システム開発RFPの書き方完全ガイド|ベンダーが本気になる提案依頼書の作り方

システム開発の外注を検討しているとき、「RFP(提案依頼書)を作れ」と言われて困った経験はありませんか。テンプレートをダウンロードしても、いざ書こうとすると手が止まってしまう。そんな方は少なくありません。
「要件がまだ曖昧なのに書けるのか」「何をどこまで書けばいいのか」「書いても本当にいい提案が来るのか」——RFP作成に踏み出せない理由は、一つではありません。
本記事では、実際にシステム開発会社として数多くのRFPを受け取ってきた経験から、「ベンダー(受注側)が本気になるRFP」の書き方を解説します。記載すべき必須項目の説明だけでなく、「なぜ書けないのか」という着手障壁の解消、さらにありがちな失敗パターンまで踏み込んでお伝えします。
RFPは完璧に仕上げる必要はありません。大切なのは「伝わること」です。この記事を読み終わった後、今週中にRFPのドラフトを書き始められる自信をつけていただければ幸いです。

目次
【サンプル】システム開発 提案依頼書(RFP)

この資料でわかること
こんな方におすすめです
RFP(提案依頼書)とは?システム開発になぜ必要なのか

RFP(Request for Proposal)とは、発注者がシステム開発会社(ベンダー)に対して作成する「提案依頼書」です。自社が抱える課題、システム化によって解決したいこと、求める機能の概要、予算・スケジュールの見通しなどをまとめ、ベンダー側に提案書の作成を依頼します。
システム開発の外注において、RFPはなぜ必要なのでしょうか。その理由は「認識のズレを防ぐため」に尽きます。
システム開発は、要件が少し変わるだけで費用・工数・スケジュールが大きく変動します。ベンダーは受け取った情報をもとに提案を作りますが、伝える情報が曖昧だと、ベンダーが「きっとこういうことだろう」と独自に解釈を補完してしまいます。そのズレが後になって発覚したとき、追加費用・スケジール延期・手戻りの多発といったトラブルに発展します。
RFPは「情報を整理して伝える文書」ですが、同時に「発注者自身が自社の要件を整理する機会」でもあります。RFPを書く過程で「そもそも何を解決したいのか」が明確になり、プロジェクト全体の成功率が高まります。
RFPを作らずに発注するとどうなる?(失敗事例)
RFPを用意せずに「とりあえず話を聞いてもらおう」と発注すると、どうなるでしょうか。実際によくあるパターンを紹介します。
パターン1: 見積もりがバラバラで比較できない
RFPがない状態で複数のベンダーに見積もりを依頼すると、各社が「自分たちの解釈」に基づいた提案書を出してきます。前提が違うため金額・スコープ・期間がバラバラで、どれが良いのか比較のしようがありません。
パターン2: 契約後に「そんなこと聞いてない」が多発する
RFPを作らないと、口頭での認識合わせが中心になります。担当者同士の理解が一致していたとしても、それが文書化されていなければ後から「言った」「言わない」の争いになりがちです。特に、セキュリティ要件や保守サポートの範囲などは、RFPに明記されていなければベンダーは対象外と解釈することが多いです。
パターン3: 「こんなはずじゃなかった」完成品が届く
要件が曖昧なまま開発が進むと、完成したシステムを見て「使いにくい」「業務フローに合っていない」という事態になりかねません。開発は終わっているため、修正には追加費用がかかります。
RFI・RFQとの違い
RFPと似た言葉に「RFI」「RFQ」があります。それぞれの違いを把握しておきましょう。
用語 |
正式名称 |
役割 |
|---|---|---|
RFI |
Request for Information |
情報提供依頼書。ベンダー選定の前段階で、市場の状況や各社の技術・実績を調査するために使用 |
RFP |
Request for Proposal |
提案依頼書。要件をまとめてベンダーに具体的な提案書の作成を依頼 |
RFQ |
Request for Quotation |
見積依頼書。仕様が確定した段階で、価格の見積もりだけを依頼 |
多くのシステム開発プロジェクトでは「RFI(情報収集)→RFP(提案依頼)→契約・要件定義」という流れをたどります。すでにベンダー候補が絞られており、詳細な提案が欲しい段階ではRFPが適しています。
RFP作成前に必ず整理すること(書き出しの前準備)
「RFPを書こう」と思ったものの、何から始めればいいか分からない。それは多くの場合、「準備なしで書き始めようとしている」から起きています。RFPを書く前に、以下の整理を先に行いましょう。
「要件が曖昧なままでもRFPは書けるのか?」という疑問に答える
結論から言うと、「要件が完全に固まっていなくても、RFPは書けます」。
そもそも要件を完全に固めるのは、要件定義のフェーズ(発注後)の役割です。RFPの役割は「自社が解決したいことと、その大まかな方向性を伝えること」であり、細部の仕様をすべて確定させる必要はありません。
ただし、以下の3点は書き始める前に整理しておく必要があります。
- なぜシステムが必要なのか(目的・課題): 「業務効率化したい」ではなく「月次集計作業に毎回3人×2日かかっており、これを1日以内にしたい」レベルの具体性が望ましい
- 誰が使うのか(利用者・規模): 利用部署・利用者数・利用頻度の概算
- いつまでに、いくらで(期限・予算の概算): 精度が低くても構いません。「来期4月稼働目標、予算は300〜500万円の想定」程度で十分です
これらが答えられれば、RFPの草稿は書き始められます。
社内関係者へのヒアリング:誰に何を聞くべきか
RFPを経営企画部や情報システム部門の一人が書こうとすると、「現場の要件」が漏れることがよくあります。実際にシステムを使う人、業務に詳しい人に話を聞く機会を設けましょう。
確認すべき相手と主な質問例は以下の通りです。
確認すべき相手 |
主な質問内容 |
|---|---|
現場の業務担当者 |
今の業務でどこに時間がかかっているか。システム化されたら何が楽になるか |
IT・情シス担当者 |
既存システムとの連携要件。セキュリティ・インフラ上の制約 |
予算管理者(経営層) |
予算の上限、投資対効果への期待 |
法務・コンプライアンス担当 |
データ取り扱い・法令遵守の要件 |
このヒアリングを経てから書き始めると、RFPの密度が格段に上がります。
RFPに記載すべき必須項目と書き方

