「2割特例が終わる」「経過措置の控除割合が変わる」——会計ソフトの通知や取引先からの相談で、こうした情報を耳にした発注担当者の方は多いのではないでしょうか。フリーランスや業務委託を継続的に活用している企業にとって、2026年10月は無視できない節目です。
ところが、いざ調べ始めると最初の壁にぶつかります。「2割特例の終了」は受注者(フリーランス側)の話なのか、それとも自社(発注側)の経理処理も変わるのか——この切り分けがつかないまま、「とりあえず何か対応しないといけない気がする」という漠然とした不安だけが残ってしまいます。
この混乱には理由があります。インボイス制度には、似た時期に切り替わる「2割特例(受注者の納税特例)」と「免税事業者からの仕入の経過措置(発注者の控除特例)」という2つの異なる仕組みが存在し、名前も時期も近いため混同されやすいのです。発注者として本当に対応すべきは後者ですが、両者の関係を整理しないまま処理を続けると、帳簿記載の切替を忘れて控除を否認されたり、単価交渉が思わぬ法的リスクに触れたりする恐れがあります。
本記事では、発注者の視点に絞って、2026年10月を起点に「自社の経理処理は何が・いつ・どこから変わるのか」を整理します。経過措置の控除率縮小(80%→70%)による負担増を数値で把握し、請求書受領から帳簿・仕訳・控除計算までのどこを切り替えるか、免税事業者のままのフリーランスとの取引をどう判断するか、そして単価交渉で踏んではいけない法的ラインまでを、移行チェックリストとともに解説します。読み終えたとき、2026年10月を起点にした自社の処理フロー移行スケジュールが手元に残り、上長に根拠を持って説明できる状態を目指します。
なお、登録番号の確認手順や請求書受領時の基本チェックといった「日々の確認実務の全体像」については、本記事では深掘りせず、必要に応じて業務委託・フリーランス取引における発注側のインボイス対応・確認実務で補完してください。本記事はあくまで「2026年10月の制度変更に伴う、処理フローの“移行”」に集中します。
2割特例の終了と発注者の関係|「自社の処理」は何が変わるのか
まず、検索者が最も混同しやすいポイントを切り分けます。結論から言うと、発注者(買い手)が直接対応すべきなのは「2割特例の終了」そのものではなく、「免税事業者からの仕入に係る経過措置の縮小」です。
2割特例とは何か|なぜ発注者が直接適用する制度ではないのか
2割特例とは、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)になった小規模事業者が、納める消費税を「売上にかかる消費税の2割」に軽減できる制度です(2割特例の概要|国税庁)。
ここで重要なのは、この制度の主語です。2割特例は「自分が納める消費税を計算するときの特例」であり、適用するのは納税義務者である受注者(フリーランス側)です。発注者が自社の経理処理でこの特例を使う場面はありません。つまり「2割特例が終わる」というニュースは、第一義的には発注先フリーランスの納税負担の話であって、自社の仕訳や帳簿が直接変わるわけではないのです。
2割特例は2023年10月から始まり、個人事業者の場合は令和8年(2026年)分までで終了します。その後、一定の要件を満たす個人事業者には「3割特例」が新設されますが、これも受注者側の納税計算の話です(2割特例から3割特例へ|フリーランス協会ニュース)。
発注者が本当に対応すべきは「免税事業者からの仕入の経過措置」
では、発注者が自社の処理として向き合うべきものは何か。それが「免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置」です。
インボイス制度では、適格請求書(インボイス)がない仕入れは原則として仕入税額控除ができません。しかし、いきなり全額控除できなくなると影響が大きいため、免税事業者などインボイスを発行できない相手からの仕入れについても、一定割合を控除できる経過措置が設けられています(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置|国税庁Q&A)。
この控除割合が、2026年9月までは80%、2026年10月以降は70%へと縮小します。控除割合が下がるということは、免税事業者へ支払った消費税相当額のうち、自社で控除できない(=自社が負担する)部分が増えるということです。この変化に対応するのが、発注者にとっての本丸です。
名称 | 主語(誰の制度か) | 内容 | 発注者への直接の影響 |
|---|---|---|---|
2割特例(→3割特例) | 受注者(フリーランス側) | 納める消費税を売上税額の2割(または3割)に軽減 | なし(発注先の動向として間接的に影響) |
免税事業者からの仕入の経過措置 | 発注者(買い手側) | 免税事業者への支払いの一定割合を控除可能 | あり(控除割合が80%→70%へ縮小) |
