システム保守費用の妥当性を見極める!相場と算出方法の完全ガイド|適正価格の判断基準とは

「毎月の保守費用、これって高いの?安いの?」
多くの中小企業の経営者や担当者が、システム保守費用の請求書を見ながら頭を悩ませています。システム開発は完了したものの、その後の保守費用が適正なのか判断できずに困っているという声を、私たちは数多く耳にしてきました。
ある製造業の社長は、「年間300万円の保守費用を5年間払い続けているが、実際に対応してもらったのは年に2〜3回程度。これって妥当なの?」と疑問を投げかけます。一方で、別の小売業の担当者は「月額5万円で保守をお願いしているが、障害が起きても対応が遅く、結局自社で何とかしている」という状況に陥っています。
保守費用の妥当性がわからない理由は、明確な判断基準を持っていないからです。
システム保守は目に見えないサービスが多く、その価値を正確に評価することは簡単ではありません。しかし、適切な知識と判断基準さえあれば、自社の保守費用が適正かどうかを見極めることは十分可能です。
本記事では、システム保守費用の相場から算出方法、妥当性を判断するための具体的なチェックポイントまで、保守費用の適正性を見極めるために必要な全ての知識を体系的に解説します。
読み終える頃には、以下のことができるようになっているはずです。
- 自社の保守費用が相場と比べて妥当かどうか判断できる
- 保守費用の内訳を理解し、不要な項目を見つけられる
- 適正な保守費用で契約するための交渉ポイントがわかる
- 将来的な保守費用の見直しタイミングを把握できる
さらに、実際の成功事例と失敗事例を通じて、保守費用の妥当性確認がいかに重要かを実感していただけるでしょう。
それでは、まずはシステム保守の基本から確認していきましょう。

目次
失敗しないためのシステム保守の引継ぎチェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
- 現在の保守会社のサービスに不満を感じている方
- 保守会社の変更を検討しているが、何から始めればよいか分からない方
- 引継ぎ作業でトラブルを避けたい方
システム保守とは?基本を押さえよう

保守費用の妥当性を判断する前に、そもそも「システム保守」とは何を指すのか、その基本を理解しておくことが重要です。保守内容を正しく理解していなければ、費用の適正性を判断することはできません。
システム保守の定義と重要性
システム保守とは、稼働中のシステムを正常に動作させ続けるための活動全般を指します。開発が「システムを作る」作業だとすれば、保守は「システムを維持・改善する」作業です。
具体的には、以下のような活動が含まれます:
- 障害対応:システムに不具合が発生した際の原因調査と修正
- 定期メンテナンス:サーバーやデータベースの最適化、セキュリティパッチの適用
- 監視活動:システムの稼働状況を常時チェックし、異常を早期発見
- 問い合わせ対応:利用者からの質問や要望への対応
- 軽微な改修:画面の文言変更や簡単な機能追加
システム保守が重要な理由は明確です。どんなに優れたシステムも、保守なしでは以下のような問題が発生します:
- セキュリティの脆弱性が放置され、情報漏洩のリスクが高まる
- 法改正やビジネス環境の変化に対応できなくなる
- 小さな不具合が蓄積し、最終的に大規模な障害につながる
- パフォーマンスが徐々に低下し、業務効率が悪化する
システムの保守と運用の違い
よく混同されがちな「保守」と「運用」ですが、両者には明確な違いがあります。詳しくはシステムの保守と運用の違いとは?業務内容の違いを徹底解説で解説していますが、ここでも簡単に触れておきます。
運用は、システムを日常的に動かすための作業です。データのバックアップ、ユーザー管理、定型的な処理の実行などが該当します。一方、保守は、システムそのものを健全な状態に保つための作業で、プログラムの修正や機能改善が中心となります。
この違いを理解することで、保守費用に含まれるべき項目とそうでない項目を区別できるようになります。
保守内容と費用の関係性
保守費用の妥当性を判断する上で重要なのは、保守内容と費用が適切にバランスしているかという点です。
