「競合もAIを使い始めた。うちも何かAIを業務に取り入れろ」——経営層からこう指示され、AI開発の発注窓口を任されたものの、いざ動こうとすると最初の壁にぶつかります。「AIで、自社の何を・どう作ればいいのか」がまったく描けないのです。
ChatGPTの話題や業務効率化のニュースは耳に入ってきます。けれど、自社の受発注処理・問い合わせ対応・在庫管理・報告書作成といった地味な日常業務に、どういう形でAIを入れればいいのかは、事例記事を何本読んでも見えてきません。掲載されているのは他社の華々しい成功例ばかりで、「うちのこの業務に当てはめるとどうなるのか」が分からないからです。
その状態のままAI開発会社に相談すると、決まって「御社は何を実現したいですか」と逆に問われます。答えに詰まり、結局ベンダーに「で、結局うちは何を作ればいいんですか」と丸投げになってしまう。目的が定まらないまま見積りだけが先行し、意思決定が止まる——多くの発注担当者がこの袋小路に入り込みます。
この行き詰まりの正体は、「AIの種類」や「他社事例」から考え始めていることにあります。発注の意思決定を動かすには、その前に「AIを業務にどう組み込むか」という活用の型(パターン)を押さえ、自社課題からどの型が合うかを逆引きするステップが必要です。
本記事では、発注者が押さえておくべきAI活用を「業務自動化型・意思決定支援型・顧客接点型・コンテンツ生成型・既存システム拡張型」の5類型に整理します。各類型の「向く業務・向かない業務」「難易度・コスト感」「発注時の注意点」をセットで示し、最後に自社の業務課題から型を逆引きする手順までを解説します。読み終えるころには、「うちは△△型で、まず◯◯業務から始めたい」と、自分の言葉で発注目的を語れる状態を目指します。
業種別 AI 活用チェックリスト――製造・物流・医療・飲食・小売向け、自社に最適な AI 活用か判断するための問いかけ集

この資料でわかること
「自社業務に AI を使えるか判断できない」という課題を抱える業種担当者が、本チェックリストを用いることで、自社の業務課題・データ環境・リソースの観点から AI 活用の適否を自己診断できるようにする。
こんな方におすすめです
- 「自社業務にAIが使えるか判断できない」業種担当者
- 「どの業務からAI導入を始めればよいか」迷っている経営者
- 「AI活用の判断軸を持ちたい」DX推進担当者
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AI開発の活用パターンとは——「何を作るか」の前に「どう使うか」を決める
なぜ発注者は「何を作ればいいか」で止まるのか
AI開発の発注がうまく進まない最大の原因は、「AIを導入すること」そのものが目的になってしまう点にあります。本来は「解決したい業務課題」が先にあり、その手段としてAIを選ぶのが自然な順序です。ところが「とにかくAIを入れろ」という号令から始まると、目的と手段が逆転し、「何を作るか」を決められないまま立ち止まってしまいます。
事例記事を読んでも解決しないのは、構造的な理由があります。世に出ている事例の多くは「業種別の成功例」を羅列したもので、「○○業界で売上が△△%伸びた」といった結果は分かっても、「自社のこの地味な業務に、どの形でAIを当てはめればいいか」という橋渡しがありません。華やかな成功例ほど、自社の日常業務とは距離が遠く感じられるものです。
つまり必要なのは、もう1本多くの事例を読むことではなく、「AIを業務にどう組み込むか」という共通の型を手に入れることです。型さえ持てば、無数の事例を「これは業務自動化の例」「これは意思決定支援の例」と整理して読めるようになり、自社業務への当てはめが一気に進みます。
「AIの種類」ではなく「AIの使い方(活用の型)」で考える
AIについて調べると、「識別系AI」「生成系AI」「予測系AI」といった技術の分類がよく出てきます。これらはエンジニアやベンダーが内部で使い分ける重要な軸ですが、発注者が最初に考えるべき軸ではありません。技術の種類から入ると、「ディープラーニングとは」「機械学習との違いは」といった枝葉に迷い込み、肝心の「自社で何を解決するか」から遠ざかってしまいます。
発注者がまず持つべきなのは、「AIを業務のどこに、どういう形で組み込むか」という使い方(活用の型)の視点です。同じ「予測系AI」という技術でも、需要予測に使えば意思決定を支援する型になり、ECサイトのレコメンドに使えば既存システムを拡張する型になります。技術ではなく「業務への組み込み方」で捉えるからこそ、自社の課題と結びつけられるのです。