2026年10月に発注者へ来る2つの波
整理すると、2026年10月には発注者に対して性質の異なる2つの波が押し寄せます。
1つ目は、自社の経理処理に直接関わる「経過措置の控除率縮小(80%→70%)」です。これは帳簿記載・仕訳・控除計算の切替を伴います。
2つ目は、間接的に効いてくる「発注先フリーランスの動向変化」です。2割特例が終わることで、免税事業者のままでいるか、インボイス登録して課税事業者になるか、発注先がどう動くかによって、自社が適用するルール(経過措置なのか通常の全額控除なのか)が変わります。
この2つの波は別物ですが、どちらも「2026年10月」を起点に動き始めます。以降では、まず自社の処理に直結する1つ目の波(経過措置の縮小)を数値とフローで押さえ、その後に2つ目の波(発注先の動向と取引判断)へと進みます。
2026年10月以降の経過措置スケジュールと発注者の負担増を数値で把握する

ここでは「いつから・どれだけ控除が減るのか」を、令和8年度税制改正後の正確なスケジュールと数値シミュレーションで押さえます。
改正後の経過措置スケジュール一覧
令和8年度税制改正により、当初は2026年9月で50%へ下がる予定だった経過措置が見直され、控除割合の縮小ペースが緩やかになるとともに、適用期間が2年間延長されました(令和8年度税制改正特集|国税庁)。改正後のスケジュールは次のとおりです。
期間 | 控除割合 | 自社が負担する割合 |
|---|---|---|
〜2026年9月30日 | 80% | 20% |
2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% | 30% |
2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% | 50% |
2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% | 70% |
2031年10月1日〜 | 経過措置終了(控除不可) | 100% |
控除割合の判定は、商品の引渡しや役務の提供が完了した日を基準に行います。たとえば2026年9月中に納品・検収された業務委託は80%控除、2026年10月1日以降に完了した分は70%控除となります(国税庁インボイスQ&Aの控除切替時の判断基準|e-PAP)。請求書の日付ではなく、役務提供の完了日で区分する点に注意してください。
年間支払額別シミュレーション
控除割合の縮小が、自社の実質負担にどう響くかを数値で見てみましょう。免税事業者であるフリーランスへの年間支払額(消費税込み)を例に、控除できない部分(=自社の追加負担)を試算します。ここでは税率10%・支払額に含まれる消費税相当額を基準に概算します。
たとえば、免税事業者への年間支払いが税抜660万円(消費税相当額60万円)の場合を考えます。
控除割合 | 控除できる額 | 控除できない(自社負担)額 | 80%時点からの負担増 |
|---|---|---|---|
80%(〜2026年9月) | 48万円 | 12万円 | — |
70%(2026年10月〜) | 42万円 | 18万円 | +6万円 |
50%(2028年10月〜) | 30万円 | 30万円 | +18万円 |
30%(2030年10月〜) | 18万円 | 42万円 | +30万円 |
このように、同じ取引額でも年を追うごとに自社の負担が増えていきます。免税事業者への支払いが多い企業ほど影響は大きく、2028年10月の50%への縮小は特に効いてきます。複数のフリーランスに発注している場合は、免税事業者への支払総額を把握しておくと、予算影響の見通しが立てやすくなります。
1億円超ルール(2026年10月新設)の発注者への影響
令和8年度税制改正では、もう1つ発注者が押さえておくべき変更があります。同一の免税事業者からの年間の課税仕入れの合計額が1億円を超える場合、その超える部分については経過措置の適用が認められなくなりました(改正前は10億円が基準でした)。
多くの企業にとって、1社のフリーランスへの年間支払いが1億円を超えるケースは限定的でしょう。ただし、特定の業務委託先に大規模に発注している場合や、複数案件を1人の個人事業者にまとめて委託している場合は、この上限に触れる可能性があります。該当しそうな取引先がある場合は、年間支払見込み額を早めに確認しておくと安心です。
発注者の経理処理フロー|2026年10月を境に切り替えるポイント

ここが本記事の核です。請求書を受け取ってから控除を計算するまでの一連の流れの中で、2026年10月を境に「どこを書き換えるか」を差分で押さえます。
処理フロー全体図と切替ポイントの所在
免税事業者からの仕入れに関する発注者の処理は、おおむね次の5工程で進みます。
- 請求書の受領
- 取引先区分の確認(適格請求書発行事業者か/免税事業者か)
