営業代行の費用相場を調べ始めると、ほとんどの人が同じ場所でつまずきます。「アポ 1 件 2 万円」「月額 50 万円」「1 通 20 円」という数字が同じ「営業代行」の相場として並んでいて、どれが高くてどれが安いのかを判断できないのです。各社のサービスページを開いても「料金は要問い合わせ」が続き、稟議に載せる比較表の 1 行目すら埋まりません。
これは調べ方が悪いわけではありません。営業代行という言葉は、フォーム営業・テレアポ・インサイドセールス・商談代行といった性質の異なる仕事をまとめて指しています。そして型ごとに課金の単位が違います。1 件あたり、1 コールあたり、1 アポあたり、専任 1 名の月額。単位が違う数字は、いくら集めても比較になりません。
必要なのは、相場表をもう 1 枚増やすことではなく、型が違う見積もりを 1 つの単位に揃える手順です。揃える単位は「商談獲得単価」、つまり有効な商談 1 件を獲得するためにいくらかかるかという数字です。この単位にそろえると、表面の単価が最も安い型が実質では最も高くつく、という逆転がはっきり見えるようになります。
本記事では、まず検索して最初に知りたい料金体系別・型別の費用相場を出典付きで整理し、そのうえで課金単位を商談獲得単価・受注獲得単価に換算する 3 ステップを提示します。あわせて、見積書に現れない初期費用や社内工数の積み方、そして「外注し続けるか内製に寄せるか」の損益分岐の考え方まで扱います。読み終えた時点で、型を 1 つ絞って月額と成果見込みをセットで稟議書に書ける状態を目指します。
なお、本記事に記載した金額はすべて執筆時点で公開されている各社・各比較メディアの情報に基づく目安です。最新の料金・サービス内容は各社公式サイトでご確認ください。
- 営業代行の費用相場が比較しにくい理由|型と課金単位のばらつき
- 営業代行の費用相場一覧|料金体系別(固定報酬型・成果報酬型・複合型)
- 型別の料金構造①フォーム営業代行の費用相場と原価の決まり方
- 型別の料金構造②テレアポ代行の費用相場|コール単価・アポ単価・固定費型
- 型別の料金構造③インサイドセールス代行の費用相場|月額 30〜70 万円の内訳
- 型をまたいで営業代行の費用相場を比較する 3 ステップ|商談獲得単価への換算
- 営業代行の見積もりに出てこない費用|初期費用・リスト作成費・社内工数
- 営業代行の費用と自社運用の損益分岐点|外注し続けるか内製に寄せるか
- 自社に合う営業代行の型と予算の決め方|商材単価・ターゲット・体制から逆算
- まとめ|営業代行の費用相場は「商談獲得単価」に揃えてから比較する
営業代行の費用相場が比較しにくい理由|型と課金単位のばらつき

費用相場の話に入る前に、なぜ相場を調べても判断に使えないのかを先に整理します。ここを飛ばして金額だけを集めると、あとで比較表が成立しなくなります。
営業代行とは|カバー範囲が広く「型」によって業務内容が変わる
営業代行とは、自社の営業活動の一部または全部を外部の専門会社に委託するサービスです。ここで押さえておきたいのは、「営業活動の一部または全部」という範囲の広さです。同じ営業代行という看板の下に、少なくとも次のような型が並んでいます。
型 | 主な業務内容 | アプローチ手段 |
|---|---|---|
フォーム営業代行 | 営業リスト作成、問い合わせフォームへの文面送信、反応の集約 | Web の問い合わせフォーム |
テレアポ代行 | リストへの電話発信、受付突破、アポイント設定 | 電話 |
インサイドセールス代行 | リードへの継続接触、ヒアリング、育成、商談設定 | 電話・メール・オンライン会議 |
商談代行(フィールドセールス代行) | 商談の実施、提案、クロージングの一部 | 対面・オンライン商談 |
一気通貫型 | 戦略設計からリスト作成、アプローチ、商談、レポーティングまで | 複数チャネル |
これらは「新しい商談をつくる」という目的は共通していますが、原価の中身が別物です。フォーム営業の原価は主にリストと送信作業、テレアポの原価は人の通話時間、インサイドセールスの原価は専任人員の稼働時間と戦略設計の工数です。原価の中身が違えば、価格の決まり方も違います。相場表が読みにくいのは、この原価構造の違いが金額の背後に隠れているためです。
課金単位が 4 種類あるため単純な金額比較が成立しない
型の違いは、見積書では「課金単位の違い」として現れます。複数社から見積もりを取ると、次のような課金単位が混在しやすくなります。
- 1 件あたり単価(フォーム営業の送信課金): 1 通 20 円から 1 件 300 円程度まで幅があります
- 1 コールあたり単価(テレアポのコール課金): 1 コール 100〜300 円程度が目安です
- 1 アポあたり単価(成果報酬型): アポイント 1 件 1 万円台から、ターゲット次第では数万円台まで動きます
- 月額(人数・稼働ベース): 営業担当 1 人あたり月 50〜60 万円、業務範囲によっては月 20 万円台から月 80 万円超まで
「1 件 20 円」と「月額 50 万円」を並べても、片方は送信 1 回の単価、もう片方は人 1 人の月間稼働費用です。分母が違うため、そのまま並べた時点で比較は成立していません。にもかかわらず、多くの比較記事は「料金体系別(固定報酬型・成果報酬型・複合型)」という軸で相場を整理するため、この分母の違いが解消されないまま読者に渡されます。
料金非公開が多く、見積もり取得までコスト感をつかめない
もう 1 つの障害が、料金非公開の多さです。インサイドセールス代行の費用をまとめた記事では、料金を公開せず「要問い合わせ」としているサービスが多い実情に言及されています(インサイドセールス代行の費用相場 - atsoho)。業務範囲が案件ごとに変わるため定価を出しにくい、という供給側の事情はあります。
ただ、発注側にとっては「3 社に問い合わせて初めて金額が分かる」状態は、予算枠の設計が始められないことを意味します。しかも返ってきた 3 社の見積もりは課金単位が違うため、受け取ってからさらに換算作業が必要になります。
ここまでを踏まえると、本記事で読者に持ち帰っていただきたいのは次の順序です。まず型別の相場レンジを押さえ、次に各型の単価が何の原価で決まっているかを理解し、最後に課金単位を 1 つの指標に換算する。この順序で進めれば、見積もりを取る前の段階で「自社ならどの型でいくらが妥当か」の仮説を立てられます。
