「発注書に支払期日が書かれていない」。取引先のフリーランスエンジニアからそう指摘されて、自社の発注実務を慌てて見直し始めた、という開発責任者の方は少なくありません。フリーランス新法という名前は知っていても、自社の外注がその対象になるのか、何をどこまで直せばよいのかは、意外なほど判断がつかないものです。2026年1月に下請法が取適法へ改正施行されたことで、委託取引のルール全体が見直しの局面に入ったことも、焦りに拍車をかけています。
判断がつかない理由は、法律の解説記事の多くが条文の並び順で書かれているからです。「取引条件を明示する」「受領日から60日以内に支払う」という義務の一覧は理解できても、月額稼働の準委任契約で「受領日」がいつなのか、受入テストで差し戻す行為が禁止行為に当たるのかといった、システム開発ならではの場面には踏み込んでいません。一覧を読んでも、自社の発注書ひな形のどこを直せばよいのかが分からないままになります。
必要なのは、法律の全体像をもう一度なぞることではなく、自社の発注業務フローと条文を突き合わせる作業です。募集・契約締結・発注・開発中の仕様変更・検収・支払・終了という流れのどこに、どの義務が対応するのか。その対応表さえ手元にあれば、優先順位をつけて着手できます。
本記事では、フリーランス新法がシステム開発の外注にどう適用されるのかを、対象になるかの判定から順に整理します。そのうえで発注企業が対応すべき5項目を、開発現場で実際に起きる場面に当てはめて解説し、最後に発注フローのどこから直すべきかを優先度付きで示します。なお、個別の取引が違反に当たるかどうかの最終的な判断は行政・司法によるため、自社の契約内容を具体的に評価する段階では弁護士等の専門家への確認をおすすめします。
フリーランス新法対応 業務委託発注の法律・契約リスク点検ガイド

この資料でわかること
業務委託でエンジニアに発注する企業担当者・法務担当者が、2024年11月に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」への対応を含め、業務委託契約に関する法律・契約実務を体系的に把握し、自社のコンプライアンス体制を整備できる状態にする。
こんな方におすすめです
- フリーランス新法への対応状況を社内で点検したい企業担当者
- 業務委託契約書・NDAの記載事項を確認したい法務担当者
- 偽装請負リスクを把握し指揮命令の境界線を整理したい開発マネージャー
入力いただいたメールアドレスにPDFをお送りします。
フリーランス新法とは|システム開発の発注で変わったこと
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、フリーランス・事業者間取引適正化等法とも呼ばれます。2024年11月1日に施行されました。従業員を雇わずに働く個人へ業務を委託する取引全般を対象としており、システム開発をフリーランスエンジニアへ外注する取引も当然に含まれます。
この法律が発注企業にとって重要なのは、「受注者を保護するための義務」を発注側に直接課している点です。これまで開発現場の慣行として当たり前に行われてきた口頭発注や、稼働開始後に発注書を出す運用は、そのままでは義務違反と評価されるおそれがあります。
取引の適正化と就業環境の整備という2つの柱
フリーランス新法の義務は、大きく2つの柱に分かれます。
1つ目が「取引の適正化」です。取引条件を書面等で明示する義務、報酬の支払期日を受領日から60日以内に定めて支払う義務、そして1か月以上の業務委託における7つの禁止行為が含まれます。契約書・発注書・支払サイトといった、調達や経理が扱う領域が対象です。
2つ目が「就業環境の整備」です。募集情報を正確に表示する義務、育児・介護等への配慮、ハラスメント対策の体制整備、そして継続的な委託を打ち切る際の30日前予告が含まれます。こちらは人事や広報が関わる領域で、契約書を直しただけでは満たせません。
発注担当者が見落としやすいのは2つ目の柱です。契約書と支払サイトを整えれば対応完了だと考えていると、案件募集ページの記載や相談窓口の周知が手つかずのまま残ります。義務の一覧はフリーランス法特設サイト(公正取引委員会)で確認できます。
下請法(取適法)と違い資本金要件がない|中小企業の発注も対象になる
「うちは資本金が小さいから下請法の対象外だった。今回も関係ないだろう」という理解は、フリーランス新法では通用しません。
従来の下請法は、親事業者の資本金額によって適用範囲を区切っていました。そのため資本金1,000万円以下の中小企業が個人に発注しても、下請法の規制は及びませんでした。一方フリーランス新法には資本金要件がありません。発注側が個人事業主であっても、従業員を使用していれば幅広い義務を負います。
つまり、これまで規制の外にいた中小企業・スタートアップの開発外注が、まとめて対象に入ったことになります。社内に法務がなく、数年前の契約書ひな形を使い回している企業ほど、確認の必要性が高いといえます。
2026年1月に施行された取適法とフリーランス新法はどちらが適用されるか
