「Unityフリーランスの単価は、経験年数の長さで決まる」——検索でヒットする単価解説記事の多くは、この前提で組まれています。しかし、ソシャゲ受託を4〜5年経験しても月60〜75万円で頭打ちになる一方、業務系受託や産業向けUnityに軸足を移した同世代が月100万円を超えている、という現実に直面している方は少なくないはずです。
エージェント面談では「これ以上単価を上げるにはXRか産業系に」と言われ、SNSでは同期のフリーランスが高単価案件を発信している。かといって、ソシャゲで積み上げた運用スキルを一度捨てて未経験領域に飛び込むのは、家計とキャリアの両面でリスクが大きい——この分岐点で、後戻りしにくい判断材料を探している方に向けた記事です。
結論を先に述べます。Unityフリーランスの単価は「経験年数」ではなく「どの案件セグメントで働くか」で大きく変わります。同じ3年経験でも、ソシャゲ運用の3年と業務系受託の3年では月額単価が40万円以上開くことが実データから確認できます。
本記事では、Unity案件市場を「ソシャゲ運用」「コンシューマゲーム」「業務系受託・SIer」「XR/AR/VR」「産業・医療シミュレータ」の5セグメントに分け、それぞれの単価レンジ・案件数・必要スキルを横並びで比較します。その上で、ソシャゲ経験者が「留まる」「業務系に移動する」「XRに長期投資する」の3つの選択肢をどう判断するか、実務的な判断軸とスキルギャップの埋め方まで解説します。
Unityフリーランスの単価は「経験年数」より「案件セグメント」で決まる
Unityフリーランスの単価を語るとき、多くの解説記事は「経験1年未満で20〜30万円、3年で50〜60万円、5年以上で70〜80万円」という経験年数別テーブルを提示します。この情報自体は間違いではありませんが、実際の案件相場を説明する主要因ではありません。
より正確な説明は「同じ経験年数でも、どの案件セグメントに所属するかで月額単価が30〜50万円変動する」というものです。以下、その根拠を単価分布と案件データから見ていきます。
Unityフリーランス単価の全体レンジ(30万〜120万円の分布)
複数のフリーランス求人サイトの集計値をまとめると、Unityフリーランスの月額単価は概ね30万〜120万円の広いレンジで分布しています。中央値は55〜65万円前後、平均は71万円程度というのが2026年時点の相場です(Remogu「Unityフリーランスの報酬・案件・リモートの実態を完全解説」)。
注目すべきは、この分布が正規分布ではなく「二峰性」に近い形をしている点です。ソシャゲ運用案件を中心とした60〜80万円帯に大きな山があり、業務系受託・XR・産業応用案件を中心とした95〜115万円帯に第二の山があります。真ん中の85〜95万円帯は案件数が比較的少なく、「単価アップを目指すなら次の山まで一気にジャンプする必要がある」構造になっています。
この構造は、ソシャゲ経験者が「月80万円で頭打ちになり、90万円を提示されない」実感の背景を説明します。80万円と95万円の間には、単なる経験年数ではなく「セグメント移動」というジャンプが必要なのです。
経験年数別テーブルの限界(同じ3年経験でも単価差が40万円出る理由)
経験年数別テーブルの限界は、実データを見ると明確です。同じUnity実務経験3年でも、以下のような単価差が実際に発生しています。
- ソシャゲ運用(イベント実装・UI改修が中心): 月60〜70万円
- 業務系受託(ERP UI・研修コンテンツ・産業向けアプリ): 月90〜105万円
- 医療VR・産業シミュレータ(実案件参画は限定的で補助枠が多い): 月85〜100万円
この差40万円は「経験年数の質」ではなく「セグメントごとの単価テーブルそのものが違う」ことに由来します。クライアント業界の支払能力、技術スタックの希少性、プロジェクト期間の長さといった構造要因が単価を決めており、個人のスキルレベルは同じセグメント内での±10万円程度の変動要因に留まる、というのが実務感覚に近い理解です。
したがって、単価を上げたいのであれば「同じセグメントで経験を積み重ねる」より「セグメントを移動する」ほうが、多くの場合レバレッジが効きます。次章の「Unity案件市場の5セグメント別 単価と案件数」で、5つのセグメントを具体的に比較します。