なお、技術の種類を選ぶ局面は、活用の型を決めた後に必ずやってきます。どの型でいくかが固まったうえで技術を選びたい場合は、AIの種類と業務課題のマッピングを整理したAIの種類と業務課題のマッピングもあわせて参照してください。本記事ではまず、その前段にあたる「使い方の型」を5つに分けて見ていきます。
発注者が押さえるべきAI活用5類型の全体マップ
本記事で扱う5つの活用パターンの全体像を、先に一覧で示します。各類型の詳細はこの後のセクションで順に解説しますが、まずは「自社の業務はどの型に近いか」という当たりをつけるための地図として眺めてみてください。
類型 | 一言でいうと | 代表的な業務例 | 難易度の目安 |
|---|---|---|---|
業務自動化型 | 定型業務をAIに置き換える | 帳票処理・データ入力・仕分け・定型問い合わせの一次対応 | 比較的低い |
意思決定支援型 | 予測・分析で人の判断を補助する | 需要予測・在庫最適化・与信判断・異常検知 | 中〜高(データ蓄積が前提) |
顧客接点型 | 問い合わせ・接客をAIが担う | チャットボット・FAQ自動応答・コールセンター支援 | 中 |
コンテンツ生成型 | 文書・画像・コードをAIが作る | 文書作成・要約・翻訳・資料下書き・画像生成 | 低〜中(チェック体制が前提) |
既存システム拡張型 | 自社システムにAI機能を組み込む | レコメンド・検索高度化・自動分類 | 中〜高(既存システムに依存) |
重要なのは、これらが排他的な選択肢ではないということです。実際の発注では「需要予測(意思決定支援型)の結果を自動でレポート化する(コンテンツ生成型)」のように、複数の型を組み合わせるケースも少なくありません。組み合わせの考え方は記事後半でも触れます。まずは各型を1つずつ理解していきましょう。
【類型1】業務自動化型——定型業務をAIに置き換える

業務自動化型は、ルール化しやすい定型業務をAIに肩代わりさせる型です。帳票や請求書からの項目読み取り、システムへのデータ入力、書類の仕分け、定型的な問い合わせの一次振り分けなどが代表例です。派手さはありませんが、毎日繰り返している地味な作業ほど効果が出やすく、発注者にとって最初の一歩として選びやすいパターンです。
どんな業務に向く・向かないか
向いているのは、「手順が決まっている」「判断基準が言語化できる」「同じ作業を大量に繰り返している」業務です。たとえば、決まったフォーマットの注文書からデータを抜き出して基幹システムに入力する作業や、問い合わせメールを内容ごとに担当部署へ振り分ける作業は、この型と相性が良いといえます。
逆に向かないのは、例外処理が頻発する業務や、その都度人間の総合的な判断が必要な業務です。「フォーマットがバラバラで毎回イレギュラーが出る」「最終的にベテランの勘で決めている」といった業務は、自動化しようとするとかえって例外対応の設計が複雑になり、コストが膨らみがちです。まずは「ルールで8割方説明できるか」を目安に見極めてください。
難易度・コスト感の目安と発注時の注意点
業務自動化型は、5類型の中では比較的着手しやすい部類に入ります。既製のツールやサービスを組み合わせれば実現できるケースも多く、ゼロから複雑なモデルを学習させる必要が少ないためです。ただし「比較的安い」とはいえ、対象業務の量や既存システムとの連携範囲によって金額は大きく変わるため、相場は幅をもって捉えてください(具体的な金額感はのちほど「活用パターンを決めた後、発注で失敗しないために」で触れます)。
発注時に最も重要なのは、自動化したい業務フローを発注前に可視化しておくことです。「誰が・いつ・どんな判断で・何をしているか」が曖昧なままだと、ベンダーも何を自動化すればいいか設計できません。現状の手順を一度書き出し、「ここはルール化できる」「ここは人が判断する」と切り分けておくと、見積りの精度も実装後の満足度も大きく変わります。
【類型2】意思決定支援型——予測・分析で人の判断を補助する

意思決定支援型は、過去のデータから将来を予測したり、大量のデータを分析したりして、人間の判断を補助する型です。需要予測、在庫の最適化、与信判断のスコアリング、設備や取引の異常検知などが代表例です。ここで押さえておきたいのは、AIが「自動で決める」のではなく、あくまで「人が最終判断するための材料を出す」役割にとどまる点です。
