「AIを業務に活用したい」と検討を始めたものの、いざ開発会社から提案を受けると、ある会社は「生成AIで対応できます」、別の会社は「これは識別AIが適切です」と言ってくる。社内会議でも「画像で不良品を見分けるAIを作りたい」と言ったら「それChatGPTで作れるんじゃないの?」と意見が割れた——こうした場面に心当たりはないでしょうか。
実は「AI」と一言で言っても、業務でよく使われるものだけで識別AI・生成AI・予測AIの3種類があり、それぞれ得意な仕事も、必要な入力データも、出てくる結果の形もまったく違います。生成AIが急速に普及した結果、「AI=ChatGPTのようなもの」という認識だけで発注を進めてしまい、後から「本当に必要だったのは識別AIや予測AIだった」と判明するケースが増えています。
この発注ミスは、要件定義書(RFP)に「AIで自動化したい」としか書かないことから始まります。AIの種類が指定されていないため、ベンダーごとに想定する技術が異なり、見積りも提案も大きくばらけて、比較すらできなくなります。
本記事では、発注検討を始めた段階の方が「自社の業務課題にはどの種類のAIが必要か」を自力で判断できるようになることを目的に、識別AI・生成AI・予測AIの違いを業務目線で整理し、業務課題からの逆引きで必要なAIの種類を導けるマトリクスを提供します。ベンダー相談時の質問例も後半で扱うため、読み終えた時点でRFPに具体的なAIの種類を書ける状態を目指します。
はじめての AI 導入ガイド――中小企業が失敗しないための7ステップ

この資料でわかること
AI導入を検討しているが「何から始めればよいか分からない」中小企業の意思決定者に対し、導入プロジェクトの全体像を一気通貫で提示し、「自社でも着手できる」という確信と具体的な行動計画を持ってもらうこと。
こんな方におすすめです
- AI導入を検討しているが、何から始めればよいか分からない
- ベンダーの選び方や費用感がつかめず、判断できない
- 社内でAI導入の稟議を通すための資料が必要
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AI の種類とは——発注前に押さえるべき全体マップ

最初に押さえておきたいのは、「AI」という言葉が指し示す範囲はかなり広く、業務で使う代表的なものだけでも複数の種類があるという事実です。「生成AIで全部できる」というイメージは、生成AIが日常的に使えるツール(ChatGPT等)として爆発的に普及した結果生じた誤解で、実際には業務課題ごとに適したAIの種類が異なります。
「AI」は一つの技術ではなく、複数の種類の総称
「AI」は単一の技術名ではなく、機械学習・ディープラーニング・ルールベース処理などを含む「人間の知的作業をコンピュータで再現する技術群」の総称です。その中でも、業務での使われ方を機能別に整理すると、大きく次の3種類が中心になります。
- 識別AI: 入力データ(画像・音声・テキスト等)を見て「これは何か」を判別する
- 予測AI: 過去のデータから「将来どうなるか」を計算する
- 生成AI: 学習したデータをもとに「新しいコンテンツ」を作り出す
ChatGPTやClaude、Geminiといった一般に知られる対話型AIは生成AIに分類されますが、製造現場の外観検査AIは識別AI、需要予測ツールは予測AIです。「同じAIだから生成AIで全部できる」とは限らないのは、それぞれが解いている問題の種類が異なるからです。
発注者が知っておくべき3種類のAIの全体マップ
3種類のAIを、発注検討で必要な観点で一覧化します。
種類 | 代表的なタスク | 主なインプット | 主なアウトプット | 代表技術 |
|---|---|---|---|---|
識別AI | 分類・認識・異常検知 | 画像・音声・テキスト・センサーデータ | 「何であるか」のラベル(OK/NG・正常/異常・カテゴリ名) | 画像認識(CNN)、音声認識、テキスト分類 |
予測AI | 数値予測・時系列予測 | 過去の販売実績・センサー値・行動ログなど数値データ | 将来の数値(売上・需要・故障時期)や確率 | 回帰モデル、時系列モデル(ARIMA・Prophet・DeepAR等) |
生成AI | 文章・画像・コードの生成 | テキスト指示(プロンプト)、参考データ | 新しい文章・画像・要約・コード | 大規模言語モデル(LLM)、画像生成モデル |