営業代行の費用相場一覧|料金体系別(固定報酬型・成果報酬型・複合型)
まず、多くの比較記事が採用している「料金体系別」の相場を押さえます。これは見積書の金額の立ち方を理解するために必要な前提知識です。
固定報酬型の費用相場と課金の考え方
固定報酬型は、成果の件数にかかわらず一定額を支払う方式です。営業代行の費用のなかでは最も予算が読みやすい方式といえます。
区分 | 相場の目安 | 出典 |
|---|---|---|
営業担当 1 人あたり | 月 50 万〜60 万円 | |
インサイドセールス・アポ獲得が中心 | 月 20 万〜40 万円 | |
商談代行・一気通貫 | 月 40 万〜80 万円 |
同じ固定報酬型でも金額が 20 万円台から 80 万円台まで開くのは、月額に含まれる業務範囲が違うためです。アポイント獲得までで止めるのか、商談の実施まで任せるのか、戦略設計とレポーティングまで含めるのかで、投入される人の数と役割が変わります。
固定報酬型で確認すべきは「月額いくらか」ではなく「月額に何が含まれるか」です。リスト作成は含まれるか、トークスクリプトや送信文面の作成は含まれるか、週次の報告会は含まれるか。ここが曖昧なまま契約すると、あとから追加費用として積み上がります。
成果報酬型の費用相場|アポ単価が変動する条件
成果報酬型は、アポイント獲得や受注といった成果が発生した分だけ費用が発生する方式です。固定費が小さいため初期の心理的ハードルは低くなります。
成果の種類 | 相場の目安 | 出典 |
|---|---|---|
アポイント獲得 | 1 件 1 万〜2 万円 | |
アポイント獲得(アイミツ調べ) | 1 件 1 万 5,000〜2 万円 | |
商談代行 | 1 件 1 万 5,000〜3 万円 | |
受注獲得 | 売上金額の 30〜50% 程度 |
重要なのは、このアポ単価が固定ではないという点です。ターゲットが経営層や大手企業になるとアポ 1 件あたり 3 万〜7 万円台まで上がるケースがあると整理されています(SalesNow)。これは、決裁者に到達するまでの接触回数と受付突破の難易度が単価に織り込まれるためです。
つまりアポ単価は「代行会社の価格設定」であるだけでなく、「自社のターゲットの難易度を反映した数字」でもあります。他社の事例で見た単価が自社に当てはまらないのは、商材とターゲットが違うからです。見積もりを依頼するときは、ターゲット企業の規模・業種・接触したい役職をできるだけ具体的に伝えたほうが、実態に近い単価が返ってきます。
成果報酬型の弱点は、月ごとの請求額が読みにくく年間予算を固めづらいことです(PRONIアイミツ)。アポが想定以上に取れた月は、成果が出ているにもかかわらず予算超過として報告しなければならない状況も起こります。上限件数のキャップを契約時に設定できるかは確認しておきたい項目です。
複合型の費用相場とリスク分担の意味
複合型は、固定費と成果報酬を組み合わせる方式です。固定費は月額 10 万〜50 万円程度、これに案件ごとの成果報酬が加わる形が一般的とされています(PRONIアイミツ)。成果報酬型のサービスでも、初期費用 10 万〜30 万円前後と月額 5 万〜10 万円前後の固定費が発生するケースが整理されています(BOXIL)。
複合型を「中間の選択肢」と捉えると判断を誤ります。複合型の本質はリスク分担の設計です。固定費は代行会社が稼働を確保するための原資であり、成果報酬は成果へのインセンティブです。固定費の比率が高ければ、成果が出なくても代行会社の稼働は維持されますが、発注側のリスクは大きくなります。成果報酬の比率が高ければ発注側のリスクは下がりますが、代行会社は確実に成果が出る「取りやすいアポ」に寄せる誘因が生まれます。
ここで注意したいのが「初期費用ゼロ」の見え方です。初期費用ゼロを掲げる会社もありますが、その分だけ月額や成果報酬の単価が高めに設定されるケースがあると指摘されています(PRONIアイミツ)。初期費用の有無だけで比較すると、契約期間全体で見た総額を見落とします。
料金体系の表だけでは比較できない理由
ここまでの 3 つの表が、多くの比較記事で提示されている相場情報です。そして、この表だけでは自社の判断に使えません。理由は 2 つあります。
1 つめは、料金体系という軸が原価構造を説明しないことです。固定報酬型という同じ区分のなかに、電話で 1 日 100 件かける仕事と、問い合わせフォームに 1 日 200 通送る仕事と、専任担当がリードを 3 か月育てる仕事が同居しています。「月 50 万円」という数字からは、何が買えるのかが読み取れません。
2 つめは、成果の中身が揃っていないことです。アポ 1 件 1 万 5,000 円という単価は、どんなアポでも 1 件としてカウントされます。電話で設定した 30 分のアポと、フォーム経由で問い合わせが返ってきた相手との商談は、商談化してから受注に至る確率が違います。単価が同じでも価値が同じとは限りません。
そこで以降では、料金体系ではなくチャネルの型で費用構造を分解します。各型の単価が何の原価で決まっているかを押さえてから、成果の中身を揃えて比較する手順に進みます。
型別の料金構造①フォーム営業代行の費用相場と原価の決まり方
フォーム営業代行は、企業の Web サイトにある問い合わせフォームから営業文面を送るアプローチを委託する型です。単価の絶対額が小さいため「最も安い営業代行」として紹介されることが多い一方、単価の幅が最も大きい型でもあります。
従量課金・月額定額・成果報酬の 3 パターンと相場
フォーム営業代行の料金は、おおむね次の 3 パターンに分かれます。
課金方式 | 相場の目安 | 出典 |
|---|---|---|
従量課金(送信 1 件あたり) | 1 件 100〜300 円 | |
従量課金(低単価帯の例) | 1 通 20 円、送信成功分のみ課金 | |
月額定額 | 月 10 万円前後で 300〜500 件送信 | |
月額定額(低価格帯の例) | 月額 4 万 5,000 円〜のプラン | |
成果報酬(アポ 1 件あたり) | 1 万〜3 万円 |
