「今のビザで業務委託を始めても違法にならないだろうか」「独立したあと、次の更新で落ちて日本にいられなくなったらどうしよう」——技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザで日本の企業に勤める外国人エンジニアが、独立を検討したときに真っ先にぶつかる不安がこれです。
問題を難しくしているのは、日本の在留資格制度に「フリーランス専用のビザ」が存在しないことです。技人国ビザは会社員を前提に設計されているように見え、業務委託でも取得・維持できるという情報と、契約形態を変えると更新で不利になるという情報が入り混じり、SNS や行政書士サイトを見ても答えが一致しません。周囲に同じ状況の相談相手がいなければ、判断に自信を持てないまま先延ばしになりがちです。
結論から言えば、技人国ビザは業務委託契約でも取得・更新できます。ただし、雇用契約に比べて審査ハードルは確実に上がり、2024〜2025 年は「契約期間が短い」「収入が不安定」「契約内容があいまい」といった理由での不許可事例が増えています(ビザ申請サポートNavi 東京、office-kamiyama-tokyo.com)。逆に言えば、更新で落ちる理由はある程度パターン化されており、対策も設計可能です。
本記事では、技人国ビザを維持したまま業務委託でフリーランスエンジニアを続けるために、(1) 法的な取得・更新要件、(2) 更新で落ちない契約基盤の作り方、(3) 案件が途切れないための活動設計、(4) 独立後の税務・行政手続きの 4 点を、実務者目線で解説します。「取得できるか」よりも一歩踏み込んで、「継続的にフリーランスを続けられる仕組み」を作る観点でまとめています。
なお、在留資格の許否は個別事情の総合判断で決まるため、実際の申請にあたっては行政書士などの専門家に個別相談することを前提としてお読みください。
外国人フリーランスエンジニアが直面する在留資格の現実

日本には「フリーランス専用の就労ビザ」は存在しません。まずはこの前提を理解した上で、フリーランスエンジニアが選択肢とし得る在留資格を整理します。
日本にはフリーランス専用の就労ビザは存在しない
日本の就労系在留資格は「どの会社に勤めるか」ではなく「どのような業務を行うか」で区分されています。エンジニアとして働くための代表的な在留資格は技術・人文知識・国際業務(通称「技人国」)です。この在留資格は法律上、雇用契約に限定されていないため、フリーランス(個人事業主)や業務委託契約でも取得・維持できます(就労ビザステーション)。
一方で「フリーランス」という働き方そのものに特化した在留資格はありません。したがってフリーランスエンジニアとして日本で働くには、既存の在留資格の要件をフリーランスという文脈で満たしていく必要があります。
フリーランスエンジニアが選択肢とし得る 3 つの在留資格
エンジニアがフリーランス活動と両立できる主な在留資格は次の 3 つです。
- 技術・人文知識・国際業務(技人国):もっとも一般的な選択肢。エンジニアの実務内容(プログラミング、システム設計、インフラ構築等)は「技術」区分に該当します。業務委託契約でも取得・維持できます。
- 高度専門職 1 号ロ:ポイント制(学歴・職歴・年収等)で 70 点以上を満たす場合の上位資格。優遇措置(在留期間 5 年、複数の就労活動許可、家族帯同要件緩和等)がありますが、業務委託中心のフリーランスでポイント基準を満たすのは難易度が高い傾向にあります。
- 経営・管理:法人化して自ら経営者になる段階で選択肢に入ります。2025 年 10 月 16 日施行の改正で資本金要件が大幅に引き上げられており(後述)、独立直後に切り替える現実性は低くなりました。
本記事のペルソナ(会社員から業務委託ベースで独立するエンジニア)にとって、当面の主戦場となるのは技人国ビザです。以降のセクションは技人国ビザを前提に進めます。
業務委託契約が技人国ビザで認められる法的根拠
「そもそも業務委託で技人国ビザが認められるのか」という疑問は、法令の条文に立ち返ると明確です。出入国管理及び難民認定法別表第一の二(技術・人文知識・国際業務)では、この在留資格に該当する活動として「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」専門業務が定められています。この「契約」には雇用契約だけでなく、委任契約・請負契約(=業務委託契約)も含まれると解釈されています(ビザ申請サポートNavi 東京)。