Unity案件市場の5セグメント別 単価と案件数

Unity案件市場を実務的に整理すると、以下の5セグメントに分かれます。それぞれの月額単価レンジ・案件数の目安・主なクライアント業界・求められる技術スタックを一覧にまとめます。
5セグメント比較テーブル(単価・案件数・技術スタック・クライアント業界)
セグメント | 月額単価レンジ | 案件数の目安 | 主なクライアント業界 | 求められるUnity技術スタック |
|---|---|---|---|---|
ソシャゲ運用・受託 | 60〜80万円 | 最大(3,000件超) | ゲーム会社(自社運営・受託開発) | UGUI、Addressables、アニメーション制御、課金/リーダーボード、サーバ通信 |
コンシューマゲーム | 65〜90万円 | 中規模(1,000件前後) | ゲーム会社(据置機・Steam系) | URP/HDRP、シェーダ、パフォーマンス最適化、DOTS/ECS |
業務系受託・SIer | 93〜115万円 | 小〜中規模(1,500件前後) | 大手SIer、ERPベンダー、業務系SaaS企業 | エンタープライズ品質の設計、要件定義との対話力、UI設計思想の切替 |
XR/AR/VR | 95〜115万円 | 少ないが増加中 | XRスタートアップ、大手メーカーXR部門、教育・エンタメ | XR Interaction Toolkit、OpenXR、URPカスタムシェーダ、Meta Quest/PICO/HoloLens知識 |
産業・医療シミュレータ | 95〜120万円 | 少ない(案件公開が限定的) | 医療機器メーカー、建築、製造業、防衛関連 | 物理演算、空間認識、CAD連携、高精度シミュレーション、Unity Industry |
単価データはRemogu「Unityフリーランスの報酬・案件・リモートの実態を完全解説」のセグメント別報酬テーブル(ERP 115万円 / 業務系アプリ 100万円 / 医薬・医療 95万円 / SIer受託 93万円 / ゲーム玩具 60〜80万円)を出発点として、公開案件データから補正しています。
案件数の分布(案件数が最も多いのはソシャゲ、単価が最も高いのは業務系受託)
案件数の分布を実際の求人サイトから見ると、明確なアンバランスがあります。フリーランスHubのUnity関連案件検索結果(フリーランスHub Unity案件一覧)を確認すると、Unity案件の大半はゲーム分野(ソーシャルゲーム・コンシューマゲームを含む)に集中しており、業務系受託・XR/AR/VR専門案件は相対的に少数派である傾向が読み取れます。
さらに細分化すると、案件数の並び順はおおむね以下の傾向を示します(案件公開サイトによって集計軸が異なるため、詳細件数は目安として捉えてください)。
- ゲーム分野(ソシャゲ運用・コンシューマを含む全体): Unity案件の中で最大ボリューム。ソシャゲ運用が特に多く、コンシューマがそれに次ぐ
- 業務系全般(SIer受託・業務系SaaS・研修コンテンツ・3Dビジュアライゼーション等): ゲーム分野に比べると少ないものの、Unity案件市場のなかで次いで多いカテゴリ
- XR/AR/VR専門案件: 案件数自体は少ないが、Apple Vision Pro・Meta Quest 3の普及を背景に増加傾向
- 産業・医療シミュレータ: 公開案件は極めて限定的で、エージェント紹介や業界コミュニティ経由の非公開案件が主流
つまり「案件数が最も多いのはソシャゲ、単価が最も高いのは業務系受託・XR・産業系」という逆転構造が存在します。ソシャゲセグメントは需要が最も安定していて稼働率を落としにくい一方、単価上限は70〜80万円で頭打ち。業務系・XR・産業系は案件数が少なく参入時に稼働率を落とすリスクがあるものの、単価上限は120万円まで伸びる——という選択肢のトレードオフです。
セグメント間の単価差が生まれる3つの構造的理由
なぜ同じUnityスキルを使いながらセグメント間で単価が2倍近く違うのか。実務的には以下の3つの構造要因で説明できます。
