SaaS開発を外注するガイド2026|費用相場・開発会社の選び方・失敗しない進め方を解説

「自社でSaaSプロダクトを作りたいが、社内に技術者がいない。」「どの受託開発会社に相談すればいいかわからない。」「費用感も進め方もまったく想像がつかない。」——SaaSプロダクトの立ち上げを検討しているスタートアップ創業者や新規事業担当者から、こういった声をよく耳にします。
この記事は、既存のSaaSを業務で使いたい方ではなく、SaaSプロダクトを外注で開発したい発注者のための記事です。「業務に使うSaaSツールを選ぶ」記事とは読者の立場が根本的に異なります。SaaSツールの比較・選定についてはこちらの記事をご覧ください。
SaaS開発の外注で失敗する根本的な原因は、「開発会社の技術力の低さ」ではありません。多くの場合、「SaaSはリリース後も継続的に改善し続けるプロダクトである」という前提を共有できていない開発会社を選んだことが原因です。
この記事では、費用相場(MVP 50〜300万円、基本機能 300〜700万円、複雑機能 700万円以上)を整理した上で、SaaS開発の外注先選びで最も重要な「継続開発体制の確認」を中心に、失敗しない進め方を解説します。
この記事でわかること
- SaaS開発と通常のシステム開発の根本的な違い
- フェーズ別の費用相場と見積もりの妥当性チェック
- SaaS開発経験のある会社を見分ける4つの視点
- MVP→グロースフェーズを見据えた外注の流れ
- よくある失敗パターン3選とその回避策
- リリース後の継続開発体制を事前に確認する5つの質問

目次
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
SaaS開発の外注とは?通常のシステム開発との違い
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由でソフトウェアをサービスとして提供するプロダクトです。月額・年額のサブスクリプションで課金し、ユーザーは複数の企業(テナント)が同一システムを利用します。
通常の業務システム開発との違いは3点あります。
SaaSと通常のシステム開発の3つの根本的な違い
違い①:開発が終わらない
通常の業務システムは「要件定義→開発→納品」で完結します。しかしSaaSは、リリース後も継続的に機能追加・改善を繰り返すことが前提です。競合他社がアップデートすれば対抗する必要があり、ユーザーのフィードバックを反映し続けることが解約率の低下につながります。
違い②:不特定多数のユーザーが使う
通常の社内システムは特定の社員だけが使います。SaaSは不特定多数の顧客企業(テナント)が同一のシステムを使います。そのため、各テナントのデータを安全に分離する「マルチテナント設計」が技術的に必要で、これはSaaS開発特有のスキルです。
違い③:サブスクリプションで収益化する
納品して終わりではなく、ユーザーに毎月継続して使ってもらうことで収益が生まれます。課金システム・解約防止機能・利用分析ダッシュボードといったビジネス継続に直結する機能の実装が求められます。
この3つの違いが「外注先の選び方を根本から変える理由」です。技術力だけでなく、「継続開発を一緒に走れる体制があるか」が最も重要な選定基準になります。
詳しくは既製SaaS導入と自社SaaS開発の選び方で解説しています。
「自社SaaSを作る」vs「既製SaaSを使う」の判断基準
外注開発を検討する前に、本当に自社でSaaSプロダクトを作る必要があるのかを確認しましょう。
自社SaaSを作るべきケース
以下に当てはまる場合は、自社SaaS開発が有力な選択肢です。
- SaaSプロダクトを事業として展開したい(B2B SaaSビジネスの立ち上げ)
- 既存のSaaSでは代替できない独自業務フローがある
- ソフトウェアの機能自体が競合との差別化の核心になる
既製SaaSで十分なケース
以下に当てはまる場合は、既存のSaaSツールを選ぶことを先に検討してください。
- 自社内部の業務効率化が目的(CRM・勤怠管理・経費精算など)
- 技術リソースの継続確保が難しい(リリース後に社内エンジニアを採用する見込みがない)
- 初期開発コストを極力抑えたい
判断軸 |
自社SaaS開発 |
既製SaaS導入 |
