システム開発
2025.12.23

システム開発の品質管理とは?目的・手法・成功のポイントを解説


システム開発の品質管理とは?目的・手法・成功のポイントを解説

システム開発を外部に依頼する際、「納品されたシステムがバグだらけだったらどうしよう」「使いにくいシステムになってしまわないか」といった不安を感じることはないでしょうか。

システム開発において「品質」は、プロジェクトの成功を左右する最も重要な要素の一つです。しかし、品質管理を開発会社(ベンダー)任せにしてしまうと、認識のズレから思わぬトラブルに発展することがあります。発注側である企業の担当者も、品質管理の基本や重要性を理解しておくことで、こうしたリスクを大幅に減らすことができます。

本記事では、システム開発における品質管理の基礎知識から、具体的な手法、そして高品質なシステムを作るために発注者が押さえておくべきポイントについて解説します。

石川瑞起
執筆者
秋霜堂株式会社 代表 石川瑞起
中学生でプログラミングを独学で習得し、HP制作やアプリ開発の事業を開始。 大学入学後に事業を売却し、トヨクモ株式会社へ入社。 3年間にわたり1製品の開発責任者を務めたのち秋霜堂株式会社を設立し、多数の企業をサポートしている。
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失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

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システム開発における品質管理とは?

システム開発の品質管理は、要件定義から設計・実装・テスト・リリース・運用まで、全工程で品質を作り込み、確認し、改善する取り組みを指します。品質とは「システムが要求事項(機能・性能・セキュリティ・使いやすさなど)をどの程度満たしているか」という概念であり、その達成度を計画的にコントロールするのが品質管理なのです。

品質管理を実施する目的は、顧客・ユーザーの要求を満たすことと、バグや障害を最小化して安定運用を実現することです。具体的には、品質基準の達成、セキュリティと信頼性の確保、パフォーマンスと運用コストの最適化、保守性・拡張性の確保などが含まれます。

品質管理(QC)と品質保証(QA)の違い

品質について議論する際、「品質管理(QC)」と「品質保証(QA)」という2つの言葉が出てくることがあります。これらは似ていますが、役割が明確に異なります。

品質管理(QC)

品質管理は、「作られた製品そのもの」に焦点を当てる活動です。 具体的には、完成したプログラムに対してテストを行い、バグ(不具合)を見つけて修正する作業を指します。「出来上がった料理の味見をして、問題がないか確認する」ようなイメージです。「作られたものが正しいか」を検証し、不良品を外に出さないための最後の砦となります。

品質保証(QA)

品質保証は、「製品を作るプロセス(工程)」に焦点を当てる活動です。 バグを出さないためのルール作りや、開発体制のチェックなどがこれに当たります。「調理場の衛生管理を徹底し、正しいレシピ通りに作られているか監視する」ようなイメージです。顧客に対して「安心して使い続けられる品質であること」を約束(保証)するための、より広い視点での活動と言えます。

システム開発における「品質」とQCDのバランス

システム開発には「QCD」という重要な3つの要素があります。

  • Quality(品質): システムの完成度、バグの少なさ
  • Cost(コスト): 開発費用
  • Delivery(納期): 完成までの期間

これらはトレードオフの関係にあります。例えば、「最高品質のシステム(Q)」を作ろうとすれば、それだけチェックに時間がかかり「納期(D)」が延びたり、人件費などの「コスト(C)」が増えたりします。逆に「安く(C)・早く(D)」作ろうとすれば、「品質(Q)」が犠牲になりがちです。

すべてを最高レベルにすることは現実的に不可能です。そのため、プロジェクトの目的に応じて「今回は予算内であることを最優先する」「人命に関わるシステムなので、費用がかかっても品質を最優先する」といった優先順位付けを行うことが重要です。

なぜ品質管理が重要なのか?

なぜ、コストや時間をかけてまで厳密な品質管理が必要なのでしょうか。それには大きく2つの理由があります。

一つ目は、「後から直すとコストが跳ね上がるから」です。 システム開発には「1:10:100の法則」と呼ばれる経験則があります。これは、開発の初期段階(設計など)で欠陥を見つければ「1」のコストで直せるものが、製造段階なら「10」、リリース後(運用開始後)だと「100」のコストがかかるというものです。家を建てる際、図面の段階でミスに気づけばすぐに直せますが、完成後に基礎のミスが見つかったら、家を解体して作り直さなければならないのと同じです。