つまり、技人国ビザは制度上、業務委託契約による活動を排除していません。ただし雇用契約に比べて「本当に安定的・継続的に活動できるのか」を審査で個別に判断される度合いが強くなります。この判断基準こそが、次のセクションで扱う 3 つの要件です。
フリーランスで技人国ビザを取得・更新する 3 つの要件

業務委託で技人国ビザを取得・維持するために審査で重視されるのは、大きく分けて次の 3 つです。「学歴・実務経験」よりも「契約の継続性」「収入の安定性」が実務上のボトルネックになりやすい点に注意してください。
契約の継続性・安定性(最重要要件)
もっとも重視されるのが、契約の継続性・安定性です。技人国ビザは「日本に安定して在留し、継続的に業務を行える見込みがあるか」を判定する制度であり、フリーランスに対しては特にこの点が厳しく問われます。
具体的には次のような点が審査でチェックされます。
- 契約期間の長さ:短期の単発案件だけで構成される場合、継続性の立証が困難になります。1 年以上(少なくとも 6 か月以上)の契約期間が確保されていることが望ましいです。
- 契約の切れ目がないこと:ある案件が終わった直後に次の案件が始まる状態が続いているか。契約と契約の間に空白期間が長期にわたる場合は不利に働きます。
- 複数の契約を組み合わせているか:単一の発注元に依存している場合よりも、複数社と継続契約を結んでいるほうが「収入源が途絶えるリスクが低い」と評価されやすくなります。
2024〜2025 年の傾向として、「契約期間が短すぎる」「収入が不安定」「契約内容があいまい」といった理由での不許可事例が増えていると報告されています(ビザ申請サポートNavi 東京)。この点への対策は、後述する「契約基盤の作り方」の章で具体化します。
収入要件の目安と根拠
「同じ業務内容の日本人と同等額以上の報酬」であることが技人国ビザの基本要件です。加えて、フリーランスの場合は「安定的に生活できる収入が見込めるか」の観点から、実質的な下限が意識されます。
行政書士事務所などが公開している目安を整理すると、おおむね次のような水準が語られています。
- 月額報酬 17〜18 万円を下回ると不許可リスクが高まる(office-kamiyama-tokyo.com)
- 年間報酬 250〜300 万円以上が確保されていることが望ましい(ビザ申請サポートNavi 東京、office-kamiyama-tokyo.com)
これらの数字はあくまで目安であり、公的に明文化された基準ではありません。ただし、フリーランスは会社員のような社会保険・退職金・各種手当の保護がないぶん、審査上は同世代の会社員よりも高めの収入水準を求められる傾向があります。エンジニアの一般的な市場報酬を考えれば、フルタイム稼働なら十分クリアできる水準ですが、独立直後の助走期間に稼働率が落ちるとリスクが高まる点は意識しておく必要があります。
学歴・実務経験と職務内容の整合性
3 つ目の要件は、学歴・実務経験と、実際に行う業務内容が整合していることです。
- 学歴要件:エンジニア関連分野(情報工学・コンピュータサイエンス・電気電子・数学・理工系全般)の学士以上を修めていること。
- 実務経験要件:関連分野で 10 年以上の実務経験があれば学歴要件を代替できます。
- 業務内容の一致:契約書に記載された業務が、学歴・経験と結びつく専門的業務であること。単純作業や事務補助的な業務は対象外です。
会社員として技人国ビザで在留しているエンジニアが独立する場合、学歴・実務経験の要件は既にクリアしているケースが大半です。したがって独立時の実務上のポイントは、「契約書に記載する業務内容を、これまでのキャリアと明確に結びつく形で具体化する」ことになります。「システム開発全般」のような曖昧な記載は避け、「React を用いたフロントエンド開発」「AWS 上での API 設計・実装」など、専門性が伝わる書き方にする必要があります。
更新で落ちないための契約基盤の作り方

ここからが本記事の中核です。3 つの要件を審査で満たすためには、契約そのものの設計を独立前から準備しておく必要があります。
単発契約は危険、複数社との継続契約を組み合わせる
もっとも避けたいのは、単発の短期案件を渡り歩くスタイルです。契約が切れるたびに「次の契約はいつ・どこで結ばれるか未確定」という状態が発生し、更新申請時に継続性を立証しづらくなります。
対策の原則は次の 2 つです。