どんな業務に向く・向かないか(データ蓄積が前提)
この型が活きるのは、判断の根拠になる過去データが十分に蓄積されている業務です。たとえば数年分の販売実績があれば需要予測の精度が見込めますし、過去の取引履歴があれば与信スコアリングの土台になります。「経験豊富な担当者が勘で読んでいるが、その勘を数字で裏付けたい」という業務は、この型の典型的な適性領域です。
一方で、そもそもデータが蓄積されていない、あるいは紙やバラバラのExcelに散在していて使える状態にない場合は、いきなり予測モデルを作るのは難しくなります。その場合は「まずデータを集める・整える」ところからの取り組みになり、想定以上に時間とコストがかかります。「AIに予測させたいなら、まず過去データがあるか」を最初に確認してください。AIに何ができて何ができないかの線引きはAIで何ができ何ができないかも参考になります。
難易度・コスト感の目安と発注時の注意点
意思決定支援型は、業務自動化型より難易度が上がる傾向があります。求める精度が高いほど、また予測対象が特殊なほど開発は高度になり、費用も上振れしやすいためです。たとえば需要予測AIは300万〜600万円、より幅広いデータ分析AIになると300万〜1,500万円程度が相場とされており、過去データの蓄積が乏しく前処理から必要な場合はさらに上振れすることもあるとされています(GeNEE「AI開発費用の目安」)。
発注時の注意点は2つあります。1つは、データの準備状況を正直にベンダーへ共有することです。「データはある」と伝えても、実態が「使える形に整っていない」場合、後工程で大幅な手戻りが発生します。もう1つは、最初から100点の精度を求めないことです。予測は外れることもある前提で、「予測を人がどう使い、外れたときどうカバーするか」という運用設計まで含めて発注すると、現実的に役立つ仕組みになります。
【類型3】顧客接点型——問い合わせ・接客をAIが担う
顧客接点型は、顧客とのやり取りの一部をAIが担う型です。Webサイト上のチャットボット、FAQの自動応答、コールセンターでのオペレーター支援などが代表例です。24時間対応が可能になり、よくある問い合わせの一次対応を自動化できるため、人手不足や対応スピードの改善を狙う企業に人気のあるパターンです。
どんな業務に向く・向かないか
向いているのは、問い合わせの内容がある程度パターン化されている業務です。「営業時間は」「返品方法は」「料金プランの違いは」といった定型的な質問が大半を占めるなら、AIに一次対応を任せることで、人の担当者はより複雑な相談に集中できます。問い合わせ件数が多く、同じ質問が繰り返される業務ほど効果が大きくなります。
逆に、専門性が高く一件ごとに事情が異なる相談や、クレーム対応のように感情面のケアが重要な接点は、AIだけに任せるのは向きません。無理に自動化すると、かえって顧客満足度を下げてしまうリスクがあります。この型では「AIが対応する範囲」と「人が対応する範囲」の線引きが成否を分けます。
難易度・コスト感の目安と発注時の注意点(誤回答・エスカレーション設計)
顧客接点型のコストは、機能の幅で大きく変わります。AIチャットボットの初期費用は5万〜10万円程度から始められるものもありますが、社内ドキュメント検索や既存システムとの連携、権限管理まで含む高機能なものでは100万円以上、規模によってはそれ以上かかるケースもあります(Walker's「AIチャットボットの開発費用の相場」)。「同じチャットボット」でも、何をどこまでやらせるかで金額帯がまったく違う点に注意してください。
発注時に最も重要なのは、誤回答への備えとエスカレーション設計です。顧客に直接触れる型である以上、AIが間違った案内をすれば企業の信頼に直結します。「AIが答えられない・自信がない質問は、必ず人の担当者へつなぐ」という導線を、発注時の要件に明確に含めましょう。AIにすべてを任せきるのではなく、「AIと人の役割分担」を前提に設計することが、この型を安全に使いこなす鍵です。
業種別 AI 活用チェックリスト――製造・物流・医療・飲食・小売向け、自社に最適な AI 活用か判断するための問いかけ集

この資料でわかること
「自社業務に AI を使えるか判断できない」という課題を抱える業種担当者が、本チェックリストを用いることで、自社の業務課題・データ環境・リソースの観点から AI 活用の適否を自己診断できるようにする。
