新規プロジェクトの初期設計で ER 図を描く必要が出たとき、有償 SaaS を避けて OSS を選定するのは意外と難しい選択です。ブラウザ完結型の ER 図エディタは複数存在し、ChartDB・Azimutt・dbdiagram.io など候補は多岐にわたります。その中でも drawDB(drawdb-io/drawdb)は、GitHub スター数 39,096 を集める人気 OSS として近年注目されています。
しかし、日本語圏では drawDB 単独の紹介記事は少なく、主要な代替 OSS との比較選定情報はさらに限定的です。「drawDB は何ができるのか」「ChartDB や Azimutt とどう違うのか」「AGPL-3.0 ライセンスは商用組込みで問題ないのか」といった意思決定に必要な情報を、公式ドキュメントを跨いで自力で集めるのは負担が大きいのが実情です。
本記事は drawDB の公式サイト・公式ドキュメント・GitHub リポジトリ(README)の一次情報をもとに、リポジトリ基本情報・主要機能・対応データベース・類似 OSS との差分・向くプロジェクト像・セルフホストと共有機能を整理し、初見のエンジニアが「自プロジェクトに drawDB を採用してよいか」を判断するための軸を提示します。
なお、本記事は動作検証を行わず、公式ドキュメント・README・公式サイトに記載された内容のみを根拠として構成しています。UI スクリーンショットや実行結果は掲載せず、機能記述は公式一次情報の範囲に限定します。
drawDBとは
drawDB は、drawdb-io/drawdb で開発が続けられている、ブラウザ完結型のデータベーススキーマエディタおよび SQL ジェネレーターです。GitHub リポジトリの description には次のように記載されています。
Free, simple, and intuitive online database diagram editor and SQL generator. (出典: https://github.com/drawdb-io/drawdb description)
README では、より具体的に次のように紹介されています。
DrawDB is a robust and user-friendly database entity relationship diagram (ERD) editor right in your browser. Build diagrams with a few clicks, export and import SQL scripts, generate migrations, customize your editor, and more without creating an account. (出典: https://github.com/drawdb-io/drawdb README)
つまり drawDB は、アカウント登録なしにブラウザだけで ER 図(Entity Relationship Diagram)を作成し、SQL スクリプトの入出力やマイグレーション生成まで行える OSS です。公式サイト https://drawdb.app/ にアクセスすれば、その場で ER 図エディタを開いて設計を始められます。
リポジトリの基本情報は次のとおりです(gh api /repos/drawdb-io/drawdb 取得値、2026-08-15 時点)。
項目 | 値 |
|---|---|
owner/name | drawdb-io/drawdb |
description | Free, simple, and intuitive online database diagram editor and SQL generator. |
主要言語 | JavaScript |
ライセンス | AGPL-3.0 |
GitHub スター数 | 39,096 |
Fork 数 | 3,186 |
最終 push | 2026-08-15 |
リポジトリ状態 | archived=false / fork=false / disabled=false / visibility=public |
公式サイト |
archived=false かつ fork=false であることから、本リポジトリは本家として現役で開発が継続されているプロジェクトであると確認できます。最終 push が本記事執筆日と近接している点も、活発に更新されていることを示す指標として参考になります。
なお、GitHub Releases は本記事執筆時点では作成されておらず、バージョン管理はコミットベースで行われています。特定バージョンを固定して運用したい場合は、リポジトリのコミット SHA を明示的に指定する運用が必要になります。
drawDBの主な特徴
drawDB の特徴は、公式ドキュメント https://drawdb-io.github.io/docs/ および README の記載を整理すると、以下の 4 点にまとめられます。
ブラウザ完結・アカウント不要でローカル保存
drawDB は Web アプリケーションとしてブラウザ上で動作し、アカウント登録なしに利用できます。公式ドキュメントには次のように記載されています。
a free, open-source database diagram editor (出典: https://drawdb-io.github.io/docs/ Getting Started)
作成した ER 図は、公式 OSS 版ではブラウザの IndexedDB にローカル保存される設計となっています。この保存モデルにより、サーバー側にダイアグラムをアップロードすることなく、ローカルで設計作業を完結できます。導入摩擦が極めて低く、個人の設計メモや小規模な検討には有効な選択肢になります。