|---|---|---|
目的 |
プロダクト事業化 |
社内業務効率化 |
予算 |
開発・継続費を確保できる |
月額費用のみ |
継続リソース |
長期パートナー会社を確保できる |
不要 |
差別化の必要性 |
ソフトウェア機能が競合優位の源泉 |
ツールは汎用品で問題ない |
既製SaaSの選定・比較についてはSaaS導入と自社開発の比較ガイドをご覧ください。
SaaS開発の費用相場(フェーズ別:MVP〜本格版〜グロース)

SaaS開発は「一度に全機能を作る」のではなく、フェーズを分けて開発するのが標準的なアプローチです。フェーズ別の費用相場を把握しておきましょう。
フェーズ別費用相場
フェーズ |
内容 |
費用目安 |
期間目安 |
|---|---|---|---|
MVP(最小機能版) |
コアな1〜2機能のみ実装。市場検証が目的 |
50〜300万円 |
1〜3ヶ月 |
基本機能版 |
課金システム・マルチテナント・管理機能を実装 |
300〜700万円 |
3〜6ヶ月 |
本格版(複雑機能) |
外部API連携・高度な分析機能・スケーラビリティ対応 |
700万円以上 |
6〜12ヶ月 |
継続運用費 |
保守・インフラ・月次アップデート |
月4〜20万円 |
継続 |
MVP(Minimum Viable Product)についてはMVP開発とは?メリットと進め方で詳しく解説しています。
費用を左右する主な要因
SaaS開発の費用は以下の要因によって大きく変わります。
- 認証・マルチテナント設計の複雑さ: シングルテナントか、複数企業が同一DBを共有するか
- 外部API連携の数: 決済(Stripe)・メール・Slack・SalesForce連携など
- 管理画面・分析ダッシュボード: テナント管理・利用分析・請求管理の有無
- 課金・プラン管理機能: 複数プラン・トライアル・解約フローの実装
見積もりの妥当性を見抜く3つのチェックポイント
開発会社から見積もりを受け取ったら、以下の3点を必ず確認してください。
チェック①:継続開発のコストが試算に含まれているか
MVPリリース後の継続改善にかかる月次費用が示されているかを確認します。「MVP 200万円」だけが提示され、その後のコストに言及がない見積もりは要注意です。
チェック②:インフラ費用(AWS/GCP等)が月次コストに含まれているか
SaaSはクラウドインフラで動かすため、月額のサーバー費用が発生します。規模に応じて月数万円〜数十万円になることもあります。この費用が見積もりに含まれているか確認しましょう。
チェック③:要件定義・設計費がスコープに含まれているか
要件定義費が含まれていない見積もりは、後から「仕様変更費」として膨らむリスクがあります。要件定義を含む見積もりかどうかを最初に確認してください。
詳細な費用相場についてはシステム開発の費用相場ガイドをご覧ください。
SaaS開発を外注できる会社の種類と選び方
「SaaS開発」を標榜する会社は多数存在しますが、実際の経験・体制は会社によって大きく異なります。
外注先の種類と特徴
種類 |
特徴 |
向いているケース |
|---|---|---|
大手SIer |
実績豊富・信頼性高いが、単価が高くアジャイル対応が弱い |
エンタープライズ向け大規模SaaS |
Web系受託開発会社 |
スピードが速い・コスト合理的だが、SaaS設計経験はまちまち |
MVP重視・スピード優先の場合 |
MVP特化・スタートアップ支援 |
MVP開発は得意だが、グロースフェーズの継続体制が不明なことも |
市場検証フェーズ |
ラボ型開発会社(継続開発特化) |
リリース後の継続改善に強い。月次契約で伴走 |
MVP後もずっと一緒に伴走してほしい場合 |
SaaS開発経験を見極める4つの確認ポイント
確認ポイント①:マルチテナント・課金機能の実装実績
「SaaS開発の実績があります」と言っている会社でも、実際はシングルテナントのWebアプリだったケースがあります。「複数企業が使うマルチテナント設計」「Stripeや課金システムの実装」の経験が具体的にあるかを確認してください。
確認ポイント②:リリース後の継続開発実績
同じ会社でMVPリリース後のグロースフェーズも担当した実績があるかを確認します。「MVPを作ったら後はお任せ」という会社では、リリース後に開発会社が変わってしまうリスクがあります。
