開発プロジェクトの人手が足りず、フリーランスエンジニアの活用を決めて採用エージェントに依頼した。ところが、紹介された人材はスキルセットが要件と微妙にずれていたり、面談を何度も重ねた割になかなか決まらなかったりする。手数料を払っているのに、思ったような成果が出ない。そんな「期待外れ」を一度でも経験すると、「うちはエージェントの使い方を間違えているのではないか」という疑問が頭をよぎるはずです。
フリーランスエンジニア採用エージェントは、「依頼すれば良い人を見つけてくれるサービス」だと受け取られがちです。しかし実際には、紹介されてくる人材の質、つまりマッチング精度の多くは、発注側がどれだけ正確に要件を伝え、どれだけ準備を整えたかに左右されます。エージェントは発注企業から渡された情報をもとに動くため、その情報があいまいなら、紹介もあいまいになります。だからこそ「丸投げ」では成果が出にくいのです。
逆に言えば、ミスマッチの原因の大半は発注側でコントロールできます。求める人材像の言語化、条件の優先順位づけ、複数エージェントの運用ルール、選考での見極め、紹介後のフィードバック。これらを整えれば、支払う手数料が同じでも、紹介されてくる人材の質は大きく変わります。エージェント活用の成否を分けるのは、サービスの良し悪しよりも、発注側の動き方なのです。
本記事では、フリーランスエンジニア採用エージェントの使い方を、仕組みと費用の理解(ステップ0相当)から、要件の伝え方(ステップ1〜2)、複数並走の判断(ステップ3)、直接採用との使い分け(ステップ4)、選考とフィードバック(ステップ5)まで、投資対効果を最大化する5つのステップとして解説します。最初の章は5ステップに入る前の「土台づくり」として位置づけ、ステップ1からが実際の発注側アクションです。エージェントへの「丸投げ」から「発注側が主導する活用」へと切り替えるための実践手順として読み進めてください。
フリーランスエンジニア採用エージェントの仕組みと費用を正しく理解する

5ステップに入る前に、土台として押さえておきたいのが「エージェントが何をしてくれて、何にお金がかかっているのか」という点です。仕組みと費用を正しく理解しないまま使い方を語っても、「高い」「合わない」という感覚的な不満から抜け出せません。まずはここを整理します。
エージェントが発注企業に提供する5つの機能
フリーランスエンジニア採用エージェントは、発注企業とフリーランスエンジニアの間に立つ仲介役です。発注企業に対して、おおむね次の5つの機能を提供します。
- 要件ヒアリング: どんなスキル・経験を持つ人材が、どの体制で、いつから必要かを聞き取り、求人要件として整理する
- 人材紹介: 自社に登録しているフリーランスの中から、要件に合う候補者を選定して提案する
- 面談調整: 発注企業と候補者の面談日程を調整し、双方の意向をすり合わせる
- 契約・更新サポート: 業務委託契約の締結、契約期間の更新、条件変更などの事務手続きを代行する
- 稼働中フォロー: 稼働開始後も、業務の進捗や双方の満足度を定期的に確認し、トラブルがあれば間に入る
この5機能をまとめて引き受けてくれることが、エージェントを使う最大の価値です。逆に言えば、これらの工数を自社で抱える余裕がある企業にとっては、エージェントの優先度は相対的に下がります。何を肩代わりしてもらっているのかを意識すると、後述する「直接採用との使い分け」の判断もしやすくなります。
費用体系の種類と相場
フリーランスエンジニア採用エージェントの費用は、大きく2つのモデルに分かれます。
ひとつは月額フィー型です。稼働するフリーランスの月額単価の中に、エージェントの手数料(マージン)が含まれている形が一般的です。発注企業が支払う金額には、エンジニアへの報酬とエージェントの取り分の両方が含まれており、稼働が続くかぎり毎月発生します。常駐・準委任で中長期的に開発リソースを確保する場面では、この形が多く見られます。
もうひとつは成功報酬型です。人材の採用・契約成立が決まったタイミングでのみ費用が発生します。正社員採用の人材紹介でよく使われるモデルで、相場は理論年収の30〜35%程度とされています(Workship ENTERPRISE 人材紹介の成功報酬と仕組み)。フリーランス採用でも、正社員に近い形での紹介ではこのモデルが採用されることがあります。
