「SES 会社で新規開拓を強化したい。特にエンド直請けや大手 SIer への一次請け化を進めたい」。二次・三次請けの単価マージン構造に頭打ちを感じ、既存のパートナー SES 紹介・マッチングサービス・SNS 以外の「もう 1 チャネル」を探し始めた営業責任者の方は少なくありません。そこで候補に上がるのが、AI や SaaS で自動化が進んだフォーム営業です。
一方で、SES 業界の営業文化は「スキルシート添付前提の対面商流」で回ってきた歴史が長く、フォーム 1 通で新規取引が始まる構造ではありません。実際、社内で導入検討が上がった瞬間に「そもそも SES にフォーム営業は刺さるのか」「稼働中エンジニアの再稼働タイミングに合わせて送信するとは、具体的にどういう設計なのか」「大手 SIer は与信・取引開始のハードルが半年単位で、フォーム 1 通では突破できないのでは」という 3 つの壁で議論が止まりやすいテーマです。
この壁は、SES 業界の商流構造・稼働終了サイクル・準委任契約前提を踏まえずに、一般的なフォーム営業の設計論をそのまま持ち込んでしまうと、より高くなります。逆に、SES 業界の 5 つの特性を先に言語化し、商流別のセグメント設計・準委任前提の文面・稼働カレンダーと連動した送信タイミングに落とし込めれば、フォーム営業は「もう 1 チャネル」として現実的な選択肢になります。
本記事では、SES 業界のフォーム営業を難しくする 5 つの業界特性を出発点として、エンド直請け/大手 SIer/パートナー SES の商流別リスト設計、準委任前提の文面設計 3 原則、稼働終了サイクルに合わせた送信タイミング設計、初回商談化までの導線設計、そしてマッチングサービス・展示会・SNS との併用ロードマップまでを整理します。あわせて、SES 業界特有の密なネットワークで信頼を損なわないための「送信先を絞る運用設計」も扱います。読了後には、自社エンジニアの技術スタックと狙う商流セグメントを 1 つに絞り、翌週から動ける最初の一歩が見える状態を目指します。
SES 会社の新規開拓が難しい構造とフォーム営業の位置づけ
SES 会社の新規開拓が難しいと感じられる背景には、「頑張りが足りない」ではなく、業界の商流構造そのものに起因する構造課題があります。まずこの構造課題を整理したうえで、既存チャネルの到達限界とフォーム営業の位置づけを共有します。
SES 業界の新規開拓を難しくする 4 つの構造課題
1 つ目は、商流の深さが単価と利益率を規定することです。エンド顧客 → 一次請け(大手 SIer)→ 二次請け SES → 三次請け SES と流れる過程で、各層に営業・管理コスト分のマージン(一般に 10〜30% 前後、複数商流を経由するとより増える)が積み重なり、末端の SES 会社ほど単価から差し引かれる比率が高くなります。エンジニアの手取りと会社の利益率の両方を圧迫する構造で、脱二次三次請けの動機がここから生まれます。
2 つ目は、大手 SIer・大手事業会社の与信・取引開始ハードルです。上場企業・金融・公共系のクライアントを持つ大手 SIer では、新規取引開始にあたり反社チェック・与信調査・情報セキュリティ監査・取引先登録(ベンダ登録)まで含めて 3〜6 ヶ月かかることが一般的です。フォーム 1 通で受注に至らない前提を踏まえた設計が必要になります。
3 つ目は、稼働終了サイクルと発注タイミングのズレです。SES の案件は 3〜12 ヶ月の稼働単位が多く、稼働終了の 1〜3 ヶ月前に次案件を並行して探す運用になります。一方、発注側は年度末(1〜3 月)・年度始め(4 月)・下期スタート(10 月)・予算計上時期(10〜12 月)に発注が集中しやすく、両者を噛み合わせられないと「エンジニアは空いているのに案件がない」「案件はあるのに要員がいない」ミスマッチが起こります。
4 つ目は、準委任契約前提の営業文化です。スキルシート提示、単価交渉、面談を経て稼働開始という流れが業界標準として定着しており、「話を聞いてもらう」までに複数の書類・面談が挟まります。短文で完結するフォーム 1 通で意図を伝えるには、この慣習を踏まえた設計が必要になります。
既存チャネルの到達限界
現在多くの SES 会社が使っている主要チャネルには、それぞれ到達限界があります。
- 既存パートナー SES 経由の案件紹介: 供給元がパートナー SES に依存するため、上位商流(エンド直・一次請け)へ抜けにくく、単価構造も既存のまま固定化しやすい
- マッチングサービス(レバテック・PE-BANK・COBOL 案件系): 複数の SES 会社が同じ案件に対して並行してエンジニアを提案するため、単価競争になりやすい。エンド直請け案件も存在するが、プラットフォーム経由である以上、直接取引には転化しにくい
- SNS(Wantedly・LinkedIn・X): 個人 SNS 発の案件獲得は担当者個人のネットワークに依存し、組織的な再現性を持たせにくい
- 展示会(Japan IT Week 等): 参加コスト・準備期間が大きく、獲得したリードが商談化するまでのタイムラグも長い
- テレアポ: 大手 SIer・事業会社の受付ブロックが厚く、意思決定者への到達率が下がっている
これらのチャネルを否定するわけではなく、それぞれ役割があるうえで「新規開拓の主力チャネル」としては規模化・上位商流への進出に限界がある、という位置づけです。
フォーム営業を「追加チャネル」として検討する際の論点