- 1 社との契約期間を長めに確保する:最低 6 か月、可能なら 1 年単位の準委任契約を目指します。3 か月更新の場合でも、実質的に更新が繰り返されていることが分かる過去実績を示せると有利です。
- 複数社と並行契約を持つ:メインクライアント 1 社に依存せず、2〜3 社の継続契約を組み合わせておくと、いずれかの契約が終了しても収入源が途切れず、審査でも「収入基盤の分散性」がプラス評価されます。
独立直前のタイミングで、現職の会社と業務委託契約に切り替えて継続する(いわゆる「業務委託転換」)のは、実績と信頼のある発注元との継続契約を確保する意味で有効な選択肢です。ただし、この場合も契約書の内容と収入額が要件を満たしている必要があります。
契約書に盛り込むべき 3 要素(業務内容・契約期間・報酬)
審査官が契約書で確認するポイントは、大きく 3 つです。契約締結時にこの 3 つが明確に書かれていることを、必ず自分でチェックしてください。
- 業務内容の具体性:「システム開発業務」だけでなく、使用技術(言語・フレームワーク・クラウドサービス)、担当範囲(設計・実装・テスト・運用)、成果物のイメージまで書き込みます。抽象的な業務内容は「技人国ビザで従事できる専門業務なのか判定できない」と扱われるリスクがあります。
- 契約期間:始期・終期を明記し、可能なら自動更新条項を入れます。3 か月契約でも更新前提であることが読み取れる書き方が望ましいです。
- 報酬金額:月額固定、または月間稼働時間の下限(例: 月 140 時間以上)と単価を明示します。「案件ごとの見積もりに基づき別途定める」だけの記載は、審査時に金額の裏付けを取れず不利になります。
エンジニアの現場では、発注元が用意する定型契約書をそのまま使うケースが多いですが、上記 3 点が満たされているかを必ず確認してください。不足がある場合は覚書・別紙で補足するだけでも改善できます。
契約機関に関する届出(14 日以内)を確実に行う仕組み
見落とされがちですが、法的に義務化されているのが「契約機関に関する届出」です。技人国ビザで在留する外国人は、契約先の変更(新規契約締結・契約終了・契約先の名称/所在地変更・契約先の消滅)が生じた場合、14 日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります(出入国在留管理庁)。
届出を怠った場合、20 万円以下の罰金が科されるほか、更新審査時に「素行不良」と判断される可能性があります(名古屋ビザ申請サポート)。フリーランスは会社員と違って契約先が頻繁に変わりやすいため、届出漏れのリスクが構造的に高い立場です。
運用上のコツは次の 3 つです。
- 電子届出システムに事前登録する:出入国在留管理庁のオンラインシステムを使えば 24 時間 365 日届出可能です。会社設立時のように事前アカウント登録が必要なので、独立前に済ませておきます。
- 契約締結・終了と同時にタスク化する:契約書に署名した瞬間や契約終了通知を受け取った瞬間に、届出タスクをカレンダー・タスク管理ツールに 14 日以内の期限で入れる運用にします。
- 年 1 回、届出漏れがないかセルフチェック:契約履歴と届出履歴を年始などのタイミングで突き合わせて漏れを検出します。
小さな運用ですが、更新審査で「基本的な義務を果たしているか」を測る指標になるため、確実に仕組み化してください。
案件が途切れないためのフリーランス活動設計

契約基盤を整えても、案件が途切れれば継続性は損なわれます。ここでは案件を安定供給する現実的な方法を整理します。
フリーランスエージェント経由の案件が更新審査で有利な理由
フリーランスエンジニア向けのエージェント(案件マッチングサービス)を経由して案件を獲得するスタイルは、更新審査で有利に働きやすい要素を複数含んでいます。
- 契約書の質:エージェントが提示する契約書は業務内容・契約期間・報酬が定型で明記されているため、審査官が求める記載を自然に満たしやすい構造になっています。
- 入金の安定性:発注元が直接支払うのではなく、エージェント経由で毎月定額が入金される形式が一般的で、収入の安定性を示しやすくなります。
- 契約の連続性:エージェント側が契約終了前に次案件を提案してくれるため、契約と契約の間に空白期間が発生しにくい構造です。
もちろんエージェントを経由すると手数料(マージン)が差し引かれる、案件の自由度が下がるといったデメリットもあります。しかし在留資格の維持という観点では、これらのメリットは大きな価値を持ちます。
直請け案件と組み合わせて収入を安定させる
