エージェントの契約更新面談で単価が据え置きになったり、手数料の明細を見て「自分で取れば毎月これだけ増えるのに」と感じたりして、直営業に本腰を入れようと考えていませんか。技術力には自信があるのに、単価も条件もエージェントが提示する相場に縛られている。この状態にもどかしさを覚えるフリーランスエンジニアは少なくありません。
とはいえ、いざ自分で営業しようとすると壁にぶつかります。「どのチャネルで、どう自分を売り込み、どう商談を進めれば、継続的に案件が取れるのか」が分からない。過去に知人の紹介で一度だけ直接案件を経験したものの、その後は営業が続かず単発で終わってしまった、という方も多いはずです。
直営業がうまくいかない原因の多くは、技術力ではなく「営業を再現性のある仕組みにできていない」ことにあります。チャネルを絞り込まずに手当たり次第に動き、商談で何を話すか決めておらず、単価を相場以下で受けてしまう。これでは続きません。
逆に言えば、チャネルの選び方・自己PRの伝え方・商談の進め方・条件交渉の型を一度押さえてしまえば、単価と条件を自分でコントロールしながら継続的に案件を取ることは十分に可能です。
本記事では、フリーランスエンジニアが直営業(自社営業)で案件を獲得する方法を、5つのチャネルの運用手順、自己PR資料の作り方、初回商談からクロージング・条件交渉までの流れに沿って整理します。読み終えるころには、自分に合うチャネルを2〜3本に絞り、商談で話す内容と単価の決め方が頭に入った状態を目指します。
フリーランスエンジニアの直営業(自社営業)とは|なぜ単価と条件を取り戻せるのか
直営業(自社営業)とは、エージェントやクラウドソーシングといった仲介サービスを介さず、発注企業と直接やり取りして契約を結ぶ営業のことです。営業活動から契約、単価の決定までを自分で担う代わりに、単価と条件の決定権を自分の手元に取り戻せます。
なぜ直営業が「単価と条件を取り戻す手段」になるのか。それは、エージェント経由の場合、案件単価の一部が手数料(中間マージン)として差し引かれているからです。フリーランスエージェントの手数料は一般に10〜30%程度とされ、25〜30%前後を相場とする解説も多く見られます(コエテコキャリア)。手数料そのものは案件紹介・契約代行・支払い保証といったサービスの対価であり、不当なものではありません。ただし、たとえば月60万円の案件で手数料が25%であれば、毎月15万円分は自分の口座に入らない計算になります。直営業でこの構造を外せば、同じ稼働でも手取りが増える余地が生まれます。
もう一つ重要なのは、単価交渉の主導権です。エージェント経由では単価はエージェントが提示する相場に沿うことが多く、自分から大きく動かしにくい構造になっています。直営業では発注企業と直接価格の話をするため、自分の専門性や実績を根拠に単価を提示できます。これが「条件を自分で決める」という直営業の本質です。
直営業・自社営業・直接契約の違い
この領域では似た言葉がいくつも使われます。整理すると、いずれも「仲介を介さず企業と直接契約する」という点は共通しており、本質的な違いはほとんどありません。
- 直営業: 自分で能動的に営業して案件を取りにいく行為を指すニュアンスが強い言葉です。
- 自社営業: 「自分(自社)の営業活動」という意味で、エージェント営業の対義語として使われます。
- 直接契約・エンド直: 仲介を挟まず最終発注者(エンドクライアント)と契約する「状態」を指す言葉です。
本記事ではこれらをほぼ同義として扱い、主に「直営業」と表記します。
エージェント経由と直営業の役割分担の違い
エージェント経由と直営業では、「誰が何を担うか」が大きく変わります。エージェント経由では、営業・案件紹介・単価交渉・契約手続き・請求や入金管理の多くをエージェントが代行してくれます。その分、稼働に集中できる代わりに、単価決定の主導権と手数料分の取り分を手放しています。
一方、直営業ではこれらをすべて自分で担います。負担は増えますが、単価をいくらで提示するか、どんな契約条件にするかを自分で決められます。直営業を始めるということは、エージェントが代行していた「営業・契約・単価決定」の機能を自分の中に取り込むことだと捉えると、これから準備すべきことが見えてきます。