フォーム営業は、上記チャネルを置き換えるものではなく、エンド直・大手 SIer・パートナー SES への「認知獲得+接点作り」の追加チャネルとして位置づけるのが現実的です。SES 業界の営業サイクルを考えれば、フォーム 1 通で案件化しない前提は変わりません。むしろ、パートナー登録・カジュアル相談・技術情報交換・スキルシート開示といった初回接点を、フォーム営業経由でどう作るかの設計論が主戦場です。
フォーム営業そのものの基本的な仕組み・一般的な運用設計を先に押さえたい場合は、フォーム営業とはを参照してから本記事に戻ると、SES 業界向けの調整ポイントが理解しやすくなります。
一方で、SES 業界は同業ネットワークが密で、悪評が短期間で流通するため、送信量を最大化する設計は逆効果になりやすいという特性もあります。この点については後述の「送ってよい相手」を絞る運用設計の章で改めて扱います。
SES 業界のフォーム営業を難しくする 5 つの業界特性

SES 業界の営業設計を「難しい」と感じさせている要素を、5 つの業界特性に分解します。以降の章(商流別リスト・文面設計・タイミング・導線・併用ロードマップ)は、この 5 特性への対応として位置づけます。
特性1:商流構造が単価と利益率を規定する
SES 業界は、エンド顧客 → 一次請け(大手 SIer)→ 二次請け SES → 三次請け SES の階層構造で成り立っており、狙う相手ごとに単価水準・営業サイクル・意思決定者・伝えるべき価値が根本的に異なります。
エンド直請けを狙うなら、事業会社の情シス・DX 部門・内製開発部門に対して「自社エンジニアが業務理解を持って中長期で伴走できること」を主軸に伝える必要があります。一方、大手 SIer を狙うなら、調達部門・案件営業・PM に対して「安定した供給力・複数職種でのパッケージ提案・与信面での信頼」を主軸に据える必要があります。さらにパートナー SES を狙うなら、営業窓口に対して「相互に補完できる技術領域・地域・稼働可能タイミング」を訴求することになります。
同じ「新規開拓」でも、狙う商流層によって刺さる文面が変わるため、リストと文面をセットで設計する必要が出てきます。
特性2:準委任契約前提でスキルシート添付が慣習
SES 業界の営業は、スキルシート提示 → 単価提示 → 面談 → 稼働開始の流れが標準化されており、意思決定者は「どんなエンジニアが、いつから、どの技術で稼働できるか」を書類ベースで確認する文化に慣れています。
短文のフォーム営業で「エンジニア多数在籍」「経験豊富な人材あり」といった抽象的な訴求だけを提示しても、受け手側の意思決定基準(技術スタック・稼働時期・過去実績)とかみ合わず、返信率が上がりません。
一方で、フォーム本文にスキルシートを丸ごと貼り付けるのは別の問題を引き起こします。個人情報保護・エンジニア本人の同意・複数社への同時提示リスクなどが絡み、業界慣行として NG に位置づけられます。この論点は後述の文面設計の章で改めて扱います。
特性3:稼働終了サイクル(3〜12 ヶ月)と発注タイミング(年度末・4 月・10 月)が営業サイクルを規定する
SES 案件は 3〜12 ヶ月単位で契約更新が行われ、多くの現場ではエンジニアの稼働終了 1〜3 ヶ月前に次案件の並行探索が始まります。営業側から見ると、稼働中のエンジニアの終了時期が「営業カレンダーの起点」になります。
発注側は、年度末(1〜3 月)・新年度案件立ち上げ期(4 月)・下期スタート(10 月)・予算計上時期(10〜12 月)にプロジェクト立ち上げが集中しやすく、その時期に合わせて案件が動きます。これは日本企業の年度会計・予算執行サイクルに沿った動きであり、SES 業界の営業実務でも広く共有されている経験則です。
この 2 つのカレンダーを噛み合わせるのが SES 業界の営業設計の肝であり、フォーム営業の送信タイミングもこれに沿って組む必要があります。
特性4:大手 SIer は与信・取引開始まで 3〜6 ヶ月かかる(フォーム 1 通で商談化しない前提)
大手 SIer や上場企業を親会社に持つ SIer では、新規取引先の登録に反社チェック・与信調査・情報セキュリティチェック・NDA 締結・取引先登録(ベンダ登録)が必要で、初回コンタクトから初回発注まで 3〜6 ヶ月かかることが珍しくありません。
これは、フォーム営業が「1 通送って商談化」を目的とする一般論とは相性が悪い部分です。逆に言えば、フォーム営業の目標を「初回発注」ではなく「取引先登録・パートナー登録・技術情報交換の起点」に置き換えれば、SES 業界の営業サイクルに乗せられます。
特性5:業界内の情報流通が早く、悪評が短期間で広がりやすい
SES 業界は、元請け SIer・パートナー SES・エンド顧客の間で担当者が転職・異動し、同じ人物が別の立場で再登場することが多い業界です。加えて、パートナー会や勉強会・SNS を通じた横のつながりも密で、営業姿勢に対する評価が短期間で流通します。
一度「不用意に営業を送ってくる会社」と認識されると、複数の商流で同時に信頼を失うリスクがあります。フォーム営業の設計は、この情報流通構造を前提に「送信量を最大化する」より「送ってよい相手にだけ送る」姿勢に寄せる必要があります。
SES 会社の送信先リスト設計|商流別セグメントで狙う相手を分ける

SES 会社のフォーム営業では、送信先リストを「エンド直請け」「大手 SIer」「パートナー SES」の 3 商流に分けて設計します。同じフォーム営業でも、セグメントごとに絞り込み軸・意思決定者・伝えるべき価値・想定される反応率が変わります。