月額フィー型における手数料率(マージン率)は、業界全体ではおおむね報酬の20〜30%程度が相場とされ、案件によっては10〜25%の幅で設定されることもあります。近年は10〜15%程度の低マージンを打ち出すエージェントも増えています(bizdev-tech フリーランスエージェントの手数料・マージン相場、コエテコキャリア フリーランスエージェントの中間マージン相場)。ただし、手数料率を非公開にしているエージェントは少なくありません。案件ごとにマージン率が異なるため一律の数字を出しにくい、という事情が背景にあります。発注企業が目にするのは「月額単価」という総額であり、その内訳は見えにくいのが実情です。
「高い」と感じる前に確認したいコストの内訳
手数料率の数字だけを見ると「中間マージンを取られている」と感じるかもしれません。しかし投資対効果を判断するうえで大切なのは、「エージェントを使わなかった場合に自社が負担するコスト」と比較することです。
自社で直接フリーランスを採用する場合、求人媒体への掲載費、候補者の母集団形成、書類選考、複数回の面談調整、契約書の作成と法務確認、稼働後のトラブル対応といった工数が、すべて社内の人件費として発生します。さらに、採用したフリーランスがミスマッチだった場合、プロジェクトの遅延や再採用のコストという「採用失敗リスク」も加わります。
エージェントへ支払う手数料は、これらの工数とリスクを肩代わりしてもらう対価です。「高い」と感じたときは、まず「同じことを自社でやったら、何人日かかり、いくらの人件費になるか」を概算してみてください。そのうえで手数料が見合わないと判断するなら別ですが、内訳を確認せずに「高い」と決めつけると、本来エージェントを使うべき場面でも機会を逃しかねません。費用の妥当性を冷静に判断できることが、ここから先の「使いこなし」の出発点になります。
ステップ1〜2 ミスマッチを防ぐ要件の伝え方

ここからが、発注側が実際に取り組む5ステップの本編です。フリーランスエンジニア採用エージェントの使い方で最も成果を左右するのが、この「要件の伝え方」です。ミスマッチの最大の原因は、要件があいまいなままエージェントに伝わることにあります。エージェントは渡された情報の範囲でしか動けません。「経験豊富なバックエンドエンジニアを探してほしい」という依頼では、エージェントは「無難に幅広く」紹介せざるを得ず、結果として面談工数とミスマッチが増えていきます。ステップ1とステップ2で、この入り口を引き締めます。
ステップ1 求める人材像をジョブディスクリプションで言語化する
最初のステップは、求める人材像をジョブディスクリプション(職務記述書)の形で文書化することです。口頭やメール数行の依頼ではなく、文書として整理することで、エージェントへの伝達精度が格段に上がります(Workship ENTERPRISE ジョブディスクリプションの作り方)。
ジョブディスクリプションに盛り込むべき項目は次のとおりです。
- 担当する業務・役割: どのプロダクトの、どの機能の、どの工程を担うのか
- 必須スキル: これがないと業務が成立しない条件
- 歓迎スキル: あれば望ましいが、なくても可の条件
- 使用技術スタック: 言語・フレームワーク・インフラ・ツールを具体名で
- チーム体制: 何名のチームで、どのポジションに入るのか
- 稼働条件: 週あたりの稼働日数・時間、契約期間、リモート可否
- 求めるレベル感: 自走できるレベルか、レビュー前提か、設計から任せるか
たとえば、フリーランスのバックエンドエンジニアを募集する場合、次のような記載例が考えられます。
募集ポジション: 自社SaaS(在庫管理システム)のバックエンド開発を担当するフリーランスエンジニア
担当業務: 既存APIの機能追加・改修、新規エンドポイントの設計と実装、テストコードの整備。フロントエンド担当(社員2名)と連携しながら開発を進めていただきます。
必須スキル: Node.js / TypeScript を用いたWeb APIの開発経験3年以上、リレーショナルデータベース(PostgreSQL想定)の設計・運用経験、Gitを用いたチーム開発の経験
歓迎スキル: AWS(ECS / RDS)での運用経験、IaC(Terraform等)の利用経験、SaaSプロダクトの開発経験
チーム体制: PM1名・バックエンド1名(今回の募集)・フロントエンド2名の計4名。スクラム開発、週次定例あり。