3種類のAIの違いは、検討中の業務課題の「インプット(何を入力するか)」と「アウトプット(何を出力したいか)」を整理すると判別しやすくなります。詳しくはAI・機械学習・ディープラーニングの違いも併せて読むと、技術階層の理解が深まります。
補足カテゴリ(会話AI・実行AI・ルールベース)の位置づけ
上記3種類の他に、文脈によって登場するカテゴリがあります。
- 会話AI(チャットボット・AIエージェント): 「対話する仕組み」を指す呼称で、内部実装としては生成AIや識別AI、検索エンジンを組み合わせて構成されます。詳しくはAIエージェントとはを参照
- 実行AI(エージェント型AI): 自律的にタスクを実行するタイプ。生成AIをコアにして外部システムを操作する構成が一般的
- ルールベースAI: 「もし◯◯ならば△△を返す」というルールを人が定義する仕組み。厳密には機械学習を使わないが、業務システム上は「AI」と呼ばれることがある
発注検討の段階では、まず識別・予測・生成の3軸で課題を整理し、そこに会話・実行・ルールベースを補助的に組み合わせる、という順序で考えるのが現実的です。
識別AI・生成AI・予測AIの違い(非エンジニア向け説明)

ここからは、3種類のAIの違いをエンジニアでなくても判別できるレベルまで掘り下げます。判別のコツは「インプット(何を入れるか)」と「アウトプット(何を出すか)」のセットで考えることです。
識別AI——「これは何か」を判別する
識別AIは、入力されたデータを見て「これは何のカテゴリに属するか」「正常か異常か」を判別するAIです。画像認識・音声認識・テキスト分類などが代表例で、出力は基本的に「ラベル(カテゴリ名や2値判定)」になります。
業務例
- 製造ラインで撮影された製品画像を見て「OK/NG」を自動判別する(外観検査)
- 問い合わせメールを読んで「請求関連/技術問い合わせ/クレーム」に自動分類する
- 監視カメラ映像から「人が転倒した/普段と違う動きをしている」を検知する
特徴的なのは、教師データ(正解付きのデータ)をある程度の枚数用意する必要がある点です。製造業の外観検査では、最低でも数十枚〜数百枚、複雑なケースでは数千枚規模の画像が必要になることが一般的とされています(キーエンス AI外観検査、ブレインズテクノロジー 不良品検出解説)。「とりあえずAIに任せたい」と言っても、教師データを集める準備工程が発注前に発生することは認識しておく必要があります。
予測AI——「将来どうなるか」を計算する
予測AIは、過去のデータからパターンを抽出し、将来の数値や確率を出力するAIです。需要予測・売上予測・故障予測・離反予測などが代表例で、出力は「数値(連続値)」または「クラス確率」になります。
業務例
- 店舗別・商品別の過去の販売実績から「来月の販売数量」を予測する
- 設備の稼働ログから「いつ頃故障する可能性が高いか」を予測する
- 顧客の利用履歴から「解約しそうな顧客」をスコアリングする
予測AIで最も重要なのは「過去データの量と質」です。時系列予測の場合、季節性(年間の周期性)を捉えるためには複数年分のデータが必要になるケースが多く、データの粒度(日次/週次/月次)や欠損の有無も精度に大きく影響します(参考: Salesforce「AI予測とは」、Sony Prediction One「生成AIと予測AIの違い」)。「データはあります」とベンダーに伝える前に、何年分・どの粒度・どの項目があるかを棚卸しすることが、予測AI導入の出発点です。
生成AI——「新しいコンテンツ」を作る
生成AIは、学習したデータをもとに新しいコンテンツ(文章・画像・要約・コード等)を生み出すAIです。ChatGPTに代表される対話型AIや、画像生成AI、議事録自動要約ツールなどが該当します。出力は「新しく作られたコンテンツ」になります。
業務例
- 顧客への返信メール文案を要件を入力するだけで自動作成する
- 議事録の音声から発言要旨を要約する
- 社内文書を検索した結果を、自然な日本語で要約・回答する(RAG構成)
- マーケティング用の画像バリエーションを大量に生成する
生成AIは「ゼロから新しいものを作る」ことに強みがある一方、「事実に基づく正確な回答」が求められる場面ではハルシネーション(事実と異なる回答)のリスクがあります。社内ナレッジに基づく回答を生成するには、後述するRAG(検索拡張生成)の仕組みを組み合わせるのが一般的です(ブレインパッド 生成AIにおけるRAGとは)。