なお、SES 業界に閉じないリスト設計の一般論(業種・売上規模・組織階層・意思決定者役職などの絞り込み軸を体系的に組み立てる考え方)を深掘りしたい場合は、営業リストのターゲティング軸設計を先に押さえておくと、本章の SES 商流別セグメントの位置づけがつかみやすくなります。
商流別セグメント1:エンド直請け(事業会社の情シス・DX 部門・自社サービス開発部門)
エンド直請けは、事業会社の情シス部門・DX 推進部門・自社サービス開発部門を対象にします。以下の絞り込み軸で 1〜2 段階のフィルタをかけると、自社エンジニアが刺さりやすい相手に絞れます。
- 業種: 自社エンジニアが業務ドメイン理解を持つ業種(例: 金融、EC、SaaS、物流、製造、医療、公共)
- 売上規模・従業員数: 内製開発チームを持ちうる規模(一般に売上 100 億円以上・従業員 500 名以上が目安。ただし DX 積極企業では小規模でも該当)
- 意思決定者役職: 情シス部長・DX 推進部長・CTO・VPoE・プロダクト開発部長・開発マネージャー
- 技術スタック: 自社エンジニアが対応可能な言語・フレームワーク・クラウド(後述の技術スタック絞り込み参照)
- プロジェクトフェーズ: 内製化推進中・DX プロジェクト立ち上げ期・既存システムのモダナイズ期
エンド直請けは、フォーム営業で最も「話を聞く価値」を証明しにくいセグメントです。抽象的な「エンジニア紹介」ではなく、「同業種の内製開発チームに伴走してきた過去実績」「特定の技術スタックで長期稼働できるエンジニアがいる」といった具体性が必要になります。
商流別セグメント2:大手 SIer(一次請け元請け)
大手 SIer は、一次請けとして事業会社案件を受注し、二次以降の SES 会社に業務委託する立場です。フォーム営業のターゲットは、案件営業・調達部門・パートナー管理部門・PM です。
- 業種内ポジション: 事業会社案件を継続的に持つ SIer(金融系、公共系、大手製造系など)
- 売上規模: 目安として売上 100 億円以上(中堅 SIer から独立系 SIer まで含む)
- 意思決定者役職: 調達部門・パートナー管理部門・案件営業・PM・案件マネージャー
- 接点候補: 「協業パートナー募集」「BP パートナー登録」「取引先登録」といった専用フォームを持つ SIer は、そちらを優先窓口にする
大手 SIer 向けフォーム営業の目標は、初回発注ではなく取引先登録・パートナー登録・案件情報交換の窓口確保に置きます。前述の通り、実際の取引開始まで 3〜6 ヶ月かかる前提で設計する必要があります。
商流別セグメント3:パートナー SES(相互補完型の同業)
パートナー SES は同業の SES 会社ですが、対抗ではなく相互補完の関係を作れる可能性のある相手を狙います。
- 業種内ポジション: 特定の技術領域・地域・業種に強い SES 会社(自社と重ならないポジション)
- 規模: エンジニア 20〜200 名規模の中小 SES が相互補完しやすい
- 意思決定者役職: 営業部長・営業マネージャー・パートナー渉外担当
- 想定される協業パターン: 案件シェア、要員シェア、共同提案、地域補完(首都圏 × 地方)、技術補完(フロント × バック × インフラ)
パートナー SES 向けは、他 2 セグメントとは異なり「対等な情報交換」を主軸にした文面が刺さります。「案件を紹介してほしい」の一方通行ではなく、双方向の情報交換ベースで接点を作ります。
技術スタックでの絞り込み
自社エンジニアの技術スタックと、送信先の技術スタックの噛み合わせも絞り込みの重要軸です。
技術スタック | 自社エンジニアが対応可能な範囲を明確化する軸 |
|---|---|
言語・フレームワーク | Java(Spring)、C#(.NET)、Python(Django/FastAPI)、TypeScript(React/Next.js)、PHP(Laravel)、Ruby(Rails)、Go、Kotlin/Swift(モバイル)等 |
クラウド・インフラ | AWS、Azure、GCP、オンプレミス、Kubernetes、Terraform |
データ基盤 | RDBMS(MySQL/PostgreSQL/Oracle/SQL Server)、NoSQL、DWH、BI |
業務ドメイン | 金融、EC、公共、製造、物流、SaaS、AI/機械学習、ゲーム |
送信先企業の求人票・技術ブログ・GitHub 公開状況などから技術スタックが推定できる場合は、噛み合う相手に絞ることで返信率が上がります。
「送るべきでない相手」の判定
商流別セグメントで狙う相手を定義したのと同じくらい、「送るべきでない相手」の除外設計が重要です。SES 業界の情報流通の速さを踏まえると、以下は基本的に送信対象から除外する運用が現実的です。
- 既存パートナー SES と重複する案件持ちの企業
- 過去 6〜12 ヶ月以内に自社から接触した企業(同一担当者・別担当者いずれも)
- 元請け SIer 経由で自社エンジニアが稼働中の顧客企業(元請け SIer との関係を損なうリスク)
- 明確な競合 SES(同一領域で正面から衝突する相手)
- 過去に断られた企業への再送
- 営業禁止表示・利用規約でフォーム営業を禁止している企業
これらの除外運用は、送信リストと突合して自動的にフィルタする仕組みを持てると再現性が上がります。除外運用の設計については、後述の「送ってよい相手」を絞る運用設計の章で改めて扱います。
SES 商材に響く文面設計の3原則
商流別セグメントを分けたうえで、それぞれのセグメントに響くフォーム営業の文面を設計します。SES 業界の意思決定者に「話を聞く価値」を短文で伝えるには、以下の 3 原則が土台になります。