直営業に向いているエンジニアの特徴と始める前の前提条件
直営業は誰にでも今すぐ向いているわけではありません。向き・不向きと前提条件を正直に押さえておくことが、単発で終わらせないための第一歩です。
直営業が機能しやすいエンジニアの4条件
次の条件にあてはまるほど、直営業は機能しやすくなります。
- 実務経験が一定以上ある(目安2〜3年以上): 発注企業は「任せて大丈夫か」を実績で判断します。一人で要件を受け止めて形にできる経験があると、安心して任せてもらえます。
- 上流から実装まで一気通貫で担える: 直営業では、技術の専門家ではない担当者と話す場面が多くあります。要件を整理し、設計から実装まで自走できると、発注側の手間を肩代わりでき、価値として評価されやすくなります。
- 一定の専門領域を持っている: 「何でもできます」より「この領域なら任せられる」のほうが、直営業では指名されやすくなります。専門領域は単価の根拠にもなります。
- 最低限の発信・対人コミュニケーションが取れる: 商談で相手の課題を聞き出し、自分の価値を言葉にできることが前提になります。流暢である必要はなく、誠実に対話できれば十分です。
始める前に整えておくべき前提
逆に、実務経験が浅い段階や、稼働が一時的に途切れたときに耐えられない資金状況では、直営業を主軸にするのは時期尚早です。その場合はエージェント案件で土台を固めつつ、次の準備を進めましょう。
- 資金バッファを用意する: 直営業は案件化までに時間がかかることがあります。数か月分の生活費を確保しておくと、焦って安い単価を受けずに済みます。
- 契約・請求まわりを自走できるようにする: エージェントが代行していた契約書の確認、請求書の発行、入金管理を自分で行う必要があります。会計ソフトや契約書テンプレートを準備しておきましょう。
- 複業・副業と並走させる: いきなりエージェント案件をすべて切るのではなく、稼働の一部を残しながら直営業を始めると、収入の谷を作らずに済みます。この進め方は後述の複業を活用する章で詳しく扱います。
直営業の5つのチャネルと使い分け|チャネル別の運用手順
ここが本記事の核心です。直営業が単発で終わる最大の原因は、チャネルを「名前だけ」知っていて、運用の手順を持っていないことにあります。以下では5つのチャネルを、即効性が高いものから順に、初動・関係構築・案件化の手順まで踏み込んで解説します。
チャネルは大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。即効性が高いチャネル(既存クライアント・元同僚、知人やコミュニティからの紹介)と、中長期で資産になるチャネル(LinkedIn、SNS・発信、勉強会・カンファレンス)です。まず即効性の高い2つで早めに1件目を作り、並行して中長期チャネルを育てるのが現実的です。
既存クライアント・元同僚の深掘り(最も成功率が高い)
直営業で最初の1件を取るなら、すでに自分を知っている相手から始めるのが最も成功率が高い方法です。新規開拓と違い、信頼と実績の説明が不要だからです。具体的には、(1) 現在エージェント経由で稼働している先に追加の困りごとがないか聞く、(2) 過去に一緒に働いた元同僚や元上司に近況連絡を兼ねて声をかける、(3) 取引先の別部署を紹介してもらう、という3つの動き方があります。「今、別の開発でお困りのことはありませんか」と一言添えるだけで、案件が表面化することは珍しくありません。これだけで1件目が決まる人も多いので、本格的な新規開拓に進む前に必ず一巡させましょう。
既存クライアント経由で直接契約に切り替える場合は、エージェントとの契約に「終了後一定期間の直接取引を禁じる」条項がないかだけは事前に確認してください。トラブルを避けるための最低限の注意点です。
直営業をこれから始める方で、コネゼロからの最初の1件の取り方を詳しく知りたい方は、フリーランスエンジニアの直接受注|コネゼロから始める5ステップ受注もあわせてご覧ください。
知人・コミュニティからの紹介