RFPは大きく3つのセクションで構成されます。それぞれの書き方を見ていきましょう。
セクション①:概要(背景・課題・目的・ゴール)
概要セクションは、RFP全体の「文脈」を伝える部分です。ベンダーはこのセクションを読んで「自社がどんな課題を抱えているか」を理解し、提案の方向性を決めます。
プロジェクトの背景・現状の課題
現在どんな問題が起きているか、具体的に記載します。「業務が非効率」ではなく、「月次の請求書処理に4名×3日かかっており、入力ミスが月10件発生している」のように、数値を使った記述が効果的です。
システム化の目的・ゴール
「何のためにシステムを導入するのか」を明確に記載します。目的は「業務効率化」ではなく「月次処理時間を現在の3日から1日以内に削減し、入力ミスをゼロにする」のように、達成状態を具体的に示しましょう。
現在のシステム構成(AS-IS)
現在使っているシステムやツール(基幹システム、スプレッドシート、外部APIなど)を記載します。新システムとの連携要件を判断するために必要な情報です。
セクション②:提案依頼内容(機能要件・非機能要件・スケジュール・予算)
機能要件
「このシステムで何ができるべきか」を記載します。全機能を詳細に書く必要はありません。「必須機能(Must)」と「あれば望ましい機能(Want)」の2段階で整理すると、ベンダーが提案しやすくなります。
非機能要件
機能以外の要件(セキュリティ・パフォーマンス・可用性・拡張性など)を記載します。これが抜けていると、後から「そんなセキュリティ要件は聞いていない」というトラブルになります。社内のIT担当者と相談して記載しましょう。
スケジュール(要件定義〜稼働時期)
要件定義の開始予定、システムの稼働目標日などを記載します。詳細なガントチャートは不要で、「2026年4月稼働目標」「2026年1月から要件定義着手希望」程度の粒度で問題ありません。
予算規模
「予算は非公開」にする発注者も多いですが、予算感を開示するとベンダーはそれに合わせた最適な提案をしやすくなります。幅を持たせた表記(「300〜500万円を想定」)でも十分です。公開できる場合はぜひ明示することをお勧めします。
セクション③:選考方法(評価基準・スケジュール・連絡先)
評価基準
どんな観点でベンダーを選定するかを事前に明示します。「提案内容・費用・開発体制・保守サポート体制の4観点で総合評価」のように具体的に記載すると、ベンダーが提案書に力を入れる部分が明確になります。
選考スケジュール
提案書の受領期限、ヒアリングの予定日程、選定結果の通知時期を記載します。ベンダー側も準備が必要なため、余裕のあるスケジュールを設定しましょう。
連絡先・提出方法
提案書の提出先と担当者の連絡先を記載します。質問があった場合の窓口も明示しておくと、認識齟齬の防止になります。
ベンダーに響くRFPにするための3つのポイント