なお、業種横断でのフォーム営業文面テンプレートの書き分け(コンサル・広告代理店・建設・金融保険など、SES 以外の業種における主張点・訴求軸)を並行して押さえたい場合は、フォーム営業の文面テンプレート(業種別)を参照してください。本章は SES 業界に閉じた 3 原則を扱い、業種横断の書き分けは当該記事に委ねます。
原則1:技術スタック・稼働可能時期・過去実績の 3 点セットを先に示す
SES 業界の意思決定者が最初に確認するのは、「どんな技術で、いつから、どんな実績のあるエンジニアが動けるか」の 3 点です。抽象的な「エンジニア多数在籍」「経験豊富な人材あり」では、意思決定者が次のアクションを判断できません。
具体的には、以下を本文冒頭に含める設計が有効です。
- 技術スタック: 具体的な言語・フレームワーク・クラウドを 2〜4 個明示(例:「React/Next.js × TypeScript × AWS で自社サービス開発に稼働できるエンジニア 3 名」)
- 稼働可能時期: 具体的な着任目安(例:「翌月から週 5 リモート稼働可能」「1 月着任で開始可能」)
- 過去実績: 業種・プロジェクト規模・稼働期間の 3 点をあわせて記載(例:「EC 企業でフルスタック開発を 2 年間伴走」)
この 3 点セットは、後段のスキルシート提示・面談に繋げるための「話を聞く価値」の証明になります。
原則2:相手の商流ポジション別に主張点を書き分ける
前述の商流別セグメント(エンド直請け/大手 SIer/パートナー SES)で、刺さる訴求点は異なります。同じテンプレートで一斉送信すると、いずれのセグメントにも刺さらない文面になりやすいです。
- エンド直請け向け: 業務ドメイン理解・中長期伴走・内製化推進の伴走者としてのポジションを訴求
- 大手 SIer 向け: 安定した供給力・複数職種でのパッケージ対応・与信面での信頼・パートナー登録を通じた継続関係を訴求
- パートナー SES 向け: 相互補完(技術領域・地域・稼働タイミング)・情報交換・共同提案の可能性を訴求
商流ポジション別の書き分けは、送信リストの分割とセットで運用します。
原則3:提案色を抑え「話を聞く価値」を証明する
フォーム営業で最も避けたいのは、「案件を紹介してください」という一方通行の依頼と受け取られることです。SES 業界の営業文化を踏まえると、以下のような「話を聞く価値」を先に提示する構成が現実的です。
- パートナー登録の起点として: 「貴社のパートナー登録プログラムがあれば、まず登録のご相談をさせていただきたい」
- 技術情報交換の起点として: 「弊社エンジニアの経験領域と、貴社案件の技術領域が重なる部分について、情報交換の場をいただけないか」
- カジュアル相談の起点として: 「継続的な協業の可能性について、まず 30 分ほどオンラインでカジュアルに情報交換させていただけないか」
- スキルシート開示の起点として: 「もし関心のあるスキルセットがあれば、対応可能なエンジニアのスキルシートをお送りする準備がある」
「案件をください」ではなく、「情報交換の起点」を提示することで、相手側の心理的ハードルを下げつつ、SES 業界の営業サイクルに乗せやすくなります。
件名の設計
件名は、SERP で言えばタイトルタグに相当する「開封の分岐点」です。SES 商材で開かれる件名の作り方には、いくつかの共通項があります。
- 相手の関心領域を明示する: 「【協業ご相談】〇〇領域のエンジニア連携について」のように、相手が判断しやすい主題を先頭に置く
- 単価訴求の煽り件名を避ける: 「単価 UP」「格安人材」「限界単価」といった件名は業界慣行に沿わず、開封率よりも印象を悪化させるリスクが高い
- 一斉送信の匂いを消す: 「〇〇株式会社 御中」など、宛名を件名の頭に置くと機械送信の印象を弱められる
- 短くする: 全角 25〜35 字を目安とし、モバイル受信で切れない範囲に主題を集める
SES 向け文面でよく起きる NG パターン
最後に、SES 業界特有の NG パターンをまとめます。これらは、フォーム営業の返信率を下げるだけでなく、業界内での信用を損なうリスクを持つため、原則として避ける設計にします。
- 個人スキルシートをフォーム本文に貼る: 個人情報保護・エンジニア本人の同意・複数社同時提示のリスクが絡み、業界慣行として NG。スキルシートは「対応可能」の意思確認をした上で、個別に送付する
- 派遣・準委任・請負を混同した表現: 「エンジニアを派遣します」「弊社エンジニアを常駐させます」といった表現は、準委任契約前提の場面で偽装請負リスクを疑われる原因になる。契約形態を明示する(「業務委託・準委任契約前提」等)
- 単価幅を根拠なく提示: 「〇〇円〜」の単価幅を本文に書くことは、単価競争の呼び込みになりやすい。単価は面談ベースで個別調整とする姿勢が業界慣行
- 稼働人月の水増し: 「エンジニア 50 名対応可能」といった実態と乖離した数字は、後日面談ベースで齟齬が発覚し、信用を大きく損なう
- 特定エンジニアの個人名・写真の掲載: 本人同意なしの個人情報記載は、個人情報保護法・エンジニア本人との信頼関係の両面で NG
稼働終了サイクルと発注タイミングに合わせた送信タイミング設計

SES 業界のフォーム営業では、送信タイミングを 2 つのカレンダーで設計します。自社エンジニアの稼働終了カレンダーと、発注側の予算・案件立ち上げカレンダーの 2 つです。この 2 つが噛み合ったタイミングで送信することで、返信率と案件化率が上がります。