一方で、ローカル保存のみに依存する場合、ブラウザのストレージ削除・別端末との共有・チームでの共同編集には別途工夫が必要になる点も併せて把握しておく必要があります。共有機能・セルフホストについては後述します。
主要な SQL 方言のインポート・エクスポートに対応
drawDB は複数の主要な SQL 方言に対応し、SQL スクリプトのインポート(既存 DDL からの ER 図生成)と、ER 図からの SQL エクスポート(マイグレーション生成)の双方向を扱えます。対応する DB の種類は次章で詳しく整理します。
ER 図の視覚設計と SQL の往復
drawDB のエディタは、GUI 上でテーブル・カラム・リレーションを視覚的に設計しつつ、SQL スクリプトとして入出力できます。「既存 DDL を読み込んで ER 図を可視化する」使い方と、「新規に ER 図を設計して DDL を生成する」使い方の両方をカバーできる構成です。
画像・PDF などのエクスポート
README には「export and import SQL scripts」との記載があり、加えてリポジトリ内の依存関係(html-to-image・jspdf・file-saver・jszip 等)からは画像・PDF 形式でのエクスポート機能が備わっていることが示唆されます。ただし本記事は動作検証を行わないため、依存の存在のみを根拠に断定はせず、公式にサポートされる出力形式の詳細は公式サイトおよび公式ドキュメントの該当ページで確認することを推奨します。
対応データベースと入出力形式
公式ドキュメント https://drawdb-io.github.io/docs/ には、drawDB が扱えるデータベースの種類として以下が挙げられています。
種別 | 位置付け |
|---|---|
Generic | DB 非依存の抽象モデル |
MySQL | 主要 RDBMS |
PostgreSQL | 主要 RDBMS |
SQLite | 組み込み/軽量用途 |
MariaDB | MySQL 互換系 RDBMS |
Microsoft SQL Server | 商用 RDBMS |
Oracle SQL | Beta として明記 |
(出典: https://drawdb-io.github.io/docs/ Getting Started)
主要な OSS/商用 RDBMS の多くをカバーしており、業務システムで一般的に利用される DB スタックは概ね対象範囲に含まれています。Oracle SQL は Beta 明記のため、Oracle をメインで扱うチームは対応度を公式ドキュメントで最新状態に確認したうえで採用可否を判断する運用が望ましいと考えられます。
「Generic」は特定の DB ベンダーに紐づかない抽象モデルであり、初期の構想段階で「後から採用 DB を決める」ようなプロジェクトの ER 図設計や、教育・研修目的での中立的な ER 図作成に向いていると位置付けられます。
入出力形式については、公式ドキュメントに「SQL のインポート/エクスポート」が明記されています。DBML / JSON など他形式の詳細サポート状況は、公式ドキュメントの該当ページで最新情報を確認することを推奨します。本記事はドキュメントで明示的に確認できた範囲に限定して記述し、依存パッケージの存在のみを根拠とした断定は避けます。
類似OSSとの比較
drawDB を選定する際、実務的な比較対象になり得る類似 OSS として、chartdb/chartdb と azimuttapp/azimutt が挙げられます。加えて、OSS ではありませんが「ブラウザで ER 図」の代表格として dbdiagram.io(SaaS)も参照対象として認識されているため、位置関係を整理します。
なお dbdiagram.io は OSS ではない SaaS 型プロダクトのため、本記事の一次比較対象からは外し、参考として位置関係のみを整理します。
ChartDB との違い
ChartDB のリポジトリ description は次のとおりです。
Database diagrams editor that allows you to visualize and design your DB with a single query. (出典: https://github.com/chartdb/chartdb description)
ChartDB は「既存 DB に接続し、単一クエリで自動的に ER 図を生成する」という自動化された入口を最大の売りにしています。既に稼働中の DB からリバースエンジニアリング的に ER 図を起こしたいケースに強みを持ち、公式サイトでは AI 支援での DDL エクスポート・共同編集の存在にも触れています。
一方の drawDB は、GUI での新規設計・SQL スクリプトインポート・新規 ER 図作成のいずれの入口も同等に扱う設計です。「既存 DB からの自動生成」を主軸にはしていないため、稼働中 DB を対象にする場合はネットワーク接続や認証情報を必要としない点が導入摩擦の低さに寄与します。
ライセンスはいずれも AGPL-3.0 であり、商用組込み時の考慮点は共通です。
Azimutt との違い
Azimutt のリポジトリ description は次のとおりです。
Explore, document and optimize any database (出典: https://github.com/azimuttapp/azimutt description)
Azimutt は「探索・ドキュメント化・最適化」という DB ライフサイクルの後段までを射程に置いた「DB ナビゲータ」寄りのプロダクトです。大規模スキーマの探索・可視化に強みを持ち、対象範囲が drawDB より広い分、「純粋な ER 図設計ツール」を求める用途と比較すると学習コストが上がる傾向があります。