第一に、クライアントの支払能力の違いです。ソシャゲ受託の発注元はゲーム会社(多くは中堅企業)ですが、業務系受託の発注元は大手SIerや大手メーカー、産業・医療系はさらに大手の製造業・医療機器メーカーになります。1人月あたりの人件費予算は発注元の企業規模と業界の粗利率にほぼ比例するため、同じ工数でも提示される単価が違ってきます。
第二に、技術スタックの希少性です。ソシャゲ運用に必要なUGUI・Addressables・課金SDKといったスキルは、多くのUnityエンジニアが習得済みで供給が多い状態です。一方、XR SDKやOpenXR、URPのカスタムシェーダ、Unity Industryを使ったCAD連携などは経験者が少なく、需要と供給のバランスが単価を押し上げます。
第三に、プロジェクト期間の長さです。ソシャゲ運用は3〜6ヶ月更新の短期契約が多く、単価交渉のタイミングが多いものの1回あたりの上げ幅が限定されます。業務系受託・産業応用は12ヶ月以上の長期プロジェクトが多く、初期契約時に高めの単価で入りやすい構造です。
ソシャゲ受託・運用に残るキャリア戦略
「単価を上げるためにセグメントを移らなければならない」というのは、必ずしも正解ではありません。ソシャゲセグメントに留まる選択肢を「悪い選択」として切り捨てる前に、留まる場合の合理性と、その中で単価天井を押し上げる方法を整理しておくべきです。
ソシャゲ案件の単価レンジ(60〜80万円)と天井を決める要因
ソシャゲセグメントの単価レンジは月60〜80万円が中心です。実務経験3〜5年で60〜70万円、5年以上でリード経験や複数タイトルの立ち上げ経験があると70〜80万円というのが2026年時点の相場です(FOSTERNET NAVI「Unity案件の単価相場は?」)。
天井を決めるのはクライアント側の予算構造です。ソシャゲ運用の1人月予算は「新規開発人月コスト」を基準に設定されるため、フリーランス個人がいくら高スキルでも、月80万円を超える提示を出す発注元は限られます。単価上限を目指すなら、リード枠や技術顧問枠に入るしかありません。
ソシャゲに残りつつ80万円帯に到達する3つの条件
ソシャゲセグメントに留まりつつ、レンジ上限の80万円帯を狙う場合、以下の3条件のうち複数を満たすことが実務的な目安になります。
第一に、リードエンジニア経験です。3〜5名以上のUnityチームを技術的にリードした経験、または特定の技術領域(サーバ通信・Addressables運用・パフォーマンス最適化)の責任者としてタイトル単位で成果を出した経験があると、単価70万円台後半〜80万円の提示が現実的になります。
第二に、複数タイトルの立ち上げ経験です。新規タイトルのプロジェクト初期からリリースまで一通り経験していると、運用フェーズだけの参画者と比較して「初期設計の判断ができる」ことが評価されます。
第三に、運用最適化の実績です。Addressables/AssetBundleの運用フロー整備、DOTS/ECSを使った大量オブジェクト処理の最適化、内部ツール整備によるチーム全体の生産性向上——これらの「タイトル横断で使える改善実績」があると、単なる実装者ではなく技術リード枠として扱われやすくなります。
ソシャゲに残る合理性(案件数の多さ・スキル転用の少なさ・稼働率維持のしやすさ)
ソシャゲセグメントに留まる選択には、単価天井を受け入れる代わりに得られる合理的メリットがあります。第一に、案件数が3,000件超と最大で、稼働率を95%以上で維持しやすい点。第二に、既存スキルをそのまま使えるため学習投資期間が発生しない点。第三に、リモート案件比率が高く、生活設計を大きく変えずに済む点です。
「月70万円×12ヶ月×5年=4,200万円」を安定的に得るキャリアは、月100万円のプロジェクトを追いかけて半年ごとに参画・離脱を繰り返すキャリアより、生涯収入で上回る可能性も十分にあります。単価だけを見て判断せず、稼働率・学習投資期間・生活設計との整合まで含めた総合評価が必要です。
業務系受託・SIer系Unity案件への移動戦略

単価90〜115万円帯を狙う第一の選択肢が、業務系受託・SIer系のUnity案件です。ソシャゲ経験と地続きで移動できる「中間ルート」として、XR/産業系よりも参入障壁は低く、単価アップの現実的な最初の選択肢になります。