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- 「どの業務からAI導入を始めればよいか」迷っている経営者
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【類型4】コンテンツ生成型——文書・画像・コードをAIが作る

コンテンツ生成型は、生成AIを使って新しいアウトプットを作り出す型です。文書の作成や要約、翻訳、議事録の整理、資料の下書き、画像の生成などが代表例です。多くの発注者が「AI=ChatGPT」というイメージを持っていますが、この生成AIの活用は、あくまで5類型のうちの1つに過ぎません。まずはその位置づけを正しく捉え直すことが、発注の出発点になります。
どんな業務に向く・向かないか(社内利用と社外公開の違い)
向いているのは、「ゼロから作るより、たたき台があれば早い」業務です。メールやレポートの下書き、長文資料の要約、定型文書の作成などは、生成AIが得意とする領域です。完成品をそのまま使うのではなく、人が手を入れる前提の「下書き生成」と捉えると、効果を実感しやすくなります。
ここで決定的に重要なのが、社内利用と社外公開の線引きです。社内向けの下書きや要約であれば、多少の誤りは人がその場で直せるため、導入のハードルは低くなります。しかし、プレスリリースや公式記事、営業資料のように社外へ出すコンテンツになると、品質・正確性・著作権のリスクが一気に高まります。「社内で使うのか、社外に出すのか」で、必要な体制がまったく変わると認識してください。
難易度・コスト感の目安と発注時の注意点(チェック体制・著作権)
社内向けの活用は既製ツールの導入で始められることも多く、相対的に着手しやすい型です。一方で社外公開を伴う場合は、生成物のチェック体制を業務フローに組み込むことが前提になります。AIが作ったものであっても、既存の著作物に似ていれば著作権侵害のリスクは生じ、「AIが作ったから免責される」という特例はありません(エクサウィザーズ「生成AIの著作権侵害リスク」)。
発注時には、出力をそのまま公開するのではなく、出典の確認・事実関係の検証(ファクトチェック)・既存著作物との類似チェックといった人による確認ステップを必ず設計に含めましょう。とくに商用・社外公開では、担当者だけでなく上長や法務によるダブルチェックを前提にすると安全です。「生成して終わり」ではなく「生成物をどう検証し、誰が責任を持つか」まで含めて発注することが、この型でのトラブル回避につながります。
【類型5】既存システム拡張型——自社システムにAI機能を組み込む
既存システム拡張型は、すでに使っている業務システムやECサイト、基幹システムにAI機能を後付けで組み込む型です。ECサイトへのレコメンド機能の追加、社内検索の精度向上、問い合わせや書類の自動分類などが代表例です。「ゼロから新しいものを作る」のではなく、「今ある資産を賢くする」という発想が、この型の特徴です。
どんな業務に向く・向かないか
向いているのは、すでに稼働しているシステムがあり、そこに蓄積されたデータや機能を活かしたい場合です。たとえば顧客の購買履歴が貯まっているECサイトにレコメンドを足す、社内に大量のドキュメントがある環境で検索を高度化する、といったケースでは、既存資産を土台にできるため投資対効果を見込みやすくなります。
一方で、組み込み先のシステムが古く改修が難しい、外部連携の口(API)が用意されていない、ドキュメントが整備されていないといった場合は、連携そのものに大きな手間がかかります。この型の難易度は「作りたいAI機能」よりも「既存システムの状態」に大きく左右される、という点を理解しておくことが重要です。
難易度・コスト感の目安と発注時の注意点(既存システムとの連携)
コスト感は、組み込み先システムの状態に強く依存します。連携しやすい構成であれば比較的スムーズに進みますが、古いシステムへの組み込みでは、AI機能そのものより連携部分の開発に費用がかさむことも珍しくありません。「AI部分は安くても、つなぎ込みで膨らむ」という構造を念頭に置いてください。
発注時の注意点は、既存システムの仕様・状態を事前に整理してベンダーへ共有することです。どんなシステムを、どのバージョンで、どんな連携手段で使っているのか。これらが不明なまま見積りを依頼すると、後から「連携できないことが判明した」という事態になりかねません。社内のシステム担当者を巻き込み、現状を棚卸ししたうえで発注に臨むと、見積りの精度が大きく上がります。