ここからは、受注側(システム開発会社)として実際に多くのRFPを受け取ってきた経験から、「このRFPは本気で取り組みたい」と思うポイントをお伝えします。
ポイント①:具体的な数値・指標を使う(曖昧表現の排除)
「業務効率化したい」「処理速度を上げたい」という記述では、ベンダーは提案の方向性が定まりません。「月次処理に現在4人日かかっているものを1人日以内にしたい」「レスポンスタイムを現在の5秒以内に改善したい」のように、数値で目標を示すと、ベンダーは「この要件を満たすにはどんな設計・技術が必要か」を具体的に考えられます。
避けるべき表現の例:
- 「ユーザーが使いやすいUI」→「社内で実施したユーザビリティテストでタスク完了率90%以上を目標」
- 「スピーディな処理」→「1万件のデータ処理を3分以内に完了」
- 「安全なシステム」→「ISO/IEC 27001の認証を取得しているベンダーに依頼したい」
ポイント②:「なぜこのシステムが必要か」の背景を丁寧に書く
ベンダーに真に役立つ提案をしてもらうためには、「現状の課題と、それがなぜ生じているか」という背景情報が重要です。
例えば、「受注管理システムを作りたい」というだけでは、ベンダーは汎用的な提案しかできません。しかし「現在Excelで受注管理をしているが、複数担当者が同時編集してデータが壊れるトラブルが月2〜3件発生しており、顧客からのクレームにつながっている」という背景があれば、ベンダーは「同時編集制御」「変更ログの記録」「アラート機能」などを盛り込んだ具体的な提案ができます。
背景を共有することで、発注者が気づいていなかった解決策をベンダーが提案してくれることもあります。
ポイント③:評価基準を事前に開示する
「どんな提案が評価されるのか」を事前に示すことは、ベンダーにとって非常に重要です。評価基準が分からないままでは、どの観点に力を入れて提案書を書けばいいのかが判断できません。
例えば「費用30%・技術力30%・保守体制20%・類似実績20%」のように、重み付けまで示すとさらに効果的です。ベンダーが自社の強みを活かした提案を作りやすくなり、結果として発注者が受け取る提案の質が高まります。
よくある失敗パターン(これをやると期待外れの提案が来る)