3種類を一覧で比較する
最後に、3種類のAIを一目で比較できる早見表を示します。発注前に「自社の課題はどれに該当するか」を判別する起点としてご活用ください。
観点 | 識別AI | 予測AI | 生成AI |
|---|---|---|---|
何をするか | 入力を分類・認識する | 過去から将来を予測する | 新しいコンテンツを作る |
主なインプット | 画像・音声・テキスト | 過去の数値・時系列データ | プロンプト+参考データ |
主なアウトプット | ラベル(OK/NG・カテゴリ) | 数値・確率 | 文章・画像・コード等 |
必要データ | 教師データ(数十〜数千件規模) | 過去実績(複数年分が望ましい) | 学習済みモデル+業務固有の参考データ |
代表業務 | 外観検査・問い合わせ分類 | 需要予測・故障予測 | 文案作成・要約・RAG回答 |
失敗の主因 | 教師データの不足・偏り | 過去データの粒度・期間不足 | 事実性の担保不足(ハルシネーション) |
判別の質問例として、次の3つを自社の課題に当てはめてみてください。
- アウトプットは「ラベル(判定結果)」か、「数値(予測値)」か、「新しいコンテンツ」か?
- インプットは「画像・音声・既存テキスト」か、「過去の数値データ」か、「指示文(プロンプト)」か?
- 「過去にこういう例があった」というデータが手元にあるか、それとも「何もないところから作りたい」のか?
これに答えられれば、識別/予測/生成のどれが主役かは8割方判別できます。
業務課題別「どの種類のAIを使うか」選択表

ここからは、発注検討で実際に出てくる業務課題を、種類ごとに整理します。本記事の中核セクションです。自社の業務課題が含まれているかを確認しながら読み進めてください。
製造業・物流の業務課題と必要なAI
製造業と物流業は、画像や時系列データを扱う場面が多く、識別AI・予測AIの活躍領域です。
業務課題 | 主に使うAI | 補助的に使うAI | 典型的なインプット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
不良品検知(外観検査) | 識別AI(画像分類・異常検知) | — | 製品画像(OK品・NG品) | 教師データ(NG画像)を不良種類ごとに数十〜数百枚集める必要あり |
予知保全(故障予測) | 予測AI(時系列予測) | 識別AI(センサー異常検知) | 稼働ログ・センサー値の時系列データ | 故障事例が少ないとモデル化が難しい |
需要予測(生産量・在庫量) | 予測AI(時系列予測) | — | 過去の出荷実績・販売実績 | 季節性を捉えるため複数年分の実績が望ましい |
入庫トラックのナンバー認識 | 識別AI(画像認識・OCR) | — | カメラ映像 | 撮影条件(角度・照度)の事前検証が必要 |
配送ルート最適化 | 予測AI+最適化(数理最適化と組み合わせ) | — | 配送先・交通量・実績データ | 純粋なAIではなく最適化アルゴリズムとの組み合わせ |
製造業で典型的な「外観検査をAIに任せたい」は、生成AIではなく識別AIの領域です。生成AIに「この画像は不良品ですか?」と聞くアプローチもありますが、安定した精度・処理速度・コストの観点で、業務利用では識別AIモデルを個別に構築する形が主流です(ブレインズテクノロジー 製造業AI検査)。
物流業界でも、入退場ゲートのナンバープレート認識は識別AI、需要予測や輸送量予測は予測AIと、課題ごとに使うAIが分かれます(Hacobu 物流DXにおけるAI活用)。
小売・EC の業務課題と必要なAI
小売・ECは過去の購買データが豊富にあるため、予測AI(特に時系列予測・需要予測)が主役になりやすい領域です。
業務課題 | 主に使うAI | 補助的に使うAI | 典型的なインプット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
店舗別・商品別の需要予測 | 予測AI(時系列予測) | — | 過去の販売実績(日次・店舗別・SKU別) | 数年分のPOSデータと、天候・イベント等の外部要因データがあると精度が上がる |