ライセンスは MIT で、AGPL-3.0 と比較して商用組込み時の制約が緩い点も選定時の差分になります。
dbdiagram.io との位置関係(参考)
dbdiagram.io は DBML(Database Markup Language)と呼ばれるテキスト DSL でスキーマを記述し、右ペインに ER 図を描く SaaS です。OSS ではなく freemium モデルであり、「アカウント登録前提」「クラウド保存前提」という点が drawDB との構造的な違いです。テキスト DSL を軸にする点でエディタとしての操作モデルも異なります。
「ブラウザで ER 図を描く」というカテゴリで並列に語られやすいものの、OSS 選定の比較軸においては drawDB とは別カテゴリのプロダクトと捉えるのが実情に即しています。
5 軸比較表
上記の類似 OSS を、drawDB を選定する際の 5 つの主要軸で整理すると次のようになります。
軸 | drawDB | ChartDB | Azimutt |
|---|---|---|---|
主な入口 | GUI 設計 / SQL インポート / 新規作成が同等 | 既存 DB 接続からの自動生成が主軸 | 既存 DB の探索・ドキュメント化が主軸 |
対応 DB(一次情報) | Generic / MySQL / PostgreSQL / SQLite / MariaDB / SQL Server / Oracle SQL (Beta) | 公式サイトに接続可能 DB の一覧あり(要参照) | 探索対象として複数 DB をサポート |
ライセンス | AGPL-3.0 | AGPL-3.0 | MIT |
保存モデル | ブラウザの IndexedDB(OSS 版)/有償 Pro プランでクラウド同期 | Web 版 + セルフホスト | クラウド + セルフホスト |
主な想定ユースケース | 個人・小規模チームの新規設計、教育・研修、SQL の視覚化 | 既存 DB の自動 ER 図生成、AI 支援の DDL エクスポート、共同編集 | 大規模スキーマの探索・ドキュメント化・最適化 |
なお、上表のスター数は各リポジトリの description・README を参照した本記事執筆時点の一次情報にもとづくもので、drawDB は 39,096(本記事内で明示)、ChartDB は 22,733、Azimutt は 2,164 が確認できています(出典: 各リポジトリの GitHub リポジトリページ)。
drawDBが向くプロジェクトと向かないプロジェクト
前章の比較を踏まえると、drawDB を採用すべきプロジェクト像と、他ツールを検討すべきプロジェクト像は次のように整理できます。
drawDB が向くプロジェクト
- 個人・小規模チームの新規 DB 設計。ブラウザ完結・アカウント不要のため、開始までの摩擦が小さい
- 顧客提出用の ER 図作成。SQL スクリプトのインポートで既存 DDL からも ER 図を起こしやすい
- 教育・研修用途。Generic モデルで DB ベンダー非依存の ER 図を扱える
- 既存 SQL スクリプトを可視化して読み解きたいケース。SQL インポート機能で図として一覧できる
選定時に検討が必要なプロジェクト
- クローズドソースの商用製品にコード組込みを検討する場合: drawDB のライセンスは AGPL-3.0 です。AGPL-3.0 はネットワーク越しの利用を含む配布時にソース公開義務が発生する強コピーレフト系ライセンスであり、自社プロダクトへの直接組込みは慎重な検討を要します。単に自社内で ER 図エディタとして利用する(生成物である ER 図・SQL を業務に使う)用途は一般に問題になりにくいと考えられますが、判断は組織の法務担当と AGPL-3.0 の一次テキストにもとづいて行う必要があります
- チーム共同編集を最初から前提とする場合: OSS 版はブラウザの IndexedDB ローカル保存が中心のため、リアルタイム共同編集を求める場合は有償 Pro プラン、または
drawdb-serverを用いたセルフホスト構成、あるいは既存 DB 自動生成と共同編集を前面に押し出す ChartDB のクラウド版などを比較検討することが現実的です - 既存の巨大 DB を自動で ER 図化したい場合: drawDB は「既存 DB への接続 → 自動生成」を主軸としていないため、稼働中の大規模 DB からのリバースエンジニアリングを最短経路で行いたい場合は、接続機能を持つ ChartDB や、探索・最適化まで射程に置く Azimutt のほうが要件に合致する可能性があります
意思決定の順序としては、まず「AGPL-3.0 の受容可否」を組織内で確認し、次に「共同編集・自動生成の必要性」を評価する流れが実務的です。この 2 点のいずれもクリアできる場合、drawDB は導入摩擦の低さと対応 DB の広さで有力な選択肢になります。
セルフホストと共有機能
drawDB は OSS 本体を自前でホスティングして利用できます。README にはローカル開発と Docker ビルド・起動の手順が記載されています。
ローカル開発の手順は次のとおりです。
git clone https://github.com/drawdb-io/drawdb
cd drawdb
npm install
npm run dev
(出典: https://github.com/drawdb-io/drawdb README - Local Development)
Docker で起動する場合は次のとおりです。
docker build -t drawdb .