2026年1月1日、下請法が改正され「中小受託取引適正化法」(通称・取適法)として施行されました。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。改正では、法律名の変更に加えて、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止、資本金基準に加えた従業員基準の追加といった見直しが行われています(取適法(中小受託取引適正化法)(公正取引委員会))。呼称も、親事業者は委託事業者へ、下請事業者は中小受託事業者へと改められました。
ここで発注担当者が迷うのが、「自社の外注はフリーランス新法と取適法のどちらで見ればよいのか」という点です。両方の要件を満たす場合は、原則としてフリーランス新法が優先して適用されると説明されています。判断の分かれ目は受注者側に従業員がいるかどうかで、従業員を使用しない個人・一人法人への委託であればフリーランス新法の土俵で考えることになります。
実務上は、取引先が「従業員のいないフリーランス」なのか「従業員を抱える受託企業」なのかで適用法令が変わる、と整理しておくと混乱しません。両者が混在する発注網では、取引先台帳に区分を持たせておくと後の点検が楽になります。
システム開発の外注はフリーランス新法の対象になるか|判定の3ステップ

自社の発注が対象になるかどうかは、「相手側」「自社側」「取引の性質」の3点で判定します。ここを飛ばして義務の一覧だけを読むと、対応の要否が決まらないまま話が進んでしまいます。
相手側の判定|「従業員を使用しない」個人・一人社長なら法人でも対象
保護される側は「特定受託事業者」と呼ばれます。定義は、個人であって従業員を使用しないもの、または法人であって一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使用しないもの、とされています(フリーランス法Q&A(公正取引委員会))。
見落とされやすいのは後者です。取引先が法人化していても、代表者一人だけで従業員がいなければ、特定受託事業者に該当します。「法人と契約しているから対象外」という判断は誤りになりかねません。節税目的で法人成りしたフリーランスエンジニアは珍しくないため、法人格の有無ではなく実態を確認する必要があります。
判定材料としては、契約締結時に「従業員を雇用しているか」「代表者以外の役員がいるか」を確認する欄を、取引先登録の申請フォームに設けておく方法が現実的です。
自社側の判定|従業員を使用しているかで負う義務の範囲が変わる
発注側は「業務委託事業者」と「特定業務委託事業者」に分かれます。フリーランスに業務委託をする事業者はすべて業務委託事業者に当たり、このうち従業員を使用する個人、または二以上の役員がいるか従業員を使用する法人が特定業務委託事業者です。
負う義務の範囲は次のように異なります。
発注側の区分 | 負う義務 |
|---|---|
業務委託事業者(従業員を使用しない個人・一人法人) | 取引条件の明示義務のみ |
特定業務委託事業者(従業員を使用する等) | 取引条件の明示に加え、報酬支払期日の設定・支払、禁止行為の遵守、就業環境の整備 |
従業員を雇用している通常の事業会社であれば、特定業務委託事業者としてすべての義務を負うと考えて差し支えありません。逆に、一人で活動しているフリーランスが別のフリーランスへ再委託する場合でも、取引条件の明示は必要になります。
準委任・請負・SESで扱いは変わるか|契約類型を問わず業務委託は対象
「うちは請負ではなく準委任だから」「SES契約なので実質的には人材の提供だ」といった理由で対象外になることはありません。フリーランス新法は事業者間の業務委託を広く対象としており、成果物の完成を目的とする請負か、役務の提供を目的とする準委任かによって適用の有無が変わるわけではないためです。
ただし、契約類型の違いは後述する「給付を受領した日」の考え方には影響します。適用の有無ではなく、義務の履行方法に効いてくると理解してください。
一方で、発注企業がフリーランスに対して日常的に業務の遂行方法を指示し、勤務時間を管理しているような場合には、フリーランス新法とは別に偽装請負・労働者性という論点が立ちます。指揮命令の線引きについてはSES契約の偽装請負リスクで整理しているため、自社の運用が該当しそうな場合はあわせて確認してください。
エージェント経由・再委託がある場合、誰が義務を負うか
システム開発の調達では、エージェントや協力会社が間に入る形が一般的です。義務の所在は契約の当事者関係で決まります。
自社がエージェント会社と業務委託契約を結び、エージェントがフリーランスと契約している場合、フリーランスに対して直接の義務を負うのはエージェント側です。自社にとっての取引相手はエージェント会社であり、そのエージェントに従業員がいれば特定受託事業者には当たりません。
逆に、自社が元請けとして案件を受注し、その一部をフリーランスへ再委託する場合は、自社が発注側の義務を負います。この場合は後述するとおり、取引条件の明示事項と支払期日の考え方に再委託特有のルールが加わります。
エージェント経由と直接契約が混在している企業では、「どの取引に義務が発生しているのか」を発注網の単位で棚卸ししておかないと、対応漏れが発生しやすくなります。
対応項目1|取引条件の明示|開発委託で漏れやすい記載事項
5つの対応項目のうち、最初に着手すべきなのが取引条件の明示です。後ほど触れるとおり、実際に勧告を受けた事案でも例外なく問題になっているのが、この明示義務違反だからです。
明示が必要な事項と、認められる明示の方法
