「継続的に開発を頼める外部チームが欲しいが、SES・請負・ラボ型のどれを選べばいいかわからない」——そんな悩みを持つIT担当者の方は多いです。
ラボ型開発とは、クライアント専用の開発チームをベンダー社内に確保し、月額で継続契約するシステム開発手法です。準委任契約に分類され、「契約期間中、クライアントのために誠実に開発業務を行うこと」を約束します。
この記事では、ラボ型開発の基本の仕組みから、SES・請負との違い(3択比較表)、費用相場(月200〜500万円の根拠)、メリット・デメリット、そして「自社の開発ニーズにラボ型開発が向いているか」を開発期間・体制の安定性・コストの3軸で判断する方法まで、秋霜堂が解説します。
システム開発 完全チェックリスト――発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック集

この資料でわかること
システム開発の外注・発注を初めて経験する担当者や、過去に失敗を経験した担当者が、発注プロセスの各フェーズで「何をチェックすべきか」を明確に把握できるようにする。
こんな方におすすめです
- 初めてシステム開発を外注する担当者
- 過去の発注で失敗を経験した方
- ベンダー選定の基準が分からない方
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ラボ型開発とは?基本の仕組み

ラボ型開発は、ベンダー(開発会社)の社内に「クライアント専用の開発チーム(ラボ)」を設け、月額で継続契約する開発手法です。「ラボ」は「Laboratory(研究室・専用施設)」を意味し、自社の外に専用の開発部門を持つイメージに近いです。
経済産業省の調査(2019年)によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足するとも言われており、ラボ型開発は「必要なスキルを持つ優秀なエンジニアチームを安定的に確保」できる手法として注目が高まっています。
準委任契約との関係
ラボ型開発は法的には「準委任契約」に分類されます。「業務を誠実に遂行すること」を約束する契約であり、請負契約のような「成果物の完成責任」は負いません。そのため、仕様変更・機能追加・方針転換を追加費用なしで柔軟に行えるのが最大の特徴です。
SES・請負との違いを比較する(3択比較表)

ラボ型開発を理解する上で最初の疑問は「SESや請負との違いは何か」です。以下の比較表で一目で把握できます。
比較項目 | ラボ型開発(準委任) | SES(常駐型準委任) | 請負契約 |
|---|---|---|---|
開発場所 | ベンダー社内(リモートも可) | クライアント社内に常駐 | ベンダー社内 |
指揮命令権 | クライアントが持つ | ベンダー(SE自身)が持つ | ベンダーが持つ |
チーム構成 | チーム単位で専属確保 | 個人単位(変動しやすい) | プロジェクト単位で編成 |
仕様変更 | 費用追加なしで柔軟に対応 | 対応可能(稼働時間内) | 原則難しい(追加費用発生) |
費用の構造 | 月額固定(チーム単価) | 月額固定(個人単価) | 成果物単位(一括) |
費用相場 | 月200〜500万円(3〜5名体制) | 月60〜150万円/名 | プロジェクト規模による |
瑕疵担保責任 | なし | なし | あり |
向いている状況 | 継続的な開発・仕様変更が多い | 自社に常駐させたい・管理を自社主導で行いたい | 要件が固まっている単発プロジェクト |
どれを選ぶべきかの一次判断:
- 継続的な開発・仕様変更が多い → ラボ型開発
- エンジニアを自社内に常駐させたい・プロジェクト管理を自社でやりたい → SES
- 要件が固まっている単発・短期プロジェクト → 請負契約
ただし、この一次判断だけでは「自社の場合はどれに当てはまるのか」を決めきれないケースも多いです。より具体的な判断方法は後述の「自社の開発ニーズにラボ型開発は向いているか?3つの判断軸」で解説します。
ラボ型開発の費用相場(月額)