紹介は成約率が高い一方、「お願いして回る」ものではなく「生まれる前提を作る」ものだと考えると動きやすくなります。前提づくりとは、自分が今どんな仕事を探していて、何が得意なのかを周囲が把握している状態を作ることです。普段から「今こういう案件を受けられる枠があります」と発信したり、参加しているコミュニティで自分の専門領域を共有したりしておくと、誰かが案件の相談を受けたときに思い出してもらえます。
実際に紹介を依頼するときは、相手が紹介しやすいよう情報をパッケージ化しておきましょう。「Webアプリのバックエンド(Go・AWS)を月◯万円・週3稼働で探しています」のように、領域・条件・稼働をひとことで伝えられるようにしておくと、紹介する側の負担が減り、話が前に進みやすくなります。
LinkedInは、発注権限を持つ経営層やエンジニアリングマネージャーに直接つながれる中長期チャネルです。ポイントは「いきなり売り込まない」こと。次の順序で運用します。
- プロフィールを整える: 専門領域・実績・受けられる案件の形態を、初見の相手が3秒で理解できるように書きます。職務経歴は「何を作ったか」だけでなく「どんな課題をどう解決したか」を添えます。
- 関連する相手とつながる: 自分の専門領域に近い企業のCTOやエンジニアリングマネージャー、過去に接点のあった人につながり申請を送ります。申請時には一言メッセージを添えると承認されやすくなります。
- 関係を温める: つながった直後に営業せず、相手の投稿に反応したり、自分の知見を発信したりして接点を作ります。
- 打診する: 相手のニーズが見えたタイミングで「お役に立てそうな領域があればお話しさせてください」と軽く打診します。
時間はかかりますが、一度関係ができれば指名で相談が来る資産になります。
X・技術ブログなどのSNS・発信
X(旧Twitter)や技術ブログでの発信は、自分から営業をかけなくても「この人に頼みたい」という問い合わせを呼び込むプル型のチャネルです。専門領域の知見を継続的に発信していると、課題を抱えた企業の担当者が検索や口コミであなたを見つけ、声をかけてくる導線ができます。
発信で意識したいのは、ただ近況を流すのではなく「自分が何を解決できる人か」が伝わる内容にすることです。技術ブログで自分が解決した問題の事例を書く、Xで取り組んでいる領域の知見を共有する、といった蓄積が、後から見た人にとっての判断材料になります。プロフィールに「業務委託の相談を受け付けています」と一文添え、連絡先を分かるようにしておくことも忘れないでください。即効性は低い分、育てば継続的に問い合わせが来る資産になります。
勉強会・カンファレンス・ミートアップ
勉強会やカンファレンスは、同じ技術領域の人と直接つながり、人脈と指名につなげられるチャネルです。参加するだけでも接点は生まれますが、一歩踏み込むなら登壇(LT・発表)を狙いましょう。登壇すると、その領域の専門家として認知され、終了後に「実は相談があって」と声をかけられることがあります。
参加者として動く場合も、懇親会で自分の専門領域と受けられる案件を伝えておくと、後日の相談につながります。ここでも紹介と同じく、「自分が何を探していて何が得意か」を一言で言える状態にしておくことが効きます。
チャネルの絞り込み方
5つすべてを同時に運用するのは現実的ではありません。単発で終わらせないコツは、自分の特性と即効性を掛け合わせて2〜3本に集中することです。
たとえば、過去の取引先や元同僚が多い人は「既存クライアント深掘り+紹介」を主軸にし、発信が得意な人は「SNS発信+LinkedIn」を選ぶ、というように、自分が続けられるチャネルを選びます。まずは即効性の高いチャネルで1件目を作り、収入の土台を確保したうえで、中長期チャネルを並行して育てていくと、案件が途切れにくい状態を作れます。手を広げすぎて全部が中途半端になるより、絞って継続するほうが結果的に早く回り始めます。
自己PR資料・提案書の作り方|直営業で「指名」される伝え方

直営業では、エージェントが代わりに説明してくれません。自分で自分の価値を言語化し、相手に伝える必要があります。単価を自分で決めるには、その価格に見合う価値を相手が納得できる形で示すことが前提になります。
直営業で必要な3点セットの役割
自己PRに使う資料は、役割の異なる3点を用意しておくと商談がスムーズに進みます。