例えば、月額10万円の保守費用で以下のサービスが含まれている場合:
- 24時間365日の監視体制
- 障害発生時の即時対応
- 月1回の定期メンテナンス
- セキュリティアップデートの適用
- 月2〜3回程度までの軽微な改修作業
この内容であれば、中規模システムにとっては妥当な範囲と言えるでしょう。
しかし、同じ月額10万円でも:
- 平日9-17時のみの対応
- 障害対応は翌営業日
- 定期メンテナンスなし
- 改修作業は別料金
このような内容では、明らかに割高と判断できます。
保守内容を正確に把握することが、費用の妥当性判断の第一歩なのです。
システム保守費用の相場を知る

保守費用の妥当性を判断するには、まず業界の相場を知ることが不可欠です。相場を知らずに「高い」「安い」と判断することはできません。ここでは、様々な切り口から保守費用の相場を詳しく見ていきましょう。
業界標準の保守費用相場
システム保守費用の最も一般的な目安は、初期開発費の15〜20%(年間)です。つまり、1,000万円で開発したシステムの場合、年間保守費用は150万円〜200万円が相場となります。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の費用は様々な要因によって変動します。重要なのは、この基準から大きく外れている場合に「なぜ外れているのか」を確認することです。
月額換算すると以下のようになります:
初期開発費 | 年間保守費(15%) | 年間保守費(20%) | 月額保守費の目安 |
---|---|---|---|
500万円 | 75万円 | 100万円 | 6.3万円〜8.3万円 |
1,000万円 | 150万円 | 200万円 | 12.5万円〜16.7万円 |
3,000万円 | 450万円 | 600万円 | 37.5万円〜50万円 |
5,000万円 | 750万円 | 1,000万円 | 62.5万円〜83.3万円 |
システム規模別の相場一覧
システムの規模によっても、保守費用の相場は変わってきます。以下は、システム規模別の月額保守費用の目安です:
小規模システム(画面数10〜30、利用者数50名以下)
- 月額5万円〜15万円
- 主に定期メンテナンスと障害対応
- 営業時間内の対応が基本
中規模システム(画面数30〜100、利用者数50〜500名)
- 月額15万円〜50万円
- 24時間監視が含まれることも
- 月数回の軽微な改修を含む
大規模システム(画面数100以上、利用者数500名以上)
- 月額50万円〜200万円以上
- 24時間365日の監視・対応
- 専任チームによる手厚いサポート
業界別の相場傾向
業界によっても保守費用の相場は異なります:
金融・医療業界
- 相場の1.5〜2倍程度
- 高いセキュリティ要件と可用性が求められるため
- 法規制への対応も必要
製造・物流業界
- 相場の1.2〜1.5倍程度
- 24時間稼働が多く、停止時の影響が大きいため
一般企業の業務システム
- 標準的な相場通り
- 営業時間内の対応で十分なケースが多い
相場から大きく外れる場合の要因
相場より著しく高い場合の要因:
- 特殊な技術や古い技術を使用している
- 24時間365日の即時対応を求めている
- カスタマイズが多く、保守が複雑
- 独占的な契約で競争がない
相場より著しく安い場合の要因:
- 保守内容が最小限に限定されている
- 対応時間が極端に制限されている
- 経験の浅い業者や個人事業主
- 初年度のみの特別価格(要注意)
相場を大きく外れている場合は、必ずその理由を確認し、納得できる説明を求めることが重要です。安すぎる場合も高すぎる場合も、どちらもリスクがあることを認識しておきましょう。
保守費用の算出方法を理解する【詳細解説】
相場を理解したら、次は保守費用がどのように算出されているかを知ることが重要です。算出方法を理解することで、提示された見積もりの妥当性を判断し、必要に応じて交渉することも可能になります。
一般的な3つの算出方法
保守費用の算出には、主に以下の3つの方法が使われています。それぞれに特徴があり、システムの性質や契約形態によって使い分けられます。