稼働条件: 週3〜4日(応相談)、フルリモート可、想定契約期間6ヶ月以上、月内のコアタイム(10〜15時)はチャット連絡が取れること
求めるレベル感: 仕様の意図を汲んで自走できる方。設計レビューには参加いただきますが、実装方針はご自身で組み立てていただける想定です。
ここまで具体的に書くと、エージェントは「該当する/しない」をはっきり判断でき、見当違いの候補者を提案する余地が小さくなります。必須スキルと歓迎スキルを切り分けておくことも重要です。すべてを「必須」にすると候補者が極端に絞られ、逆にすべてを「歓迎」にすると軸がぼやけます。「これがなければ業務が回らない」ものだけを必須に置くのが、母集団と精度のバランスを取るコツです。
ステップ2 条件の優先順位を発注側で決めておく
ジョブディスクリプションを用意しても、それだけでは足りません。次のステップは、条件の優先順位を発注側であらかじめ決めておくことです。
スキル・単価・稼働開始時期・カルチャーフィットのすべてを完璧に満たす人材は、現実にはほとんど存在しません。「スキルは申し分ないが単価が予算をやや超える」「希望どおりの単価だが稼働開始が1ヶ月先になる」といったトレードオフは必ず発生します。このとき、何を優先し、何なら妥協できるのかを発注側が決めていないと、紹介された候補者ごとに社内で判断が揺れ、選考が長引きます。
たとえば「即戦力性が最優先、単価は予算+10%まで許容、稼働開始は1ヶ月先まで待てる、稼働日数は週3日でも可」というように、項目ごとに優先度と許容範囲を言語化しておきます。これをエージェントに共有すれば、エージェントは「予算は多少超えてもスキル重視」という軸で候補者を絞り込めます。優先順位が伝わっていないエージェントは、安全策として「条件を広めに満たす候補者」を数多く出すしかなく、その結果、発注側の面談工数だけが膨らみます。
優先順位を決めることは、妥協を前提にする後ろ向きな作業ではありません。「この案件にとって本当に外せないものは何か」を発注側が言語化する作業であり、これがエージェントの紹介精度を引き上げる強力なレバーになります。
カルチャーフィット・コミュニケーション要件を言語化するコツ
スキルや単価は文書化しやすい一方で、カルチャーフィットやコミュニケーション要件は言語化が難しく、つい「協調性のある方」「コミュニケーションが取れる方」といった抽象表現になりがちです。しかしこれらの表現は、人によって解釈が分かれるため、エージェントには伝わりません。
コツは、抽象的な性質ではなく、具体的な行動で記述することです。たとえば「協調性がある」ではなく、「仕様に疑問があれば実装前にチャットで確認できる」「設計レビューで他メンバーの指摘を踏まえて方針を調整できる」と書きます。「コミュニケーションが取れる」ではなく、「非同期チャット中心の進行で、半日以内に応答できる」「週次定例で進捗と課題を自分の言葉で説明できる」と書きます。
このように、自社のチームで実際に求められる振る舞いを行動レベルに分解すると、エージェントは候補者の過去の働き方と照らし合わせて判断でき、面談でも確認すべきポイントが明確になります。
担当エージェントとのキックオフで確認すべきこと
ジョブディスクリプションと優先順位を整えたら、担当エージェントとのキックオフ(最初のすり合わせ)で認識を合わせます。ここで確認しておきたいのは次の点です。
- 要件の解釈にズレがないか: ジョブディスクリプションの内容をエージェント側がどう理解したかを口頭で説明してもらい、認識のズレを早期に潰す
- 想定される候補者層と単価感: 提示した要件で、どの程度の母集団が見込めるか、単価相場とのギャップはないかを率直に聞く
- 紹介後のフィードバックの渡し方: 紹介を受けた候補者について、選考結果や見送り理由をどのチャネルで、どのくらいの頻度で返すかを決めておく
- 連絡窓口と意思決定者: 発注側の誰が一次窓口で、誰が最終判断するかを明確にしておく
特に「フィードバックの渡し方」をキックオフ時点で決めておくことは重要です。後述するように、見送り理由を具体的に返せるかどうかが、その後の紹介精度を大きく左右します。最初に運用の型を合意しておけば、紹介が始まってから慌てずに済みます。
ステップ3 複数エージェント並走のメリット・デメリットと運用ルール