- スキルシート(職務経歴): 経験した技術・プロジェクト・役割を一覧化したもの。相手が「依頼できる範囲」を把握するための土台です。
- ポートフォリオ: 実際に作ったものや成果を見せる資料。公開できる範囲で、課題と成果が分かる形にまとめます。
- 提案書: 個別の案件に対して「この課題をこう解決します」と示す資料。商談後に提出します。
このうち提案書の詳しい書き方はフリーランスエンジニアの提案書|面談に呼ばれる自己PRの書き方で扱っているので、構成や記載項目を整えたい方はあわせてご覧ください。本記事では、直営業という文脈で「何を強調すべきか」に絞って解説します。
「実装できます」ではなく「課題を解決した実績」で語る
直営業の相手は、必ずしも技術の専門家とは限りません。発注担当者が非エンジニアで、技術用語をそのまま並べても価値が伝わらないケースは珍しくないのです。ここが、技術が分かるエージェント担当者を相手にしてきた人がつまずきやすいポイントです。
そこで、自己PRは「何ができるか(技術)」ではなく「どんな課題をどう解決し、どんな成果につながったか」で語ることを意識します。たとえば「Reactが書けます」ではなく「表示速度に課題のあった管理画面を改善し、ページ読み込み時間を◯秒から◯秒に短縮した」というように、ビフォーアフターと数値で示します。非エンジニアの担当者でも価値を理解でき、社内の決裁者に説明しやすくなります。
加えて、自分の専門領域を一言で言い切れるようにしておきましょう。「Webバックエンドの設計から運用まで一気通貫で担えます」のように、依頼できる範囲が明確だと、相手は安心して任せられ、単価の根拠も伝わりやすくなります。価値が言語化できていれば、単価を自分から提示する場面でも臆さず話せます。
初回商談からクロージング・契約条件交渉までの流れ

案件の相談が来たら、次は商談です。エージェント経由では商談や条件調整をエージェントが担っていましたが、直営業では自分で商談をリードします。ここを段階に分けて押さえておけば、「何を話せばいいか分からない」という不安はなくなります。
商談前の準備
商談は準備で半分決まります。最低限、相手企業の事業内容・サービス・公開されている技術情報には目を通し、「この会社はどんな課題を抱えていそうか」の仮説を立てておきましょう。仮説があると、商談の場で的を射た質問ができ、「分かっている人だ」という印象につながります。あわせて、前述の3点セットのうちスキルシートとポートフォリオはすぐ見せられる状態にしておきます。
初回商談のヒアリング(予算・決裁者・ニーズ・時期)
初回商談で最も大切なのは、売り込むことではなく聞くことです。次の4点を押さえると、その後の提案と条件交渉の精度が上がります。
- ニーズ: 何に困っていて、何を実現したいのか。表面的な要望の奥にある本当の課題まで掘り下げます。
- 予算: どの程度の予算感を想定しているか。直接聞きにくければ「ご予算の目安はありますか」と率直に尋ねて問題ありません。
- 決裁者: 目の前の相手が決められるのか、別に承認者がいるのか。これを把握しておくと、提案を誰に向けて作るべきかが分かります。
- 時期: いつ始めたいか、いつまでに何が必要か。自分の稼働可能時期とすり合わせます。
これらは商談の冒頭で一度に質問するのではなく、対話の流れの中で自然に引き出します。
提案とクロージング
ヒアリングした課題に対して、「こう進めれば解決できます」という提案を示します。このとき、相手に「やるかやらないか」の決断を一方的に迫らないことがコツです。「お決めください」と詰めるのではなく、「次のステップとして、まず◯◯の部分から小さく始めて、効果を見て判断するのはいかがでしょうか」のように、相手が次に進みやすい道筋を提示します。
クロージングとは「契約を迫ること」ではなく「次の一歩を明確にすること」だと捉えると進めやすくなります。商談の最後に「では、いつまでにお見積もりをお送りします。その後、開始時期をご相談させてください」と、次に何が起こるかをこちらから示して終えると、話が宙に浮かずに進みます。
単価・契約条件の交渉