業務委託をした場合、発注側は直ちに書面または電磁的方法で取引条件を明示しなければなりません。明示すべき事項として挙げられているのは次のとおりです(フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット(公正取引委員会))。
- 発注事業者およびフリーランスの名称
- 業務委託をした日
- 業務の内容
- 報酬の額
- 支払期日
- 給付を受領する日、または役務の提供を受ける日
- 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
- 検査を行う場合は、検査を完了する日
- 現金以外の方法で支払う場合は、その支払方法に関する事項
明示の方法は書面に限られず、メールやチャットのように記録が残る電磁的方法でも構いません。実務上は、発注書PDFをメールで送付する形や、契約管理システムから通知する形が取りやすいでしょう。
問題になりやすいのは、「まず稼働を始めてもらい、月末に発注書をまとめて出す」という運用です。明示は業務委託をした時点で直ちに行う必要があるため、この順序では義務を満たさないおそれがあります。口頭やチャットでの「来週から入ってください」という依頼だけで作業を開始させている場合は、発注プロセスそのものの見直しが必要です。
業務内容をどこまで書くか|要件が固まらないアジャイル開発の場合
システム開発で最も書きにくいのが「業務の内容」です。とくにアジャイル開発では、契約時点で実装する機能が確定していないことが前提になっています。
ここで求められているのは、完成物の仕様を細部まで確定させることではなく、何を委託したのかが当事者間で特定できる程度に記載することです。実務的には、次のような粒度で書く方法が考えられます。
- スプリント単位で発注する形にし、「対象スプリント」「対象プロダクトバックログ項目」「スプリント期間」を明示する
- 稼働時間を単位とする場合は、「対象プロダクトの開発業務」「担当領域(フロントエンド実装、API開発等)」「想定稼働時間」を明示する
- 個別の実装内容はチケット管理ツールで管理し、発注書からその管理単位を参照できるようにする
避けたいのは「開発業務一式」のような記載だけで済ませることです。どの範囲の作業が報酬に含まれるのかが不明確になり、後述する仕様変更や追加実装をめぐる争いの火種にもなります。
月額稼働(準委任)の報酬額・精算幅の書き方
月額固定で稼働してもらう準委任契約では、報酬額の書き方に注意が必要です。「月額80万円」とだけ書き、実際には稼働時間に応じて精算しているケースがありますが、この場合は精算の条件まで明示しておく必要があります。
具体的には、次の要素をあわせて記載しておくと、報酬額が特定できる状態になります。
- 基準となる月額報酬と、その前提となる稼働時間の幅(例: 140時間以上180時間以下)
- 下限を下回った場合の控除単価、上限を超えた場合の超過単価
- 稼働時間の計上方法と、報告・確認のタイミング
精算幅を明示しないまま運用すると、稼働が下限を下回った月に報酬を減らす行為が、後述する「報酬の減額」に当たるのではないかという疑義を生みます。あらかじめ合意した精算ルールに基づく調整であることを、書面上で説明できる状態にしておくことが防御になります。
再委託するときに追加で明示する事項
自社が元請けとして受注した業務の一部をフリーランスへ再委託する場合、支払期日の特例(後述)を利用するには、通常の明示事項に加えて次の3点を明示する必要があります。
- 再委託である旨
- 元委託者の名称
- 元委託業務の対価の支払期日
この3点を明示していない場合、特例は使えず、原則どおり受領日から60日以内の支払期日を定めることになります。「元請けからの入金後に支払う」という運用を採っているなら、明示事項の追加が前提条件になる点を押さえておいてください。
対応項目2|報酬の支払期日を受領日から60日以内に設定する

報酬については、給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その期日までに支払う義務があります。開発委託で判断に迷うのは、この「給付を受領した日」がいつを指すのかという点です。
「給付を受領した日」は請負と準委任で変わる|検収完了日ではない
まず押さえておきたいのは、起算日は検収完了日ではないということです。物品の製造委託では、検査の有無にかかわらず、発注事業者が現物を受け取って自己の占有下に置いた日が受領日とされています。
システム開発に置き換えると、契約類型によって次のように考えることになります。
契約類型 | 起算日の考え方 |
|---|---|
請負(成果物の完成・納品が目的) | 成果物の納品を受けた日。検収が完了した日ではない |
準委任(役務の提供が目的) | 役務の提供を受けた日。月額稼働であれば、その月の役務提供が終了した日 |
「検収が完了してから支払サイトを起算する」という運用は、システム開発では広く行われてきました。しかし検収に時間がかかるほど支払いが後ろ倒しになる構造は、起算日の考え方と噛み合いません。検収に1か月かけ、そこから月末締め翌月末払いで支払う運用は、受領日から数えると60日を大きく超えている可能性があります。