要件の伝え方を整えたら、次のステップは「1社に絞るか、複数社を並走させるか」という運用の判断です。複数のエージェントを同時に使う「並走」は、うまく機能すれば母集団を大きく広げられますが、無計画に手を広げると管理工数だけが増えます。メリットとデメリットを理解したうえで、運用ルールとセットで判断します。
複数並走のメリット
複数のエージェントを並走させる主なメリットは3つあります。
ひとつは母集団の拡大です。エージェントごとに登録しているフリーランスの顔ぶれは異なります。1社だけに依頼すると、その1社の登録者の中からしか候補者が出てきません。複数社に同じ要件を出せば、それだけ多くの候補者にアプローチできます。
ふたつめは得意領域の補完です。エージェントには、フロントエンドに強い、インフラ人材が豊富、特定の単価帯に厚みがある、といった得意・不得意があります。複数社を使うことで、自社の要件に合った得意領域を持つエージェントから候補者を引き出せます。
みっつめは1社依存リスクの回避です。1社だけに頼ると、そのエージェントの紹介スピードが落ちたとき、あるいは登録者層が要件と合わなかったとき、採用活動全体が止まってしまいます。複数社を並走させておけば、1社の動きが鈍っても他社でカバーでき、紹介の偏りも抑えられます。
複数並走のデメリットと注意点
一方で、並走には無視できないデメリットもあります。
最も大きいのは管理工数の増加です。窓口が増えるぶん、連絡のやり取り、候補者情報の整理、選考状況の共有といった作業が単純に倍増していきます。並走する社数に比例して、発注側の運用負荷が上がります。
次に重複紹介の問題です。同じフリーランスが複数のエージェントに登録しているケースは珍しくありません。A社とB社から同じ人材を紹介されると、どちらの経由で選考を進めるか、契約をどうするかという調整が発生し、対応を誤るとエージェント間のトラブルにつながります。
さらに要件のブレにも注意が必要です。複数社に口頭でバラバラに要件を伝えると、社ごとに微妙に異なる人材像が伝わり、紹介の方向性が分散します。「A社には単価重視と伝えたが、B社にはスキル重視と伝わっていた」といった事態が起きると、せっかくの並走が逆効果になります。
並走を機能させる運用ルール
これらのデメリットを抑えて並走を機能させるには、運用ルールをあらかじめ決めておくことが欠かせません。
- 候補者を一元管理する: 各エージェントから紹介された候補者を、スプレッドシートなどで一覧化し、氏名・スキル・単価・選考状況・紹介元エージェントを横断的に管理する。重複紹介もここで早期に発見できる
- 同一のジョブディスクリプションを共有する: ステップ1で作成したジョブディスクリプションを、全エージェントに同じ内容で渡す。口頭の補足は最小限にし、要件のブレを防ぐ
- フィードバックを徹底する: どのエージェントに対しても、選考結果と見送り理由を同じ粒度で返す。特定の1社にだけ丁寧に返すと、他社の紹介精度が上がらず、並走の効果が偏る
- 2〜3社程度に絞る: 並走は数を増やすほど良いわけではありません。管理工数とのバランスを考えると、自社の運用リソースで無理なく回せる2〜3社程度が現実的な目安です
並走は「とにかく多くのエージェントに声をかける」施策ではなく、「管理できる範囲で母集団を最適化する」運用判断です。自社が候補者管理にどれだけ工数を割けるかを基準に、並走の社数を決めてください。
ステップ4 エージェントと直接採用・他手段の使い分け判断基準
ステップ4では、視点を一段引いて「そもそもこの案件にエージェントが最適か」を考えます。フリーランスエンジニアを確保する手段はエージェントだけではありません。直接採用(リファラル・SNS・自社募集)やマッチングプラットフォームという選択肢もあります。すべてをエージェントに任せる必要はなく、案件特性に応じて手段を選び分けることが、全体の投資対効果を高めます。なお、フリーランスエンジニアの採用プロセス全体(チャネル選定から契約・オンボーディングまで)を体系的に押さえたい場合は、フリーランスエンジニア採用の進め方|失敗しない探し方と選考の判断軸も参照してください。
エージェントが向くケース・向かないケース
エージェントが特に向くのは、次のようなケースです。
- 採用にかける社内工数が少ない: 現場メンバーが開発で手一杯で、母集団形成や面談調整に時間を割けない
- 募集ノウハウがない: フリーランス採用の経験が浅く、適正な単価相場や契約条件の判断材料を持っていない