1 通 20 円と 1 件 300 円では 15 倍の開きがあります。同じ「フォーム営業代行」と名乗っていてもこれだけ差が出るのは、提供されている作業の中身が違うためです。どこまでを委託しどこから自社で持つかという線引きについては、フォーム営業の外注でも整理しています。
単価差の正体|手動送信型と自動化型の原価の違い
単価差を生んでいる要因は、主に次の 4 つです。
1. 送信作業が手動か自動化されているか
フォームの構造はサイトごとに違い、項目名もバリデーションのルールも統一されていません。これを人が 1 件ずつ読み取って入力すると、1 件あたりの作業時間が原価になります。一方、フォームの発見と項目の判定をシステム側で処理する方式では、作業時間の多くが固定費(システム開発・運用費)に移り、1 件あたりの変動費が下がります。手動送信型と自動化型の単価差は、この原価の置き場所の違いから生まれます。
2. 営業リストの作成が含まれているか
送信先リストを発注側が用意するのか、代行会社が業種・地域・従業員数などの条件から作成するのかで単価が変わります。リスト作成が含まれる場合は、その分の工数が単価または初期費用に乗ります。
3. 送信文面の作成・改善が含まれているか
文面のたたき台を発注側が渡すのか、代行会社がヒアリングから作成し反応を見て改善するのかで、含まれる工数が変わります。反応率は文面でも大きく動くため、ここが含まれているかは単価以上に成果へ影響します。
4. CAPTCHA のあるフォームをどう扱うか
問い合わせフォームには、機械的な送信を防ぐために CAPTCHA(画像認証やチェックボックス認証)が設置されていることがあります。CAPTCHA のあるフォームは完全な自動送信ができないため、人が介在して送信する工程が必要になり、1 件あたりの原価が上がります。送信可能件数を単価だけで見積もると、CAPTCHA のあるフォームの扱いが抜け落ちます。見積もり時には「CAPTCHA のあるフォームは送信対象に含まれるか、含まれる場合は単価が変わるか」を確認しておくと、実際に送れる件数の見通しが立ちます。
この 4 要素は、値下げ交渉が可能な部分とそうでない部分の切り分けにも使えます。リスト作成や文面作成を自社で持てば単価は下がりますが、その工数は社内に移るだけです。一方、手動送信が前提の作業に対して大幅な単価引き下げを求めても、原価が人の作業時間である限り応じにくくなります。
送信件数とアポ獲得率から実質単価を読む
フォーム営業の単価が小さく見えるのは、分母が「送信 1 件」だからです。実際に必要なのは商談であって送信ではありません。
フォーム営業のアポ獲得率は、送信数に対して 0.2〜0.3% 程度が目安として示されています(StockSun)。商材・ターゲット・文面の精度によって上下しますが、この水準を使うと次の計算ができます。
- 送信単価 150 円 × 月 2,000 件 = 月 30 万円
- 商談化率 0.25% → 月間の商談は 5 件
- 商談 1 件あたり 6 万円
送信単価 150 円という数字と、商談 1 件 6 万円という数字は、同じ取引を別の分母で表したものです。そして後者は、成果報酬型のアポ単価(1 万〜3 万円)と直接比較できる形になっています。
ここが本記事の中核です。単価の表面値ではなく、商談を分母にした単価で並べる。この換算手順を後ほど 3 ステップとして整理します。
型別の料金構造②テレアポ代行の費用相場|コール単価・アポ単価・固定費型

テレアポ代行は、営業リストに電話をかけてアポイントを設定する業務を委託する型です。古くからある手法だけに料金体系は整理されており、相場も比較的つかみやすい領域です。
コール課金型・成果報酬型・固定費型の相場
テレアポ代行の料金は、課金方式で次のように整理されています。
課金方式 | 相場の目安 | 出典 |
|---|---|---|
コール課金型(1 コールあたり) | 100〜300 円 | |
成果報酬型(アポ 1 件あたり) | 1 万〜1 万 5,000 円(案件により 1 万〜3 万円) | |
固定費型(月額) | 10 万〜50 万円 |
コール課金型は「架電した回数」に対して課金されます。つまり、つながらなかったコールや受付で止まったコールも費用の対象です。この方式ではコール数が読めるため予算は立てやすい反面、成果(アポ)の件数は保証されません。
成果報酬型はアポ 1 件に対して課金されるため、成果が出なければ費用も発生しません。ただし「アポ」の定義を契約時に詰めておく必要があります。担当者につながって日程が確定した状態をアポとするのか、課題のヒアリングまで済んだ状態をアポとするのかで、同じ単価でも中身が変わります。
固定費型は、コールセンターの席数や稼働時間に対して月額を支払う方式です。継続的に一定量の架電を回したい場合や、架電以外の業務(リスト整備・レポーティング)も含めて任せたい場合に選ばれます。
原価は「人の通話時間」|件数を増やしても単価が下がりにくい理由
テレアポ代行の料金を理解する鍵は、原価が人の通話時間であるという点です。
1 人のオペレーターが 1 日にかけられる本数には物理的な上限があります。架電数を 2 倍にするには、オペレーターをおおむね 2 倍にする必要があります。つまりコストが件数に対してほぼ線形に増える構造で、スケールメリットが働きにくいのです。発注量を増やしても単価が大きく下がらないのは、値引きを渋っているからではなく、原価構造がそうなっているからです。
この点はフォーム営業と対照的です。フォーム営業の自動化型では、送信処理の多くがシステム側に寄るため、件数を増やしたときの変動費の伸びが緩やかになります。逆に言えば、少ない件数では固定費の負担が重くなります。
もう 1 つ、テレアポの単価には接触効率が織り込まれています。受付で止まる割合、担当者が不在である割合、折り返しに至る割合は、業種とターゲット規模で大きく変わります。大手企業の決裁者層を狙う場合、1 アポを獲得するまでの架電数が増えるため、アポ単価も上がります。先に触れた「ターゲットが経営層・大手だとアポ単価が 3 万〜7 万円台まで上がる」という現象は、この接触効率の差が価格に転嫁された結果です。
フォーム営業と組み合わせる場合のコスト設計