稼働終了 3 ヶ月前を起点とした逆算スケジュール
自社エンジニアの稼働終了予定日から逆算すると、以下のスケジュール感が現実的です。
タイミング | 主な活動 |
|---|---|
稼働終了 3 ヶ月前 | 次案件の並行探索を開始。フォーム営業の送信対象リストを組み、送信を開始 |
稼働終了 2 ヶ月前 | 初回返信・パートナー登録の起点となる連絡を進める。並行してマッチングサービスにも登録 |
稼働終了 1 ヶ月前 | スキルシート提示・面談・稼働開始日調整の段階 |
稼働終了直前〜終了後 | 契約締結・準備・稼働開始 |
このスケジュールを組むには、エンジニア個々の稼働終了予定日を営業側で管理し、稼働終了 3 ヶ月前に送信対象リストが作られるオペレーションを持つことが前提になります。単月で大量送信するのではなく、稼働終了予定に合わせて分散送信する設計になります。
年度末発注(1〜3 月)と新規案件立ち上げ期(4 月・10 月)の営業カレンダー
発注側のカレンダーには季節性があります。
- 年度末発注(1〜3 月): 年度予算の消化・新年度予算の確定に合わせた案件がまとまって動く。1 月〜 2 月上旬までに送信を完了しておくと、年度末発注に間に合いやすい
- 新年度案件立ち上げ期(4 月): 新年度予算での新規プロジェクトが立ち上がる。3 月中旬〜 4 月上旬の送信が有効
- 下期案件立ち上げ期(10 月): 下期スタートで新規プロジェクトが立ち上がる。9 月中旬〜 10 月上旬の送信が有効
- 予算計上時期(10〜12 月): 翌年度予算の要件定義段階で、来期プロジェクトへの技術者確保の動きが始まる。この時期はパートナー登録・情報交換ベースの送信が刺さりやすい
これらの季節性は、自社エンジニアの稼働終了カレンダーと組み合わせて、送信スケジュールに反映させます。
送信曜日・時間帯の実務
曜日・時間帯にも実務上の考慮点があります。
- 曜日: 火・水・木の平日中盤が受信・返信のバランスが取りやすい。月曜は週初の対応で埋まりやすく、金曜は週末対応で流れやすい
- 時間帯: 業務開始直後(9:00〜10:30)と、昼休み明け(13:30〜15:30)は、担当者が受信箱を確認するタイミングと重なりやすい
- 月次予算・稟議サイクル: 大手 SIer では月次締めのタイミングで稟議が動く企業も多く、月初〜月中の送信が月内の稟議に乗せやすい
これらは業界横断のフォーム営業タイミング論と大きく変わりませんが、SES 業界特有の季節性(年度末・新年度・下期)を掛け合わせることで送信計画が組みやすくなります。
大量送信の落とし穴
最後に、SES 業界特有の注意点として、稼働可能エンジニア数を超える送信は逆に信頼を損なうことを強調しておきます。
フォーム営業で反応があった相手にスキルシート提示・面談まで進んだ段階で、実際には稼働可能なエンジニアがいない、あるいはすでに他案件に決まってしまった、という状態が繰り返されると、業界内で「話を聞いても実態が伴わない SES 会社」という評価が広がります。SES 業界は情報流通が速いため、この評価は複数商流で同時に信頼を失うリスクを持ちます。
送信量は、稼働可能エンジニア数と面談キャパシティに応じた「返信を受け止められる範囲」に絞る設計が現実的です。数を追うのではなく、返信を受け止められるレンジで安定運用する姿勢が SES 業界と噛み合います。
初回商談化までの導線設計|パートナー登録・技術情報交換を起点にする
SES 業界のフォーム営業では、初回接点の設計を「1 通で案件化」ではなく「複数タッチを前提とした導線設計」に置き換えます。これによって、業界特有の営業サイクル(3〜6 ヶ月)とフォーム営業の相性の悪さを設計で埋められます。
初回接点の 4 起点
フォーム営業の目標地点として、以下 4 つの起点を使い分けます。
起点 | 想定シーン | 相性の良いセグメント |
|---|---|---|
パートナー登録 | 大手 SIer・中堅 SIer の「BP パートナー登録」「取引先登録」プログラムへの登録相談 | 大手 SIer、パートナー SES |
技術情報交換 | 技術領域が近い相手との情報交換(勉強会・技術ブログ共有・技術トレンド議論) | エンド直請け、大手 SIer、パートナー SES |
カジュアル相談 | 30 分程度のオンラインでの継続的な協業可能性の相談 | 全セグメント |
スキルシート開示 | 具体的な要員相談に対する、対応可能エンジニアのスキルシート個別提示 | 全セグメント(ただしフォーム本文には貼らず個別送付) |
これら 4 起点は排他ではなく、フォーム営業の文面設計としては複数を提示して相手に選んでもらう構成が有効です。
フォーム営業から次のアクションへの導線設計
フォーム営業の本文から、次のアクションへの導線を明示的に設計します。
- 本文リンク: 自社の会社紹介・エンジニアスキルシートサンプル・技術ブログ等、相手が「もっと知りたい」ときに次に見にいく先を 1〜2 個提示する(LP・技術ブログ等)
- 返信のしやすさ: 「〇〇にご関心があれば、まずは 30 分のオンライン相談から」といった、返信のハードルを下げる選択肢を明示する
- 相手側フォーム経由の窓口確保: 大手 SIer の「BP パートナー登録フォーム」等、相手側にすでに窓口がある場合はそちらへの誘導も選択肢に入れる
初回接点後のナーチャリング設計
フォーム 1 通で完結しない前提を踏まえ、初回接点後の 3〜6 ヶ月のナーチャリング設計を最初から組んでおきます。