業務系受託の単価レンジと発注クライアントの特徴
業務系受託・SIer系のUnity案件は月93〜115万円のレンジで、発注クライアントは大手SIer経由のエンタープライズ案件が中心です。代表的な案件タイプには以下があります。
- ERP・業務系SaaSのUI/UXをUnityで刷新する案件(月100〜115万円)
- 研修コンテンツ・eラーニングをUnityで制作する案件(月90〜105万円)
- 産業機械・設備の3Dビジュアライゼーション案件(月95〜110万円)
- 大手メーカーの製品コンフィグレータ(3D構成ツール)案件(月95〜110万円)
これらの案件は「Unityの技術知識」だけでなく「エンタープライズ品質の設計」「要件定義書との対話」「保守性を重視した実装」といった業務系エンジニアリング特有の作法が求められます。
ソシャゲ経験者が最初にぶつかる3つの壁
ソシャゲ経験者が業務系受託に参入するとき、以下の3つの壁が現れます。
第一に、要件定義書との対話です。ソシャゲでは「仕様書はあるが最終判断はディレクター」「実装しながら仕様を詰める」という進め方が一般的ですが、業務系受託では「要件定義書に書かれていないものは実装しない」「変更には正式な変更管理プロセスを経る」という進め方が標準です。要件定義書を読み解き、不明点を書面で質問し、変更履歴を残す作法に慣れる必要があります。
第二に、非ゲームなUI設計思想です。ソシャゲUIは「演出・アニメーション・エンゲージメント」を重視しますが、業務系UIは「一貫性・アクセシビリティ・作業効率」を重視します。派手なアニメーションはむしろマイナス評価になり、Fittsの法則や操作の予測可能性、キーボードナビゲーションといった業務系UI特有の設計原則を理解する必要があります。
第三に、保守性を重視した実装です。ソシャゲは3〜5年でサービス終了する前提で「リリースに間に合う設計」が優先されますが、業務系は10年以上運用される前提で「引き継ぎ可能なドキュメント・テストコード・アーキテクチャ」が求められます。単体テスト・アーキテクチャドキュメント・依存関係の明示など、コードの外側の資産作りに時間を割く必要があります。
移動に必要な学習項目と期間
業務系受託への移動には、6〜12ヶ月の準備期間を見ておくのが現実的です。学習項目としては以下の4つが軸になります。
第一に、エンタープライズ品質のUnity実装パターン——依存性注入、テスト容易性を意識した設計、Unity Test Framework、モックによる単体テスト。第二に、Unity業務系ライブラリ——Zenject/VContainer、UniRx/R3、UniTaskといった業務系で標準化されているライブラリの実務利用経験。第三に、PM経験の言語化——ソシャゲでのリード経験を「要件定義・スケジュール管理・品質管理」の観点で棚卸しし、業務系のプロジェクトマネジメント語彙で表現できるようにする。第四に、業務系エンジニアリング基礎——Git-flow、CI/CD、コードレビュー文化、ドキュメント作成といった業務系開発の作法。
これらは独学だけでも到達可能ですが、実務経験がないと単価100万円提示は取りにくいのも事実です。現実的な移動戦略として、最初は月70〜80万円で業務系案件に参画し、実績を積んでから90〜100万円帯にステップアップする2段階の設計が有効です。
XR・産業・医療シミュレータで単価100万円超を狙うロードマップ

セグメント別で最も伸びしろが大きいのが、XR(AR/VR/MR)・産業応用・医療VRの領域です。単価上限は120万円まで伸び、Apple Vision ProやMeta Quest 3の普及、Unity Industryライセンスの強化を背景に案件数も右肩上がりで伸びています。ただし、参入には6〜18ヶ月の技術投資が必要で、業務系受託への移動より時間がかかります。
XR・産業応用・医療VRの単価レンジと案件数の現状
XR・産業応用・医療VRの単価レンジは月95〜120万円で、実務経験3年以上かつ専門スキルを持つエンジニアであれば月100万円超の案件を受注できる時期に入っています(APPSTARSフリーランス「Unityフリーランスゲームエンジニアの報酬単価の相場」)。