受注側として数多くのRFPを受け取ってきた経験から、「残念なRFP」のパターンをご紹介します。以下の項目に該当しないか、RFP提出前にセルフチェックしてみてください。
パターン1:「なぜこのシステムが必要か」が書かれていない
「受注管理システムを開発してほしい」という一文だけのRFPは、ベンダーが提案書を書きようがありません。背景・課題・目的がなければ、画一的な提案しか来ません。
パターン2:要件が「〜したい」レベルにとどまっている
「使いやすいシステムにしてほしい」「データの入力が楽になるといい」は要件ではありません。「誰が」「何のために」「どんな状態にしたいのか」を具体的に記載しましょう。
パターン3:非機能要件が一切ない
機能要件だけが書かれており、セキュリティ・性能・可用性などへの言及がまったくないRFPは、後から大きなトラブルになりがちです。ベンダーはRFPに書かれていないことは「対象外」と解釈することが多いためです。
パターン4:予算が完全に非公開
予算を伏せることでベンダーに競争させようとする意図は分かりますが、予算感がまったくないと、ベンダーはどの規模の提案を出せばいいか判断できません。「高機能すぎて予算オーバー」「機能が不足しているが安い」という提案が混在し、選定に苦労します。
パターン5:評価基準がない
「良い提案を出した会社を選ぶ」では、ベンダーは何を重視して提案書を書けばいいか分かりません。「費用重視か、技術力重視か」「実績を重視するか」という基準を示すことで、提案の質が上がります。
パターン6:RFP提出期限が短すぎる
RFPを受け取ってから提案書を作成するには、通常2〜4週間程度必要です。「1週間後に提案書を提出してください」という依頼では、十分な提案が出てきません。余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。
パターン7:担当者が「書くこと」を目標にしている
「経営層に言われたからRFPを作った」という状況では、RFP全体に「目的意識」が感じられないことがあります。ベンダーが提案書を書きながら「この発注者と一緒に仕事をしたい」と思えるRFPは、書き手が「いい提案を引き出したい」という意図を持っているものです。
RFPテンプレートを活用して、今日から書き始めよう
ここまでRFPの書き方を解説してきましたが、「まずテンプレートを使って書き始めたい」という方のために、秋霜堂では無料のRFPテンプレートをご用意しています。
システム開発 提案依頼書(RFP)テンプレートをダウンロード
このテンプレートは、本記事で解説した3つのセクション(概要・提案依頼内容・選考方法)の構成に沿って作られており、各項目の記入例も含まれています。テンプレートのダウンロード後、本記事で学んだ「書き方のポイント」を参照しながら埋めていくと、効率よくRFPを作成できます。
また、「RFPを作る前の段階から一緒に考えてほしい」「要件整理からサポートしてほしい」という方は、お気軽にご相談ください。秋霜堂では構想段階からの伴走支援を強みとしており、RFP作成のご支援も対応しています。
まとめ:RFP作成は「完璧」より「伝わる」ことを目指そう
この記事では、システム開発を発注するためのRFP(提案依頼書)の書き方を、受注側の視点からお伝えしました。最後に重要なポイントをまとめます。
RFP作成の要点:
- RFPは「完璧な仕様書」ではなく「伝わる要件書」でよい
- 書く前に「課題・目的・予算・期限の概算」を社内で整理する
- 3つのセクション(概要・提案依頼内容・選考方法)を順番に埋める
- 具体的な数値を使い、「なぜ必要か」の背景を丁寧に書く
- 評価基準を事前に開示することで、提案の質が高まる
「要件が固まっていないと書けない」と躊躇する必要はありません。RFPはベンダーとの対話の出発点です。提案書を受け取った後、ヒアリングを通じて要件をさらに深めていけばよいのです。
まずはテンプレートに沿ってドラフトを作成し、社内関係者にレビューしてもらいましょう。そこから少しずつ磨いていくことで、ベンダーが本気で取り組みたくなるRFPが完成します。
作業時間削減
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秋霜堂株式会社について
秋霜堂は、Web開発・AI活用・業務システム開発を手がけるシステム開発会社です。要件定義から設計・開発・運用まで一貫してご支援しています。
システム開発のご相談や、自社課題に合った技術的アプローチについてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
【サンプル】システム開発 提案依頼書(RFP)

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