なお、支払期日を定めなかった場合は給付受領日・役務提供日が支払期日とみなされ、60日を超える期日を定めた場合は受領日から起算して60日を経過した日が支払期日とみなされる、という取扱いになっています。期日を書いていないから猶予されるわけではない点に注意してください。
月末締め翌々月末払いは60日を超えるか|支払サイトの点検方法
支払サイトの点検では、まず「最も不利な受領日」で計算するのが確実です。月単位の締切制度を採っている場合、月初に受領した分の待ち日数が最長になるためです。
一般的な支払サイトを、月初に受領したケースで比べると次のようになります。
支払サイト | 月初受領時のおおよその待ち日数 | 評価 |
|---|---|---|
月末締め翌月末払い | 約60日 | 実務上は60日以内の運用として扱われていると説明されています |
月末締め翌々月10日払い | 約70日 | 60日を超えるおそれが高い |
月末締め翌々月末払い | 約90日 | 60日を明確に超える |
自社の支払サイトが翌々月払いになっている場合は、フリーランスとの取引だけ別枠で管理するか、支払サイト自体を見直す必要があります。経理システムの都合で取引先ごとにサイトを変えられないケースもあるため、確認は早めに着手しておくとよいでしょう。
点検の手順としては、(1) 取引先マスタからフリーランス該当先を抽出する、(2) 各取引の受領日の定義(納品日か月末か)を確認する、(3) 実際の支払日との日数差を最長ケースで計算する、という順で進めると漏れが出にくくなります。
再委託の場合は元委託の支払期日から30日以内
自社が受注した業務を再委託した場合、前述の3点(再委託である旨、元委託者の名称、元委託業務の対価の支払期日)を明示していれば、元委託業務の対価の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることができます。
この特例は、元請けからの入金前に立て替え払いを強いられる負担を緩和するためのものですが、「元請けから入金があるまで支払わなくてよい」という意味ではありません。あくまで元委託の支払期日を基準とした30日以内であり、元請けの支払いが遅れたことを理由に支払いを止めれば、義務違反と評価されるおそれがあります。
フリーランス新法対応 業務委託発注の法律・契約リスク点検ガイド

この資料でわかること
業務委託でエンジニアに発注する企業担当者・法務担当者が、2024年11月に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」への対応を含め、業務委託契約に関する法律・契約実務を体系的に把握し、自社のコンプライアンス体制を整備できる状態にする。
こんな方におすすめです
- フリーランス新法への対応状況を社内で点検したい企業担当者
- 業務委託契約書・NDAの記載事項を確認したい法務担当者
- 偽装請負リスクを把握し指揮命令の境界線を整理したい開発マネージャー
入力いただいたメールアドレスにPDFをお送りします。
対応項目3|検収・仕様変更で起きやすい禁止行為を避ける

1か月以上の業務委託については、7つの禁止行為が定められています。受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7つです。
このうちシステム開発で実際に問題になりやすいのは、受領拒否・報酬の減額・不当なやり直し・買いたたきの4つです。日常業務として当たり前に行っている検収差し戻しや仕様変更の依頼が該当しうるため、線引きを押さえておく必要があります。
受入テストでNGを出すのは「受領拒否」に当たるか
受領拒否とは、フリーランスに責任がないのに、発注した給付の受領を拒む行為を指します。ここで重要なのは「フリーランスに責任がないのに」という部分です。
受入テストで不具合が見つかり、修正を求めて差し戻す行為は、合意した仕様を満たしていないことが理由であれば、フリーランス側に責任がある場合として整理できる可能性があります。一方で、次のようなケースは受領拒否と評価されるおそれがあります。
- 発注時に明示していなかった品質基準を後から持ち出して受け取らない
- 自社側の都合(リリース延期、予算の消化見送り)で納品を先延ばしにする
- 検収の判断を長期間行わず、事実上受け取らない状態を続ける
防御になるのは、検収の基準と期間を発注時点で明示しておくことです。取引条件の明示事項にも「検査を完了する日」が含まれているため、検収期間を定めるなら発注書に書いておく必要があります。あわせて、合格・不合格の判定基準(対象テストケース、重大度の区分、再提出の回数)を文書化しておくと、差し戻しの理由を客観的に説明できます。検収そのものの進め方についてはシステム開発の検収の流れで詳しく解説しています。
仕様変更・追加実装を無償で依頼すると「不当なやり直し」になりうる
開発プロジェクトで最も起きやすいのが、この論点です。「ついでにこの画面も直してほしい」「仕様の解釈が違ったので作り直してほしい」といった依頼は、日常的に発生します。
フリーランスに責任がないにもかかわらず、費用を負担せずに給付内容の変更ややり直しをさせる行為は、禁止行為に当たるおそれがあります。判断の分かれ目は、変更の原因がどちらにあるかです。
状況 | 評価の方向性 |
|---|---|
合意した仕様どおりに実装されておらず、修正を求める | フリーランス側の責任として整理できる可能性がある |