1. 開発費ベースの算出法
最も一般的な方法で、初期開発費用の一定割合を年間保守費用とする方法です。
算出式: 年間保守費用 = 初期開発費 × 保守料率(15〜20%)
メリット:
- 計算が簡単で分かりやすい
- 業界標準があるため比較しやすい
- システム規模に応じた妥当な金額になりやすい
デメリット:
- 実際の保守作業量と乖離する可能性がある
- 開発費が高額だった場合、保守費も高額になる
- 保守内容の詳細が不明確になりがち
2. 工数積算による算出法
実際に必要な作業時間(工数)を積み上げて算出する方法です。
算出式: 月額保守費用 = (定期作業工数 + 想定障害対応工数 + バッファ) × 技術者単価
具体例:
項目 | 時間/費用 |
---|---|
定期メンテナンス | 月8時間 |
障害対応 | 月4時間 |
問い合わせ対応 | 月4時間 |
バッファ | 月4時間 |
合計 | 月20時間 × 5,000円/時間 = 月額10万円 |
メリット:
- 作業内容が明確で透明性が高い
- 実態に即した適正な価格設定が可能
- 保守内容の追加・削減が柔軟に対応できる
デメリット:
- 見積もりに時間がかかる
- 想定を超える作業が発生した場合の扱いが課題
- 技術者単価の妥当性を判断する必要がある
3. 機能ポイント法による算出
システムの機能の複雑さを数値化(機能ポイント)して算出する方法です。
算出の流れ:
- 画面数、帳票数、データベーステーブル数などをカウント
- 各要素の複雑度(簡単・普通・複雑)を評価
- 機能ポイントを算出
- 機能ポイント × 単価で保守費用を決定
メリット:
- システムの複雑さを客観的に評価できる
- 異なるシステム間での比較が可能
- 機能追加時の費用算出が容易
デメリット:
- 算出に専門知識が必要
- 中小規模のシステムでは過剰な場合がある
- 機能ポイントの評価に主観が入る可能性
各算出方法のメリット・デメリット比較
算出方法 | 適用場面 | 透明性 | 柔軟性 | 算出の手間 |
---|---|---|---|---|
開発費ベース | 一般的な業務システム | △ | △ | ◎ |
工数積算 | 保守内容が明確な場合 | ◎ | ◎ | △ |
機能ポイント法 | 大規模・複雑なシステム | ○ | ○ | △ |
実際の見積書の読み解き方
見積書を受け取ったら、以下のポイントを確認しましょう:
1. 算出根拠の明記
- どの算出方法を使用しているか
- 計算式や係数が明示されているか
- 不明な項目がないか
2. 内訳の詳細度
- 「保守一式」のような曖昧な記載になっていないか
- 各作業項目の工数や単価が記載されているか
- オプション項目と基本項目が区別されているか
3. 前提条件の確認
- 対応時間帯
- 対応範囲(障害対応の回数制限など)
- 除外事項(大規模改修、サーバー更新など)
良い見積書の例:
【月額保守費用内訳】
1. 定期保守作業
- サーバー監視(24時間365日):3万円
- 月次メンテナンス(4時間):2万円
2. 障害対応
- 平日9-18時対応(月5回まで):3万円
- 時間外対応はオプション(1回2万円)
3. 軽微な改修
- 月5時間まで含む:2.5万円
- 超過分は5,000円/時間
月額合計:10.5万円(税別)
保守費用の算出方法を理解することで、見積もりの妥当性を客観的に判断できるようになります。不明な点があれば、遠慮なく業者に説明を求めることが大切です。
保守費用の内訳を徹底分析
保守費用の総額だけでなく、その内訳を詳しく分析することで、費用の妥当性をより正確に判断できます。ここでは、標準的な保守費用の内訳項目と、それぞれの適正な割合について解説します。
標準的な保守費用の内訳項目
一般的なシステム保守費用は、以下のような項目で構成されています:
1. 定期保守・メンテナンス(全体の20〜30%)
- サーバー・データベースの最適化
- ログファイルの整理・分析
- パフォーマンスチューニング
- セキュリティパッチの適用
- バックアップデータの確認
2. システム監視(全体の15〜25%)