直営業の醍醐味は、単価と条件を自分から提示できることです。まずは相場を調べます。同じ技術領域・稼働形態の案件単価を、エージェントの公開案件や各種の単価情報から把握し、自分の実績を踏まえた提示額の根拠を持っておきます。単価交渉や更新時の単価アップの考え方はフリーランスエンジニアの単価値上げ交渉|契約更新時の進め方とメール文例でも詳しく解説しているので、提示額の組み立てに迷ったら参考にしてください。
単価を伝えるときは、ヒアリングで把握した予算感と、自分が提供する価値(解決する課題と成果)をセットで示します。「ご予算の範囲で、この課題まで踏み込んで対応すると月◯万円でお引き受けできます」のように、価値と価格を結びつけて提示すると、単なる値段交渉ではなく価値の合意になります。
契約条件では、次の点を最低限すり合わせ、必ず業務委託契約書を交わします。
- 契約種別: 成果物の完成に責任を負う請負契約か、業務の遂行に対して報酬が支払われる準委任契約か。報酬の発生条件が変わるため、どちらかを明確にします(PE-BANK)。
- 稼働形態: 週何日・月何時間か、稼働時間の上下限と超過時の扱い。
- 支払いサイト: いつ報酬が支払われるか。2024年11月施行のフリーランス新法により、発注事業者は成果物等を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を設定する義務があります(政府広報オンライン)。契約前に支払日を確認しておきましょう。
口約束ではなく書面で残すことが、直営業を安心して続けるための土台になります。
複業から始めて直営業力を磨く方法|リスクを抑えた実践ステップ
直営業をいきなり主軸にすると、案件化までの期間に収入が途切れる「稼働の谷」が怖い、という不安はもっともです。前回の直営業が単発で終わった経験があればなおさらでしょう。そこでおすすめなのが、複業を「直営業の練習場」として使う進め方です。
なぜ複業が直営業の練習に向くのか
複業案件は、本業やエージェント案件で収入を確保したまま、小さく試せるのが利点です。一件あたりの規模が小さければ、商談・提案・条件交渉・納品という一連の流れを、低リスクで何度も経験できます。失敗しても収入の柱が崩れないため、「単価をこう提示してみよう」「商談でこう聞いてみよう」と試行錯誤しやすくなります。直営業で必要なスキルは、結局のところ場数で磨かれます。複業はその場数を安全に積める環境です。
加えて、複業案件のなかには、発注企業と直接やり取りするものや、稼働後にレビュー・評価が残るものがあります。こうした案件をこなすと、後述する「実績と評価の蓄積」につながります。複業案件を探す手段の一つとして、Workee のように案件を探せるサービスを使うと、本業と並行しながら小さく直営業の型を試す入口にできます。
複業で積んだ実績・人脈を直営業の信頼材料に変換する
複業で経験を積む価値は、スキルだけではありません。完了した案件の成果、発注者からの評価、そこで生まれた人脈は、そのまま直営業の信頼材料になります。
たとえば、複業で取り組んだプロジェクトの成果はポートフォリオに加えられます。良い評価を得た発注者は、追加案件や紹介の起点になり得ます。前述した「既存クライアント・元同僚の深掘り」「知人・コミュニティからの紹介」というチャネルは、複業を通じて関係を広げるほど厚みを増していきます。複業は単なる練習にとどまらず、直営業の資産そのものを増やす活動なのです。
収入源を分散させながら直営業の比率を高めるロードマップ
直営業への移行は、一気に切り替えるのではなく段階的に比率を動かすのが安全です。おおまかな流れは次のとおりです。
- 土台期: エージェント案件で収入を確保しながら、複業で営業・商談・納品の一連を経験する。
- 移行期: 複業で得た実績・評価・人脈をもとに、即効性の高いチャネルから直営業案件を1件作る。収入の谷が出ないよう、既存案件と並走させる。
- 主軸期: 直営業案件が安定して回り始めたら、エージェント案件の比率を徐々に下げ、直営業を主軸に切り替える。
このように収入源を分散させながら少しずつ比率を動かせば、稼働の谷を作らずに、継続的に案件を取る仕組みへ移行できます。
直営業でつまずきやすいポイントと対処法