発注側が仕様を変更したため、実装済みの機能を作り直す | 追加費用や納期の調整なしに求めれば、不当なやり直しと評価されるおそれがある |
仕様の記載が曖昧で、解釈の相違により手戻りが生じた | 明示内容の不備は発注側の問題として扱われうる |
対策として現実的なのは、変更管理のルールを事前に決めておくことです。仕様変更の要求が出た際に、影響範囲と追加工数を見積もり、報酬・納期の変更を合意してから着手する。この手順を挟むだけで、無償のやり直しを求める形にはならなくなります。あわせて、前述のとおり業務内容の記載粒度を上げておくと、そもそも「合意した範囲かどうか」の判断がしやすくなります。
報酬の減額・振込手数料の負担転嫁で注意すること
報酬の減額は、フリーランスに責任がないのに、あらかじめ定めた報酬額を減らす行為です。開発現場では次のような場面が該当しうるため注意が必要です。
- 納品物の品質に不満があるという理由で、合意した金額から一方的に値引きする
- プロジェクトの予算が削られたことを理由に、稼働済みの月の報酬を下げる
- 振込手数料を発注側の判断でフリーランスに負担させる
振込手数料については、事前の合意なく発注側の都合で差し引くと減額に当たるおそれがあります。取引条件の明示の段階で、手数料の負担者を含めた支払方法を記載しておくことで、認識のずれを防げます。加えて、2026年1月施行の取適法をめぐる運用の見直しでは、振込手数料を受託側に負担させる取扱いがより厳しく扱われる方向が示されています(2026年1月施行 下請法は取適法へ 改正ポイント説明会資料(中小企業庁))。取引全体として負担転嫁を避ける方向に動いている点を踏まえ、手数料を差し引く運用を続けている場合は早めに見直しておくと安心です。
品質に問題があった場合であっても、まずは修正の機会を設けたうえで、それでも解消しないときに契約に基づいて対応する、という順序を踏むことが穏当です。
単価の一方的な決定と「買いたたき」|価格協議に応じる姿勢
買いたたきは、通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定める行為です。市場相場から大きく外れた単価を、協議もなく提示するような場合が典型例といえます。
システム開発では、社内の予算枠に合わせて単価を先に決め、「この金額でお願いできませんか」と提示する進め方が一般的です。それ自体が直ちに問題になるわけではありませんが、フリーランス側から単価の見直しを求められた際に協議に応じない姿勢は、リスクとして意識しておくべきです。
前述のとおり、2026年1月に施行された取適法では「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」が新たな禁止事項として加わりました。フリーランス新法の買いたたきの解釈も、この流れと無関係ではありません。実務としては、単価改定の申し入れがあった場合に、(1) 協議の場を持つ、(2) 判断の根拠を説明する、(3) やり取りの記録を残す、という運用を定着させておくと安心です。
対応項目4|募集情報の的確表示とハラスメント・育児介護への配慮
ここからは就業環境の整備に関する義務です。契約書や支払サイトの見直しだけでは満たせない領域であり、発注担当者が対応範囲を見誤りやすいところでもあります。
案件募集ページ・エージェント媒体の記載で気をつけること
広告等によりフリーランスの募集情報を提供する場合、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つことが求められます。
システム開発の案件募集でありがちなのは、次のような記載です。
- 実際にはほとんど適用されない上限額を用いた「月額〜80万円」といった報酬レンジの表示
- 「フルリモート可」と書きながら、実際には週数日の出社を前提としている
- 契約期間や更新の有無を明示せず、「長期案件」とだけ記載する
自社の採用サイトやSNSでの募集はもちろん、エージェント媒体に掲載を依頼する際の情報提供も対象になり得ます。募集条件が変わったときに掲載情報を更新する運用ができているか、あわせて確認しておくとよいでしょう。
ハラスメント相談窓口を外部委託先にも開く
ハラスメント対策に係る体制整備の義務は、6か月以上といった期間の要件がなく、業務委託の期間を問わず適用されます。短期のスポット発注しかしていない企業であっても対応が必要になる点は、見落とされやすいところです。
求められるのは、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にして周知すること、相談に応じるための体制を整備すること、相談があった際に適切に対応することです。実務的には、既に社員向けに設置している相談窓口をフリーランスにも開放し、その旨を契約時や参画時のオリエンテーションで周知する形が現実的です。
あわせて、ハラスメントの相談をしたことや、事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、契約解除その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています。窓口を作るだけでなく、相談後に案件から外すといった運用にならないよう、社内で認識を揃えておく必要があります。
6か月以上の継続委託では育児・介護への配慮が義務になる