テレアポとフォーム営業は、同じ「新規接触」の手段ですが、コスト構造と接触できる相手が異なります。
テレアポは、架電すれば相手が電話を取るかどうかという形で反応が即日わかります。リスト母数が限られていて、1 社ごとに手間をかける価値がある場合に向きます。一方、フォーム営業は 1 件あたりの単価が低いため、母数の大きいリストに広く当てる使い方に向きます。ただし反応は送信してから数日かけて返ってくるため、即時性はありません。
両方を使う場合、コスト設計で確認すべきは二重接触の管理です。フォーム営業で送った企業に数日後にテレアポがかかると、受け手には同じ会社から立て続けに接触されたように見えます。チャネルごとに別の代行会社へ委託している場合、接触履歴が分断されるため、この重複は起きやすくなります。委託先をまたいで送信済み・架電済みの企業リストを共有する運用か、チャネルごとに対象リストを明確に分ける運用かを、契約前に決めておく必要があります。
コスト面でも、二重接触の管理は無視できません。同じ企業にフォームと電話の両方で課金が発生していれば、その分は商談を生まない支出です。送信済みリストの突合を発注側が担うのであれば、その作業時間も費用として積む必要があります。
型別の料金構造③インサイドセールス代行の費用相場|月額 30〜70 万円の内訳
インサイドセールス代行は、獲得したリードに継続的に接触し、ヒアリング・情報提供を通じて商談化まで持っていく業務を委託する型です。3 つの型のなかでは月額が最も大きくなります。
月額費用の中心帯と価格差の内訳
インサイドセールス代行の費用は、月額 30 万〜70 万円が中心帯とされています。小規模なテレアポ寄りのプランでは月 15 万円前後から、戦略設計やレポーティングまで含めると月 100 万円を超えるケースも珍しくないと整理されています(atsoho)。
この幅は、次の 2 つの掛け算で説明できます。
稼働人数 × 業務範囲
業務範囲 | 含まれる業務 | 月額の目安 |
|---|---|---|
リード対応のみ | 問い合わせ・資料請求への一次対応、簡易ヒアリング | 月 15 万〜30 万円程度(目安の一例) |
商談設定まで | 継続接触、課題ヒアリング、商談日程の設定、SFA 入力 | 月 20 万〜40 万円程度(SalesNow) |
戦略設計・レポーティング込み | ターゲット設計、シナリオ設計、週次レポートと改善提案 | 月 40 万〜80 万円程度(SalesNow) |
月額 30 万円と月額 70 万円のサービスを「高い・安い」で比べると判断を誤ります。前者は手を動かす工数の提供、後者は設計と改善のサイクルまで含んだ提供である可能性が高く、買っているものが違います。
業務範囲が広いほど社内に残る工数が減る
インサイドセールス代行の費用を評価する際は、社内に残る工数とセットで見る必要があります。
アポ獲得だけを委託した場合、獲得されたアポの質を判定し、商談で使う資料を準備し、商談後のフィードバックを代行会社に返す作業は社内に残ります。この往復に週 3〜4 時間かかるとすれば、月に 15 時間前後の社内工数です。マネージャークラスの時間単価を 5,000 円と置けば、月 7 万 5,000 円相当の社内コストが見積書の外側で発生していることになります。
一方、ターゲット設計からレポーティングまで含むプランでは、この往復工数の一部が代行側に移ります。月額の差額が社内工数の削減分で埋まるなら、総コストでは逆転することもあります。
つまり、月額だけを横に並べて安い順に選ぶと、見積書に書かれていない社内工数を自社が引き受ける選択をしていることになります。この点は、のちほど隠れコストの章で一覧化します。
短期のアポ獲得と中長期のリード育成でコスト構造が変わる
インサイドセールス代行には、BDR(新規開拓型・こちらから接触する)と SDR(反響対応型・問い合わせや資料請求に対応する)という役割の違いがあります。この違いは費用構造に直結します。
BDR 型はターゲットリストを作り、まだ接点のない企業に接触していきます。1 件の商談をつくるまでの工程が長いため、月額は高くなりやすく、成果が出るまでのリードタイムも長くなります。SDR 型は既に関心を示した相手への対応であるため、1 件の商談化に至る確率は高く、工程も短くなります。
ここから導かれる判断は単純です。自社に既に一定量のリード(問い合わせ・資料請求・展示会での名刺)が溜まっているなら、SDR 型の対応を委託するほうが商談獲得単価は低く出ます。リードが枯れている状態で BDR 型を委託すると、月額の割に初月・2 か月目の商談数は伸びません。「3 か月で成果が出なかった」という失敗は、この前提の確認漏れから生まれやすい事象です。
型をまたいで営業代行の費用相場を比較する 3 ステップ|商談獲得単価への換算

ここまでで、型別の相場と原価構造を押さえました。ここからが本題です。課金単位が異なる見積もりを 1 つの単位に揃えて比較します。
ステップ1|課金単位を月額総額に換算する
最初にやることは、すべての見積もりを「月額総額」という同じ形に直すことです。
やり方は 3 つの操作だけです。
操作 1: 従量課金は想定件数を掛けて月額にする
送信単価 150 円で月 2,000 件なら 30 万円です。ここで重要なのは、代行会社の提示する「最大件数」ではなく、自社が用意できるリスト量と想定する送信ペースで件数を置くことです。リストが 2,000 社しかないのに月 5,000 件のプランで換算すると、2 か月目以降の数字が崩れます。
操作 2: 成果報酬は想定成果件数を掛けて月額にする
アポ単価 1 万 5,000 円で月 20 件なら 30 万円です。想定件数は代行会社に「同業・同規模の商材での実績レンジ」を聞いて、その下限側で置きます。上限側で置くと予算が足りなくなります。
操作 3: 一時費用は契約期間で按分する
初期費用 20 万円を 6 か月契約で按分すれば、月 3 万 3,000 円です。この按分を省くと、初期費用ゼロのプランが実際より有利に見えます。初期費用ゼロの会社は月額や成果単価が高めに設定されるケースがあるため(PRONIアイミツ)、按分してから比較しないと差が見えません。