- サーバー稼働状況の監視
- リソース使用率の監視
- エラーログの監視
- 不正アクセスの監視
- アラート対応
3. 障害対応(全体の25〜35%)
- システム障害の原因調査
- 緊急修正対応
- 暫定対策と恒久対策の実施
- 障害報告書の作成
- 再発防止策の検討
4. 問い合わせ対応(全体の10〜20%)
- 利用者からの質問対応
- 操作方法の説明
- エラーメッセージの解説
- 運用ルールの相談
- 改善要望の受付
5. 軽微な改修・改善(全体の10〜15%)
- 画面レイアウトの微調整
- 帳票の項目追加・変更
- マスタデータの追加
- 簡単な機能改善
- 法改正への小規模対応
6. 管理・報告業務(全体の5〜10%)
- 月次保守報告書の作成
- 定例会議への参加
- 保守計画の策定
- ドキュメントの更新
各項目の適正な割合
保守費用の内訳が適正かどうかを判断する目安として、以下の割合を参考にしてください:
項目 | 標準的な割合 | 注意が必要な割合 |
---|---|---|
定期保守 | 20〜30% | 10%未満または40%超 |
システム監視 | 15〜25% | 5%未満または35%超 |
障害対応 | 25〜35% | 15%未満または50%超 |
問い合わせ対応 | 10〜20% | 5%未満または30%超 |
軽微な改修 | 10〜15% | 0%または25%超 |
管理・報告 | 5〜10% | 3%未満または15%超 |
割合が標準から大きく外れている場合は、その理由を確認することが重要です。
隠れコストの見つけ方
見積書に明記されていない「隠れコスト」に注意が必要です:
1. 時間外対応費用
- 基本契約に含まれる時間帯を確認
- 緊急対応時の割増料金
- 休日・深夜対応の追加費用
2. 作業上限の超過費用
- 月間の対応回数制限
- 改修作業の時間制限
- データ容量の上限
3. 別途請求される可能性のある項目
- サーバーライセンス更新費
- SSL証明書の更新費
- ドメイン更新費
- 外部サービスの利用料
4. 契約更新時の費用
- 契約更新手数料
- 保守費用の値上げ条項
- 解約時の違約金
これらの隠れコストを事前に把握することで、実際の年間コストを正確に見積もることができます。
不要な項目の見極め方
以下のような項目は、状況によっては不要な可能性があります:
1. 過剰なサービスレベル
- 小規模システムなのに24時間365日監視
- 利用頻度が低いのに即時対応保証
- 必要以上に高頻度な定期メンテナンス
2. 重複している項目
- 監視と障害対応が別項目で二重計上
- 管理費と報告書作成費が別々に請求
- 基本保守と定期保守が重複
3. 自社で対応可能な項目
- 簡単なマスタメンテナンス
- 利用者への操作説明
- 定型的なバックアップ作業
4. 利用実績のない項目
- 過去1年間で一度も使用していないオプション
- 将来も使用予定のない機能の保守
- 不要なレポート作成
保守費用の内訳を詳細に分析することで、本当に必要な保守サービスとそうでないものを区別できます。年に一度は保守内容と実際の利用状況を照らし合わせ、不要な項目がないか確認することをお勧めします。
失敗しないためのシステム保守の引継ぎチェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
- 現在の保守会社のサービスに不満を感じている方
- 保守会社の変更を検討しているが、何から始めればよいか分からない方
- 引継ぎ作業でトラブルを避けたい方
妥当性を判断する7つのチェックポイント

ここまでの知識を踏まえて、実際に保守費用の妥当性を判断するための具体的なチェックポイントを7つご紹介します。これらのポイントを一つずつ確認することで、現在の保守契約が適正かどうかを総合的に判断できます。
1. 保守内容と費用のバランス
最も重要なのは、提供される保守サービスの内容と費用が釣り合っているかという点です。
確認すべき項目:
- 提供されるサービスの具体的な内容が明確か
- 各サービスに対する費用配分が適切か
- 同規模の他社事例と比較して妥当か
判断基準の例:
