「AIを導入したいけれど、自社のCO2排出量が増えてしまわないだろうか」。AIシステムの導入や発注を検討する中で、こうした不安を抱く担当者の方が増えています。生成AIの活用が一気に広がる一方で、AIの裏側にあるデータセンターが大量の電力を消費していることが知られるようになり、サステナビリティ推進部門や経営層から「AIで排出量が増えないか」「Scope3への影響はどうなるのか」と問われる場面が出てきました。
ところが、こうした問いに即答できる発注担当者は多くありません。インターネット上には「グリーンAIとは」という概念を解説した記事は数多くありますが、その多くは用語の説明や事例紹介で止まっており、「発注する側が、ベンダーに対して具体的に何をどう確認すればよいのか」という実務の指針までは示してくれません。概念は理解できても、いざRFP(提案依頼書)や契約交渉の場面になると、確認すべき基準が手元にないという状態に陥りがちです。
この記事では、まずグリーンAIという言葉の意味を整理した上で、AIの環境負荷が実際にどこでどの程度発生しているのかをデータとともに解説します。そして本題として、AIシステムの発注者がベンダーに確認すべきカーボン排出量の基準を、ESGやScope3(サプライチェーン排出量)の観点からチェックリストとして整理します。
読み終えたときには、グリーンAIの全体像を理解した上で、社内説明やベンダー選定、契約交渉にそのまま持ち込める「確認すべき項目」が手元に残るはずです。AI導入とカーボンニュートラル目標の両立に悩む発注担当者の方が、次の一手を踏み出すための判断材料としてお役立てください。
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グリーンAIとは
グリーンAIとは、おおまかに言えば「環境への負荷を抑えたAI」を指す言葉です。ただし、この言葉は文脈によって2つの異なる意味で使われることがあり、混同されやすい点に注意が必要です。発注者として正しく理解するために、まずはそれぞれの意味と背景を整理しておきましょう。
グリーンAI(Green AI)の意味とレッドAIとの対比
狭い意味でのグリーンAI(Green AI)とは、AIそのものの開発・運用にかかる計算コストやエネルギー消費を抑え、環境負荷を低減しようとする考え方を指します。この概念は、研究者のRoy Schwartzらが2020年に発表した論文「Green AI」で広く知られるようになりました。同論文では、グリーンAIを「計算コストを増やさずに(理想的には減らしながら)新たな成果を生み出すAI研究」と定義しています。
この論文では、対比となる概念として「レッドAI(Red AI)」が提示されています。レッドAIとは、精度を少しでも高めるためにモデルの規模や計算資源を惜しみなく投入し、結果として膨大な電力とコストを消費する開発スタイルを指します。同論文は、最先端のAI研究にかかる計算コストが近年で大幅に増大してきたと指摘しており、「とにかく大きく・とにかく多くの計算を」という流れへの問題提起として、効率性やエネルギー消費も精度と並ぶ評価軸に加えようというのがグリーンAIの出発点です。
つまり狭義のグリーンAIは、AIを使う側・つくる側の双方にとって「AIの環境コストそのものをどう下げるか」という話であり、発注者が真っ先に気にすべきはこちらの意味になります。
(出典: Roy Schwartz, Jesse Dodge, Noah A. Smith, Oren Etzioni「Green AI」Communications of the ACM, 2020年、ACM掲載ページ)
「AI for Green」との違い(混同しやすい点の整理)
一方で、「グリーンAI」という言葉が「AIを活用して環境課題を解決する取り組み」という意味で使われることもあります。これは厳密には「AI for Green(環境のためのAI)」と呼ばれる、別の概念です。例えば、AIで電力需要を予測して再生可能エネルギーの利用効率を高めたり、工場のエネルギー消費を最適化したりといった使い方がこれにあたります。
両者は方向性がまったく異なります。
- Green AI(狭義のグリーンAI): AIそのものの環境負荷を下げる取り組み
- AI for Green: AIを使って社会全体の環境課題を解決する取り組み
発注者として自社のESGやScope3管理を考える上で確認すべきなのは、前者のGreen AI、すなわち「導入しようとしているAIシステム自体がどれだけ環境負荷を生むのか」という観点です。ベンダーが「当社のAIは環境に貢献します」とアピールしている場合、それがAI for Greenの話なのか、それともAI自体の排出を抑えるGreen AIの話なのかを切り分けて聞くことが、最初の一歩になります。