レコメンド(おすすめ商品) | 識別AI/推薦アルゴリズム | 予測AI(購入確率) | 顧客の購買・閲覧履歴 | コールドスタート問題(新規顧客・新商品)への対処設計が必要 |
顧客セグメント分析 | 識別AI(クラスタリング・分類) | — | 購買履歴・属性データ | 「分類して終わり」でなく施策に紐付ける運用設計が必須 |
商品説明文の自動生成 | 生成AI | — | 商品スペック・既存の説明文サンプル | 事実誤りチェック(ハルシネーション対策)の運用が必要 |
価格最適化(ダイナミックプライシング) | 予測AI+最適化 | — | 需要予測値・在庫・競合価格 | 「価格を変えて売上がどう動くか」の検証ループが必要 |
「ECサイトの説明文を量産したい」という相談はChatGPTの普及で増えていますが、それは生成AIの典型用途です。一方、「在庫の最適化」は予測AIが主役になります。「AIで何かしたい」では発注できないのは、こうした課題ごとに必要な技術が違うからです。
カスタマーサポートの業務課題と必要なAI
カスタマーサポートは、生成AIと識別AIを組み合わせて使う領域です。問い合わせ対応の自動化=生成AIだけ、ではない点に注意してください。
業務課題 | 主に使うAI | 補助的に使うAI | 典型的なインプット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
FAQ自動応答 | 生成AI+RAG | 識別AI(質問の意図分類) | 社内FAQ・マニュアル・過去の問い合わせ履歴 | 社内文書の構造化・最新化が前提 |
問い合わせメールの自動振り分け | 識別AI(テキスト分類) | — | 過去の問い合わせメール+振り分け結果 | 教師データとしてのラベル付き履歴が必要 |
通話内容の自動要約 | 生成AI | 識別AI(音声認識) | 音声データ→テキスト→要約 | 音声認識の精度が前提条件 |
解約予兆検知 | 予測AI(分類・確率予測) | — | 顧客の利用ログ・問い合わせ履歴 | 解約定義の合意形成が事前に必要 |
「FAQをチャットボットで自動応答させたい」という課題は、内部的にはRAG(検索拡張生成)と呼ばれる構成で実装されることが多く、これは生成AIに社内文書検索を組み合わせる仕組みです(ブレインパッド RAG解説)。生成AI単体ではなく「社内文書の検索基盤+生成AI」のセットで考える必要があります。発注時に「生成AIでチャットボットを作って」と伝えると、社内文書整備のスコープが抜け落ちて期待した品質が出ないリスクがあるため、要件定義段階でRAG構成の有無まで明示することが重要です。
バックオフィス/マーケティングの業務課題と必要なAI
バックオフィス(経理・法務・人事)とマーケティングは、生成AI・識別AIの両方が活躍します。
業務課題 | 主に使うAI | 補助的に使うAI | 典型的なインプット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
契約書のリスク条項チェック | 生成AI+RAG | 識別AI(条項分類) | 契約書PDF・社内のリスク基準 | 最終判断は人が行う前提のワークフロー設計が必要 |
名刺・帳票データの抽出 | 識別AI(OCR・画像認識) | 生成AI(不定形帳票の構造化) | 名刺画像・帳票PDF | 帳票の種類が多い場合、種類ごとのモデル設計が必要 |
マーケティングコピーの量産 | 生成AI | — | 既存コピー・ブランドガイドライン | ブランドトーンの一貫性チェック運用が必要 |
採用書類のスクリーニング | 識別AI(テキスト分類) | 生成AI(要約) | 履歴書・職務経歴書 | 公正性・差別防止の観点で運用設計に要注意 |
経費精算の異常検知 | 識別AI(異常検知) | — | 過去の経費データ | 「異常」の定義をルール化する作業が前段で必要 |
契約書チェックは「生成AIで法務業務を自動化」と語られがちですが、実態は「社内のリスク条項データベースを参照する識別AI/RAG」が中心で、生成AIは要約・説明文を作る役割を担うことが多くなります。
業務課題×AIの種類 早見表
横断的に見渡せるよう、ここまでの内容を1つの表に圧縮します。
業務領域 | 業務課題 | 主役AI |
|---|---|---|
製造 | 不良品検知 | 識別AI |
製造 | 予知保全 | 予測AI(+識別AI) |
製造・小売 | 需要予測 | 予測AI |