確認ポイント③:アジャイル・スクラム開発への対応能力
SaaS開発ではユーザーフィードバックを反映した高速な改善サイクルが求められます。ウォーターフォール型の一括開発にしか対応していない会社は、SaaSの継続開発フェーズで機能しないリスクがあります。
確認ポイント④:インフラ・セキュリティ知識の深さ
SaaSは可用性・スケーラビリティ・セキュリティの要件が高いです。AWS/GCPなどのクラウドインフラの設計・管理経験があるか、障害対応体制はどうなっているかを確認しましょう。
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
外注の流れ:企画〜要件定義〜MVP開発〜継続改善
SaaS開発の外注は、以下のステップで進めるのが標準的なアプローチです。
Step 1:事業検討・ターゲット定義
まず「誰の何の課題を解決するSaaSか」を明確にします。ペルソナ・課題・解決方法・マネタイズ方法を整理した「サービス概要書」を作成しましょう。この段階で開発会社に相談しながら進められる会社を選ぶのが理想的です。
発注者がやること: ターゲット顧客の課題仮説・競合調査・マネタイズモデルの整理
Step 2:要件定義
MVPに含める機能のスコープを決定し、技術選定・費用見積もりを行います。
要件定義は発注者が主導すべき理由: 要件定義を開発会社に丸投げすると、開発会社の都合に合わせたスコープになりやすく、発注者が「主導権を持てない」状態になります。「どの機能がMVPに必須か」は事業の判断であり、発注者が決めるべきことです。
要件定義の詳しい進め方はシステム開発の要件定義ガイドをご覧ください。
Step 3:MVP開発
「ユーザーに価値を届ける最小限の機能」だけを最短で実装します。完璧を目指さず、「コアな価値を検証できる最小限」に絞ることが重要です。
発注者がやること: MVPスコープの最終確認・週次レビューへの参加・フィードバック収集の準備
Step 4:ユーザーフィードバック・PMF検証
MVPをリリースし、実際のユーザーの行動データ・フィードバックを収集します。解約率・継続率・機能の利用状況を分析し、「このSaaSは本当に使われているか」を検証します。
Step 5:本格開発(課金・マルチテナント・管理機能の拡充)
PMFの手応えを得たら、本格的な機能拡充に移ります。課金システム・複数テナント対応・利用分析ダッシュボードなどを実装します。
Step 6:グロースフェーズ(継続的機能追加・改善)
ユーザーのフィードバックをバックログに積み上げ、継続的に機能追加・改善を行います。このフェーズが最も長く続き、「ずっと一緒に走れる開発パートナー」であることが重要になります。
よくある失敗パターン3選とその回避策
SaaS開発を外注した企業の失敗事例を分析すると、失敗のパターンはほぼ3つに集約されます。
失敗パターン①:MVP後の継続開発体制を決めずに発注し、リリース後に開発会社が変わった
なぜ起きるか
「MVPを作ってほしい」という依頼に対し、単発の受託開発として請けた会社に発注したケースです。会社の体制としてMVP後の継続開発を想定していないため、リリース後に「次フェーズはお受けできません」と言われてしまいます。新しい会社に引き継ぐ際、コードの品質・ドキュメント不足から大規模な改修が必要になり、追加コストが発生するケースが多いです。
回避策
発注前に「MVPリリース後の継続開発をどういう形で担当できるか」を明示的に確認し、契約に盛り込みます。「MVP後の継続開発の実績」を確認することも重要です。
失敗パターン②:スコープを欲張りすぎて「MVP」が2年後に完成した
なぜ起きるか
競合SaaSの全機能を「最初から入れたい」という発注者の要望と、要件を絞り込まないまま開発を始めてしまった開発会社の双方の問題です。機能が膨らむにつれて開発期間・費用が際限なく増大し、市場に出るのが大幅に遅れます。
回避策
MVPの定義を「ターゲットユーザーが価値を実感できる最小限の機能セット」に絞り込みます。「あったら便利」な機能はすべてMVP後のバックログに回す判断を、発注者と開発会社が一緒に行います。
失敗パターン③:マルチテナント対応を後回しにして大規模改修が必要になった
なぜ起きるか