案件数は全体の12〜13%程度と業務系受託よりも少ないものの、増加トレンドが明確です。Apple Vision Pro向けのアプリ開発、Meta Quest 3向けエンタメ・研修コンテンツ、HoloLensを使った産業向けアプリ、医療機器メーカーの手術シミュレータ・リハビリVR——といった具体的な案件が年々増えています。
一方、注意点もあります。「XR案件」と一括りにされていても、実際はエンタメ系(単価70〜90万円)と産業・医療系(単価100〜120万円)で単価水準が大きく違います。ポートフォリオを作るときは、狙う単価帯に合わせて案件タイプを選ぶ必要があります。
参入に必要な技術スタック
XR・産業・医療シミュレータ案件で単価100万円超を狙う場合、以下の技術スタックが最低ラインになります。
- XR Interaction Toolkit(Unity公式のXR統合パッケージ)の実務経験
- OpenXR規格に基づくクロスデバイス実装(Quest/PICO/HoloLens/Vision Pro)
- URPカスタムシェーダ(XRデバイスでのパフォーマンス最適化が必須のため)
- 空間認識・アンカー・パススルーの実装知識
- 物理演算(Unity Physics、Havok Physics for Unity)の実務経験
- 各デバイスSDK(Meta XR SDK、PICO Unity SDK、Mixed Reality Toolkit)の実装経験
産業・医療シミュレータではさらに、CAD連携(Unity Industry、Pixyz Plugin)、高精度物理シミュレーション、業界特有の規制対応(医療機器認証など)の知識が求められる案件もあります。
学習ロードマップの現実解
XR領域に完全に軸足を移すには時間がかかりますが、段階的な戦略なら実現可能性は高くなります。実務的なロードマップは以下の4段階です。
第一段階(0〜6ヶ月): 個人プロダクトでのポートフォリオ作成。Meta Quest向けアプリを1本、URPカスタムシェーダを使ったコンテンツを1本、それぞれ完成させてGitHubとYouTubeで公開します。この段階では単価ゼロですが、次の段階への「証拠資産」を作ります。
第二段階(3〜9ヶ月): 現行のソシャゲ案件を維持しながら、副業でXR案件のサブスキル参画を狙います。ソシャゲ案件でメインの稼働を確保しつつ、週1〜2日でXR案件のQA・デバッグ・補助実装枠に入る戦略です。単価は40〜60万円/月換算ですが「XR実務経験あり」の実績が付きます。
第三段階(9〜15ヶ月): XR補助枠でのメイン参画。XR案件の70〜90万円帯の案件に、補助エンジニアとしてメイン稼働で入ります。ソシャゲ案件は縮小または離脱し、稼働の中心をXRに移します。
第四段階(15ヶ月以降): XRメイン案件で月100万円超。実績とポートフォリオが揃った段階で、産業・医療シミュレータのメイン枠に単価100〜120万円で参画できるようになります。
「XRに移れば単価100万円」という単純化された話ではなく、15〜18ヶ月の段階的な移行が必要な領域として理解しておく必要があります。
どのセグメントを狙うかを決める3つの判断軸

ここまで見てきた「ソシャゲに残る」「業務系受託に移動する」「XR/産業系に長期投資する」の3つの選択肢を、どう判断するか——。抽象論ではなく、以下の3つの判断軸に沿って自己判定できるよう整理します。
判断軸1: スキル資産の再利用率(今のスキルの何割を活かせるか)
現在のソシャゲ運用スキルを新しいセグメントでどれだけ再利用できるか——スキル資産の再利用率を見ます。
- ソシャゲに残る場合: 再利用率100%(追加学習ゼロ)
- 業務系受託に移動する場合: 再利用率60〜70%(Unity技術は再利用、エンタープライズ作法・業務系UIは新規学習)
- XR/産業系に移動する場合: 再利用率40〜50%(C#とUnityの基礎は再利用、XR SDK・シェーダ・物理は新規学習)
再利用率が低いほど、単価アップまでの学習投資期間が長くなります。「短期間で単価を上げたい」なら業務系受託が有力候補、「長期投資できるなら」XR/産業系が候補になります。