物流 | ナンバー認識 | 識別AI |
小売・EC | レコメンド | 識別AI/推薦 |
小売・EC | 説明文生成 | 生成AI |
サポート | FAQ自動応答 | 生成AI+RAG |
サポート | 問い合わせ分類 | 識別AI |
サポート | 解約予兆検知 | 予測AI |
バックオフィス | 契約書チェック | 生成AI+RAG |
バックオフィス | OCR・データ抽出 | 識別AI |
マーケ | コピー量産 | 生成AI |
人事 | 書類スクリーニング | 識別AI |
自社の業務課題と照らし合わせて、「主役AIの種類」をRFPに明示することが、ベンダー比較のスタート地点です。AIが本当に解ける課題か自体を見極めたい場合は、AIでできること・できないことも併せて確認してください。
複数の AI を組み合わせるケース
実務で稼働しているAIシステムの多くは、1種類のAIだけで完結していません。識別AI・予測AI・生成AIを組み合わせて、業務フロー全体を自動化していくケースが一般的です。「どれか1つに絞らないといけない」という思い込みを外しておきましょう。
実務では複数のAIを組み合わせるのが普通
たとえば「設備の異常を検知して、対応指示書を担当者に送る」という業務を考えると、次のように複数の役割が並びます。
- センサーデータから「異常」を識別する(識別AI)
- 故障時期を予測する(予測AI)
- 担当者向けの対応指示文を生成する(生成AI)
これを1つのシステムとして発注するなら、AIの種類は3つ登場することになります。RFPで「AIシステムを発注する」と書くだけでは、どこまでのスコープを含むか曖昧になります。
典型的な組み合わせパターン
実際によく見る組み合わせを4つ紹介します。
組み合わせ | 利用シーン | 各AIの役割 |
|---|---|---|
予測AI+生成AI | 需要予測レポート自動化 | 予測AIが数値を出力 → 生成AIが「来月の売上は◯◯円の見込みで、理由は△△」と自然文で説明 |
識別AI+生成AI | 異常検知と対応指示書 | 識別AIが異常を検知 → 生成AIが「該当箇所は◯◯、推奨対応は△△」という指示文を生成 |
識別AI+予測AI | 予知保全 | 識別AIがセンサーで異常パターンを検出 → 予測AIが「あと◯日で故障する確率」を算出 |
生成AI+検索(RAG) | 社内ナレッジ検索 | 検索エンジンが社内文書を取得 → 生成AIが質問に対する回答を組み立てる |
特にRAG構成は、社内文書を活用する業務(FAQ・契約書チェック・社内ヘルプデスク等)でほぼ標準的な構成になっています(ブレインズテクノロジー RAG解説)。「生成AIを入れたい」と話す際にRAG構成を前提にするかで、必要なデータ整備や工数は大きく変わります。
複数AI組み合わせの発注時の注意点
複数AIを組み合わせるシステムを発注する際は、次の点に注意してください。
- 「AIごと」ではなく「業務フローごと」に要件定義する: 個別のAIを別々に発注すると、結果の連携部分(識別AIの出力を予測AIに渡す等)で齟齬が起きやすい
- 責任範囲の切り分けを明示する: 識別AIの精度はベンダーA、生成AIの文章品質はベンダーBという発注をすると、最終アウトプットの責任が宙に浮く
- データの流れを図にする: 「どのデータがどのAIに入り、どんな結果が次のAIに渡るか」を1枚の図にすると、ベンダー間の認識ずれを防げる
「複数のAIを組み合わせる」と言われると複雑そうに聞こえますが、発注側がやることはシンプルで、業務フローを最初に図にしてしまうことです。AIの種類は、その図のどこに何が入るかを後から埋めていけば自然に決まります。
「どの AI を使うか」を開発会社に相談するときの聞き方
ここまで読んでも「自社の課題が本当にこの分類に当てはまるか」「どこまでが識別AIで、どこからが生成AIか」など、自力で完全に判断するのは難しいケースもあります。そこで本セクションでは、開発会社(ベンダー)に相談する際に「主導権を持って対話する」ための準備とテンプレートを示します。
発注前に整理しておくべき3つの情報
ベンダーに相談する前に、次の3つの情報を社内で整理してください。これさえあれば、ベンダーは「適切なAIの種類」を逆引きで提案できます。
- 解きたい業務課題の具体的な記述