なぜ今グリーンAIが重要視されるのか
グリーンAIが注目される背景には、大きく3つの流れがあります。
1つ目は、生成AIの普及によるAIの電力需要の急増です。AIの利用が爆発的に広がったことで、その基盤となるデータセンターの電力消費が世界的な課題として認識されるようになりました。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のデータセンターの電力消費量は2024年時点で約415TWh(テラワット時)、世界の電力消費全体の約1.5%に達しています(IEA「Energy and AI」2025年)。
2つ目は、ESG情報開示の要請の高まりです。上場企業を中心に、サプライチェーン全体を含む温室効果ガス排出量(Scope3)の開示が求められる方向に進んでおり、購入したサービスやクラウド利用に伴う排出も無視できなくなっています。
3つ目は、カーボンニュートラル目標との整合です。多くの企業が2050年などの脱炭素目標を掲げる中で、新たに導入するAIシステムが排出量を押し上げては、目標との矛盾が生じてしまいます。
こうした背景から、AIの導入判断において「性能やコスト」だけでなく「環境負荷」も評価軸の一つに加える必要が出てきているのです。
AIの環境負荷の実態:CO2排出量はどこで生まれるのか

「AIは環境に負荷をかける」と言われても、漠然としていてピンと来ないかもしれません。発注者として確認すべき対象を見極めるには、まず「どこで・どのように」排出が発生しているのかを構造的に理解することが大切です。AIのライフサイクルにおける排出は、主に「学習」「推論」「データセンターの運用」という3つの場面に分けて捉えると整理しやすくなります。
学習時・推論時の電力消費
AIの電力消費は、大きく2つのフェーズに分かれます。
1つ目は学習(トレーニング)フェーズです。大規模なAIモデルをつくる際には、膨大なデータを使って何週間も計算を回し続けるため、一度の学習で大量の電力を消費します。ある研究では、パラメータ数1,750億の大規模言語モデル「GPT-3」の学習に約1,287MWh(メガワット時)の電力が使われ、およそ500トン規模のCO2が排出されたと試算されています。これは一般的なガソリン車の年間走行に換算しておよそ100台分以上に相当する規模です(State of the Planet(コロンビア大学)2023年)。モデルが大きくなるほど、こうした学習コストも増大します。
2つ目は推論(インファレンス)フェーズです。これは、完成したAIに実際に質問や処理を投げて答えを得る段階を指します。1回あたりの消費は学習に比べて小さいものの、サービスとして多くのユーザーが日々何百万回・何千万回と利用すれば、その積み重ねは学習を上回る規模になり得ます。
発注者の観点では、自社が利用するのが「ゼロからモデルを学習させる開発」なのか、それとも「既存モデルを使った推論中心の利用」なのかによって、排出が発生する場所が変わる点を押さえておくとよいでしょう。
データセンターの電力・冷却(水資源)と電力需要の見通し
AIの計算は、最終的にはデータセンターに設置されたサーバー群で実行されます。このデータセンターの運用が、AIの環境負荷の中核を占めます。
データセンターでは、サーバーを動かす電力に加えて、稼働で発生する熱を冷やすための冷却にも多くのエネルギーが使われます。冷却方式によっては大量の水を消費するため、電力だけでなく水資源への影響も論点になっています。実際に、大手クラウド事業者のデータセンターでは、AIインフラの拡大に伴って水使用量が前年から大きく増加したことが各社の環境報告で示されています。
電力需要の見通しについては、IEAが、AIの普及によって世界のデータセンターの電力消費が今後大きく拡大すると見込んでいます。IEAの基本シナリオでは、データセンターの電力消費量は2024年の約415TWhから2030年には約945TWhへとおよそ倍増し、世界の電力消費全体の3%弱を占めると予測されています。とりわけAI向けの計算(高性能サーバー)による消費は、他の用途を上回るペースで増加するとされています(IEA「Energy and AI」2025年)。
こうした見通しは、AIを導入する企業にとって「自社が使うクラウドやデータセンターがどのように電力をまかない、どう脱炭素を進めているのか」を確認する重要性を裏づけています。
排出量はどう測るのか(算定の考え方と指標)
AIの排出量を考える際には、いくつかの指標と算定の枠組みが手がかりになります。