この 3 操作を終えると、すべての見積もりが「月額いくら」という同じ形になります。ただし、これだけではまだ比較できません。月額が同じでも得られる商談数が違うからです。
ステップ2|月額総額を商談獲得単価に落とす
次に、月額総額を月間の有効商談数で割って、商談 1 件あたりの単価を出します。
商談獲得単価 = 月額総額 ÷ 月間の有効商談数
ここでの要点は「有効商談数」の定義です。アポ件数ではなく、自社の営業が「これは追う価値がある」と判断できた商談の件数を使います。
成果報酬型では、アポ単価がそのまま商談獲得単価に近い数字になります。ただし、設定されたアポのうち一定割合は、担当者が違う・予算も時期もない・そもそも話が通じていないといった理由で有効商談に至りません。この有効率を掛けて再計算する必要があります。アポ 20 件のうち有効が 12 件なら、アポ単価 1 万 5,000 円に対して商談獲得単価は 2 万 5,000 円です。
この有効率は、契約前には分かりません。そこで実務上は、代行会社に「アポ設定後に発注側が有効と判断しなかった件数の割合」を過去実績として聞くか、初月は有効率を 50〜60% と保守的に置いて見積もります。そして契約後は、実績の有効率で毎月この計算を更新します。
この更新を続けること自体が、代行会社との交渉材料になります。「アポ単価は守られているが有効率が 30% なので商談獲得単価が想定の 2 倍になっている」という形で課題を共有できれば、ターゲットやトークの修正という具体的な改善につながります。
ステップ3|受注率で割り、許容できる上限単価を決める
商談獲得単価が出たら、最後に受注率で割って受注獲得単価(CAC)を出します。
受注獲得単価 = 商談獲得単価 ÷ 商談からの受注率
商談獲得単価 5 万円で受注率 20% なら、受注獲得単価は 25 万円です。この数字を、自社の商材単価と利益構造に突き合わせます。
判断の置き方は次のとおりです。年間契約単価 120 万円の商材で、継続 2 年を想定すると LTV は 240 万円。粗利率 60% なら粗利 144 万円。顧客獲得にかけられる上限を粗利の 3 分の 1 と置くなら、許容できる受注獲得単価は約 48 万円です。この上限を超える型は、相場として妥当でも自社では成立しません。
重要なのは、許容上限は相場から決まらないということです。商材単価・粗利率・継続期間という自社の数字から決まります。だからこそ、相場表を眺めているだけでは判断に到達できないのです。
そして、ここで出した受注獲得単価と許容できる上限単価を比べる作業そのものが、営業代行の費用対効果の判定になります。費用対効果は「月額が安いかどうか」ではなく、受注 1 件を獲得するためにかかる金額が自社の許容上限の内側に収まっているかどうかで決まります。
フォーム営業に絞って、送信件数・反応率・商談化率・受注率を変数として試算を組む手順はフォーム営業の ROI シミュレーションで扱っています。本記事の 3 ステップを自社の数字で回す段階に入ったら、あわせて参照してください。
3 型を同じ単位で並べた比較例
3 ステップを実際に通すと何が起きるかを、仮の数値例で示します。以下はすべて説明用に置いた仮定値で、実際の見積もりではありません。前提は、BtoB 商材・年間契約単価 120 万円・月予算 30 万円台・リスト母数は十分にある状態とします。
項目 | フォーム営業代行 | テレアポ代行 | インサイドセールス代行 |
|---|---|---|---|
課金方式 | 従量課金 1 件 150 円 | 成果報酬 アポ 1 件 1 万 5,000 円 | 月額固定 40 万円 |
想定稼働 | 月 2,000 件送信 | 月 20 アポ | 専任 1 名相当 |
変動費・月額 | 30 万円 | 30 万円 | 40 万円 |
一時費用の月額按分 | リスト作成費 10 万円 ÷ 6 か月=約 1 万 6,700 円 | 初期費用 20 万円 ÷ 6 か月=約 3 万 3,300 円 | 初期設計費 30 万円 ÷ 12 か月=2 万 5,000 円 |
月額総額 | 約 31 万 6,700 円 | 約 33 万 3,300 円 | 42 万 5,000 円 |
月間の有効商談数 | 5 件(商談化率 0.25%) | 12 件(アポ 20 件 × 有効率 60%) | 8 件 |
商談獲得単価 | 約 6 万 3,300 円 | 約 2 万 7,800 円 | 約 5 万 3,100 円 |
想定受注率 | 20% | 10% | 25% |
月間受注数 | 1.0 件 | 1.2 件 | 2.0 件 |
受注獲得単価 | 約 31 万 6,700 円 | 約 27 万 7,800 円 | 約 21 万 2,500 円 |
この表で確認したいのは、表面単価・商談獲得単価・受注獲得単価という 3 つの指標で順位が変わることです。
- 表面単価が安い順: フォーム営業(1 件 150 円)→ テレアポ(1 件 1 万 5,000 円)→ インサイドセールス(月 40 万円)
- 商談獲得単価が安い順: テレアポ → インサイドセールス → フォーム営業
- 受注獲得単価が安い順: インサイドセールス → テレアポ → フォーム営業
表面単価で最も安いフォーム営業は、商談獲得単価では最も高くなりました。月額で最も高いインサイドセールスは、受注獲得単価では最も安くなりました。これは「フォーム営業が割高でインサイドセールスが有利」という結論ではありません。この順位は、商談化率・有効率・受注率という 3 つの前提で完全に変わります。
たとえばフォーム営業の商談化率が 0.5% まで上がれば、商談数は 10 件になり商談獲得単価は約 3 万 1,700 円、受注獲得単価は約 15 万 8,400 円で最も安くなります。逆にインサイドセールスの受注率が 15% なら受注獲得単価は約 35 万円に跳ね上がります。
ここから導かれる実務上の結論は 2 つです。1 つは、見積もりを比較する際には表面単価ではなくこの 3 つの前提値をセットで確認すべきだということ。もう 1 つは、契約後は毎月この表を更新し、前提値の実績で順位が変わっていないかを見るべきだということです。この表は一度作って終わるものではなく、月次で回す管理表になります。
営業代行の見積もりに出てこない費用|初期費用・リスト作成費・社内工数