- 帳簿への記載
- 仕訳の計上
- 控除額の計算
このうち、2026年10月の制度変更で書き換えが必要になるのは主に「帳簿への記載」と「仕訳・控除計算」の2工程です。請求書の受領手順や取引先区分の確認方法そのものは変わりません。基礎的な登録番号確認・受領チェックの手順については業務委託・フリーランス取引における発注側のインボイス対応・確認実務を参照してください。本記事では、切替が必要な工程に絞って解説します。
帳簿記載要件の切替と会計ソフト設定の見直し
経過措置を使って仕入税額控除を受けるには、帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載することが要件です。具体的には、摘要欄に「80%控除対象」「経過措置対象」などと記載する方法が認められています(経過措置と80%控除の要件|小谷野税理士法人)。
国税庁のQ&Aでは、個々の取引ごとに「80%控除対象」と記載する方法のほか、「※」や「☆」といった記号を付し、別途「※は80%控除対象」と表示する方法も認められています(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置|国税庁Q&A)。
ここで2026年10月の切替が発生します。控除割合が80%から70%になるため、帳簿の摘要記載も「80%控除対象」から「70%控除対象」へ切り替える必要があります。この切替を失念すると、記載要件を満たさないとして控除が否認されるリスクがあります。
実務上は、会計ソフトの税区分設定の見直しがカギになります。多くの会計ソフトでは免税事業者からの仕入れに「経過措置80%」といった税区分を割り当てて運用していますが、2026年10月以降に役務提供が完了する取引は「経過措置70%」の税区分へ切り替えなければなりません。会計ソフトによっては自動で切り替わるものもあれば、手動設定が必要なものもあるため、自社のソフトの仕様を9月のうちに確認しておくことを推奨します。
控除不能分の仕訳2方式と選び方
経過措置の縮小で控除できなくなった部分(80%時は20%、70%時は30%)は、消費税として控除できない代わりに、何らかの形で会計処理する必要があります。この控除不能分の処理には、大きく2つの方式があります。
1つ目は、控除できない消費税相当額を、対応する資産や費用の「取得価額・取得原価」に算入する方式です。たとえば免税事業者から購入した備品であれば、控除できない消費税相当額を備品の取得価額に含めます。
2つ目は、控除できない消費税相当額を「雑損失」などの費用として区分計上する方式です。
どちらを選ぶかは、対象となる取引の性質(資産か費用か)や、自社の従来の経理方針によります。税抜経理を採用している企業では、控除不能分を費用処理するケースが一般的ですが、棚卸資産や固定資産に関わる場合は取得価額への算入が必要になることもあります。判断に迷う場合は顧問税理士に確認のうえ、社内ルールとして統一しておくと、担当者ごとの処理のばらつきを防げます。
発注先フリーランスの2割特例終了をどう受け止めるか|取引判断と単価見直し
ここからは、2つ目の波——発注先フリーランスの動向変化への対応です。受注者側の動きによって、自社が適用するルールも変わります。
発注先が取りうる3つの道と自社控除への影響
2割特例の終了を受けて、免税事業者であるフリーランスが取りうる選択肢は、おおむね次の3つです。
1つ目は「免税事業者のまま継続する」道です。この場合、発注者の自社処理は引き続き経過措置の対象となり、控除割合は2026年10月から70%に下がります。自社の負担は前述のシミュレーションどおり増えていきます。
2つ目は「インボイス発行事業者として登録し、課税事業者になる」道です。発注先が適格請求書を発行できるようになれば、自社は支払った消費税を全額控除できます。経過措置による負担増を回避できるため、発注者にとっては最も影響が小さい選択肢です。
3つ目は「インボイス登録のうえ3割特例を活用する」道です。これは受注者側の納税計算の話で、3割特例の対象は個人事業者(法人は対象外)かつ令和9年分・令和10年分の申告に限られます(2割特例から3割特例へ|フリーランス協会ニュース)。受注者がこの道を選んでも、登録事業者である以上、自社は適格請求書を受け取って全額控除できます。つまり発注者から見れば、2つ目(登録)と同じく経過措置の負担増を回避できる方向です。
整理すると、発注者の自社控除への影響は「発注先が登録するか否か」で大きく分かれます。免税のまま継続すれば自社負担が増え、登録(3割特例の活用を含む)すれば全額控除に戻る、という構図です。
取引継続・単価見直し・登録依頼の判断軸
自社負担が増える「免税のまま継続」の取引先に対して、発注者が取りうる選択肢は次のように整理できます。
- そのまま取引を継続する: 経過措置による負担増を許容する。発注先の専門性・代替の難しさが高く、負担増が取引価値に見合う場合に妥当