二つ目は、「企業の社会的信用を守るため」です。 もしリリース後に、個人情報の漏洩や決済金額の誤りといった重大なバグが発生したらどうなるでしょうか。サービスの停止だけでなく、企業のブランドイメージ失墜や損害賠償問題に発展するリスクがあります。品質管理は、単なる技術的な確認作業ではなく、経営リスクをコントロールする重要な活動なのです。

システム開発の主な品質管理手法とプロセス

では、実際の開発現場ではどのようにして品質を守っているのでしょうか。ここでは代表的な考え方や手法について紹介します。

ウォーターフォール型開発における「V字モデル」

日本のシステム開発で古くから使われている「ウォーターフォール型開発(水が上から下に流れるように、工程を順番に進める手法)」では、「V字モデル」という考え方が基本になります。

ウォーターフォール型開発ではV字の左側に「設計・開発工程」を、右側に「テスト工程」を並べた図で表されます。

参照:Wikipedia V字モデル

  • 左側(作る工程): 要件定義 → 基本設計 → 詳細設計 → プログラミング
  • 右側(確認する工程): 単体テスト ← 結合テスト ← 総合テスト ← 受入テスト

このように、左側の各工程で行った内容が正しいかどうかを、右側の対応するテスト工程で確認します。例えば、「最初の『要件定義』で決めたことが正しく実現できているか」は、最後の「受入テスト」で確認する、という関係性です。このモデルは、どのテストで何を確認すべきかが明確になるというメリットがあります。

▼参考記事
システム開発のV字モデルとは?メリット・デメリットからアジャイル開発との違いまで解説
システム開発のウォーターフォール開発とは?アジャイル開発との違いやメリット・デメリットを徹底解説

アジャイル・DevOpsにおける「シフトレフト」

近年増えている、スピード重視の開発手法(アジャイル開発など)では、「シフトレフト」という考え方が主流になりつつあります。

通常、テストは開発の最後の方(工程の右側)に行いますが、これを「左側(開発の初期段階)に前倒しする」動きのことです。 プログラミングと同時にこまめに自動テストを行ったり、設計段階からテスト担当者が参加したりします。バグを早期に発見できるため、手戻りが少なくなり、結果として開発スピードと品質の両方を高めることができます。

▼参考記事
アジャイル開発とは?アジャイル開発の手法から導入のポイントまで徹底解説!

品質を測る「定量的な指標」

品質が良いか悪いかを「なんとなくバグが少なそう」といった感覚で判断するのは危険です。そこで、客観的な数値(定量的な指標)を用いて判断します。

よく使われる指標に「バグ密度」があります。これは「プログラムの行数(規模)に対して、どれくらいバグが出たか」を表す数値です。 例えば、「1,000行あたり○個のバグが出るのが一般的」という業界標準や過去のデータと比較します。バグが極端に多すぎる場合は「品質が悪い」と判断できますが、逆に少なすぎる場合も「テストが不十分で見つけられていないだけではないか?」と疑うきっかけになります。このように数値を根拠にすることで、冷静な品質判断が可能になります。

システム開発における品質管理の工程

システム開発における品質管理の工程

実際にシステムが出来上がるまでの流れの中で、どのような品質チェックが行われているのか、順を追って解説します。

品質管理の計画

プロジェクトが始まった直後に、まずは「品質のゴール」を決めます。

  • どのようなテストを行うか(テスト範囲)
  • どれくらいの品質を目指すか(完了基準:例「重大なバグが0件であること」)
  • 誰が責任を持つか(体制)

これらを発注者と開発会社の間であらかじめ合意しておかないと、納品直前になって「このテストはやってくれると思っていた」「いや、それは契約に含まれていない」といったトラブルの原因になります。

基本設計と詳細設計

プログラミングを行う前には、家の設計図にあたる「仕様書」を作成します。この段階で行う品質管理を「レビュー(静的テスト)」と呼びます。

実際にプログラムを動かすわけではなく、仕様書を人間が読み込み、「論理的な矛盾はないか」「必要な機能が抜けていないか」「画面の使い勝手は悪くないか」などをチェックします。先ほどの「1:10:100の法則」の通り、この紙上の段階でミスを見つけることが、最もコストパフォーマンスの良い品質管理です。

単体テスト・結合テスト・総合テスト

プログラミングが始まると、実際に動かして確認するテスト(動的テスト)が段階的に行われます。

  • 単体テスト: 部品ごとのテスト。プログラムの最小単位(関数など)が正しく動くか確認します。
  • 結合テスト: 部品同士をつなぐテスト。例えば「検索画面に入力したデータが、正しくデータベースに保存されるか」など、機能間の連携を確認します。
  • 総合テスト: 全体のテスト。本番と同じような環境で、システム全体が業務の流れ通りに正しく動くかを確認します。