換算して商談獲得単価を出しても、見積書に含まれていない費用が後から乗ると数字は崩れます。ここでは見積書の外側にあるコストを一覧化します。
契約時に発生する一時費用と最低契約期間
まず、契約時点で発生しうる一時費用です。
項目 | 内容 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
初期費用 | ヒアリング・戦略設計・オペレーター研修など(成果報酬型でも 10 万〜30 万円前後のケースあり / BOXIL) | 金額と、含まれる作業の範囲 |
営業リスト作成費 | 業種・地域・規模の条件でリストを作成する費用 | 月額に含まれるか別途か。リストの所有権はどちらにあるか |
トークスクリプト・送信文面作成費 | 架電トークやフォーム送信文面の作成 | 初回作成のみか、反応を見た改善も含むか |
システム利用料・レポート発行料 | 管理画面やレポートの提供にかかる費用 | 月額に含まれるか |
最低契約期間 | 短期で解約できない期間の縛り | 期間と、期間内解約時の違約条項 |
最低契約期間は金額として見積書に出てこないため見落としやすい項目ですが、実質的には総額を決める条件です。月額 30 万円で最低 6 か月なら、契約時に 180 万円のコミットをしていることになります。試験的に始めたいなら、短い期間で区切れるか、あるいは期間内でも対象リストや送信件数を縮小できるかを確認しておきます。
「固定費ゼロ」「初期費用ゼロ」の表記も、額面どおりには受け取れません。その分が月額や成果単価に乗るケースがあると指摘されています(PRONIアイミツ)。初期費用の有無は、按分して月額総額に統合してから比較します。
社内に残る工数を月額に積む
次に、見積書には絶対に現れないコスト、すなわち社内工数です。営業代行を使っても、次の作業は社内に残ります。
- 獲得アポ・商談の対応: 商談の実施そのもの。これは本来の目的なのでコストではありませんが、商談数が増えた分の対応キャパシティは確保が必要です
- アポの有効性判定とフィードバック: 設定されたアポが有効だったかを判定し、理由を添えて代行会社に返す作業
- 送信文面・トークスクリプトの監修: 自社名で出る文面を確認し、表現を修正する作業
- レポートの確認と定例会への参加: 週次・月次の報告を読み、改善の方向を決める作業
- リストの精査: 既存顧客・商談中企業・取引先がリストに混ざっていないかの確認
これらを月あたりの時間に置き、社内の時間単価を掛けて月額総額に加算します。たとえば合計で月 15 時間、時間単価 5,000 円なら月 7 万 5,000 円です。先の比較例でフォーム営業の月額総額が約 31 万 6,700 円だったとすると、社内工数を含めた実質は約 39 万円台になります。
この加算は、型の選択にも影響します。業務範囲が広いプランは月額が高い代わりに社内工数が小さく、狭いプランは月額が安い代わりに社内工数が大きくなります。社内に動ける人がいない状況で安いプランを選ぶと、結局レポートが読まれないまま成果が出ず、投じた費用が無駄になります。
送信先・文面が見えないことで生じるコスト
費用として数値化しにくいものの、判断には直結するコストがもう 1 つあります。送信先と送信内容の不可視化です。
営業代行に委託すると、実際に誰にどんな文面が送られたかは代行会社側のオペレーションの中に入ります。レポートで報告される数字が「送信 2,000 件、反応 15 件」という粒度だと、次のことが分かりません。
- どの業種・規模の企業に送られたのか
- 既存顧客や商談中の企業が送信対象に混ざっていなかったか
- 取引先がすでに接触している企業に重複して送っていないか
- どの文面がどの反応につながったのか
- 送信に失敗した件数と、その理由
このうち既存顧客・商談中企業・取引先への誤送信は、実際に起きると金額では測りにくい損失になります。自社名で届いた営業文面が、既に商談が進んでいる相手や、別チャネルで取引先が接触している企業に送られた場合、修復には担当者の時間と信頼が必要になります。
したがって見積もり比較の段階で、料金とあわせて次を確認しておく価値があります。送信対象リストを事前に開示・修正できるか。除外したい企業リストを渡して反映できるか。送信履歴と失敗理由をどの粒度で確認できるか。文面を事前に承認するプロセスがあるか。これらが確保できていれば、不可視化によるコストは下げられます。
営業代行の費用と自社運用の損益分岐点|外注し続けるか内製に寄せるか

ここまでは外注を前提に費用を比較しました。ただし、判断の選択肢には「外注しない」も含まれます。とくにフォーム営業は従量課金が主流であるため、件数が増えると外注費が線形に伸び、どこかで自社運用のほうが総額で有利になる点が現れます。
件数が増えると従量課金が重くなる構造
従量課金の性質を数字で見ます。送信単価 150 円の場合、
- 月 1,000 件 → 15 万円
- 月 3,000 件 → 45 万円
- 月 5,000 件 → 75 万円
- 月 10,000 件 → 150 万円
件数に比例してまっすぐ増えます。送信単価は発注量に応じて下がることもありますが、手動送信が前提の作業に対しては原価が人の作業時間であるため、下げ幅には限界があります。
一方、自社運用(ツール導入+社内オペレーション)のコスト構造は形が違います。ツール利用料と社内の運用工数のうち、文面作成やリスト設計といった工程は件数に比例しません。送信先が 1,000 件でも 5,000 件でも、文面は同じものを使えます。つまり固定費の比率が高く、件数が増えるほど 1 件あたりの平均コストが下がります。
外注は変動費型、内製は固定費型。グラフにすれば、少ない件数では外注が有利で、ある件数を超えると内製が有利になる交差点が存在します。この交差点がどこにあるかは、自社の送信件数と社内の時間単価で決まります。内製化に踏み込むかどうかの判断基準を細かく見たい場合は、フォーム営業の内製化判断で扱っています。
自社運用側のコスト内訳と同一単位での比較
内製側のコストを、外注と同じ「月額総額 → 商談獲得単価」の手順に乗せるには、次の項目を積みます。
項目 | 内容 | 費用の性質 |
|---|---|---|