ラボ型開発の費用は「チームの人数 × 役割別人月単価 × 契約期間」で計算します。
3〜5名体制の典型的な費用感:月200〜500万円
アクティブに開発が進む典型的な3〜5名体制では、月200〜500万円が相場です。
体制 | 月額費用の目安(国内) | 月額費用の目安(オフショア) |
|---|---|---|
2名体制(エンジニア2名) | 月160〜200万円 | 月80〜130万円 |
3名体制(エンジニア2名 + PM) | 月200〜280万円 | 月130〜190万円 |
5名体制(エンジニア3名 + テスター + PM) | 月320〜450万円 | 月200〜320万円 |
役割別人月単価の詳細
国内ベンダーの場合:
役割 | 人月単価(国内相場) |
|---|---|
プログラマー(経験1〜3年) | 60万円〜80万円 |
エンジニア(経験3〜5年) | 80万円〜100万円 |
シニアエンジニア(5年以上) | 100万円〜130万円 |
プロジェクトマネージャー | 120万円〜150万円 |
オフショア(ベトナム相場・2026年):
役割 | 人月単価 |
|---|---|
プログラマー | 30万円〜40万円 |
シニアエンジニア | 45万円〜55万円 |
ブリッジSE(日本語対応) | 55万円〜65万円 |
プロジェクトマネージャー | 65万円〜75万円 |
オフショア活用では国内と比べ30〜50%のコスト削減が期待できます。秋霜堂でも実際に月額200〜300万円の体制でシステム開発を継続提供しており、SNSマーケティング支援システムの開発では継続拡張の体制を維持しています(詳細はシステム開発費用の相場を参照)。
月200万円以下での活用
最小1名からのスモールスタートも可能です。月額50〜100万円程度からリソースを確保し、実績を積みながら体制を拡張できます。ただし、月額30万円以下の小規模・不定期な発注では費用対効果が低下します。
ラボ型開発のメリット5つ
1. アジャイル開発との高い親和性
作りながら改善していくアジャイル開発と相性が良く、仕様変更が請負のように追加費用なく対応できます。スクラムやカンバンなどのアジャイル手法と組み合わせることで、短いサイクルで価値を届け続けられます(アジャイル・スクラム開発とはも参考にしてください)。
2. 優秀なエンジニアを専属確保できる
プロジェクトのたびにパートナーを探す手間がなく、専属チームとして中長期的に開発を任せられます。自社ビジネスへの理解が深まることで、能動的な提案も生まれやすくなります。
3. 開発ノウハウが社内資産として蓄積される
同じチームが長期間関わることで、システムの設計思想やコードの経緯が記録・継承され、メンバー入れ替わり時の引き継ぎコストが低く抑えられます。
4. コストを最適化できる(特にオフショア活用時)
オフショア活用では、国内で同規模チームを組むより30〜50%のコスト削減が期待できます。月額コストも把握しやすく、予算管理が容易です。
5. 採用・育成コストを削減できる
採用には求人費用・面接時間・教育費・定着コストが多大です。ラボ型なら経験豊富なチームを即座に立ち上げられ、採用リスクを回避できます。
システム開発 完全チェックリスト――発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック集

この資料でわかること
システム開発の外注・発注を初めて経験する担当者や、過去に失敗を経験した担当者が、発注プロセスの各フェーズで「何をチェックすべきか」を明確に把握できるようにする。
こんな方におすすめです
- 初めてシステム開発を外注する担当者
- 過去の発注で失敗を経験した方
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ラボ型開発のデメリットと対処法
デメリット1:タスクがない期間もコストが発生する
月額固定のため、開発タスクが少ない月でも費用が発生します。
対処法: 「バックログ(将来的にやりたいこと一覧)」を常に整備しておきましょう。優先度は低くても改善したい機能・技術的負債の解消・ドキュメント整備を事前にリストアップしておくことで、チームの稼働を無駄なく活用できます。
デメリット2:発注者側の管理工数が増える
請負と異なり、タスクの優先順位付けやスプリント計画など、発注側がプロジェクト管理に積極的に関与する必要があります。
対処法: 社内に専任の窓口担当者(プロダクトオーナー)を置き、週1回程度の定例ミーティングを設定しましょう。ベンダー側にPMを含む体制を組んでもらうことで、管理負担を軽減できます。
デメリット3:コミュニケーションの質が成果を左右する
特に海外チームとのラボ型開発では、言語・文化・タイムゾーンの違いがコミュニケーションコストを高めます。
対処法: ブリッジSE(日本語と現地語の両方に堪能なコーディネーター)をチームに加えましょう。SlackやJiraなどのツールを活用した非同期コミュニケーション体制を整えることが重要です。
デメリット4:チームの立ち上がりに時間がかかる
新しいチームが自社のビジネスやシステムを理解するまでには1〜2ヶ月程度かかります。
対処法: 契約開始前に、システム全体の設計書・業務フロー・過去の意思決定の背景をまとめたオンボーディング資料を準備しましょう。初期の2〜3週間は密なコミュニケーションに集中することで、立ち上がりを早められます。
自社の開発ニーズにラボ型開発は向いているか?3つの判断軸