代表的な指標が、データセンターのエネルギー効率を表すPUE(Power Usage Effectiveness)です。PUEは「データセンター全体の消費電力 ÷ IT機器の消費電力」で計算され、値が1.0に近いほど、冷却などの付帯設備で無駄になる電力が少なく効率的とされます。冷却に使う水の効率を表すWUE(Water Usage Effectiveness)という指標もあり、こちらは値が小さいほど水の使用量が少ないことを意味します。
また、実際の排出量(CO2換算)は、消費電力に「その電力がどれだけクリーンか(排出係数)」を掛け合わせて算定するのが基本的な考え方です。同じ電力量でも、再生可能エネルギー由来の電力で動かすのか、化石燃料由来の電力で動かすのかによって、排出量は大きく変わります。
つまり、AIの排出量を正しく把握するには「どれだけ電力を使うか(効率)」と「その電力がどれだけクリーンか(電源構成)」の両面を見る必要があります。この2つの視点は、後ほど解説するベンダーへの確認項目にも直結します。
AIの排出量とESG・カーボンニュートラルの関係

ここまでで、AIがどこで環境負荷を生むのかが見えてきました。次に押さえたいのが、「なぜ発注者である自社がそれを気にしなければならないのか」という点です。鍵になるのが、温室効果ガスの算定基準であるGHGプロトコルの「Scope」という考え方です。
Scope 1・2・3 の基礎(AIの排出はどのScopeか)
GHGプロトコルでは、企業の温室効果ガス排出量を3つの区分(Scope)に分けて捉えます。
- Scope 1: 自社が直接排出する分(自社の燃料燃焼、社用車など)
- Scope 2: 自社が購入した電力・熱の使用に伴う排出(オフィスの電気など)
- Scope 3: 上記以外のサプライチェーン全体の排出(購入した製品・サービス、出張、製品の使用など、自社の事業活動に関連して他社から発生する排出)
このうちScope3は、自社の外側で発生する排出をすべて含むため、多くの企業で総排出量の大きな割合を占めることが知られています。CDPの分析によると、CDPに情報開示している企業では、サプライチェーン(Scope3)の排出量が自社の直接的な事業活動による排出量(Scope1・2)の平均で26倍に達するとされており、ESG開示においても重視される区分です(CDP プレスリリース 2024年)。
AIベンダーの排出が自社Scope3になるケース
ここが発注者にとって重要なポイントです。AIシステムを外部のベンダーやクラウド事業者から調達して利用する場合、そのAIの稼働に伴う排出は、発注者である自社のScope3(購入した製品・サービスに関連する排出)に該当しうるのです。
具体的には、次のようなケースが考えられます。
- クラウド上の生成AIサービスを利用する場合、その推論にかかる排出
- ベンダーに委託してAIモデルを開発・学習してもらう場合、その学習にかかる排出
- AIシステムの運用をベンダーに任せる場合、運用に伴う継続的な排出
これらは自社のオフィスや設備から直接出る排出ではありませんが、「自社が発注したサービスに関連して発生する排出」としてScope3の対象になり得ます。だからこそ、発注の段階でベンダーの環境対応を確認しておかないと、後から自社のESG報告の精度や数値に影響が及ぶ可能性があるのです。
カーボンニュートラル目標・ESG開示への影響
自社がカーボンニュートラル目標を掲げ、ESG情報を開示している(あるいはこれから開示する)場合、AI導入による排出増は次のような形で跳ね返ってきます。
- 排出量目標の達成を難しくする要因になる
- Scope3の算定・開示において、AI利用分の排出データが必要になる
- 投資家や取引先からの問い合わせに対して、説明責任を負う
逆に言えば、発注の段階で環境負荷を抑えたベンダーを選び、必要な排出データを提供してもらえる体制を整えておけば、AI導入とカーボンニュートラル目標を両立させやすくなります。これが、発注者がベンダーにカーボン排出量を確認すべき根本的な理由です。
AIシステム発注者がベンダーに確認すべきカーボン排出量の基準

ここからが本記事の中心です。これまで見てきたように、AIの排出は発注者自身のScope3に跳ね返り得るため、ベンダー選定や契約の段階で環境面を確認しておくことが重要になります。とはいえ、何をどう聞けばよいのか分からなければ動けません。そこで、発注者がベンダーに確認すべき項目を、具体的なチェックリストとして整理します。
確認すべき項目チェックリスト
ベンダーへのヒアリングやRFP回答の評価で使える確認項目を、5つのカテゴリーに分けて示します。各項目について「確認したか」「回答が十分か」をチェックしながら進めるとよいでしょう。
カテゴリー | 確認項目 | 確認のポイント |
|---|---|---|
再生可能エネルギー | AIを稼働させるデータセンターの電力に、再生可能エネルギーをどの程度使っているか | 再エネ比率の具体的な数値、再エネ調達の方針・目標年 |