ツール利用料 | フォーム営業ツール・営業リストサービスの利用料。送信数に応じた従量制を採るサービスもあります | 固定費または従量費(契約形態次第) |
リスト整備工数 | 企業リストの抽出条件の設計、除外対象の確認 | 固定費(件数に対して緩やかに増加) |
文面作成・改善工数 | 送信文面の作成、反応を見た改善 | 固定費 |
送信前後の確認工数 | 送信対象の最終確認、送信エラーの確認、反応への一次対応 | 件数に応じて増加 |
商談対応工数 | 返ってきた反応への対応・商談実施 | 外注でも同じく発生 |
この積み上げを月額総額にして、内製で見込める商談化率で割れば、外注の見積もりと同じ商談獲得単価の形で並べられます。内製の商談化率は、外注と同条件(同じリスト・同じ文面水準)なら大きくは変わらないと置いて計算を始め、運用後に実績で置き換えます。
比較の際に注意したい点が 1 つあります。内製の社内工数を「既存社員がやるのでコスト 0」として計算してはいけません。その社員が別の業務に使っていた時間を移しているため、時間単価を掛けて積む必要があります。ここを 0 にすると内製が常に有利という誤った結論が出ます。
自社名義で送る場合に必要になる運用設計
内製に寄せる場合、代行会社が担っていた判断を自社で持つことになります。費用以外に、次の運用設計が必要です。
接触済み企業の除外運用
既存顧客・商談中の企業に加え、取引先や別チャネルがすでに接触している企業を送信対象から外す運用が必要です。除外リストを手作業で突合する運用は、リストが数千件規模になると漏れが出ます。送信前の自動突合をどう実現するかは、ツール選定時の確認項目になります。
CAPTCHA のあるフォームへの対応方針
CAPTCHA は、受信側が「機械的な送信を受けたくない」と示している意思表示です。ここをどう扱うかは、自社名で行う営業活動の姿勢そのものになります。認証を迂回して送るのか、CAPTCHA のあるフォームは対象から外すのか、人が介在して送信するのか。方針を先に決めておく必要があります。
送信履歴と失敗理由の可視化
どの企業にいつどの文面を送り、送信が成功したか失敗したか、失敗の理由は何かを記録に残す仕組みが必要です。これがないと、二重送信の防止も改善のサイクルも回りません。
参考として、秋霜堂株式会社が提供する Form Pilot は、この 3 点を設計の中心に据えたフォーム営業自動化サービスです。他社(取引先・別チャネル)が接触済みと判明した企業のドメイン一覧を外部 API から取得して送信リストと突合し、該当企業への送信を回避する仕組みを備えています。判断できない場合は送らない側に倒す設計(fail-closed)を基本としています。
また、CAPTCHA の突破は行いません。CAPTCHA 等で完全な自動送信ができないフォームでは、Chrome 拡張機能が入力までを自動化し、送信ボタンは人が押すセミオート方式を採ります。CAPTCHA は受信側の意思表示であり、それを不正な手段で迂回する行為は送信元である利用企業の名前で行われることになる、という判断に基づく設計です。送信履歴と失敗診断は画面上で確認できるため、送った結果と失敗理由をもとにリストや設定を見直せます。料金は送信数に応じた従量制を予定しており、詳細は確定次第の案内となります。
内製を検討する場合、ツール費用の額面だけでなく、この種の運用設計をツール側が担えるかを確認しておくと、導入後に社内工数として跳ね返る部分を抑えられます。
自社に合う営業代行の型と予算の決め方|商材単価・ターゲット・体制から逆算
最後に、ここまでの材料を使って型を 1 つ選ぶ手順を整理します。
許容できる受注獲得単価の上限から逆算する
出発点は相場ではなく、自社が払える上限です。顧客獲得単価(CAC)の許容上限は次の順で出します。
- 年間契約単価(または 1 件の受注単価)を置く
- 想定継続期間を掛けて LTV を出す(単発取引なら受注単価がそのまま)
- 粗利率を掛けて粗利ベースの LTV にする
- 粗利の何割を獲得コストに充てるかを決める(粗利の 3 分の 1 を上限に置くのは目安の一例です。自社の投資余力と回収期間の方針に応じて調整してください)
年間 120 万円・継続 2 年・粗利率 60% なら、粗利 LTV は 144 万円、許容 CAC は約 48 万円。この数字が決まれば、先に示した 3 ステップで出した受注獲得単価と直接突き合わせられます。許容上限を超える型は、相場として妥当でも自社では採用できません。
月予算の上限も、ここから逆算できます。許容 CAC 48 万円で月 2 件の受注を狙うなら、月予算の上限は 96 万円です。逆に月予算 30 万円が固定なら、月に狙える受注は 0.6 件程度という見込みになります。この数字が経営側の期待とずれている場合、ずれは予算の段階で解消しておくべきものです。
ターゲットと社内体制で型を絞る
営業代行の選び方は、相場の安い順に候補を並べる進め方ではうまくいきません。許容上限が決まったら、ターゲットと社内体制という 2 つの条件で型を先に絞り、そのうえで候補を比較する順で進めます。選定時に確認すべき項目をより細かく押さえたい場合は、営業代行の選び方チェックリストもあわせて参照してください。
条件1: ターゲットの属性とリスト母数
- リスト母数が数千社以上あり、商材の価値が文面で伝わる → フォーム営業が候補
- リスト母数が数百社に限られ、1 社ごとに手間をかける価値がある → テレアポが候補
- すでに一定量のリード(問い合わせ・資料請求・名刺)が溜まっている → インサイドセールス(SDR 型)が候補
- 決裁者層・大手企業を狙う → 単価が上がる前提で予算を組む。許容 CAC を超えるなら型の変更ではなくターゲットの見直しを検討
条件2: 社内体制
- 増えた商談に対応できる人数が確保できているか。できていないなら、商談数を増やす型より商談の質を上げる型を選びます
- 自社名で出る文面・トークを監修できる人がいるか。いないなら、文面作成まで含むプランを選ぶか、内容が見える運用を条件にします
- レポートを読んで改善の方向を決められる人がいるか。いないなら、戦略設計・改善提案まで含むプランを選びます