「まず自社用のシングルテナントとして作り、後からマルチテナント化しよう」という判断で開発を始めたケースです。しかし、マルチテナント対応はデータベース設計・認証設計の根幹に関わるため、後から対応しようとすると大規模なアーキテクチャ改修が必要になります。
回避策
初期設計の段階からマルチテナントを想定したアーキテクチャで設計します。SaaS特有の設計経験がある開発者が最初から参加していることを確認してください。
リリース後の継続開発体制を事前に確認する5つの質問

開発会社に相談・提案依頼をする際に、以下の5つの質問を必ず確認してください。回答の質で「本当にSaaSの継続開発ができる会社か」を判断できます。
質問1:「MVPリリース後も同じチームが継続開発を担当できますか?」
- 良い回答例:継続開発サービス(ラボ型・準委任型)の具体的なプランと月額費用感を提示できる
- 危険なサイン:「都度ご相談ください」で契約形態・費用が不明
質問2:「月次・週次でどのようなコミュニケーション体制を取りますか?」
- 良い回答例:週次定例・Slackチャンネル・GitHubイシュー管理・バックログ共有ツールを具体的に説明できる
- 危険なサイン:「完成したらご連絡します」「ご要望があれば対応します」
質問3:「SaaS特有の課金システム・マルチテナント設計の実績を教えてください」
- 良い回答例:具体的なプロジェクト名・技術的アプローチ(Stripe連携・スキーマ設計等)を説明できる
- 危険なサイン:「SaaS開発は多数対応しています」と言うが具体的な内容を説明できない
質問4:「月次の継続開発費用の目安と契約形態を教えてください」
- 良い回答例:ラボ型・準委任型などの月額費用感と人員構成(エンジニア何人月分か)を説明できる
- 危険なサイン:「納品後に改めて見積もります」でMVP後のコストが不透明
質問5:「インフラのスケーリング・障害対応の体制はどうなりますか?」
- 良い回答例:監視ツール(CloudWatch等)・オンコール体制・障害対応時間の目安を具体的に説明できる
- 危険なサイン:「AWSを使えば自動的にスケールするので大丈夫です」とインフラ管理を軽視している
秋霜堂株式会社では、MVP開発後も同じチームが継続してプロダクトの改善を担当する「ラボ型開発」を提供しています。詳しくはラボ型開発サービスをご覧ください。
まとめ:SaaS外注で成功するための「開発会社との関係設計」
SaaS開発の外注を成功させるために、以下のチェックリストで確認してください。
発注前チェックリスト
- 自社SaaS開発が本当に必要か(既製SaaSとの比較)を確認した
- フェーズ別の費用感(MVP〜本格版〜グロース)と月次運用コストを把握した
- SaaS開発経験を4つの視点(マルチテナント・継続開発・アジャイル・インフラ)で確認した
- MVP→継続開発の流れを計画に組み込んだ
- よくある失敗3パターンの回避策を把握した
- 継続開発体制を確認する5つの質問を準備した
SaaS開発の外注で最も重要なのは、「技術力が高い会社を選ぶこと」ではありません。「リリース後も継続的にプロダクトを一緒に育てていける開発パートナーを選ぶこと」です。
開発会社選びを「単発の発注先」ではなく「長期的な開発パートナー」として捉えると、確認すべき項目・質問すべき内容が自然と変わります。この「関係設計」の視点が、SaaS外注を成功させる最大のポイントです。
秋霜堂株式会社では、スタートアップや新規事業の「MVP 2ヶ月対応」から、リリース後の継続改善を担うラボ型開発まで、プロダクトの成長に一貫して伴走しています。SaaS開発の外注についてのご相談はお気軽にどうぞ。
作業時間削減
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システム開発が可能に
秋霜堂株式会社について
秋霜堂は、Web開発・AI活用・業務システム開発を手がけるシステム開発会社です。要件定義から設計・開発・運用まで一貫してご支援しています。
システム開発のご相談や、自社課題に合った技術的アプローチについてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
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