判断軸2: 希望単価と学習投資期間のトレードオフ
到達目標の単価と、それに要する学習期間の目安は以下の通りです。
目標単価 | 選択セグメント | 学習投資期間の目安 |
|---|---|---|
月70〜80万円 | ソシャゲでリード枠 | 3〜6ヶ月(既存スキルの棚卸し・アピール強化) |
月90〜100万円 | 業務系受託の補助〜メイン枠 | 6〜12ヶ月(エンタープライズ品質実装・業務系ライブラリ習得) |
月100〜115万円 | 業務系受託のメイン枠、XR/産業系の補助〜メイン枠 | 12〜18ヶ月(XR SDK・シェーダ・物理演算・実案件経験) |
月110〜120万円 | 産業・医療シミュレータのメイン枠 | 18〜24ヶ月(CAD連携・高精度シミュレーション・業界規制対応) |
短期間で単価を上げたい場合、業務系受託の70〜80万円入口→90〜100万円ステップアップの2段階が最も現実的です。XR/産業系は「腰を据えて長期投資する」意思決定が必要な領域です。
判断軸3: 稼働率・リモート適合性・副業互換性
生活設計との整合も重要な判断材料です。以下の観点で自己評価してください。
- 稼働率を落とせない事情があるか(住宅ローン・扶養家族など)——ある場合はソシャゲ継続か業務系受託の並行参画が現実的
- フルリモートを維持したいか——ソシャゲはフルリモート案件比率が高く、業務系受託はハイブリッド、産業系は現地作業も一定あり
- 副業や自社サービス開発と両立したいか——ソシャゲ運用は稼働時間が読みやすく副業向き、業務系受託は稼働が集中する期間があり副業と両立しにくい
「単価が上がるならリモートを諦める」「稼働率を落としてでもXRに投資する」といった、個々の優先順位に応じてセグメントを選ぶ必要があります。
セグメント別の案件獲得ルート
セグメントを決めたら、次は実際に案件を獲得するルートを整理します。エージェント経由と直請けの使い分け、そしてセグメント切替期に稼働率を維持する現実的な方法を解説します。
セグメント別に強いエージェントの傾向
エージェントは得意分野が分かれています。狙うセグメントに合わせて登録先を選ぶことで、単価交渉と案件マッチングの効率が大きく変わります。
- ソシャゲ・ゲーム系に強いエージェント: ゲーム業界に特化した案件比率が高く、ソシャゲ運用案件のレンジ上限(70〜80万円)で提示されやすい
- 業務系受託に強いエージェント: 大手SIer・エンタープライズ案件のパイプラインを持ち、業務系Unity案件の90〜115万円レンジを提示できる
- XR/産業系に強いエージェント: XR専門やスタートアップ向け案件を扱い、XR Interaction Toolkit経験者に月95〜110万円を提示できる
複数エージェントに登録し、狙うセグメントの案件を並行して探すのが基本戦略です。フリーランスエージェント各社の比較や特徴については、フリーランスエンジニア向けの比較記事を参照するのが効率的です。
直請け・コミュニティルートの活用
エージェント経由以外に、以下の直請けルートも効果的です。特にXR/産業系は案件がエージェント市場に出る前にコミュニティ内で決まることが多いため、コミュニティ参加が案件獲得の近道になります。
- X(旧Twitter)でのUnityエンジニアタグでのアウトプット継続
- LinkedInでのプロフィール整備と業界横断ネットワーク構築
- Unity JPコミュニティ(Unityユーザーグループ)のイベント参加
- XR系勉強会(XR Kaigi、Meta Quest開発者コミュニティなど)の常連化
- GitHub・YouTube・Zennでのポートフォリオ公開
これらは「案件を狙って動く」というより「業界内での認知度を上げる」活動です。1〜2年継続することで、エージェント経由では出てこない高単価案件が直接届くようになります。
セグメント切替期の稼働率維持
セグメント切替時に最も難しいのが「稼働率を落とさずに新セグメントに参入する」ことです。以下の6ヶ月プランが実務的な参考になります。
- 0〜2ヶ月目: 現行案件(ソシャゲ)を100%継続。平日夜と週末で新セグメントの学習・ポートフォリオ作成