データセンターの効率・立地 | データセンターのPUE(電力使用効率)はどの程度か。どの地域・電源構成の拠点で稼働するか | PUEの実測値、利用リージョンの選択可否、立地の電源構成 |
排出量の算定・開示 | AI利用分の排出量を算定・開示できるか。可能な場合、どの単位・粒度で提供されるか | 算定の有無、利用量に応じた排出データの提供可否、算定の前提・係数 |
モデル効率化の取り組み | モデルの軽量化や効率的な学習・推論など、排出を抑える技術的な取り組みをしているか | 具体的な手法、過剰なモデル規模を避ける設計思想の有無 |
認証・準拠フレームワーク | 第三者認証や報告フレームワーク(GHGプロトコル等)への準拠状況はどうか | 取得認証、外部検証の有無、サステナビリティ報告書の公開状況 |
このチェックリストは、すべてに完璧な回答を求めるためのものではありません。ベンダーごとの対応レベルを比較し、自社のESG要件に照らして「許容できるか」を判断するための物差しとして使ってください。
確認項目をRFP・提案依頼にどう盛り込むか
確認項目は、頭の中だけで持っていても活用しきれません。ベンダー選定のプロセスに組み込むことで、はじめて効果を発揮します。最も効果的なのは、RFP(提案依頼書)の評価項目に環境対応を明記することです。
具体的には、次のような工夫が考えられます。
- RFPの評価項目に「環境配慮・サステナビリティ」のセクションを設け、上記チェックリストの項目を質問として明記する
- 「データセンターの再エネ比率を回答してください」「AI利用分の排出量算定・提供の可否を回答してください」といった形で、定量的な回答を求める
- 価格・性能だけでなく、環境対応を評価点として配点する
評価項目として明示しておけば、ベンダー側も提案段階で環境対応を具体的に示すようになり、選定後のミスマッチを防げます。曖昧に「環境に配慮していますか」と聞くのではなく、回答を比較できる形で問うことがポイントです。
契約・SLAで押さえる環境データ提供条項
選定後は、確認した内容を契約やSLA(サービス品質保証)に落とし込んでおくと、運用フェーズでの確認が確実になります。特に、自社のScope3算定・開示のためには、運用開始後も継続的に排出データを受け取れることが重要です。
契約・SLAで検討したい条項の例を挙げます。
- AI利用分の排出量データ(または算定に必要な電力使用量等)を、定期的に提供してもらう旨の取り決め
- 提供される環境データの単位・粒度・頻度の明確化
- データセンターの再エネ調達状況など、環境関連情報の変更があった場合の通知
口頭の確認だけでは、担当者が変わった際に引き継がれないこともあります。文書で取り決めておくことで、ESG報告の根拠となるデータを安定して確保できます。
ベンダー回答の評価のしかた(何をもって十分とするか)
確認項目への回答を得たら、その内容をどう評価するかが次の課題です。回答の質を見極める際の目安を示します。
- 定量的か: 「環境に配慮しています」といった抽象的な回答ではなく、再エネ比率やPUEなどの具体的な数値で答えているか
- 検証可能か: サステナビリティ報告書や第三者認証など、回答を裏づける外部資料を示せるか
- データ提供に応じるか: 自社のScope3算定に必要な排出データを提供する意思・体制があるか
- 改善の方向性があるか: 現状の数値だけでなく、再エネ調達目標や効率化計画など、将来に向けた取り組みを示しているか
すべての項目で満点を取れるベンダーは多くないかもしれません。重要なのは、自社のESG要件にとって譲れない項目(例えばScope3算定のためのデータ提供)を明確にし、そこを満たせるベンダーを優先することです。完璧さよりも、自社の要件との適合度で判断しましょう。
発注者・開発側でできるカーボンニュートラルに向けた工夫
ベンダーの環境対応を確認することは重要ですが、すべてをベンダー任せにする必要はありません。発注者側の選択や運用次第でも、AI利用に伴う排出を抑えることができます。確認するだけでなく、自ら排出を減らす選択肢を持っておくことで、意思決定の幅が広がります。
発注者側でできる工夫(モデル規模・運用・リージョン選択)
発注者の立場でも、次のような工夫によって排出を抑えられます。
- 適切なモデル規模を選ぶ: 用途に対して過剰に大きなモデルを選ばないことが、最も効果的な削減策の一つです。タスクに見合った規模のモデルを選べば、性能を保ちながら消費電力を抑えられます
- 不要な再学習を避ける: モデルの再学習は大きな電力を消費します。本当に再学習が必要かを見極め、既存モデルの活用やファインチューニングで済む場合はそちらを検討します
