、電子証明書の期限が切れていた、といったトラブルで期限を過ぎるケースです。1 日でも遅れると「無申告」扱いとなり、無申告加算税の対象になります。
エンジニア職として e-Tax のトラブルシュートは得意分野のはずですが、「まさか自分がハマるとは」という油断が生まれやすい領域でもあります。
- マイナンバーカード読取アプリのバージョンを 3 月上旬に確認
- 電子証明書(署名用・利用者証明用)の有効期限を確認
- 添付書類(源泉徴収票・寄付金受領証明書・生命保険料控除証明書等)を 1 月中に揃える
上記 3 点を「1 月に済ませておくルーティン」として組み込んでおくと、期限遅れのリスクを大きく下げられます。
ミスに気づいたら?状況別3パターンの対処

ここまでは「防ぐ」観点でしたが、既にミスに気づいてしまった場合の対処を整理します。国税庁 No.2026 の定義に沿えば、対処法は 3 パターンに集約できます(国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき)。
パターンA:提出期限内に気づいた場合 → 訂正申告
3 月 15 日の期限までに間違いに気づいた場合は、正しい内容の申告書をもう一度提出するだけで対応が完了します。これを「訂正申告」と呼びます。期限内であればペナルティは一切発生しません。
e-Tax の場合、期限内に再送信すれば新しい方が正式な申告として扱われます。書面提出の場合は、税務署の受付で「訂正分」である旨を伝えて再提出します。
パターンB:期限後・税額を少なく申告していた場合 → 修正申告
期限を過ぎた後で「本来より少なく申告していた」ことに気づいた場合は「修正申告」を行います。加算税は、気づいたタイミングによって以下のように変わります。
気づいたタイミング | 過少申告加算税の税率 |
|---|---|
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告 | 加算税なし |
事前通知後、調査着手前に修正申告 | 5%(50 万円超過分は 10%) |
調査着手後・調査終了までの修正申告 | 10%(50 万円超過分は 15%) |
(国税庁 No.2026 の税率区分に基づく)
「税務署が動く前に自分から動く」ほど負担が軽くなる設計になっているため、気づいた時点で速やかに手続きを進めるのが合理的な判断です。あわせて延滞税も発生するため、修正申告の提出と同時に不足税額を納付するのが基本の流れです。
パターンC:期限後・税額を多く納めていた場合 → 更正の請求
「経費の計上漏れがあった」「控除の適用を忘れていた」など、本来より多く納めていたケースは「更正の請求」で還付を受けられます。請求できる期間は申告期限から 5 年以内です。
更正の請求は税務署が内容を精査した上で還付を判断するため、修正申告よりも時間がかかる傾向があります。過去 5 年分をまとめて見直したい場合は、対象年度を古い方から順に整理して申請するとスムーズです。
対処チャート:気づいたタイミング × 申告内容のズレ方向
自分の状況をどのパターンに当てはめればよいか、以下の対処チャートで確認できます。
気づいたタイミング\ズレの方向 | 少なく申告していた | 多く申告していた |
|---|---|---|
提出期限(3/15)まで | 訂正申告(ペナルティなし) | 訂正申告(ペナルティなし) |
期限後・調査通知前 | 修正申告(過少申告加算税なし、延滞税のみ) | 更正の請求(5 年以内) |
調査通知後・調査着手前 | 修正申告(過少申告加算税 5%〜) | 更正の請求(5 年以内) |
調査着手後 | 修正申告(過少申告加算税 10%〜) | 更正の請求(原則不可・別途相談) |
このチャートで見て取れるのは、「気づいたら早く動く」ことがそのまま負担軽減につながる、というシンプルな構造です。「怖くて先延ばし」は最も割高な選択肢になります。
税務署から連絡が来る「危険サイン」と発覚経路
「税務署はどうやって自分のミスを見つけるのか」を理解しておくと、ミスの発覚しやすさで優先順位が付けられます。フリーランスエンジニアが接する範囲での主な発覚経路は 4 つです。
発注元が提出する支払調書との突合(源泉徴収案件)
エージェントや広報記事の発注元は、報酬を支払った相手について「支払調書」を税務署に提出しています。税務署はこの支払調書と、あなたが確定申告書に記載した売上を突合します。