- 3〜4ヶ月目: 現行案件を80%、新セグメントの補助案件を20%(週1日)で並行。稼働率90%以上を維持
- 5〜6ヶ月目: 現行案件を50%、新セグメント案件を50%で並行。実績を積みつつ稼働率90%を維持
- 7ヶ月目以降: 新セグメント案件を100%、または新セグメントメイン+現行サブの構成に移行
この6ヶ月プランなら、月の収入を維持しながらセグメント移行が可能です。フリーランスとして「単発の高単価案件を追う」より「継続的に案件を獲得し収入を安定させる仕組み」を作るほうが、5年10年のスパンでは重要になります。
まとめ
Unityフリーランスの単価は、経験年数の長さで決まるのではなく、どの案件セグメントに所属するかで決まります。ソシャゲ運用(60〜80万円)、コンシューマゲーム(65〜90万円)、業務系受託・SIer(93〜115万円)、XR/AR/VR(95〜115万円)、産業・医療シミュレータ(95〜120万円)の5セグメントで、単価テーブルそのものが異なります。
単価90万円超を狙う場合、以下の3つの選択肢があります。
- ソシャゲ最適化: リード経験・複数タイトル立ち上げ・運用最適化実績で単価70〜80万円の天井を目指す。案件数が多く稼働率を維持しやすい合理的選択
- 業務系受託への移動: 6〜12ヶ月の準備期間で単価90〜100万円帯に到達。ソシャゲ経験と地続きで移動できる現実的な中間ルート
- XR・産業応用への長期投資: 15〜18ヶ月の段階的移行で単価100〜120万円帯を目指す。伸びしろは最大だが時間投資が必要
どの選択肢が最適かは、「スキル資産の再利用率」「希望単価と学習投資期間のトレードオフ」「稼働率・リモート適合性・副業互換性」の3つの判断軸で、自分の状況に照らして決めるのが実務的です。
次のアクションとしては、まず現在の案件を継続しつつ、6ヶ月後の移行を目標に学習を開始することをおすすめします。次回のエージェント面談では「単価をいくらにしてほしい」ではなく「〇〇セグメントの入門案件を単価△△万円でも取りたい」と、セグメント名と単価水準をセットで相談すると、エージェント側も動きやすくなります。フリーランスキャリアは10年20年続く長距離走です。単発の単価アップよりも、継続的に案件を獲得し収入を安定させるセグメント選択と、その中での学習投資の設計を、今このタイミングで見直しておく価値があります。
よくある質問
- ソシャゲ経験しかない場合、業務系受託とXRのどちらを最初に狙うべきですか?
早く単価を上げたいなら、ソシャゲ経験と技術的に地続きで6〜12ヶ月の準備により月90〜100万円帯に到達できる業務系受託が現実的です。XRは伸びしろが大きい一方、15〜18ヶ月の長期投資が前提になります。
- セグメントを移動する際、稼働率や収入が下がるリスクはどれくらいありますか?
移行初期は現行案件を80%、新セグメント案件を20%程度に抑えて並行させれば、稼働率90%以上を維持しながら移行できます。いきなり全面移行せず、案件の手応えを見ながら段階的に比率を上げていくのが実務的で、リスクを抑えた移行が可能です。
- 業務系受託やXR案件は、どのエージェントに登録すれば見つかりますか?
ゲーム系・業務系・XR系それぞれに強いエージェントが分かれているため、狙うセグメントに応じて複数登録するのが基本です。XR/産業系は案件がエージェント市場に出る前にコミュニティ経由で決まることも多く、両輪での情報収集が有効です。
- セグメントを移動せず、ソシャゲに残ったまま単価を上げることはできますか?
リードエンジニア経験や複数タイトルの立ち上げ、運用最適化の実績があれば、セグメントを移動せずソシャゲに残ったまま月70万円台後半〜80万円まで到達可能です。ただしクライアントの予算構造上、この上限を超える単価はソシャゲセグメント内では狙いにくい点に注意が必要です。
- 未経験のXR技術を独学だけで習得して、単価100万円の案件に参画できますか?
独学だけでポートフォリオは作れますが、単価100万円の提示には実務経験が重視されるため単独では難しいのが実情です。まず副業でXR案件の補助枠に入って実務経験を積み、メイン案件へ段階的にステップアップするのが現実的です。