この 2 条件で型が絞れない場合は、許容 CAC の計算に戻ります。許容上限が小さいのに業務範囲の広いプランを選ぶと、成果が出ても利益が残りません。
型別の向くケース・向かないケース
絞り込みの結論を表にまとめます。
型 | 向くケース | 向かないケース |
|---|---|---|
フォーム営業代行 | リスト母数が大きい/商材の価値が文面で伝わる/広く当てて反応を集めたい/月予算が小さい | 母数が数百社以下/商材説明に対話が必要/即時の反応が必要/送信先の精度管理に手が回らない |
テレアポ代行 | リストが限定的で 1 社ごとに手間をかけたい/即日で反応を知りたい/電話で接触しやすい業種 | 件数を大きく増やしたい(コストが線形に増える)/決裁者が電話に出にくい業種・規模 |
インサイドセールス代行 | 検討期間が長い商材/既存リードが溜まっている/育成プロセスを設計から任せたい | 短期でアポ数を増やしたい/月予算が 20 万円を下回る/リードがゼロで BDR から始める余裕がない |
この表で型が 2 つに絞れたら、両方から見積もりを取り、先の 3 ステップで商談獲得単価・受注獲得単価に換算して比較します。その際、商談化率・有効率・受注率の前提値を代行会社に明示的に確認し、見積もりの前提として記録しておきます。この 3 つの前提値が記録されていれば、契約後に実績とのずれを検証できます。
まとめ|営業代行の費用相場は「商談獲得単価」に揃えてから比較する
営業代行の費用相場を、型別に整理し直したものを再掲します。
型 | 主な課金方式 | 相場の目安 | 原価の中心 |
|---|---|---|---|
フォーム営業代行 | 従量課金 / 月額定額 / 成果報酬 | 1 件 20〜300 円 / 月 10 万円前後で 300〜500 件 / アポ 1 件 1 万〜3 万円 | リスト+送信作業(自動化の度合いで単価が変わる) |
テレアポ代行 | コール課金 / 成果報酬 / 固定費 | 1 コール 100〜300 円 / アポ 1 件 1 万〜3 万円 / 月 10 万〜50 万円 | 人の通話時間(件数に対して線形) |
インサイドセールス代行 | 月額固定 | 月 30 万〜70 万円が中心(小規模は月 15 万円前後、設計込みは月 100 万円超も) | 専任人員の稼働+戦略設計 |
料金体系別の目安 | 固定報酬型 / 成果報酬型 / 複合型 | 担当 1 人あたり月 50 万〜60 万円 / アポ 1 件 1 万 5,000〜2 万円 / 固定費月 10 万〜50 万円+成果報酬 | — |
そして本記事の結論は、この表を眺めるだけでは判断に至らない、ということです。やるべきことは次の 3 ステップです。
- 月額総額に揃える: 従量課金・成果報酬は想定件数を掛けて月額換算し、初期費用は契約期間で按分する
- 商談獲得単価に落とす: 月額総額 ÷ 月間の有効商談数。成果報酬型はアポの有効率を掛けて再計算する
- 受注獲得単価と許容上限を突き合わせる: 商談獲得単価 ÷ 受注率で CAC を出し、商材単価・LTV・粗利率から決めた許容上限と比較する
そのうえで、見積書に現れないコストを月額総額に積みます。初期費用・リスト作成費・文面作成費・最低契約期間の縛り、そしてアポの有効性判定・文面監修・レポート確認といった社内工数です。この加算を省くと、安く見えたプランが実質では高くつきます。
次のアクションとして、見積もり依頼のときに揃えて聞く項目をリスト化しておくことをおすすめします。具体的には、(1) 課金単位と単価、(2) 初期費用の額と含まれる作業、(3) 最低契約期間と期間内解約の条件、(4) 月額に含まれる業務範囲(リスト作成・文面作成・レポート)、(5) 同業・同規模での商談化率と有効率の実績レンジ、(6) 送信先リストの開示と除外リストの反映可否、(7) 送信履歴・失敗理由の確認粒度。この 7 項目を同じ形式で各社に投げれば、返ってきた見積もりをそのまま 3 ステップに流し込めます。
相場を知ることがゴールではありません。自社の許容上限を決めて型を選ぶところまで進めれば、稟議書には「月額いくらで、商談が何件、受注が何件見込める」という形で書けます。
なお、本記事に記載した金額はすべて執筆時点の公開情報に基づく目安です。最新の料金・サービス内容は各社公式サイトでご確認ください。
関連情報
フォーム営業を外注せず自社で運用する選択肢を検討されている場合は、Form Pilot のサービスページをご覧ください。接触済み企業の送信前除外、CAPTCHA を突破しないセミオート送信、送信履歴と失敗診断の可視化といった運用設計をご確認いただけます。
よくある質問
- 営業代行の見積もりで課金単位がバラバラのとき、何から揃えればよいですか?
まず従量課金や成果報酬は想定件数を掛けて月額に換算し、初期費用は契約期間で按分して「月額総額」に揃えます。そのうえで月間の有効商談数で割り、商談獲得単価という同じ単位で各社の見積もりを並べて比較してください。
- 商談化率や有効率が契約前に分からない場合、見積もりの前提はどう置けばよいですか?
代行会社に同業・同規模での実績レンジを確認し、その下限側で置くのが安全です。実績を聞けない場合は有効率を50〜60%程度と保守的に仮置きし、契約後は実績値で毎月計算し直して前提を更新していくと、見積もりとのずれを検証できます。
- 月予算が30万円前後の場合、どの型から検討すべきですか?
型を選ぶ前に、商材単価と粗利から逆算した自社の許容受注獲得単価を決めてください。そのうえでリスト母数が大きければフォーム営業、限られるならテレアポを候補にし、同じ単位に換算して見積もりを比べると判断しやすくなります。
- 営業代行の見積もり比較で、料金以外に必ず確認すべき項目は何ですか?
最低契約期間と期間内解約の条件、月額に含まれる業務範囲、送信先リストの開示と除外リストの反映可否の3点です。金額に表れない契約の縛りや既存顧客への誤送信リスクが、総コストと自社の信頼を大きく左右します。
- 外注を続けるか内製に切り替えるか迷ったとき、何を基準に判断すればよいですか?
外注の月額総額と、ツール費用に社内工数(時間単価を掛けたもの)を積んだ内製の月額総額を、同じ商談獲得単価で比べます。既存社員の工数を0円で計算すると内製が常に有利に見えてしまうため十分に注意してください。