6か月以上の期間で業務委託をする場合、妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるよう、フリーランスからの申出に応じて必要な配慮をする義務があります。6か月未満の委託については努力義務とされています。
開発現場での配慮としては、次のような対応が考えられます。
- 打ち合わせの時間帯を、保育園の送迎や介護の時間を避けて設定する
- 稼働の場所をリモート中心に切り替える
- 一時的に稼働時間の下限を引き下げ、精算幅を調整する
重要なのは、申出があった場合に検討し、対応の可否と理由を伝えるプロセスを持っておくことです。すべての申出に応じなければならないわけではありませんが、検討せずに退けることは避けるべきです。長期参画のフリーランスが多い体制では、申出の受付窓口を誰にするかを事前に決めておくと運用しやすくなります。
対応項目5|中途解除・契約不更新は30日前までに予告する
6か月以上の期間で継続している業務委託を中途解除する場合、または期間満了後に更新しない場合は、少なくとも30日前までに予告する必要があります。プロジェクトの終盤や撤退の局面は慌ただしく、法令対応が最も抜けやすい場面でもあります。
30日前予告が必要になるのはどんな契約か|自動更新の積み上げに注意
判断のポイントは「6か月以上の継続的な業務委託かどうか」です。ここで見落とされがちなのが、月単位の契約を自動更新で繰り返しているケースです。
「1か月ごとの契約だから、更新しなければ自由に終了できる」と考えている企業は少なくありません。しかし短期契約を反復更新して結果的に6か月以上継続している場合、継続的業務委託として予告義務の対象になる可能性があります。契約書上の期間だけでなく、実際の取引継続期間で判断する必要があります。
予告の方法は、書面・ファクシミリ・電子メール等によることとされています。口頭で伝えるだけでは要件を満たさないおそれがあるため、記録が残る手段で通知してください。
プロジェクト中断・体制縮小で発注を止めるときの進め方
実務で発生する典型的な場面ごとに、進め方を整理すると次のようになります。
場面 | 進め方の目安 |
|---|---|
予算削減によるプロジェクト中断 | 社内決裁の見込みが立った時点で逆算し、終了予定日の30日前までに書面で予告する |
体制縮小による人数削減 | 対象者の選定を先に確定させ、個別に予告する。全体アナウンスだけで済ませない |
パフォーマンス不足を理由とする交代 | 予告と同時に、求めがあった場合に説明できるよう理由を整理しておく |
もっともよくある失敗は、社内の意思決定が終わってから通知までに時間がかかり、結果的に30日を切ってしまうパターンです。プロジェクト予算の見直しサイクルが決まっているなら、そのタイミングから逆算して通知の期限を運用ルールに組み込んでおくと防げます。
なお、災害等のやむを得ない事由がある場合など、予告が不要とされるケースも定められています。自社の状況が例外に当たると判断する場合は、その根拠を記録に残しておくことをおすすめします。
解除理由の開示を求められたときの対応
予告した日から実際に契約が終了する日までの間に、フリーランスから解除または不更新の理由の開示を求められた場合、発注側は遅滞なく開示する必要があります。
開示に備えて意識しておきたいのは、理由を事後的に作らないことです。予告の時点で、どのような事情に基づく判断だったのかを社内で整理し、記録しておく。この準備があれば、開示を求められた際に説明の一貫性を保てます。
パフォーマンスを理由とする場合は、事実に基づいた記述にとどめ、人格に関わる評価を含めないよう配慮してください。開示した理由が新たなトラブルの発端になることもあるため、文面は関係者間で確認してから送るのが安全です。
違反したときに何が起きるか|行政措置の流れと実際の勧告事例
「対応が必要なのは分かったが、後回しにするとどうなるのか」という点は、社内で優先順位を説明するうえで欠かせない情報です。
助言・指導から勧告・命令・企業名公表までの流れ
違反が疑われる場合、行政による対応は段階的に進みます。まず助言・指導が行われ、改善されない場合には勧告、さらに勧告に従わない場合には命令と事業者名等の公表へと進みます。命令に違反した場合や検査を拒否した場合には、50万円以下の罰金が科され得ます。両罰規定があるため、行為者だけでなく法人も罰金の対象になります。
金額の水準だけを見れば大きな制裁とはいえないかもしれません。しかし実務上のインパクトが大きいのは、事業者名の公表によるレピュテーションへの影響です。エンジニア採用や外部人材の獲得競争において、「フリーランスとの取引で公表された企業」という情報が与える影響は無視できません。
実際に勧告を受けた違反類型|多いのは明示義務と支払期日
運用の実績を見ると、対応の緊急度が具体的に見えてきます。
公正取引委員会の公表によれば、令和7年度は1,626件の違反被疑事件に新規着手し、1,597件を処理、そのうち1,552件について措置を講じています。内訳は勧告10件・指導1,542件です。フリーランス側からの申出も604件寄せられました(令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況(公正取引委員会、2026年6月10日))。施行初年度である令和6年度は、137件に新規着手し96件を処理、うち54件の指導という規模でした(令和6年度におけるフリーランス法第2章の運用状況(公正取引委員会、2025年5月15日))。1年で処理件数がおよそ16倍に膨らんだ計算になります。