SES・請負との違いは理解できても、「結局、自社の場合はどれが向いているのか」は別問題です。ここでは開発期間の見通し・体制の安定性ニーズ・コスト構造という3つの軸で、自社の状況を整理しながら判断できるようにします。
判断軸 | ラボ型開発が向く状態 | 別の契約形態が向く状態 |
|---|---|---|
① 開発期間の見通し | 継続的な機能追加・改善が半年〜1年以上見込まれる/仕様変更が続く新規事業フェーズにある | 「この仕様で、この期間で」と要件が完全に固まった単発プロジェクトである(→請負向き) |
② 体制の安定性ニーズ | 専属チームによる知見の蓄積を重視している/社内にプロジェクト管理担当者(プロダクトオーナー)を置ける | エンジニアを自社オフィスに常駐させて直接管理したい(→SES向き)/社内に管理担当者を置けない |
③ コスト構造 | 月額200万円以上の継続的な開発予算を確保でき、「稼働時間に対して支払う」モデルに納得感がある | 発注量が少額・不定期(月30万円以下)/成果物単位で費用を確定させたい(→請負向き) |
判断軸1:開発期間の見通し
「今回の開発が一度きりで終わるのか、それとも継続的に機能追加・改善が発生するのか」を最初に整理しましょう。仕様変更のたびに追加見積もりの交渉が発生している、あるいはアジャイル・スクラムで開発を進めたいという場合は、ラボ型開発が向いています。逆に、要件がすでに固まっており、開発が単発で完結する見込みであれば請負契約のほうが費用の見通しを立てやすくなります。
判断軸2:体制の安定性ニーズ
「同じメンバーに長期的に関わってもらい、システムへの理解を深めてほしいか」「自社側にプロジェクト管理を担う担当者を置けるか」を確認します。専属チームによるノウハウ継承を重視し、かつ社内にプロダクトオーナー役を置ける場合はラボ型開発が機能します。一方、エンジニアを自社に常駐させて直接管理したい場合はSES、社内に管理担当者を置けない場合は請負契約など管理工数の少ない契約形態を検討してください。
判断軸3:コスト構造
「月額固定で稼働に対して支払う」ラボ型開発のコスト構造が、自社の予算管理のやり方に合うかを確認します。月200万円以上の継続予算を確保でき、タスクの多寡にかかわらず一定額を支払うモデルに納得感があればラボ型開発が向いています。発注量が少額・不定期(目安として月30万円以下)の場合や、成果物単位で費用を確定させたい場合は、請負契約や単発のSES活用のほうが無駄なコストを抑えられます。
総合判定の目安
3つの判断軸のうち、2軸以上でラボ型開発が向く状態に該当する場合は、ラボ型開発の検討を推奨します。 1軸以下の場合は、SESまたは請負契約を優先的に検討し、事業状況が変化して継続開発のニーズが高まった段階でラボ型開発への切り替えを検討するとよいでしょう。
ラボ型開発でよくある失敗と対策
失敗1:タスク管理を怠り、チームが「何をすべきかわからない」状態に
状況: 最初は勢い良く開発が進んだが、フェーズが変わってタスクが減った後、何をやればいいかわからなくなりチームが停滞。
対策: バックログ(機能追加候補・技術的負債・ドキュメント整備リスト)を常に50件以上維持し、毎週の優先順位見直しを習慣化する。スクラムのスプリントプランニングを活用すると効果的です。
失敗2:コミュニケーション不足による品質低下(特にオフショア)
状況: 週次定例だけで済ませていたところ、仕様の認識齟齬が蓄積し、リリース直前に大規模な作り直しが発生。
対策: 仕様はテキストとFigma等の視覚ツールで明文化し、チケット(JiraやBacklog)に記録する。週次定例に加えて、仕様確認の非同期コミュニケーション(Slackでの随時確認)を習慣化する。
失敗3:スモールスタートなしにいきなり大規模チームを発注
状況: 最初から5〜7名の大きな体制を組んだが、チームとの相性が悪く、3ヶ月後に解散。コストが無駄になった。
対策: 最初の1〜3ヶ月は1〜2名のトライアル体制でスタートし、チームとの相性・コミュニケーション品質・技術力を確認してから体制を拡張する。
失敗4:契約の柔軟性を確認せずに長期契約を締結
状況: 事業計画が変わって開発規模を縮小しようとしたが、解約予告が3ヶ月必要で、使われていないリソースに費用が発生し続けた。
対策: 契約前に「途中解約の予告期間」「チーム縮小の条件」「最小契約期間」を必ず確認し、自社の事業計画変化に対応できる柔軟性があるベンダーを選ぶ。
ラボ型開発の進め方(立ち上げから運用まで)