- リージョン(拠点)を選択する: クラウドサービスによっては、AIを稼働させる地域を選べる場合があります。再生可能エネルギーの比率が高い地域を選ぶことで、同じ処理でも排出量を下げられます
- 利用量を最適化する: 不要な処理や重複した呼び出しを減らすなど、利用そのものを効率化することも排出削減につながります
これらは特別な技術がなくても、発注・運用の設計段階で検討できる現実的な選択肢です。
開発側の省エネ手法の概要(軽量化・蒸留・効率的な学習)
ベンダーや開発側が取り組む技術的な省エネ手法を知っておくと、確認項目の回答を評価する際の理解が深まります。代表的な手法には次のようなものがあります。
- モデルの軽量化: 不要なパラメータを削減したり計算を簡略化したりして、性能を大きく落とさずにモデルを小さくする手法です
- 知識蒸留(ディスティレーション): 大きなモデルの「知識」を小さなモデルに移し、軽量なモデルで近い性能を得る手法です
- 効率的な学習: 学習の手順やデータの使い方を工夫し、より少ない計算量で目的の精度に到達させる取り組みです
これらの手法に積極的に取り組んでいるベンダーは、グリーンAIの考え方を実践していると評価できます。確認の際に「モデル効率化の取り組み」を尋ねた際、こうした具体的な手法を挙げられるかどうかが、一つの判断材料になります。
よくある質問(FAQ)
Q: グリーンAIとAI for Green・レッドAIの違いは?
A: グリーンAI(Green AI)は、AIそのものの開発・運用にかかる環境負荷を抑える考え方です。対義語の「レッドAI」は、精度向上のために計算資源を惜しまず消費する開発スタイルを指します。一方「AI for Green」は、AIを使って社会の環境課題を解決する取り組みであり、AI自体の環境負荷を下げる話とは方向性が異なります。発注者が気にすべきは、主に前者のGreen AIの観点です。
Q: AIはどれくらいCO2を排出するの?
A: 排出量はモデルの規模や使い方、稼働するデータセンターの電源構成によって大きく変わります。大規模モデルの学習では一度に数百トン規模のCO2が排出される試算もありますが、実際のサービス利用では推論の積み重ねが大きな割合を占めることもあります。一概に数値を示すのは難しいため、利用するベンダーに算定値を確認するのが確実です。
Q: AIベンダーの排出量は自社のScope3に含まれる?
A: 外部のベンダーやクラウドからAIサービスを調達して利用する場合、その稼働に伴う排出は、発注者である自社のScope3(購入した製品・サービスに関連する排出)に該当しうると考えられます。自社のESG開示やカーボンニュートラル目標に影響するため、発注段階での確認が重要です。
Q: 環境に配慮したAIベンダーはどう見分ける?
A: 再生可能エネルギーの利用比率、データセンターのPUE(電力効率)、排出量の算定・開示の可否、モデル効率化の取り組み、第三者認証や報告フレームワークへの準拠といった項目を確認します。抽象的な回答ではなく、具体的な数値や外部資料で裏づけられる回答ができるベンダーが、信頼性の高い候補といえます。
Q: 排出量を確認しても自社で削減が難しい場合はどうすれば?
A: まずは適切なモデル規模の選定、不要な再学習の回避、再エネ比率の高いリージョンの選択など、発注・運用の設計でできる工夫から取り組むのが現実的です。それでも残る排出については、ベンダーから排出データを継続的に受け取り、自社のScope3算定・開示に正しく反映していくことが、説明責任を果たす第一歩になります。
まとめ
グリーンAIとは、AIそのものの環境負荷を抑える考え方であり、AIで環境課題を解決する「AI for Green」とは区別して理解する必要があります。AIの排出は学習・推論・データセンターの運用という場面で発生し、その電力需要は今後さらに拡大すると見込まれています。
発注者にとって重要なのは、外部から調達するAIの排出が自社のScope3に跳ね返り、ESG開示やカーボンニュートラル目標に影響しうるという点です。だからこそ、ベンダー選定や契約の段階で、再生可能エネルギーの利用状況、データセンターの効率、排出量の算定・開示、モデル効率化の取り組み、認証・準拠フレームワークといった項目を確認しておくことが、リスクを抑えるうえで欠かせません。
次のアクションとして、本記事で示したチェックリストを自社のRFPや評価項目に組み込み、契約・SLAに環境データの提供条項を盛り込むことから始めてみてください。確認すべき基準を明確に持つことで、AI導入とカーボンニュートラルの両立に向けた一歩を、自信を持って踏み出せるはずです。
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