注目すべきは違反の中身です。令和7年度の勧告10件について、違反行為の類型別の件数は次のとおり公表されています。
違反行為の類型 | 件数 |
|---|---|
取引条件の明示義務違反 | 10件 |
期日における報酬支払義務違反 | 9件 |
報酬の減額 | 1件 |
不当な経済上の利益の提供要請 | 1件 |
1件の勧告で複数の類型が認定される場合があるため合計は勧告件数と一致しませんが、勧告10件すべてで取引条件の明示義務違反が認定されている点は見逃せません。契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方といった、最も基本的な部分での不備が実際に問題になっているということです。業種を絞った集中調査も行われており、放送業および広告業を対象とした調査では128名の事業者に対して是正を求める指導が行われました(フリーランス法に基づく指導等について(公正取引委員会、2025年12月10日))。
言い換えれば、対応の第一歩である「発注書に何を書くか」を整えるだけで、実務上のリスクの大部分に手を打てることになります。個別の勧告事例はフリーランス法勧告一覧(公正取引委員会)で年度別に公表されているため、自社と近い業種の事例を確認しておくと参考になります。
申出をしたフリーランスへの不利益な取扱いも禁止されている
行政による調査の端緒として重要なのが、フリーランス側からの申出です。前述のとおり令和7年度だけで604件の申出が寄せられており、法令違反の事実がある場合、フリーランスは行政機関に申出を行うことができます。そして発注事業者は、申出をしたことを理由として契約解除その他の不利益な取扱いをすることが禁止されています。
つまり、取引先との関係が悪化した局面では、これまでの発注実務が外部から検証される可能性があります。「今まで問題にならなかった」という実績は、対応を先送りする根拠にはなりません。相談先としては、フリーランス・トラブル110番などの窓口も整備されており、フリーランス側が専門家に相談するハードルは下がっています。
発注フローのどこを直すか|着手する順番と点検の観点

最後に、ここまでの内容を自社の作業リストに変換します。義務を一つずつ潰そうとすると膨大に見えますが、発注業務の流れに沿って並べ直すと、着手すべき順番が見えてきます。
発注業務フローと5つの対応項目の対応関係
自社の発注業務を工程に分解し、それぞれに対応する義務を並べると次のようになります。
発注業務の工程 | 対応する項目 | 点検の観点 |
|---|---|---|
募集 | 募集情報の的確表示 | 報酬レンジ・稼働条件・契約期間の記載が実態と一致しているか |
契約締結 | 取引条件の明示 | 契約書・発注書に明示事項がすべて含まれているか |
発注 | 取引条件の明示 | 業務委託をした時点で直ちに明示する運用になっているか |
開発中 | 禁止行為(不当なやり直し・買いたたき) | 仕様変更時に報酬・納期を再合意する手順があるか |
検収 | 禁止行為(受領拒否) | 検収基準と検収期間が事前に明示されているか |
支払 | 支払期日60日以内、禁止行為(報酬の減額) | 受領日起算で60日以内か。手数料の負担者を合意しているか |
参画中の全期間 | ハラスメント対策、育児介護への配慮 | 相談窓口が外部委託先にも開かれ、周知されているか |
終了 | 中途解除・不更新の30日前予告 | 6か月以上の取引を識別し、逆算して通知できる運用か |
この表を自社のフロー図に重ねてみると、「そもそも工程として存在しない」項目が見つかるはずです。多くの企業では、検収基準の明文化と終了時の予告手順が空白になっています。
着手する順番|まず発注書ひな形と支払サイトから
すべてを同時に進める必要はありません。「違反の発生頻度が高く、かつ是正コストが低い」順に並べると、次のようになります。
- 発注書・注文書ひな形への明示事項の追加:勧告事案で例外なく認定されている違反類型であり、テンプレートの改訂という一度きりの作業で対応できます。あわせて、発注前に稼働を開始させない運用へ切り替えます
- 支払サイトの棚卸しと60日超過の有無の確認:取引先マスタからフリーランス該当先を抽出し、最も不利な受領日で日数を計算します。翌々月払いが見つかった場合は経理と調整します
- 検収基準・検収期間の明文化と変更管理ルールの整備:合格判定の基準、差し戻しの回数、仕様変更時の再見積り手順を文書化します。プロジェクト運営の改善としても効果があります
- 募集要項の表現の見直しとハラスメント相談窓口の周知:掲載中の募集情報を実態と照合し、相談窓口の案内を契約時の説明資料に追加します
- 解除・不更新の社内手順書の作成:6か月以上の取引を識別する仕組みと、逆算して通知するチェックポイントを、プロジェクト管理のサイクルに組み込みます
1と2は、既存の書式と台帳を見直すだけで着手できます。まずここを片付けてから、運用の変更を伴う3以降に進むと、社内の合意も取りやすくなります。
再委託先を含めた発注網の棚卸し