docker run -p 3000:80 drawdb
(出典: https://github.com/drawdb-io/drawdb README - Docker)
なお、本記事は動作検証を行っておらず、上記手順は README 記載の原文をそのまま抜粋しています。実行環境の準備・エラー対処については、リポジトリの Issues および README の最新版を確認してください。
共有機能(作成した ER 図を他者と共有・参照する機能)を利用する場合、README では別リポジトリ drawdb-io/drawdb-server のセットアップと .env.sample に記載された環境変数の設定が必要である旨が案内されています。共有機能はオプション扱いであり、個人利用や小規模チームで ER 図の保存・エクスポートのみを行うユースケースであれば、OSS 本体だけで用途を満たせます。
「自組織内でどこまでを自前で持つか」の観点で整理すると、以下の 3 段階の運用パターンが想定できます。
- A. OSS 本体のみ: ブラウザで動作するエディタとローカル保存で完結。個人・小規模チームの設計用途
- B. OSS 本体 +
drawdb-serverセルフホスト: 共有機能を含めて自組織内で完結させる構成 - C. drawDB Pro プラン利用: セルフホスト運用を避け、クラウド同期・チームワークスペース・権限管理などの追加機能を有償で利用(公式ドキュメントで概要が案内されている)
自組織のセキュリティ要件・運用体制・予算に応じて、A → B → C の順に検討する運用が実務的です。
まとめ
drawDB は、ブラウザ完結型で主要な SQL 方言に幅広く対応する、AGPL-3.0 ライセンスの ER 図・SQL 生成 OSS です。アカウント登録なしに利用できる導入摩擦の低さと、Generic モデルを含む多方言対応が特徴で、GitHub スター数 39,096・archived=false・fork=false という指標からも、本家として活発に維持されているプロジェクトであることが確認できます。
選定シーンごとの推奨をまとめると、以下のように整理できます。
- 個人・小規模チームの ER 図設計: drawDB(ブラウザ完結・アカウント不要)
- 既存 DB からの自動 ER 図生成が最重要: ChartDB(既存 DB 接続 → 自動生成が主軸)
- 大規模 DB の探索・ドキュメント化・最適化まで射程に入れる: Azimutt(DB ナビゲータ寄りの設計思想)
商用組込みを検討する場合は、AGPL-3.0 の一次テキストと自社の利用形態を照合し、法務担当と合意した範囲で採用可否を判断してください。共有機能・チーム共同編集を必要とする場合は、drawdb-server によるセルフホスト、または drawDB Pro プランの検討が現実的な選択肢になります。
いずれの場合も、次のアクションはシンプルです。公式サイト https://drawdb.app/ にアクセスして ER 図エディタを起動し、自プロジェクトの一部スキーマを試験的に設計してみることで、UI の操作感と自チームの設計フローとの相性を短時間で判断できます。
関連情報
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出典
- 公式サイト: https://drawdb.app/
- 公式ドキュメント: https://drawdb-io.github.io/docs/
- GitHub リポジトリ: https://github.com/drawdb-io/drawdb
- 共有機能サーバ: https://github.com/drawdb-io/drawdb-server
- 類似 OSS: https://github.com/chartdb/chartdb / https://github.com/azimuttapp/azimutt