- 単価を見直す(協議する): 控除減による負担増を踏まえ、価格を再協議する。ただし後述のとおり進め方に法的な注意が必要
- インボイス登録を依頼する: 発注先に課税事業者への転換を打診する。これも進め方によっては問題になりうるため注意が必要
判断にあたっては、「控除減によるコスト増」と「その取引先が生み出す価値(専門性・品質・関係性)」を天秤にかけるのが基本です。負担増の金額は前述のシミュレーションで概算できます。代替が難しい優秀な人材であれば、多少の負担増は織り込んで継続する判断もありますし、単価や登録の協議を選ぶ場合も、次章で述べる法的ラインを必ず踏まえる必要があります。
単価交渉・登録依頼で踏んではいけない法的ライン(下請法・優越的地位濫用)

単価見直しや登録依頼は、進め方を誤ると独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法に触れる恐れがあります。ここでは、発注者が「踏める線」と「踏めない線」を、公正取引委員会のQ&Aに基づいて整理します(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A|公正取引委員会)。
問題になりうる行為
公正取引委員会のQ&Aによれば、次のような行為は独占禁止法上問題となる恐れがあります。
- 仕入税額控除ができないことを理由に、取引先と十分な協議をせず、自社の都合だけで一方的に対価を引き下げること
- 免税事業者が従来から負担していた消費税分すら賄えないほど、著しく低い価格を一方的に設定すること
- インボイス登録を一方的に要請し、応じなければ取引を打ち切る、取引価格を引き下げるなどと一方的に通告すること
- 登録を求めるにあたり、課税事業者になっても価格を据え置くと一方的に通告すること
これらに共通するのは「一方的」「十分な協議がない」という点です。発注者という立場の優越性を背景に、相手の事情を無視して条件を押し付ける行為が問題視されます。
許容される協議の進め方と実務上の留意点
一方で、適切な手順を踏めば、単価の見直しや登録の打診そのものが直ちに違法になるわけではありません。公正取引委員会のQ&Aでは、双方が納得したうえで取引価格を設定すれば、結果として価格が引き下げられても問題にならないとされています。
実務上のポイントは次のとおりです。
- 十分な協議を行う: 一方的な通告ではなく、発注先の消費税負担の状況を踏まえて双方で話し合い、合意のうえで価格を決める
- 負担を一方に押し付けない: 控除減による負担増を、双方でどう分担するかを建設的に検討する。発注先がそれまで負担していた消費税分すら賄えない水準には設定しない
- 選択を尊重する: 登録するかどうかは発注先自身の判断です。登録を「依頼」することは可能ですが、応じない場合に不利益を示唆する形は避ける
- 協議の記録を残す: いつ、どのような協議を経て合意に至ったかを記録しておくと、後から説明が必要になった際の根拠になる
発注依頼文や協議の案内を出す際は、「制度変更により自社の控除が変わるため、価格について一度ご相談させてください」という協議の打診にとどめ、結論を一方的に押し付けない文面にすることが安全です。判断に迷うケースは、顧問税理士や公正取引委員会の相談窓口に確認することをおすすめします。
2026年10月に向けた発注者の移行チェックリストとスケジュール

ここまでの内容を「いつ・誰が・何を」に落とし込みます。社内マニュアル化できる粒度のチェックリストとして活用してください。
〜2026年9月:準備フェーズ
- 免税事業者である発注先(業務委託先)を棚卸しし、リスト化する
- 各免税事業者への年間支払見込み額を把握する(1億円超ルールに該当しそうな先がないか確認)
- 控除割合70%への縮小による自社の負担増を概算し、予算・上長に共有する
- 会計ソフトの税区分設定を確認し、2026年10月以降「経過措置70%」へ切り替える手順を確認する
- 帳簿の摘要記載を「80%控除対象」から「70%控除対象」へ切り替える社内ルールを準備する
- 控除不能分の仕訳方式(取得価額算入/費用区分)を社内で統一しておく
- 単価見直し・登録依頼が必要な取引先について、協議方針を検討する(法的ラインを踏まえる)
2026年10月以降:運用フェーズ
- 役務提供完了日が2026年10月1日以降の取引は控除割合70%で処理する
- 帳簿の摘要記載が「70%控除対象」になっているかを定期的にチェックする
- 単価見直し・登録依頼は、十分な協議を経て合意のうえで進める(記録を残す)
- 発注先の登録状況の変化(免税→課税)を随時反映し、登録した先は全額控除に切り替える
このチェックリストを起点に、自部門の担当者・締め処理のタイミングに合わせてスケジュール化すれば、2026年10月の切替を漏れなく進められます。
よくある質問(FAQ)