ステップ1:自社の開発ニーズを整理する(〜2週間)
以下の点を明確にしましょう。前述の3つの判断軸(開発期間・体制の安定性・コスト構造)を整理する作業でもあります。
- 何を作りたいか(新規開発か保守・改善か)
- 必要な技術スタック(フロントエンド・バックエンド・インフラなど)
- 必要なチーム規模と期間の目安
- 月額予算の上限(月200〜500万円が典型的な規模)
ステップ2:ベンダーを複数社比較・選定する(1〜2ヶ月)
3〜5社に問い合わせ、以下を確認します。
- 類似プロジェクトの開発実績
- チームの技術スタックと得意領域
- コミュニケーション体制(日本語対応・定例MTの頻度)
- 契約の柔軟性(途中解約・規模変更のルール)
- 開発プロセスの透明性(タスク管理・進捗報告の方法)
ステップ3:スモールスタートで検証する(1〜3ヶ月)
いきなり大きなチームで始めるのではなく、まず1〜2名の小規模なチームで試験的に開始しましょう。短期間で「このチームと長期的に仕事できるか」を見極められます。
ステップ4:体制を最適化して長期運用に移行する
スモールスタートで信頼関係が構築できたら、プロジェクトの規模に合わせてチームを拡張していきます。この段階で、開発プロセスの標準化・ドキュメント整備・KPI設定を行いましょう。
失敗しないラボ型開発パートナーの選び方
ラボ型開発で失敗するケースの多くは、ベンダー選定の段階で判断を誤ることに起因します。以下の5つの観点でベンダーを評価しましょう。
1. 関連する開発実績があるか
自社のプロジェクトに近い技術・業界・規模での実績を持つベンダーを選びましょう。「ラボ型開発の実績○○件」という数字だけでなく、「どんな技術で・どんな業界の・どんな規模のプロジェクトか」を具体的に確認します。
2. 日本語コミュニケーション能力(オフショアの場合)
海外チームとの場合、ブリッジSEの日本語スキルと対応力が成否を左右します。契約前に実際に日本語でやり取りし、レスポンスの速さ・理解力・質問の質を確かめましょう。
3. 契約の柔軟性
- 途中でチーム規模を増減できるか
- 最短何ヶ月から契約できるか
- 解約通知期間は何ヶ月前か
- タスクのスコープ変更にどう対応するか
これらを事前に確認し、自社の状況変化に対応できる柔軟性があるベンダーを選びましょう。
4. 開発プロセスの透明性
週次の進捗報告・タスク管理ツールの共有・コードレビュープロセスなど、開発の透明性を確保できる仕組みがあるかを確認します。「ブラックボックス化」を防ぐことが長期的なパートナーシップの鍵です。
5. 面談・トライアルで「相性」を確かめる
実際に開発を担当するエンジニアとPMと面談し、技術力だけでなく「コミュニケーションスタイル」「提案力」「問題が起きたときの対応姿勢」を見極めます。短期トライアルを活用して、本契約前に実績を作っておくと安心です。
まとめ:3つの判断軸で「継続的な開発」に最適な選択肢を見極める
ラボ型開発は、SES・請負と比較してどんな特徴があるかをおさらいします。
- SESとの違い: ラボ型はベンダー社内の専属チームで開発。SESはクライアント側に常駐。チームの継続性が高く、プロジェクト管理はベンダーが担う
- 請負との違い: ラボ型は月額固定で仕様変更自由。請負は成果物に責任があるが仕様変更は費用追加になる
自社に向いているかは、開発期間の見通し・体制の安定性ニーズ・コスト構造の3軸で整理すると判断しやすくなります。3軸のうち2軸以上で当てはまれば、ラボ型開発の検討を推奨します。
費用面では3〜5名の典型的な体制で月200〜500万円が目安です。まずは1〜2名のスモールスタートで試し、チームとの相性を確かめながら段階的に体制を構築していくことをお勧めします。
受託開発全般の契約形態の比較は受託開発とは?も参考にしてください。
自社の開発ニーズにラボ型開発が向いているか、発注前にもう一度整理したい方は、お役立ち資料「システム開発 完全チェックリスト」もあわせてご活用ください。発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック項目をまとめています。
秋霜堂株式会社について
秋霜堂は、Web開発・AI活用・業務システム開発を手がけるシステム開発会社です。要件定義から設計・開発・運用まで一貫してご支援しています。
システム開発のご相談や、自社課題に合った技術的アプローチについてお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
システム開発 完全チェックリスト――発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック集

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システム開発の外注・発注を初めて経験する担当者や、過去に失敗を経験した担当者が、発注プロセスの各フェーズで「何をチェックすべきか」を明確に把握できるようにする。
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