自社に合う活用パターンの選び方——課題からの逆引き手順

5つの型を理解したら、次はいよいよ「自社はどの型か」を見極める番です。ここで大切なのは、「どのAIが流行っているか」から考えるのではなく、「自社のどの業務課題を解決したいか」から逆引きすることです。順序を逆にするだけで、止まっていた意思決定が動き出します。
業務課題から活用パターンを逆引きする3ステップ
逆引きは、次の3ステップで進めます。
- 解決したい業務課題を1つ書き出す。「AIで何ができるか」ではなく、「今、どの業務で困っているか」から始めます。「問い合わせ対応に人手を取られすぎている」「在庫が余ったり欠品したりを繰り返している」「報告書作成に毎週半日かかっている」のように、具体的な業務の困りごとを1つ選びます。最初から複数を欲張らず、最も切実な1つに絞るのがコツです。
- その課題が5類型のどれに近いか照合する。書き出した課題が「定型処理の繰り返し」なら業務自動化型、「予測や判断の精度を上げたい」なら意思決定支援型、「顧客対応の負荷」なら顧客接点型、「文書や資料の作成負荷」ならコンテンツ生成型、「既存システムを賢くしたい」なら既存システム拡張型、と当てはめます。
- 型を仮決めし、スモールスタートの範囲を絞る。型が見えたら、いきなり全社展開を狙わず、「まずこの部署の、この業務だけ」と対象を小さく区切ります。範囲を絞ることで、コストもリスクも抑えられ、効果検証もしやすくなります。
この3ステップを経るだけで、「AIで何かしたい」という漠然とした状態から、「うちは◯◯業務の課題に対して△△型で取り組む」という具体的な発注の起点へと進めます。
課題×類型の逆引き早見表
ステップ2の照合を素早く行うために、よくある業務課題と相性の良い型を早見表にまとめました。自社の課題に近いものを探してみてください。
よくある業務課題 | 相性の良い活用パターン |
|---|---|
問い合わせが多すぎて対応しきれない | 顧客接点型/業務自動化型 |
帳票・伝票の入力や転記に時間がかかる | 業務自動化型 |
在庫の過不足・需要の読み違いが多い | 意思決定支援型 |
不良品・異常を見逃すことがある | 意思決定支援型 |
報告書・資料・議事録の作成に時間がかかる | コンテンツ生成型 |
翻訳・要約の作業負荷が大きい | コンテンツ生成型 |
ECサイトの購入率を上げたい | 既存システム拡張型 |
社内の情報・ドキュメントが探しにくい | 既存システム拡張型 |
この表はあくまで出発点です。同じ「問い合わせが多い」課題でも、定型質問の一次対応を任せたいなら顧客接点型、メールの自動振り分けで処理したいなら業務自動化型、というように、課題の中身を一段掘り下げると型がより明確になります。具体的な当てはめのイメージを掴みたい場合は、業種別のAIの活用事例も型を意識しながら読むと参考になります。
複数パターンを組み合わせるケース
実際の発注では、1つの型で完結しないこともよくあります。たとえば、需要予測(意思決定支援型)で算出した結果を、毎週の発注会議向けのレポートとして自動で文章化する(コンテンツ生成型)、といった組み合わせです。あるいは、チャットボット(顧客接点型)で受けた問い合わせを内容ごとに自動分類し、担当部署へ振り分ける(業務自動化型)といった連携も考えられます。
組み合わせを検討するときも、いきなり全部を一度に作ろうとしないことが大切です。まず中心となる1つの型でスモールスタートし、効果が確認できてから次の型を足していく。この段階的な進め方であれば、投資のリスクを抑えながら、自社にとって本当に役立つ組み合わせを見つけていけます。
活用パターンを決めた後、発注で失敗しないために
型の当たりがついたら、いよいよベンダーへの発注フェーズです。ここで「型は決まったが目的が曖昧」のまま進めてしまうと、再び「結局何を作るのか」の迷子に戻ってしまいます。型を決めた後にやるべきことを押さえて、発注の意思決定を最後まで動かしましょう。
型を決めたら「目的」と「成功指標」を言語化する
型を選んだら、次は「その型で何を達成したいのか」を具体的な言葉にします。「業務自動化型でデータ入力を自動化する」だけでは不十分で、「月◯時間かかっている入力作業を△時間に減らす」「入力ミスを□%減らす」のように、達成したい状態と測れる指標までセットで言語化します。