- 月次タッチ: 月に 1 回、稼働可能エンジニアの最新状況(技術スタック・稼働時期)を軽くアップデートで送る
- 業界情報の共有: 技術トレンド・案件動向・パートナー会情報などを共有し、営業だけの関係にしない
- 具体案件の照会: 相手側で具体的な案件が立ち上がったタイミングで、要件に合うスキルシートを提示できる状態を維持する
このナーチャリングは、フォーム営業ツールの機能で自動化できる部分(配信スケジュール管理)と、手作業で運用する部分(技術情報・案件情報のパーソナライズ)を切り分けて設計します。
案件マッチング判定基準
初回接点後、実案件のマッチング段階に進むかの判定基準も、フォーム営業の設計段階から握っておくと運用がぶれません。
判定軸 | 判定基準 |
|---|---|
稼働可能日 | 相手の希望稼働開始日と、自社エンジニアの稼働終了日が 2〜4 週間以内で噛み合うか |
技術スタック | 相手案件の必須技術と、自社エンジニアの実務経験が 70% 以上重なるか |
単価帯 | 相手の想定単価帯が、自社エンジニアの希望単価帯と 10% 以内で交渉可能か |
契約形態 | 準委任前提を相手が受け入れるか(派遣・請負との違いを説明できるか) |
業務内容 | 準委任契約に沿った業務範囲か(成果物確定型の請負案件でないか) |
反応率・案件化率の目安
SES 業界向けフォーム営業の反応率・案件化率の目安は、公開情報が限られており、確定的な数値を示すことは難しいのが実情です。ただし、一般的なフォーム営業と、SES 向けにパートナー登録連動で設計したフォーム営業では、以下の点で振る舞いが変わる傾向があります。
- 返信率: 一般的なフォーム営業では業種・文面設計・送信リストの質によって幅がありますが、実務上は返信率 3〜5% 程度を目安とする例が多く見られます(自社が別記事フォーム営業とはで扱っている反響率レンジと整合)。SES 向けにパートナー登録の起点として設計した場合は、パートナー登録が相手側にも継続メリットを持つ性質から、この目安レンジの上振れ側に寄りやすい傾向があります(あくまで体感値)
- 案件化までのリードタイム: 大手 SIer・エンド直の場合、初回接点から実案件アサインまで 3〜6 ヶ月かかることが一般的
- LTV(生涯取引価値): 一度パートナー登録が完了した相手からは、複数案件・複数期間にわたって発注が続くことが多く、単発の案件化率よりも LTV で評価する視点が現実的
これらの数値は、自社の運用データを取りながら継続的に更新していく前提で、まずは仮置きの目安として使うのが健全です。
フォーム営業と他営業チャネルの併用ロードマップ|3〜6 ヶ月で組み立てる

フォーム営業を SES 業界向けに導入する場合、単体で完結させるのではなく、既存の営業チャネル(パートナー登録・マッチングサービス・展示会・SNS・既存顧客深耕)と組み合わせた 3〜6 ヶ月のパイプライン設計として運用するのが現実的です。
フォーム営業とパートナー登録の役割分担
フォーム営業の役割を「認知獲得+接点作り」に絞り、その後のパートナー登録・継続関係化は、フォーム営業ツール外の運用(担当者ベースの継続コミュニケーション)で担う設計にします。
- フォーム営業の役割: 送信先リストの管理、初回接点、初回返信の受信管理、パートナー登録への誘導
- パートナー登録後の役割: 月次タッチ、案件情報交換、要員情報のアップデート、実案件のマッチング相談
この役割分担を明確にすることで、フォーム営業ツールの守備範囲と、担当者の守備範囲がぶれずに運用できます。
マッチングサービス(レバテック・PE-BANK・COBOL 案件系)との併用設計
マッチングサービスは、既にプールされた案件情報にリーチできる強みがある一方、単価競争になりやすく、直接取引には転化しにくいという特徴があります。フォーム営業とは以下のように役割を分けます。
- マッチングサービス: 即時稼働可能なエンジニアの短期マッチング(3 ヶ月以内の稼働開始)
- フォーム営業: 中長期のパートナー関係構築(3〜6 ヶ月かけて、直接取引の窓口を作る)
両者を排他ではなく補完的に運用することで、稼働率の下限(マッチングサービスで確保)と単価水準の上限(フォーム営業経由の直接取引で伸ばす)の両方を狙えます。
展示会(Japan IT Week 等)集客チャネルとしてのフォーム営業活用
展示会は「対面での接点作り」に強みがある一方、参加コスト・準備期間が大きく、リード獲得後のフォローアップが追いつかないことも多いチャネルです。フォーム営業を展示会前後で活用することで、展示会の投資対効果を上げられます。
- 展示会前: 展示会出展のお知らせをフォーム営業経由で送り、事前アポイントを確保する(「〇〇展示会に出展します。ご来場予定があればブースにお立ち寄りください」といった中立的な案内)
- 展示会後: 展示会で名刺交換した相手に、フォーム営業の運用と分離した個別フォローアップを行う
展示会前のフォーム営業は、通常の営業とは目的が異なるため、送信タイミング・文面ともに専用設計にします。
SNS(Wantedly・LinkedIn)とフォーム営業の組み合わせ
SNS 経由の担当者接点は、担当者個人のネットワークに依存しやすい一方、組織内の意思決定者に直接届く強みがあります。フォーム営業とは以下のように組み合わせます。
- SNS: 意思決定者個人との緩やかな接点作り(技術ブログ・業界イベント参加情報などのシェア)
- フォーム営業: 組織全体への窓口作り(パートナー登録・取引先登録)
SNS でつながった相手に、フォーム営業経由で組織窓口の相談を送るという二段構えも成立します。