- 短期間で人材を確保したい: プロジェクトの締め切りが迫っており、登録済みの母集団からスピーディーに紹介を受けたい
- 契約・事務の代行ニーズがある: 業務委託契約の締結や法務確認を自社で完結させる体制がない
逆に、エージェントの優先度が下がるのは、社内に候補者ネットワークがあり、採用にかける工数も確保できるケースです。手数料を払ってまで仲介を挟む必要性が薄れます。
直接採用・マッチングプラットフォームとの比較
エージェント以外の主な手段の特徴を整理します。
直接採用(リファラル・SNS・自社募集)は、社員の紹介や経営者・エンジニアの個人的なつながり、SNSでの発信を通じて人材を見つける方法です。仲介手数料がかからないため費用を抑えやすく、すでに人柄やスキルがある程度わかっている人材にアプローチできる利点があります。一方で、母集団は自社のネットワークの広さに依存し、候補者がいなければ採用活動が進みません。母集団形成・選考・契約のすべてを自社で担う必要があります。
マッチングプラットフォームは、フリーランスと発注企業が直接やり取りできる場を提供するサービスです。エージェントのような専任担当による紹介は基本的になく、自社でプロフィールを検索し、候補者に直接コンタクトを取ります。仲介の手厚さがないぶん手数料を抑えやすい一方、検索・スカウト・選考の手間は自社で負担します。エージェントと直接採用の中間的な位置づけと言えます。
採用手段を選ぶための判断チェックリスト
どの手段が適しているかは、次の観点でチェックすると整理しやすくなります。
- 社内の採用工数: 母集団形成・選考・契約に割ける工数はどれくらいあるか。少なければエージェント、確保できるなら直接採用やプラットフォームも選択肢になる
- 求める専門性のニッチさ: 一般的なスキルなら自社募集でも集まりやすいが、ニッチな専門領域はエージェントの母集団にアクセスする価値が高い
- 緊急度: すぐに人材が必要ならエージェントの即応性が活きる。時間に余裕があれば直接採用でじっくり探せる
- 継続採用の有無: 同種の人材を継続的に採るなら、自社でノウハウと母集団を蓄積する直接採用の比重を高める価値がある。スポット的な確保ならエージェントが効率的
- 予算: 手数料を含めた総コストが予算に収まるか。予算が厳しければプラットや直接採用、手厚いサポートに価値を見いだすならエージェント
重要なのは、「エージェント一択」でも「直接採用一択」でもなく、案件ごとにこのチェックリストで判断し、必要なら手段を組み合わせることです。緊急度の高い案件はエージェント、継続的に採る職種は直接採用というように使い分ければ、エージェントを使うべき場面に投資を集中でき、採用活動全体の費用対効果が高まります。
ステップ5 紹介後にミスマッチを最終チェックする選考のポイント

最後のステップは、エージェントから紹介を受けた後の選考です。要件を正しく伝えても、選考段階での見極めが甘ければミスマッチは残ります。エージェント活用は「紹介を受けて終わり」ではなく、選考とフィードバックまで含めて初めて投資対効果が出ます。ミスマッチを防ぐための採用プロセス設計(要件定義からトライアル判定まで)を体系的に整備したい場合は、業務委託エンジニア採用のミスマッチを防ぐ4工程プロセス設計もあわせて参照してください。
経歴書・職務範囲の確認で見るべきポイント
経歴書(職務経歴書・スキルシート)を読むときは、記載されている技術名やプロジェクト名をなぞるだけでは不十分です。確認したいのは、そのプロジェクトで本人が実際に何を担当したかです。
「大規模ECサイトの開発に参画」と書かれていても、設計から担ったのか、決められた仕様に沿って実装のみを担当したのか、レビュー対象だったのかで、実力の評価は大きく変わります。面談では「そのプロジェクトでご自身が判断した設計上の意思決定はどれですか」「チームでの役割と、自分が一番苦労した点を教えてください」といった質問で、担当範囲と関与の深さを具体的に掘り下げます。記載された成果が「チームの成果」なのか「本人の貢献」なのかを切り分けることが、経歴書を読み解くポイントです。
技術力・稼働条件のすり合わせ方法
技術力の確認は、面談での会話だけに頼らず、実務に近い形で見極めるのが確実です。たとえば、自社の開発内容に即した簡易課題を用意して取り組んでもらう、過去に書いたコードを見せてもらう(公開可能な範囲で)、設計上の判断を問う深掘り質問をする、といった方法があります。深掘り質問では「この機能を実装するとき、どういう設計を取り、なぜその選択をしたか」を聞くと、知識の暗記ではなく実務での判断力が見えてきます。