このように、小さな範囲から徐々に大きな範囲へと確認を進めることで、バグの原因を特定しやすくします。

セキュリティテストと脆弱性診断

機能が正しく動くだけでは不十分です。悪意のある第三者からの攻撃に耐えられるかも確認する必要があります。

例えば、Webサイトの入力フォームに特殊な命令文を入力してデータを盗み出す「SQLインジェクション」など、サイバー攻撃の手口は多岐にわたります。こうした攻撃の隙(脆弱性・ぜいじゃくせい)がシステムに残っていないか、専門のツールや技術者を使って診断します。特に個人情報を扱うシステムでは必須の工程です。

要因分析と修正・検証

テストでバグが見つかった場合、単にプログラムを直して終わりではありません。重要なのは以下の2点です。

根本原因の分析

「なぜそのバグが起きたのか?」を突き止めます。単なる入力ミスなのか、仕様の勘違いなのか。原因を特定しないと、別の場所で同じミスが繰り返される可能性があります。

回帰テスト(リグレッションテスト)

「修正したことによって、他の正常だった機能が壊れていないか」を確認します。システムは複雑に絡み合っているため、一箇所の修正が予期せぬ場所に悪影響を与えることがよくあります。これを防ぐための確認作業です。

品質トラブルを防ぐための4つのポイント

ここまで開発会社側の作業を中心に解説しましたが、高品質なシステムを作るためには、発注者側の協力も不可欠です。最後に、発注者が意識すべき4つのポイントを紹介します。

要件定義での「曖昧さ」の排除

品質トラブルの多くは、最初の「要件定義」における言葉の曖昧さが原因です。 例えば、「誰でも使いやすい画面にしてください」という指示は非常に危険です。「使いやすい」の基準は人によって違うからです。開発会社が良かれと思って作ったものが、発注者にとっては「使いにくい」となり、修正トラブルに発展します。

  • 「ボタンは○○の配置にする」
  • 「画面が表示されるまで3秒以内」
  • 「高齢者でも読めるよう文字サイズは○pt以上」

このように、「機能要件(何ができるか)」だけでなく、「非機能要件(性能や使い勝手など)」についても、具体的な数値や言葉で定義する責任が発注者にはあります。

開発プロセスへの参加とコミュニケーション

「発注したからあとはよろしく」と開発会社に丸投げするのは避けましょう。開発期間中も定例会議を行ったり、設計書のレビューに参加したりすることが重要です。

開発の途中で成果物を確認することで、「思っていたものと違う」という認識のズレ(齟齬・そご)に早期に気づくことができます。完成直前に気づいて直すのは大変ですが、途中ならまだ修正が容易です。コミュニケーションの頻度が、そのまま手戻りの防止につながります。

受入テスト(UAT)の実施とシナリオ作成

納品直前に行う発注者側のテストを「受入テスト(UAT)」と呼びます。ここで重要なのは、「仕様書通りに動くか」を確認することではありません(それは開発会社が既に確認しています)。

確認すべきは、「実際の業務が問題なく回るか」です。 現場の担当者が、実際の業務フローに沿って操作を行い、「この手順だと不便ではないか」「例外的な処理が発生した時に対応できるか」などをチェックします。そのためには、現場の業務を熟知した人が、具体的な利用シーンを想定した「テストシナリオ(台本)」を作成してテストに臨む必要があります。

SLA(サービスレベル合意書)の締結

システム運用開始後の品質基準を、契約として明確にしておく方法もあります。これを「SLA(Service Level Agreement)」と呼びます。

例えば、「システムの稼働率を99.9%以上保証する」「障害発生時は○時間以内に復旧する」といった具体的な数値目標を定めます。そして、もし数値目標を下回った場合には、利用料の減額や返金といったペナルティを設けることもあります。

開発会社側に「品質を守らなければならない」という強い責任感が生まれ、品質が法的に担保されやすくなります。

まとめ

システム開発における品質管理は、単なるバグ潰しではなく、プロジェクトの成功と企業の信用を守るための重要な活動です。

「品質管理(QC)」と「品質保証(QA)」の違いや、工程ごとのチェック体制、そして「1:10:100の法則」に見られるような早期発見の重要性を理解いただけたでしょうか。

特に重要なのは、品質は開発会社だけで作るものではなく、発注者の「明確な指示」と「積極的な関与」があって初めて実現できるという点です。丸投げにするのではなく、パートナーとして一緒に品質を作り上げていく意識を持つことが、成功への一番の近道です。

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