3〜6 ヶ月のパイプライン構築ロードマップ
上記の役割分担を、3〜6 ヶ月の時間軸に落とし込みます。
時期 | 主な活動 | 想定タッチ数の目安 |
|---|---|---|
1 ヶ月目 | 送信先リスト作成(3 セグメント × 各 100〜200 件)、文面テンプレート作成、送信オペレーション設計 | 送信 300〜600 件 |
2 ヶ月目 | 初回送信、返信対応、パートナー登録の起点接続、稼働終了 3 ヶ月前エンジニアの再稼働準備との連動 | 送信 300〜600 件、初回接点 15〜30 件 |
3 ヶ月目 | パートナー登録の相談・技術情報交換の開始、初回接点後の月次ナーチャリング開始 | パートナー登録 3〜10 件、案件マッチング相談 3〜10 件 |
4〜6 ヶ月目 | 実案件マッチング、初回アサインの発生、ナーチャリング継続、次期送信対象リストの更新 | 実案件マッチング 1〜5 件(半年累計) |
上記の想定タッチ数は、自社の稼働可能エンジニア数・営業リソース・SES 業界内での自社ポジションによって変動します。数値は目安として置きつつ、実データで随時更新する前提で運用します。
「送ってよい相手」を絞る運用設計と信頼を損なわないための配慮

SES 業界のフォーム営業設計で、リスト・文面・タイミングと同じか、それ以上に重要になるのが「送信先の絞り込み運用」です。SES 業界特有の情報流通構造の速さを踏まえると、送信量を最大化する設計は逆効果になりやすく、「送ってよい相手にだけ送る」姿勢が中長期の受注構造に直結します。
SES 業界の情報流通構造と悪評リスク
SES 業界は、担当者の転職・異動サイクルが比較的短く、同じ人物が別会社・別立場で再登場することが多い業界です。加えて、パートナー会・勉強会・SNS などを通じた横のつながりも密で、営業姿勢に対する評価が短期間で流通します。
具体的には、以下のような情報流通ルートがあります。
- 元請け SIer 経由: 一次請けの SIer 内で「不用意に営業を送ってくる SES 会社」の情報が共有され、複数商流で同時に取引ハードルが上がる
- パートナー SES 経由: 同業のパートナー SES 会社の担当者間で、営業姿勢の評価が短期間で共有される
- エンド顧客経由: エンド顧客の情シス・DX 部門長のネットワーク(業界カンファレンス・情報交換会)で、SES 会社の営業姿勢の評価が伝わる
これらのルートで一度悪い評価が流通すると、フォーム営業の対象商流全体で信頼を損なうリスクがあります。逆に言えば、「送ってよい相手にだけ送る」姿勢が定着している SES 会社は、業界内での評価が中長期の受注構造に反映されやすい構造でもあります。
接触済み企業の除外運用
送信先の絞り込みで最初に運用するのは、接触済み企業の除外です。除外対象は以下のように分類できます。
- 自社が過去に接触した企業: 過去 6〜12 ヶ月以内に自社から送信・接触した相手(同一担当者・別担当者を問わず)
- 元請け SIer 経由で自社エンジニアが稼働中の顧客企業: 元請け SIer との関係を損なうリスクがあるため、直接接触は原則避ける
- 既存パートナー SES と重複する案件持ちの企業: パートナー SES 経由での既存関係を尊重する
- 他社(取引先・別チャネル)が接触済みの企業: 業界横断の接触済み企業リストと突合できる場合は、送信前に除外する
この除外運用を手作業で行うのは、送信件数が増えるほど困難になります。企業ドメイン単位の突合を送信前に自動化できる仕組み(外部リストとの API 連携、fail-closed 設計)を持つツールを選ぶことで、除外の抜け漏れを防げます。
弊社が提供する Form Pilot は、他社(取引先や別チャネル)が接触済みの企業ドメイン一覧を外部 API から取得し、送信リストと突合したうえで、該当企業への送信を自動で回避する設計を基本としています。判断できない場合には送らない挙動(fail-closed)を基本とすることで、SES 業界特有の密なネットワークで信頼を損なわないための運用設計として位置づけられます。詳細は Form Pilot のサービスページを参照してください。
個人スキルシート・エンジニア個人情報の取り扱い
前述の文面設計の章でも触れましたが、フォーム営業本文にエンジニア個人のスキルシート・個人名・写真を掲載することは、以下 2 つのリスクを持ちます。
- 個人情報保護法上のリスク: 本人同意なしの個人情報記載は、個人情報保護法の観点で問題になる可能性がある(詳細は所轄の弁護士・専門家に確認が必要)
- エンジニア本人との信頼関係: 本人が知らない相手にスキルシートが渡ることは、SES 会社とエンジニアの信頼関係を損なう
スキルシートは、フォーム営業本文には貼らず、相手側から具体的な要員相談が来た段階で、個別に送付する運用にします。
営業禁止表示・利用規約の確認と CAPTCHA の扱い
送信先の Web サイトで、以下のような受信側意思表示がある場合は、送信を控える運用にします。
- 営業禁止表示: 問い合わせフォーム・会社概要ページ等で「営業目的の問い合わせはお断りします」と明示されている場合
- 利用規約でのフォーム営業禁止: 「本フォームは営業目的での使用を禁じます」等が利用規約に明示されている場合
- CAPTCHA: CAPTCHA は「機械的な送信を受けたくない」という受信側の意思表示であり、突破する形の自動送信は避ける