エージェント経由の案件だけに依存すると、手数料の負担が積み重なり、また「エージェント自体が営業不振に陥った場合のリスク」も発生します。可能であれば、直請け案件(発注元と直接契約を結ぶ案件)と組み合わせるのが理想的です。
直請け案件を組み合わせる際の実務ポイントは次の通りです。
- 既存の人脈から始める:現職や過去の職場のつながりで、独立後も継続して業務を委託してもらえる関係を作っておくと、独立直後の収入基盤になります。
- 契約書テンプレを用意する:直請けの場合、契約書は自分で用意することが多くなります。前述の 3 要素(業務内容・契約期間・報酬)を満たすテンプレを事前に準備し、案件ごとにカスタマイズします。
- 請求書・領収書の管理体制を整える:直請けは入金管理も自分で行うため、請求書発行・入金確認・督促のフローを事前に決めておく必要があります。
「エージェント経由でメイン収入を確保しつつ、直請け案件で追加収入を積み上げる」構成が、収入の安定性と自由度を両立させやすいバランスです。
複数チャネルを併用して空白期間を作らない
「更新で落ちないための契約基盤の作り方」で述べた通り、契約と契約の間の空白期間は継続性の立証を弱めます。空白を作らないためには、案件獲得チャネルを複数持っておくことが実務上重要です。
具体的には次のようなチャネルを併用します。
- フリーランスエージェント複数社への登録:1 社だけに依存せず、複数のエージェントに登録して案件情報を並行して受け取ります。
- 複業・副業マッチングプラットフォーム:短時間稼働の案件を扱う複業マッチングサービスを併用すると、メイン案件の合間や助走期間の稼働率を埋められます。TechBand が運営する複業マッチングサービス「Workee」もこの類型に含まれ、複数社との継続契約を組みやすい選択肢の一つです。
- 既存人脈からのリファラル:現職・前職のつながりから紹介される案件は、発注元との信頼関係が最初からある分、契約締結までのリードタイムが短く、空白期間対策として機能します。
チャネルを複数持つこと自体が、更新審査における「収入基盤の分散性」の立証材料にもなります。
フリーランス独立後に押さえるべき税務・行政手続き

在留資格の要件と直接関係しないように見えて、更新審査に大きく影響するのが税務・行政手続きです。特に納税履行の状況は「素行要件」の一部として評価されるため、漏れなく実施する必要があります。
独立後 1 か月以内にやるべきこと(開業届・青色申告承認申請)
会社を退職して独立したら、まず 1 か月以内に次の手続きを行います。
- 開業届の提出:税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。事業開始から 1 か月以内が期限です。
- 青色申告承認申請書の提出:青色申告(最大 65 万円控除等の優遇)を選択する場合、事業開始から 2 か月以内に提出します。
開業届はビザ更新の直接要件ではありませんが、事業実態を示す基本書類として、更新申請時に添付を求められるケースがあります。青色申告は税務メリットが大きいため、フリーランスなら原則として選択することをお勧めします。
確定申告と納税履行が更新審査に直結する理由
技人国ビザの更新申請時には、住民税の納税証明書・課税証明書の提出が求められます。この書類で審査官は次の 2 点を確認します。
- 確定申告を毎年きちんと行っているか:申告漏れ・遅延がないか。
- 納税を滞納していないか:住民税・所得税・国民健康保険料などの未納がないか。
納税義務の不履行は「素行不良」と判定される代表的な事由で、たとえ収入要件・契約要件を満たしていても、納税履行に問題があると更新不許可の直接原因になります。フリーランスは会社員のような源泉徴収・特別徴収による自動納税がないため、自分で計画的に納税する意識が特に重要です。
対策としては次のような運用が有効です。
- 税理士との顧問契約:確定申告だけでも税理士に依頼すれば、申告漏れ・記載ミスのリスクを大幅に下げられます。
- 税金の別口座積立:所得税・住民税・国民健康保険料の見込み額を毎月別口座に積み立て、納付書が届いたら遅滞なく納付する運用にします。
- 納付履歴のセルフチェック:年 1 回、市区町村役場で納税証明書を取得し、未納がないか確認します。
なお、確定申告の実務・青色申告特別控除の要件・インボイス制度対応・電子帳簿保存法の最新対応など、フリーランスエンジニアの申告手続き全般についてはフリーランスエンジニアの確定申告【2026年版】にまとめています。独立初年度の申告準備に活用してください。