支払調書に記載されている金額よりも申告額が少ない場合、「なぜ差異があるのか」を問い合わせる書面(お尋ね)が届く経路がもっとも一般的です。エージェント経由の複数案件を並行受注しているケースでは、片方の案件の売上計上を漏らしていたことがこの経路で発覚することがあります。
インボイス番号の突合による売上把握(適格請求書発行事業者)
インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者番号を発行元・受領元の双方が管理する仕組みができました。取引先が仕入税額控除のためにあなたのインボイス番号を経費側で登録すると、税務署はあなた側の売上計上との突合ができます。
インボイス発行事業者に登録している場合、売上の把握精度は制度導入前と比べて格段に上がっています。「インボイスを発行した取引を売上計上し忘れる」ミスは以前より発覚しやすくなっていると考えたほうが安全です。
住民税・国民健康保険料の申告額との差異(自治体からの照会)
確定申告の内容は、税務署から自治体に共有され、住民税と国民健康保険料の算定に使われます。自治体側で「所得申告と生活実態のギャップ」が疑われた場合、税務署への通報や照会が発生することがあります。
たとえば「住民税の申告所得が極端に少ないのに、高額な住宅ローンを組んでいる」「事業所得ゼロで申告しているのに、SNS で高額案件受注を発信している」といったケースは、目に留まりやすい経路です。SNS 発信は税務調査の情報源としても定期的に活用されています。
発覚時に届く書類の種類と読み方
税務署から届く書類は、段階によって性質が異なります。届いた書類の種類を正しく理解することが、対処の第一歩です。
書類の名称 | 段階 | 内容 |
|---|---|---|
お尋ね(照会文書) | 初期段階 | 「〇〇の売上との差異がありますが、確認ください」といった問い合わせ。任意の回答だが、無視すると次段階に進みやすい |
調査通知 | 税務調査の事前通知 | 実地調査の日時・場所・調査対象期間を伝える文書。この通知後は加算税の自主軽減幅が縮小する |
更正決定通知 | 調査後 | 税務署の判断による課税処分の通知。異議申立て(再調査の請求)は通知から 3 か月以内 |
「お尋ね」の段階で真摯に回答し、必要なら自主的に修正申告を出すことが、最も負担の少ない対応です。
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実地調査に至る確率や時期・当日の流れなど、税務調査そのものの深掘りはフリーランスエンジニアの税務調査|確率・時期と日常の備え方で個別に整理しています。
ミスを防ぐ実務チェックポイント

年に 1 回の確定申告の時期だけ気合いを入れる方式は、資料の探索・按分計算・記憶の掘り起こしに膨大な時間がかかります。恒常的な仕組みに落とし込むことで、ミスの発生確率と精神的な負担の両方を下げられます。
会計ソフトのルール設定(家事按分・勘定科目・自動仕訳の初期設定)
freee やマネーフォワードクラウドといった会計ソフトには、家事按分ルール・勘定科目マスター・自動仕訳ルールを事前に設定する機能があります。年初にまとめて設定しておくと、月次の記帳が「取り込んで確認するだけ」になります。
- 家事按分: 家賃・電気代・通信費の按分割合と算式メモを登録
- 勘定科目: エージェント報酬・機材購入・書籍代など、自分の業態でよく使う科目をショートカット登録
- 自動仕訳: 主要な取引先の入金パターン、クラウドサービスのサブスクリプションを自動仕訳ルールに登録
「年 1 回思い出す」より「初期設定で恒常化する」ことで、ミス 4(期ズレ)とミス 2(家事按分の根拠不明)を大きく減らせます。
月次でのレシート/請求書整理(1 年分溜め込まない)
1 年分のレシートを 2 月に一気に整理する方式は、記憶が薄れて「何のための支出だったか」の判断が難しくなります。月に 30 分でよいので、翌月の初週に前月分をまとめる習慣を作ると、判断精度が上がります。
具体的には、「レシートは会計ソフトのモバイルアプリで撮影 → クラウド保存」「請求書は PDF で受領時にすぐ会計ソフトに取り込み」の 2 動作を月内に済ませておくと、確定申告時期の作業量が数倍軽くなります。
判断が難しい支出はメモを残す(税務調査時に説明できる状態にする)
家事按分の根拠、経費計上の可否がグレーな支出、事業関連性の説明が必要な出張旅費など、判断が難しかった支出には短いメモを残しておきます。会計ソフトの摘要欄に「〇〇プロジェクト打ち合わせのため」「〇〇の技術習得のための機材購入」といった一文を添えるだけで十分です。