弊社が提供する Form Pilot も、CAPTCHA を突破しない設計を採用しています。CAPTCHA 等で完全な自動送信ができないフォームでは、入力までを自動化し、送信ボタンは人が押すセミオート運用にしています。受信側の意思表示を尊重することは、SES 業界特有の情報流通の速さの中で、中長期の信頼を守るための基本設計です。
偽装請負リスク・特定電子メール法・個人情報保護法の実務論点
SES 業界のフォーム営業では、以下 3 つの法務論点が並行して関わります。
- 偽装請負リスク: 準委任契約・請負契約・派遣契約の違いを文面上で混同すると、後の面談段階で偽装請負を疑われるリスクがある。文面設計の章で触れた通り、契約形態を明示する
- 特定電子メール法: フォーム営業は電子メールと異なる法規制範囲だが、受信側の意思表示(配信停止・営業禁止表示)を尊重する姿勢は、特定電子メール法の考え方に近い
- 個人情報保護法: エンジニア個人・送信先担当者の両方に対して、個人情報の取り扱いに配慮する
これらの論点は、実務判断が必要な場面が多いため、社内法務・所轄の弁護士・専門家との連携を前提とした運用設計にします。本記事の範囲は、フォーム営業の設計指針の言語化にとどめ、個別案件の法務判断は専門家の助言に委ねます。
まとめ
SES 会社のフォーム営業は、業界の商流構造・営業サイクル・準委任契約前提を踏まえずに一般的なフォーム営業論をそのまま持ち込むと、返信率・案件化率のいずれの面でも成果が上がりにくく、加えて業界特有の情報流通の速さで信頼を損なうリスクを持ちます。逆に、以下 6 つの視点で SES 業界に合わせた設計に組み替えれば、「もう 1 チャネル」として現実的な選択肢になります。
- 業界特性を先に言語化する: 商流構造・準委任前提・稼働終了サイクル・与信ハードル・情報流通の速さ、の 5 特性を出発点にする
- 商流別に送信先リストを分ける: エンド直請け・大手 SIer・パートナー SES で、絞り込み軸・意思決定者・伝えるべき価値を書き分ける
- 技術スタック・稼働可能時期・過去実績の 3 点セットを先に示す: 短文フォームで「話を聞く価値」を証明する
- 稼働終了カレンダーと発注カレンダーを噛み合わせる: 稼働終了 3 ヶ月前を起点に、年度末・新年度・下期立ち上げに合わせて送信を分散する
- 初回接点の 4 起点を使い分ける: パートナー登録・技術情報交換・カジュアル相談・スキルシート開示から、相手に選んでもらう
- 「送ってよい相手」を絞る運用を基本にする: 接触済み企業の自動除外・CAPTCHA の尊重・スキルシートの本文貼付回避で、業界内の信頼を損なわない
翌週から動ける最初の一歩としては、まず自社エンジニアの技術スタック × 商流セグメントを 1 つに絞ってテスト運用を組むことをおすすめします。全商流・全技術スタックを同時に狙うのではなく、1 セグメントで 100〜200 件の送信をまず 1 サイクル回し、返信率・パートナー登録率・案件化率を測定してから、次のセグメントに広げていく設計が現実的です。
関連情報
SES 業界特有の密なネットワークで信頼を損なわないための「送ってよい相手にだけ送る」運用設計をご検討中の方は、Form Pilot のサービスページをご覧ください。Form Pilot は、他社(取引先・別チャネル)が接触済みの企業ドメイン一覧を外部 API から取得して送信対象から自動除外する fail-closed 設計と、CAPTCHA を突破しないセミオート送信を基本としています。SES 会社の商流別リスト管理・送信スケジュール・失敗診断の可視化にも対応します。
SES 会社向けのフォーム営業運用設計や、パートナー登録・マッチングサービスとの組み合わせ設計を伴走支援でご相談されたい場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。要件の整理段階からご相談いただけます。
よくある質問
- SES会社がフォーム営業を始める場合、最初のゴールは何に設定すればよいですか?
初回発注ではなく、パートナー登録・技術情報交換・カジュアル相談といった「初回接点の確保」をゴールにします。大手SIerは取引先登録に3〜6ヶ月かかるため、フォーム1通での即時受注を前提にすると設計が破綻しやすいためです。
- 稼働中のエンジニアがいる状態で、フォーム営業はいつ送信すればよいですか?
自社エンジニアの稼働終了予定日の3ヶ月前を起点に送信リストを作成し、送信を開始します。あわせて年度末(1〜3月)・新年度(4月)・下期(10月)など発注側の予算サイクルに合わせると、返信率と案件化率が上がります。
- スキルシートをフォーム本文に添付して送ってもよいですか?
個人情報保護・本人同意・複数社への同時提示リスクが絡むため、スキルシートをフォーム本文に添付するのは業界慣行としてNGとされており、避けてください。相手から具体的な要員相談があった段階で、個別にスキルシートを送付する運用にしてください。
- フォーム営業の送信先リストから除外すべき企業はどう判断すればよいですか?
過去6〜12ヶ月以内に接触済みの企業、元請けSIer経由で自社エンジニアが稼働中の顧客企業、既存パートナーSESと重複する企業などを除外対象にします。企業ドメイン単位で自動突合できる仕組みを持つと抜け漏れを防げます。
- エンド直請け・大手SIer・パートナーSESで同じ文面を使い回してもよいですか?
使い回しは避けるべきです。エンド直請けには業務ドメイン理解と中長期伴走を、大手SIerには供給力・与信面の信頼を、パートナーSESには相互補完の対等な関係性を訴求する必要があり、商流ごとに主張点が異なるためです。