- 月額10万円で障害対応が月1回までなら割高
- 月額30万円で24時間監視+即時対応なら妥当
- 年間保守費が開発費の30%を超えるなら要検討
2. SLA(サービスレベル)との整合性
SLA(Service Level Agreement)とは、サービスの品質を数値で約束する契約です。
チェックポイント:
- システム稼働率の保証(例:99.9%以上)
- 障害対応開始時間(例:通知から2時間以内)
- 復旧目標時間(例:4時間以内に復旧)
- 問い合わせへの回答時間(例:24時間以内)
費用とSLAの関係:
- 高いSLAには相応の費用が必要
- SLAが設定されていない場合は要注意
- SLA違反時のペナルティが明記されているか
3. 対応時間・体制の妥当性
ビジネスの特性に合った対応時間と体制になっているかを確認します。
評価ポイント:
- 営業時間とサポート時間の整合性
- 繁忙期や決算期への配慮
- 担当技術者の人数とスキルレベル
- バックアップ体制の有無
例:
- ECサイトなのに平日9-17時のみ対応→不適切
- 社内システムで24時間365日対応→過剰の可能性
- 担当者1名のみで代替要員なし→リスク高
4. 技術要件に対する費用の適正性
使用している技術やシステムの複雑さに見合った費用設定かを確認します。
確認項目:
- 使用言語・フレームワークの一般性
- システムアーキテクチャの複雑度
- 連携システムの数と種類
- カスタマイズの度合い
判断の目安:
- 一般的な技術(Java、PHP等)→標準的な費用
- 特殊な技術や古い技術→1.5〜2倍は許容範囲
- 多数のシステム連携→複雑度に応じて加算
5. 同規模システムとの比較
類似のシステムと比較することで、相対的な妥当性を判断できます。
比較する項目:
- 画面数・機能数
- 利用者数・データ量
- 業界・業種の特性
- 必要な可用性レベル
情報収集の方法:
- 同業他社へのヒアリング
- システム開発会社への相見積もり
- 業界団体の調査データ
- システム開発の費用相場の参考
6. 将来的な拡張性への配慮
将来のビジネス成長やシステム拡張を考慮した契約になっているか確認します。
チェック項目:
- 機能追加時の費用体系が明確か
- データ量増加への対応が含まれているか
- 利用者数増加時の追加費用
- 技術的な陳腐化への対応方針
良い契約の例:
- 軽微な機能追加は月次保守に含む
- データ量は年間20%増まで追加費用なし
- 最新技術への移行支援を含む
7. 契約条件の透明性
契約内容が明確で、透明性が確保されているかは重要な判断基準です。
必須確認事項:
- 保守作業の実績報告があるか
- 費用の内訳が開示されているか
- 契約更新時の条件が明記されているか
- 解約条件が不当に厳しくないか
透明性の高い契約の特徴:
- 月次で詳細な作業報告書を提出
- 工数実績と予定の比較を開示
- 改善提案を定期的に実施
- 費用見直しの協議機会がある
これら7つのチェックポイントを総合的に評価することで、保守費用の妥当性を客観的に判断できます。全ての項目で完璧である必要はありませんが、重要な項目で問題がある場合は、契約の見直しを検討すべきでしょう。
【事例】適正な保守費用の成功事例

ここでは、保守費用の妥当性を適切に確認し、コストパフォーマンスの高い保守契約を実現した2つの成功事例をご紹介します。これらの事例から、妥当性確認の重要性と具体的な進め方を学んでいきましょう。
A社:相場比較で適正価格を実現した事例
企業概要:
- 業種:製造業(従業員数:約200名)
- システム:生産管理システム
- 初期開発費:3,000万円
- 当初の保守費用:月額80万円(年間960万円)
課題: A社は5年前に導入した生産管理システムの保守費用が高額ではないかと疑問を持っていました。年間保守費用は初期開発費の32%に相当し、一般的な相場(15-20%)を大きく上回っていました。
実施した妥当性確認:
- 相場調査の実施
- 同業他社3社にヒアリング
- システム開発会社2社から参考見積を取得
- 結果:同規模システムの相場は月額35-45万円
- 保守内容の詳細分析