この成功指標があると、ベンダーへの伝え方が一気に明確になります。「AIで何かいい感じにしたい」ではなく、「◯◯業務の作業時間を半減させたい。手段として業務自動化型を考えている」と伝えられれば、ベンダーも適切な提案ができ、完成後の評価基準も共有できます。目的と成功指標の言語化は、発注の成否を左右する最重要ステップです。要件の固め方をさらに詳しく知りたい場合はAI開発の要件定義も参考になります。
スモールスタート(PoC)から段階的に発注する
AI開発では、いきなり本格的なシステムを一括で発注するのではなく、まず小さく試して効果を確かめる「PoC(概念実証)」から始めるのが定石です。PoCで「自社のデータと業務で、狙った効果が出そうか」を検証してから本開発に進めば、大きな投資をする前にリスクを見極められます。
PoCの相場は100万〜500万円程度が一般的とされ、企画・要件定義から本開発・運用保守まで含めると、規模によって500万〜4,000万円程度が目安とされています(システム幹事「AI導入の費用相場」)。金額の幅が大きいのは、作りたいものの種類・使うデータ・既存システム連携・求める精度・運用体制によって費用が大きく変わるためです。だからこそ、まずPoCで実現性とおおよその規模感を掴み、段階的に発注を広げていく進め方が、発注者にとって現実的かつ安全な選択になります。
よくある質問(FAQ)
Q. AI開発はどれくらいの費用がかかりますか。 A. 作りたいものの種類や規模によって大きく幅があります。小規模なチャットボットなら初期費用5万〜10万円程度から、需要予測のような本格的な仕組みでは数百万〜数千万円規模になることもあります。まずはPoC(100万〜500万円程度が一般的)で実現性と規模感を確かめるのが安全です。
Q. 自社のデータが少なくてもAIは作れますか。 A. 型によります。需要予測や異常検知などの意思決定支援型は、過去データの蓄積が前提になるため、データが少ないと精度を出しにくくなります。一方、定型業務を自動化する業務自動化型や、生成AIを使うコンテンツ生成型は、大量の自社データがなくても始めやすい型です。データが少ない段階では、まずデータ蓄積が不要な型からスモールスタートする、という選択肢も有効です。
Q. どんなAI開発会社を選べばよいですか。 A. 自社が選んだ活用パターンの実績がある会社を選ぶのが基本です。同じAI開発でも、業務自動化に強い会社、予測・分析に強い会社、既存システム連携に強い会社など得意分野は分かれます。選定の具体的な観点はAI開発会社の選び方で詳しく解説しています。社内に専任の担当が置けない場合は、外部人材を活用して発注体制を補強する方法もあり、外部人材活用戦略が参考になります。
まとめ——活用パターンから逆引きすれば、AI発注の意思決定は動き出す
AI開発の発注が止まる原因は、「AIの種類」や「他社事例」から考え始めてしまうことにあります。発注者がまず手にすべきなのは、業務へのAIの組み込み方を整理した5つの活用パターンです。
類型 | 一言でいうと | 代表的な業務例 |
|---|---|---|
業務自動化型 | 定型業務をAIに置き換える | 帳票処理・データ入力・仕分け |
意思決定支援型 | 予測・分析で人の判断を補助する | 需要予測・在庫最適化・異常検知 |
顧客接点型 | 問い合わせ・接客をAIが担う | チャットボット・FAQ自動応答 |
コンテンツ生成型 | 文書・画像・コードをAIが作る | 文書作成・要約・翻訳・資料下書き |
既存システム拡張型 | 自社システムにAI機能を組み込む | レコメンド・検索高度化・自動分類 |
大切なのは、「どのAIが流行っているか」ではなく「自社のどの業務課題を解決したいか」から逆引きすることです。解決したい課題を1つ書き出し、5類型のどれに近いか照合し、型を仮決めしてスモールスタートの範囲を絞る——この3ステップを踏めば、「うちは◯◯業務の課題に対して△△型で取り組みたい」と、自分の言葉で発注目的を語れるようになります。
最初の一歩は、いま自社で最も困っている業務を1つ紙に書き出し、本記事の早見表で型に当てはめてみることです。型と目的さえ自分の言葉で持てれば、ベンダーとの打ち合わせは「丸投げ」ではなく「相談」に変わり、止まっていたAI発注の意思決定は確実に動き出します。
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