自社が直接契約しているフリーランスだけを見ていると、対応範囲を見誤ります。とくに自社が元請けとして受注し、協力会社やフリーランスへ再委託している場合は、明示事項の追加や支払期日の特例といった別のルールが重なります。
棚卸しでは、次の観点で発注網を整理しておくと判断がぶれません。
- 取引先ごとに「従業員を使用しない個人・一人法人」に該当するかを記録する
- エージェント経由か直接契約かを区別し、義務の主体がどちらかを明確にする
- 自社が再委託している取引を抽出し、再委託の明示事項が含まれているかを確認する
多層的な発注構造では、どの階層で条件が悪化しているかが見えにくくなります。構造そのもののリスクについては多重下請けのリスクと対策で整理しているため、自社の発注網を見直す際の視点として参考にしてください。
社内の誰を巻き込むか|法務・経理・調達・開発部門の役割分担
対応の多くは、開発部門だけでは完結しません。上長に説明する際は、必要な巻き込み先まで示せると話が進みやすくなります。
部門 | 担う役割 |
|---|---|
法務(不在の場合は顧問弁護士) | 契約書・発注書ひな形の改訂、明示事項の網羅性の確認、個別事案の適法性判断 |
経理・財務 | 支払サイトの点検と変更、振込手数料の負担ルールの整理 |
調達・購買 | 取引先マスタへの区分の追加、発注プロセスの運用変更 |
人事 | ハラスメント相談窓口のフリーランスへの開放と周知、育児介護配慮の受付フロー |
広報・採用 | 募集情報の記載内容の見直しと更新運用 |
開発部門 | 検収基準の明文化、変更管理ルールの整備、終了時の予告タイミングの管理 |
法務専任がいない企業では、まず発注書ひな形の改訂だけを顧問弁護士に依頼し、残りを社内で進めるという分担が現実的です。すべてを一度に整えようとせず、明示義務と支払期日という頻度の高い2点から着手することが、限られたリソースで実効性を確保する近道になります。
関連情報
外部人材を活用した開発体制の設計や契約実務について、資料の形でまとめた情報もご用意しています。お役立ち資料一覧からご覧いただけます。
フリーランスや外部エンジニアを含めた開発体制づくりでお困りの場合は、お問い合わせフォームからご相談いただけます。体制の検討段階からのご相談にも対応しています。
フリーランス新法対応 業務委託発注の法律・契約リスク点検ガイド

この資料でわかること
業務委託でエンジニアに発注する企業担当者・法務担当者が、2024年11月に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」への対応を含め、業務委託契約に関する法律・契約実務を体系的に把握し、自社のコンプライアンス体制を整備できる状態にする。
こんな方におすすめです
- フリーランス新法への対応状況を社内で点検したい企業担当者
- 業務委託契約書・NDAの記載事項を確認したい法務担当者
- 偽装請負リスクを把握し指揮命令の境界線を整理したい開発マネージャー
入力いただいたメールアドレスにPDFをお送りします。
よくある質問
- 自社の開発発注がフリーランス新法の対象になるか、最短で判定する方法は?
取引先が「従業員を使用しない個人、または代表者一人だけで従業員のいない法人」に当たるかを確認すれば足ります。契約が請負・準委任・SESのいずれであっても、対象になるかどうかは変わりません。取引先が法人化していても代表者一人で従業員がいなければ対象になるため、取引先登録フォームに従業員の有無を確認する欄を設けておくと判定漏れを防げます。
- 検収に時間がかかっている場合、支払期日は何日から60日を数えればよいですか?
起算日は検収完了日ではありません。請負なら成果物の納品を受けた日、準委任ならその月の役務提供が終了した日から60日以内に支払期日を定める必要があります。検収に1か月かけてから月末締め翌月末払いで支払う運用は、受領日基準で60日を超えるおそれがあるため、点検の際は月初受領など最も不利なケースで日数を計算しておくと漏れを防げます。
- これまで仕様変更を無償で依頼してきた場合、今からでも対応できますか?
過去分を直ちに是正する必要はありません。今後は仕様変更の要望が出た時点で影響範囲と追加工数を見積もり、報酬・納期の変更を合意してから着手する運用に切り替えることが有効です。あわせて発注書の業務内容の記載粒度を上げておくと、変更が「合意範囲外」かどうかを判断しやすくなり、後々のトラブル防止にもつながります。
- エージェント経由でフリーランスに発注している場合も自社が義務を負いますか?
自社の契約相手がエージェント会社であれば、フリーランスへの直接の義務はエージェント側が負います。自社が義務を負うのは、自社が元請けとして受注した業務をフリーランスへ再委託している場合です。エージェント経由と直接契約が混在している場合は、取引先台帳でどちらの形態かを区別し、義務の主体を発注網の単位で棚卸ししておくと対応漏れを防げます。
- 対応項目が多くて優先順位に迷う場合、何から着手すべきですか?
勧告事例の大半を占める取引条件の明示(発注書ひな形の改訂)と、受領日起算60日以内かどうかの支払サイト点検の2点は、既存の書式・台帳の見直しだけで着手でき、是正コストに対する効果も高い項目です。実際、令和7年度に勧告を受けた10件はすべて取引条件の明示義務違反が認定されており、まずこの2点から着手すれば実務上のリスクの大部分に手を打てます。