- 24時間365日監視 → 実際は平日日中しか使用していない
- 月40時間の改修作業込み → 実際の利用は月平均5時間
- 専任技術者3名体制 → 過剰な体制
- 交渉と契約見直し
- 監視時間を平日9-19時に変更
- 改修作業を月10時間に削減(超過分は別途)
- 技術者を2名体制に変更
結果:
- 月額保守費用:80万円 → 42万円(47.5%削減)
- 年間削減額:456万円
- サービス品質は業務に必要十分なレベルを維持
成功のポイント: 「相場を知ることで、交渉の根拠が明確になりました。感覚的に『高い』と思っていたことが、データで裏付けられたことで、保守会社も真摯に対応してくれました」(A社 情報システム部長)
B社:内訳分析で過剰サービスを発見した事例
企業概要:
- 業種:小売業(店舗数:15店舗)
- システム:POSシステム連携の在庫管理システム
- 初期開発費:1,500万円
- 当初の保守費用:月額28万円(年間336万円)
課題: B社の保守費用は相場の範囲内(年間で開発費の22.4%)でしたが、毎月の保守報告書を見ても実際に何をしているのか不明確で、費用の妥当性が判断できない状態でした。
実施した妥当性確認:
- 保守内訳の詳細要求
- 保守会社に詳細な内訳開示を要求
- 作業実績データの提供を依頼
- 内訳分析の結果
定期保守:8万円(28.6%)→ 妥当 システム監視:7万円(25%)→ やや過剰 障害対応:6万円(21.4%)→ 実績なしで過剰 問い合わせ:3万円(10.7%)→ 妥当 改修作業:2万円(7.1%)→ 不足気味 管理費:2万円(7.1%)→ 妥当
- 利用実績との照合
- 過去1年間の障害:2件のみ(軽微)
- 問い合わせ:月平均3件
- 改修要望:月平均10件(対応は2件のみ)
- 契約の最適化
- 障害対応を実績ベースに変更(基本料2万円+発生時実費)
- 監視を重要時間帯のみに限定(4万円に削減)
- 改修作業枠を月10時間に拡大(5万円に増額)
結果:
- 月額保守費用:28万円 → 20万円(28.6%削減)
- 年間削減額:96万円
- 実際のニーズに合ったサービス内容に最適化
- 改修対応が増えたことで業務効率が向上
成功のポイント: 「内訳を詳細に分析することで、使っていないサービスにお金を払っていることが判明しました。削減した分を本当に必要な改修作業に回すことで、システムの使い勝手が格段に良くなりました」(B社 店舗運営部 マネージャー)
成功事例から学ぶポイント
これらの成功事例から、以下の重要な教訓が得られます:
- データに基づいた判断の重要性
- 感覚的な判断ではなく、相場データや利用実績で判断
- 数値で示すことで、保守会社との建設的な議論が可能
- 定期的な見直しの必要性
- システムの利用状況は時間とともに変化する
- 年に1回は保守内容と実績を照合すべき
- Win-Winの関係構築
- 単なるコスト削減ではなく、最適化を目指す
- 保守会社にとっても効率的な契約は歓迎される
- 透明性の確保
- 不明確な項目は必ず確認する
- 実績データの開示を求めることは当然の権利
適正な保守費用は、必ずしも「安い」ことを意味しません。必要なサービスに適切な対価を支払うことが、長期的な安定運用につながります。
【事例】保守費用の妥当性を見誤った失敗事例

成功事例がある一方で、保守費用の妥当性確認を怠ったり、誤った判断をしたりしたことで大きな損失を被った事例も存在します。ここでは2つの失敗事例を通じて、保守費用の判断を誤るとどのような結果を招くかを見ていきましょう。
C社:安すぎる保守で品質低下した事例
企業概要:
- 業種:サービス業(従業員数:約100名)
- システム:顧客管理システム(CRM)
- 初期開発費:2,000万円
- 変更前の保守費用:月額25万円
- 変更後の保守費用:月額8万円
経緯: C社は、コスト削減の一環として保守費用の見直しを実施。相見積もりを取ったところ、現在の3分の1以下の価格を提示する業者を発見し、即座に乗り換えを決定しました。
安さの理由(後に判明):
- 技術者は全て経験1年未満の新人
- 監視は自動ツールのみ(人的チェックなし)