このメモは税務調査時に「うっかりミス」と「仮装・隠蔽」を分ける重要な証拠になります。メモがある支出は、少なくとも「意図的な隠蔽」ではなく「判断ミス」として扱われる可能性が高まり、重加算税を回避できます。
網羅的な事前確認は既存のチェックリストで
確定申告の提出前に「経費・控除・書類の漏れ」を網羅的にチェックしたい場合は、フリーランスエンジニアの確定申告チェックリスト【2026年版】提出前に確認する経費・控除・書類の漏れ防止を提出前に一通り確認しておくと、本記事で挙げた 7 つのミスを含めて広くカバーできます。
判断が持続的に難しい場合は税理士依頼を検討
判断が持続的に難しい、時間を作業に振り向けたい、というフェーズに来たら税理士へのスポット依頼または顧問契約を検討する選択肢もあります。依頼のタイミング・費用相場はフリーランスエンジニアの税理士依頼タイミングと費用相場|判断5基準で整理しています。売上規模と迷いの頻度で費用対効果を見極めましょう。
まとめ — ミスへの姿勢を「防ぐ」から「気づいて対処する」へ
フリーランスエンジニアの確定申告は、「絶対にミスをしない」ことよりも「ミスが起きた前提で早く気づき対処する」姿勢のほうが現実的です。理由はシンプルで、加算税制度そのものが「自主的な早期是正」に強いインセンティブを与える設計になっているからです。
- 防ぐ: 発生頻度と追徴インパクトの高いミス(経費計上・家事按分・源泉徴収・期ズレ・消費税判定・20 万円ルール・期限管理)に優先順位を付け、会計ソフトの初期設定と月次整理で恒常化する
- 気づく: 支払調書・インボイス番号・住民税の突合で税務署が把握している経路を理解し、「お尋ね」の段階で自主対応する
- 対処する: 期限内なら訂正申告(負担ゼロ)、期限後は修正申告または更正の請求。調査通知前の自主修正なら過少申告加算税は不要
税務署から連絡が来ることを「怖い」と感じるのは自然な感覚ですが、加算税と延滞税の税率を金額として把握しておけば、必要以上に怯えず判断できます。「税額の何 % が加算されるか」を頭に置いた上で、気づいた時点で速やかに動く。この姿勢が定着すれば、毎年の確定申告が「ビクビクする作業」から「粛々と進める定期業務」に変わります。
次のアクション
税務判断への不安を減らしながらフリーランスとして案件を継続的に受注していきたい方は、複業・フリーランス案件のマッチングサービス Workee で案件情報を確認しておくと、収入計画の見通しを立てやすくなります。案件が安定すれば、税理士依頼など「時間を買う投資」の判断もしやすくなります。
よくある質問
- 経費にできるか迷う支出はどう判断すればいいですか?
「その支出がなければ事業収入が発生しなかった、と第三者に説明できるか」を基準に判断します。たとえば「勉強のため」を理由にしたゲーム機やサブスクリプション動画配信サービスの購入のように、業務との関連性が説明しにくい支出は経費にしないか、家事按分で一部だけ計上するのが安全な運用です。
- 申告期限内に間違いに気づいた場合、修正申告が必要ですか?
期限内であれば「訂正申告」として正しい内容の申告書をもう一度提出するだけで対応が完了し、ペナルティは一切発生しません。e-Taxなら期限内に再送信すれば新しい方が正式な申告として扱われ、書面提出の場合は税務署窓口で「訂正分」と伝えて再提出しますが、修正申告が必要になるのは期限を過ぎてから間違いに気づいた場合です。
- 税務署に指摘される前に自分で修正すれば、本当にペナルティは軽くなりますか?
はい、調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告や期限後申告をすれば、過少申告加算税は課されず、無申告加算税も原則15%から5%に軽減されます。気づいた時点で速やかに動くことが負担を最小化する対応です。
- 家事按分の割合はどのくらいに設定すれば否認されにくいですか?
決まった安全割合はなく、「使用面積の比率」「使用時間の比率」など客観的な算式で根拠を残すことが重要です。たとえば家賃なら専用作業スペースの面積を総面積で割った比率、電気代なら作業時間を24時間で割り稼働日数で按分する計算式のように、算式と数字を簡単なメモで残しておけば説明力が高まります。
- インボイス登録をしていると税務署にミスが見つかりやすくなりますか?
はい。取引先が仕入税額控除のためにあなたのインボイス番号を経費側で登録するため、税務署は売上計上との突合ができるようになり、特に「インボイスを発行した取引の売上計上を忘れる」ミスは発覚しやすくなるなど、制度導入前より把握精度が上がっています。