源泉徴収・インボイス・国民健康保険/国民年金
その他、フリーランスとして押さえておくべき税務・社会保険関連の主要論点を整理します。
- 源泉徴収:日本の居住者である外国人フリーランスに報酬を支払う日本国内の事業者は、原則として 10.21% の源泉徴収を行う義務を負います(国税庁 No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき、Guidable Jobs)。ただし源泉徴収の対象になる報酬は業種が限定されており、システム開発・プログラミング業務の報酬は原則として源泉徴収の対象外です。契約前に発注元と源泉徴収の要否を確認しておくとトラブルを防げます。対象業務の判定基準・確定申告時の還付手続きの詳細はフリーランスエンジニアの源泉徴収ガイドを参照してください。
- 非居住者扱いのリスク:1 年以上継続して日本に滞在していれば居住者として扱われ、非居住者向けの一律 20.42% 源泉徴収は原則適用されません。長期の海外出張などで居住者判定が微妙になる場合は、事前に税理士に確認してください。
- インボイス制度:2023 年 10 月開始のインボイス制度により、発注元が仕入税額控除を受けるためには適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録が実務上求められることが増えています。年間売上 1,000 万円以下でもインボイス登録するかは、取引先の要求と自身の利益率のバランスで判断します。
- 国民健康保険/国民年金:会社の健康保険・厚生年金から国民健康保険・国民年金に切り替える必要があります。退職から 14 日以内に市区町村役場で手続きします。「フリーランス向け健康保険組合(例: 文芸美術国民健康保険組合)」への加入も、業種によっては選択肢になります。保険料の比較や切替手続きの詳細はフリーランスエンジニアの健康保険ガイドを参考にしてください。
- 住民税:前年所得に基づいて課税されるため、独立 1 年目に会社員時代の高所得に対する住民税がまとまって請求されるケースがあります。事前に納付見込み額を把握して資金計画に組み込んでおいてください。
税務・行政手続きは項目が多く煩雑ですが、更新審査で足元をすくわれる代表的な原因なので、独立初年度は特に慎重に管理することをお勧めします。
事業規模が拡大したら「経営・管理ビザ」への切り替えも視野に
フリーランスで実績を積み、収入・案件が安定してきた段階では、法人化や経営・管理ビザへの切り替えを検討する場面が訪れます。ただし 2025 年 10 月の制度改正でハードルが大きく上がっているため、注意が必要です。
経営・管理ビザに切り替える 2 つのケース
経営・管理ビザへの切り替えを検討する典型的なタイミングは 2 つあります。
- 法人化して自ら経営者になる場合:個人事業主から法人化し、代表取締役として経営に専念する段階。技人国ビザは「専門業務の実務従事者」向けの資格であり、経営専従になる場合は経営・管理ビザが適切です。
- 事業拡大に伴い人を雇用する場合:エンジニアリング事業を組織化して常勤職員を雇用する段階。この場合、実務よりも経営判断・組織運営の比重が高まるため、経営・管理ビザが適合します。
切り替え時期の目安と必要な準備
2025 年 10 月 16 日施行の改正で、経営・管理ビザの取得要件は大幅に厳格化されました(出入国在留管理庁、MIRAI 行政書士事務所)。改正後の主な要件は次の通りです。
- 資本金 3,000 万円以上(従来の 500 万円から大幅引き上げ、「常勤職員 2 名以上」による代替は廃止)
- 常勤職員 1 名以上の雇用(日本人・特別永住者・法別表第二の在留資格保持者に限定)
- 日本語能力 B2 相当以上
- 経営経験 3 年以上または修士号等
- 専門家確認済みの事業計画書、独立した事業所の確保
これらの要件を独立直後にクリアするのは現実的ではありません。フリーランスとして数年間実績を積み、資本金・事業計画・雇用体制を整えた上で切り替えるのが実務上の現実的なルートになります。
なお、2025 年 10 月 15 日以前に受理された申請は旧基準(資本金 500 万円等)で審査される経過措置がありますが、これから申請を検討する読者にとっては新基準が前提です。切り替えを視野に入れる場合は、行政書士に相談して事業計画の設計から始めることをお勧めします。