- 障害対応は翌営業日(即日対応なし)
- ドキュメント更新は含まれない
- 実質的に「何もしない」契約
発生した問題:
- 初期の警告サイン(切り替え後1-3ヶ月)
- 月次報告書が1行のみ「異常なし」
- 簡単な質問への回答に3日以上
- 担当者がころころ変わる
- 中期の問題顕在化(4-6ヶ月)
- 軽微な不具合が蓄積し始める
- ユーザーからの苦情が増加
- パフォーマンスの低下が目立つ
- 致命的な障害発生(8ヶ月目)
- データベースの不整合により、顧客データ3,000件が破損
- 復旧に5日間を要し、業務が完全停止
- 一部データは永久に失われた
最終的な損失:
- 業務停止による機会損失:約800万円
- データ復旧の特別対応費:350万円
- 顧客への補償・謝罪対応:200万円
- 信用失墜による顧客離れ:計測不能
- 総損失:1,350万円以上
失敗の教訓: 「価格だけで判断したことが最大の失敗でした。月17万円を節約するために、1,000万円以上の損失を出してしまいました。保守は保険のようなもので、何も起きないときは価値が見えにくいですが、問題が起きてからでは手遅れなんです」(C社 代表取締役)
D社:高額保守の内訳を確認せず損失した事例
企業概要:
- 業種:物流業(従業員数:約300名)
- システム:物流管理システム
- 初期開発費:5,000万円
- 保守費用:月額120万円(年間1,440万円)
状況: D社は、大手SIerに保守を依頼しており、「大手だから安心」「高いのは品質が良いから」と考え、5年間一度も保守内容の詳細を確認していませんでした。
妥当性確認のきっかけ: 新任の情報システム部長が着任し、IT予算の見直しの一環で保守契約の内容を初めて詳細に確認。
判明した事実:
- 不透明な費用構造
基本保守料:50万円 システム管理費:30万円 技術サポート料:20万円 品質保証料:10万円 その他管理費:10万円
→ 具体的な作業内容が不明確
- 実際の作業実績
- 5年間での障害対応:計3回(いずれも軽微)
- 定期メンテナンス:自動化されており実質作業なし
- 問い合わせ対応:月平均1件
- 改修作業:全て別途見積もり
- 隠れていた問題
- 実際の作業は下請けに月20万円で再委託
- 技術者のスキルが古く、最新技術に対応できない
- 必要な改修提案が一切なされていない
試算された過払い額:
- 適正な保守費用:月額40万円程度
- 実際の支払い:月額120万円
- 差額:月額80万円
- 5年間の過払い総額:4,800万円
その後の対応:
- 保守契約の見直し交渉を実施
- 適正価格での再契約(月額45万円)
- ただし、過去の過払い分は返還されず
失敗の教訓: 「『大手だから』『高いから良いはず』という思い込みが、巨額の損失につながりました。保守内容を理解せず、ブラックボックスのまま支払い続けていたことを深く反省しています。定期的な妥当性確認の重要性を痛感しました」(D社 情報システム部長)
失敗から学ぶ教訓
これらの失敗事例から、以下の重要な教訓が得られます:
- 安すぎる保守の危険性
- 相場から大きく外れた安値には必ず理由がある
- 短期的な節約が長期的な大損失につながる
- 保守品質の低下は徐々に進行し、気づいたときには手遅れ
- 高額でも安心できない
- 価格が高い=品質が良いとは限らない
- ブランドや企業規模だけで判断しない
- 定期的な内容確認が不可欠
- 透明性の重要性
- 保守内容がブラックボックスの契約は危険
- 作業実績の開示を求めることは当然の権利
- 不明確な項目は必ず確認する
- 定期的な見直しの必要性
- 一度契約したら終わりではない
- 最低でも年1回は妥当性を確認
- 担当者が変わったタイミングは見直しのチャンス
保守費用の妥当性を見誤ることは、単なる金銭的損失だけでなく、ビジネスの継続性や企業の信用にも関わる重大な問題です。これらの失敗事例を他山の石として、適切な保守契約の重要性を認識していただければ幸いです。
作業時間削減
システム化を通して時間を生み出し、ビジネスの加速をサポートします。
システム開発が可能に
秋霜堂のTechBandが実現する透明性の高い保守サービス