あわせて、稼働条件のすり合わせも面談で具体的に行います。確認したいのは、実働時間(週あたり何日・何時間を確保できるか)、連絡可能な時間帯(コアタイムにチャットで応答できるか)、並行している他案件の有無と、その案件が稼働に影響しないか、といった点です。フリーランスは複数案件を掛け持ちすることが多いため、「週3日」という契約上の数字だけでなく、実際にどの時間帯にどれだけコミットできるかをお互いに明確にしておくと、稼働開始後の認識のズレを防げます。
トライアル・初期スコープ設定でリスクを抑える契約の工夫
どれだけ選考を尽くしても、実際に一緒に働いてみるまでわからない部分は残ります。そのリスクを抑えるのが、契約面での工夫です。
ひとつは、最初の契約期間を短めに設定し、トライアル的に稼働してもらう方法です。たとえば、最初の1ヶ月を「お互いの相性を見る期間」と位置づけ、問題がなければ本格的な契約に移行する形にします。もうひとつは、初期スコープを小さく区切る方法です。いきなり中核機能を任せるのではなく、独立した小さめのタスクから始めてもらい、成果物の品質・進め方・コミュニケーションを確認してから任せる範囲を広げます。
こうした段階的な進め方は、ミスマッチが判明したときの損失を小さく抑えるだけでなく、フリーランス側にとっても自社の進め方を理解しながら立ち上がれるため、双方にとって無理のない始め方になります。
見送り理由のフィードバックで次の紹介精度を上げる
選考の結果、候補者を見送る判断をしたときは、その理由を具体的にエージェントへ伝えてください。これが、エージェント活用の精度を継続的に高める「フィードバックループ」です。
「今回は見送ります」とだけ返すのと、「技術力は十分でしたが、当社が求める設計フェーズからの自走には経験がやや不足していました」「スキルは要件に合っていましたが、稼働開始希望が当社の必要時期と2ヶ月ずれていました」と具体的に返すのとでは、エージェントが次に紹介してくる候補者の質がまったく変わります。エージェントは、見送り理由を手がかりに「発注企業が本当に求めているもの」を学習し、紹介の精度を上げていきます。
逆に、フィードバックが「なんとなく合わなかった」レベルにとどまると、エージェントは何を直せばよいかわからず、紹介はあいまいなまま繰り返されます。要件定義(ステップ1〜2)で入り口を引き締め、選考とフィードバック(ステップ5)で出口を学習に変える。この両輪が回って初めて、フリーランスエンジニア採用エージェントの使い方が「丸投げ」から「発注側主導の活用」へと切り替わります。
まとめ
フリーランスエンジニア採用エージェントの使い方を、投資対効果を最大化する5ステップとして解説してきました。最後に流れを振り返ります。
- 土台(ステップ0相当): エージェントの5つの機能と費用体系(月額フィー型/成功報酬型、手数料率の相場)を理解し、「高い」と感じる前にコストの内訳を確認する
- ステップ1〜2: 求める人材像をジョブディスクリプションで言語化し、条件の優先順位を発注側で決めておく
- ステップ3: 複数エージェントの並走を、運用ルール(候補者の一元管理・同一要件の共有・フィードバックの徹底・2〜3社への絞り込み)とセットで判断する
- ステップ4: エージェント・直接採用・マッチングプラットフォームを、案件特性に応じて使い分ける
- ステップ5: 紹介後の選考で担当範囲・技術力・稼働条件を見極め、見送り理由を具体的にフィードバックして次の紹介精度を上げる
全体を貫くのは、「エージェントに任せれば良い人が見つかる」という発想から、「発注側が要件定義・選定・並走管理・フィードバックを主導する」という発想への転換です。ミスマッチや費用対効果への不満の多くは、エージェントの能力ではなく、発注側の準備不足から生まれます。裏を返せば、準備を具体的な手順に落とし込めば、支払う手数料が同じでもマッチング精度は大きく改善できます。
発注側の準備、とりわけジョブディスクリプションの作成や要件の優先順位づけをさらに体系的に進めたい場合は、フリーランスエンジニア採用に関する採用ガイド資料も参考になります。本記事の5ステップを実際の採用活動に当てはめながら、自社にとっての「使いこなし」の型をつくっていってください。