まとめ|継続的にフリーランスを続けられる仕組みを作る
外国人フリーランスエンジニアが技人国ビザを維持しながら業務委託で働くための本質は、「取得できるか」ではなく「継続できるか」です。本記事のキーポイントを整理します。
- 技人国ビザは業務委託契約でも取得・維持可能:入管法別表第一の二に定める「本邦の公私の機関との契約」に業務委託契約は含まれる。ただし雇用契約より審査は厳しく、2024〜2025 年は不許可事例が増加傾向。
- 更新で落ちない 3 要件は「継続性」「収入」「業務内容」:契約の継続性・安定性がもっとも重視され、月額 17〜18 万円以下・年 250〜300 万円未満は不許可リスクが高まる目安。業務内容は学歴・経験と整合する専門業務であること。
- 契約基盤は「複数社との継続契約 + 契約書 3 要素 + 14 日以内届出」:単発案件は避け、業務内容・契約期間・報酬を明記した契約書を用意する。契約機関に関する届出は 14 日以内、20 万円以下の罰金・素行不良評価のリスクを避けるため仕組み化する。
- 案件は「エージェント + 直請け + 複数チャネル」で途切れさせない:フリーランスエージェントは契約書の質・入金の安定性・契約の連続性で審査に有利。直請け・複業マッチングと組み合わせて空白期間を作らない。
- 税務・行政の履行は「素行要件」に直結:開業届・青色申告承認申請は 1 か月以内、確定申告と納税履行を徹底、健康保険・年金の切り替えも 14 日以内に。
独立に向けた次の一歩としては、(1) 現職と業務委託契約に切り替える交渉、(2) フリーランスエージェントへの複数登録、(3) 電子届出システムのアカウント作成、(4) 開業予定日 1 か月前に税理士・行政書士への個別相談、の順で準備を進めると、独立直後から更新審査を意識した基盤が作れます。
「更新で落ちて日本にいられなくなる」不安は、契約設計・案件獲得・税務行政の 3 つを仕組み化することで、コントロール可能なリスクに変えられます。継続的にフリーランスを続けられる仕組みを、独立前から段階的に整えていってください。なお、本記事は一般論の整理であり、実際の申請の許否は個別事情の総合判断で決まります。独立の意思決定にあたっては、必ず行政書士等の専門家に個別相談することをお勧めします。
よくある質問
- 今の技人国ビザのまま業務委託を始めても違法にはならない?
技人国ビザは業務委託契約でも取得・維持できるため、直ちに違法にはなりません。入管法別表第一の二は在留資格に該当する活動を「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う」専門業務と定めており、この契約には雇用契約だけでなく委任契約・請負契約(業務委託契約)も含まれると解釈されています。ただし雇用契約より審査基準は厳しくなるため、契約の継続性と収入水準を事前に整えておく必要があります。
- 独立直後で実績がまだない場合、更新審査は不利になる?
独立直後は実績不足で不利になりやすい状況です。審査では契約期間の長さや契約の切れ目の有無が重視されるため、最低でも6か月、可能なら1年単位の契約を確保し、独立前に現職との業務委託転換や複数社との継続契約を整えておくと、更新審査での継続性の立証がしやすくなります。
- エージェント経由の案件だけに頼っても更新審査は通る?
エージェント経由の案件は契約書の質・入金の安定性・契約の連続性の面で更新審査に有利ですが、単一エージェントへの依存は手数料負担が積み重なるほか、エージェント自体が営業不振に陥った場合に収入が途絶えるリスクを伴います。複数エージェントへの登録と直請け案件を組み合わせ、収入源を分散させておくことが推奨されます。
- 契約と契約の間に空白期間ができてしまった場合はどうすればいい?
契約と契約の間の空白期間は、更新審査で重視される契約の継続性の立証を弱めます。次の契約が決まるまでの経緯を記録に残すとともに、複数のフリーランスエージェントへの登録や複業マッチングサービスの併用でチャネルを増やし、空白そのものを発生させない体制を独立前から整えておくことが重要です。
- 独立前にまず何から準備を始めればいい?
独立前の準備は、(1) 現職との業務委託転換交渉、(2) フリーランスエージェントへの複数登録、(3) 出入国在留管理庁の電子届出システムへの事前登録、(4) 開業予定日の1か月前をめどに税理士・行政書士へ個別相談する、という順で進めると、独立直後から更新審査を意識した契約基盤を作りやすくなります。