ここまで見てきたように、保守費用の妥当性を判断することは簡単ではありません。そこで、秋霜堂が提供する「TechBand」サービスでは、従来の保守契約の問題点を解決する、全く新しいアプローチを採用しています。
システム開発部門として提供する保守の透明性
TechBandの最大の特徴は、「システムを保守する」のではなく「システム開発部門として活動する」という考え方です。
従来の保守契約との違い:
項目 | 従来の保守契約 | TechBand |
---|---|---|
立ち位置 | 外部業者(受託者) | 内部組織の一部 |
目的 | 契約内容の履行 | ビジネス成功への貢献 |
費用の考え方 | 固定的・硬直的 | 柔軟・変動可能 |
作業の透明性 | ブラックボックス | 完全オープン |
改善提案 | 契約範囲内のみ | 積極的・継続的 |
この違いにより、以下のような透明性を実現しています:
1. 作業内容の完全可視化
- 全ての作業をタスク管理ツールで共有
- リアルタイムで進捗状況を確認可能
- 月次報告書には作業の詳細を記載
2. コミュニケーションの透明性
- 専用のチャットチャンネルで常時連絡可能
- 技術的な課題や改善案をオープンに議論
- 意思決定プロセスに積極的に参加
3. 技術情報の共有
- システムの設計書や仕様書を常に最新化
- 技術的な判断根拠を分かりやすく説明
- 将来的なリスクや課題を事前に共有
一般的な保守契約との違い
従来の保守契約の問題点:
- 年間を通じて一律の料金
- 繁忙期も閑散期も同じ対応
- 契約変更には数ヶ月かかる
- 余剰リソースの無駄が発生
TechBandのアプローチ:
- 月単位で柔軟に調整可能
- ビジネスニーズに即応
- 無駄のない最適配分
- トータルコストの削減
お客様の声
実際にTechBandを利用されているお客様からは、以下のような声をいただいています:
製造業 A社 様 「従来の保守契約では、何をやっているか分からないまま毎月定額を支払っていました。TechBandに切り替えてから、まるで自社のIT部門ができたような感覚です。必要な時に必要な対応をしてもらえ、費用も20%削減できました」
小売業 B社 様 「繁忙期には手厚くサポートしてもらい、閑散期にはコストを抑える。この柔軟性が本当にありがたいです。年間で見ると30%のコスト削減を実現しながら、サービス品質は格段に向上しました」
TechBandは、単なる保守サービスではなく、お客様のビジネスパートナーとして、共に成長することを目指しています。透明性の高い料金体系と柔軟な対応により、真に適正な保守費用を実現します。
まとめ:適正な保守費用で安心のシステム運用を
ここまで、システム保守費用の妥当性を見極めるための知識と方法を詳しく解説してきました。最後に、本記事の要点を整理しましょう。
保守費用の考え方の整理
本記事を通じて、以下の重要なポイントを学びました:
1. 保守費用には「相場」がある
- 一般的には初期開発費の15-20%(年間)
- システム規模や業界によって変動
- 相場から大きく外れる場合は要注意
2. 妥当性は多角的に判断する
- 価格だけでなくサービス内容を評価
- 7つのチェックポイントで総合的に判断
- 安すぎても高すぎてもリスクがある
3. 透明性が信頼関係の基盤
- 保守内容の明確化が不可欠
- 費用内訳の開示を求めることは当然
- ブラックボックスは避けるべき
4. 定期的な見直しが重要
- 年1回は必ず妥当性を確認
- ビジネス環境の変化に応じて最適化
- 継続的な改善が長期的なコスト削減につながる
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最後に
システム保守は、目に見えにくいサービスだからこそ、その価値と費用の妥当性を正しく判断することが重要です。本記事が、貴社のシステム保守費用の最適化に少しでもお役に立てれば幸いです。
適正な保守費用は、安定したシステム運用の基盤であり、ビジネス成長の土台となります。
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