- 良い例: 「製造ラインAで生産する製品Xの外観検査を、現在人が目視で行っているが見落としが月◯件発生しているので自動化したい」
- 悪い例: 「AIで何かやりたい」
- 現在保有しているデータ
- 種類(画像・テキスト・数値)、期間(過去何年分)、件数、データの所在(基幹システム/Excelファイル/紙)を明示
- 例: 「過去3年分の販売実績(日次・店舗別・SKU別)がPOSシステムにあり、CSVでエクスポート可能」
- 期待するアウトプットと利用シーン
- 「誰が・どんな画面で・どんな形式の結果を見るか」まで具体化する
- 例: 「製造現場の作業者が、検査ラインのモニターで『OK/NG』のリアルタイム判定を見る」
この3点が揃っていれば、ベンダーは「あなたの課題には識別AIが適しています」「需要予測なら予測AIですが、データ期間が短いため精度の見立てはこのくらい」と具体的に答えられます。
RFPに書くべき「AIの種類」の具体表現例
要件定義書(RFP)に書く表現として、次のレベルを目指してください。
改善前(ばらけた提案が来てしまう書き方)
AIを活用して、製品検査の自動化を行いたい。
改善後(ベンダー比較が可能になる書き方)
製造ラインAの製品Xに対する外観検査AIシステムを構築したい。
- 利用AI種別: 識別AI(画像分類)
- インプット: ラインに設置するカメラで撮影した製品画像(解像度・撮影頻度は別紙)
- アウトプット: 「OK/NG(要再検査)」の2値判定をモニターに表示
- 教師データ: 過去1年分のOK品画像(◯◯枚)、NG品画像(不良種類別に◯◯枚)あり
- 精度目標: 見逃し率 1% 以下、誤検知率 5% 以下
「AIの種類」を明示するだけで、ベンダーの提案・見積りはぐっと比較しやすくなります。
ベンダー提案を受けたときの妥当性チェック質問例
ベンダーから提案を受けたとき、提案内容の妥当性を確認するための質問例を挙げておきます。
- 「今回ご提案いただいたのは識別AI/予測AI/生成AIのどれですか?それを選んだ理由を教えてください」
- 「他の種類のAIで実現する選択肢はありますか?あるとしたら何がトレードオフですか?」
- 「必要な教師データ(または過去データ)の量と、現在不足している分があれば教えてください」
- 「想定する失敗パターン(精度が出ないケース・運用が回らないケース)と、その回避策は何ですか?」
- 「PoC(試作)と本番運用で、必要なデータ・体制はどう変わりますか?」
「なぜそのAIなのか」を問う1問目だけでも、ベンダーが課題を正しく理解しているか、横並びで比較できているかが見えてきます。
まとめ——AI の種類を理解することは発注ミスを防ぐ最低限の備え
AIを業務に導入する発注検討で最も避けたい失敗は、「生成AIで全部できると思って発注したら、本当は識別AI/予測AIが必要だった」という種類選定の誤りです。要件定義の段階で「AIで何かやりたい」としか書かれていないと、ベンダーごとに想定する技術が違い、見積りも比較できなくなります。
本記事で整理した3種類のAIの違いを、最後に再確認しておきます。
- 識別AI: 入力を見て「これは何か」を判別する(外観検査・問い合わせ分類・OCR)
- 予測AI: 過去から「将来どうなるか」を計算する(需要予測・故障予測・解約予兆)
- 生成AI: 学習データから「新しいコンテンツ」を作る(文案・要約・RAGによる回答生成)
発注検討の現場で明日から実行できるアクションを5つ挙げます。
- 自社の業務課題のアウトプットが「ラベル/数値/新しいコンテンツ」のどれかを言語化する
- 業務課題×AIの種類の早見表(本記事のセクション3)に照らして、主役となるAIの種類を1つ決める
- 解きたい業務課題・保有データ・期待アウトプットの3点をA4 1枚にまとめる
- RFPに「利用AI種別: 識別AI/予測AI/生成AI(+RAG等の組み合わせ)」を明示する
- ベンダー提案を受けたら「なぜそのAIの種類か」を必ず質問する
「AIの種類が分かる」というのは、特別な技術知識ではなく、発注ミスを防ぐための最低限の備えです。次のステップとしてAI導入プロセス全体の進め方を整理したい方は、AI導入の進め方も参考にしてください。
はじめての AI 導入ガイド――中小企業が失敗しないための7ステップ

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