Q. 2割特例が終わると、自社(発注側)の納税額は増えますか?
2割特例は受注者(フリーランス側)の納税計算の特例なので、それ自体が直接自社の納税額を増やすわけではありません。発注者の負担に影響するのは、別の仕組みである「免税事業者からの仕入の経過措置」の控除割合が2026年10月に80%から70%へ縮小することです。免税事業者への支払いが多いほど、控除できない部分が増え、実質負担が増えます。
Q. 免税事業者からの請求書は、2026年10月以降どう処理すればよいですか?
請求書の受領・確認手順そのものは変わりません。変わるのは「帳簿の摘要記載を70%控除対象に切り替えること」と「会計ソフトの税区分を経過措置70%に変更すること」、そして「控除できない30%分を仕訳で処理すること」です。役務提供の完了日が2026年10月1日以降かどうかで控除割合を判定します。
Q. 3割特例は発注者にも関係ありますか?
3割特例は受注者(個人事業者)の納税計算の特例で、発注者が自社処理で使うものではありません。ただし、発注先が3割特例を活用するということは、その人がインボイス登録(課税事業者)しているということなので、自社は適格請求書を受け取って全額控除できます。発注者にとっては「発注先が登録した」という間接的な意味で関係します。
Q. 帳簿には何と書けば経過措置を使えますか?
摘要欄に「70%控除対象」「経過措置対象」などと記載する方法が認められています。個々の取引ごとに記載するほか、「※」などの記号を付けて別途「※は70%控除対象」とまとめて表示する方法も可能です。記載がないと控除を否認されるリスクがあるため、会計ソフトの設定で自動付記されるようにしておくと確実です。
Q. 控除が減るので単価を下げてもらうのは違法ですか?
単価の見直しそのものが直ちに違法になるわけではありません。問題になるのは、十分な協議をせず一方的に減額する、相手が消費税分すら賄えないほど低い価格を押し付ける、登録に応じなければ取引を打ち切ると一方的に通告する、といった行為です。双方が納得したうえで価格を設定するための協議であれば許容されます。協議の経緯を記録に残しておくと安心です。
まとめ
発注者にとっての2026年10月の制度変更は、次の3点に集約されます。
- 「2割特例の終了」は受注者の話であり、発注者が自社処理として直接対応するのは「免税事業者からの仕入の経過措置(80%→70%)」である
- 自社の処理では、帳簿の摘要記載を「70%控除対象」へ切り替え、会計ソフトの税区分を見直し、控除不能分(30%)の仕訳方式を統一する必要がある
- 免税のまま継続する発注先への単価見直し・登録依頼は、十分な協議を前提とし、下請法・優越的地位の濫用に触れない進め方を徹底する
これらを2026年9月までの準備と10月以降の運用に分けてチェックリスト化すれば、税務調査でも説明できる移行フローが整います。控除割合はその後も2028年10月に50%、2030年10月に30%へと段階的に下がるため、今回の切替を機に、免税事業者への支払い状況を継続的に把握できる体制を整えておくことが、将来の負担増にも備える近道になります。
経過措置の縮小で増えていく自社負担を取引先ごとに試算し、「そのまま継続するか・単価を見直すか・登録を依頼するか」を数値で判断したい方は、外部エンジニア活用のコストとリターンを整理する外部エンジニア活用のROI・コスト試算ガイドもあわせてご覧ください。本記事の負担増シミュレーションを、年間の発注計画・予算の見直しに落とし込む際の検討材料になります。