最後に、直営業で失敗しがちなポイントと、その対処を押さえておきましょう。先回りして知っておくだけで、単発で終わるリスクを大きく減らせます。
- 営業が続かず単発で終わる: 一度案件が決まると営業をやめてしまい、終了後に次がない、という典型パターンです。対処は、稼働中も即効性チャネルへの声かけと中長期チャネルの発信を「週に一定時間」と決めて続けること。営業を稼働とセットの習慣にすれば途切れません。
- 単価を相場以下で提示してしまう: 自信のなさから安く受けてしまうケースです。対処は、商談前に必ず相場を調べ、自分の価値(解決する課題と成果)を根拠にした提示額を用意しておくこと。安易な値引きは、後の単価アップを難しくします。
- 契約書なしで進めて未払いリスクを負う: 「知り合いだから」と口約束で始めると、報酬や業務範囲でもめたときに守るものがありません。対処は、相手が誰であっても必ず業務委託契約書を交わし、支払期日と業務範囲を書面に残すこと。フリーランス新法も書面での条件明示を求めています。
- 稼働の谷ができる: 案件と案件の間が空いて収入が途切れる問題です。対処は、収入源を一本に絞らず、エージェント案件や複業と並走させながら直営業の比率を段階的に上げること。前述のロードマップのように、分散させておくと谷を埋められます。
よくある質問(FAQ)
フリーランスエンジニアは営業未経験でも直営業できますか?
できます。直営業は流暢な営業トークよりも、相手の課題を聞き出し、自分の価値を誠実に伝えられるかが重要です。最初は営業経験ではなく、すでにある人脈(元同僚・既存クライアント)を起点にすれば、ゼロから売り込む必要はありません。それでも不安があれば、複業で小さな案件から商談・条件交渉を経験し、場数を踏みながら慣れていく方法が有効です。技術力という土台がある分、型さえ身につければ未経験からでも十分に始められます。
直営業だとエージェント経由より単価はどのくらい上がりますか?
目安としては、エージェントの手数料分(一般に10〜30%程度)が上乗せされる余地があります。月60万円・手数料25%の案件なら、毎月15万円前後が手元に残る計算です。ただし、エージェントが代行していた営業・契約・請求・与信確認を自分で担う必要があり、その工数とリスクも引き受けることになります。手取りの増加分と自分の負担を天秤にかけ、無理のない範囲で直営業の比率を上げていくのが現実的です。
直営業で最初の1件を取るには何から始めればいいですか?
最も成功率が高いのは、すでに自分を知っている相手への声かけです。具体的には、現在稼働中のクライアントに追加の困りごとがないか聞く、過去に一緒に働いた元同僚や元上司に近況連絡を兼ねて声をかける、取引先の別部署を紹介してもらう、という3つの動きです。信頼と実績の説明が不要な分、新規開拓よりはるかに早く決まります。本記事の「既存クライアント・元同僚の深掘り」で挙げた手順を、まず一巡させてみてください。
直営業で単価はいくらから提示すればいいですか?
決まった正解はありませんが、出発点は「相場」と「自分の実績」です。まず同じ技術領域・稼働形態の案件単価を、エージェントの公開案件や単価情報から調べ、相場の感覚をつかみます。そのうえで、自分の実績や解決できる課題を根拠に提示額を組み立てます。注意したいのは、自信のなさから相場より安く出さないこと。一度低く設定すると後から上げにくくなります。提示の際は予算感と提供価値をセットで伝え、価値に見合う金額として納得してもらう進め方が有効です。
まとめ|今日から始める直営業の3ステップ
直営業(自社営業)は、単価と条件をエージェントに委ねている状態から、自分でコントロールする状態へと移るための手段です。技術力があるのに単価が頭打ちになっている方ほど、取り戻せる余地は大きくなります。
最後に、今日から動き出すための3ステップに集約します。
- チャネルを2〜3本に絞る: 自分の特性と即効性を掛け合わせ、続けられるチャネルを選ぶ。まずは既存クライアント・元同僚の深掘りから。
- 自己PR資料を整える: スキルシート・ポートフォリオを「課題を解決した実績」と数値で語れる形にまとめる。
- 1社に打診して商談に進む: 準備が整ったら、まず1社へ声をかけ、ヒアリング・提案・条件交渉の流れを実際に経験する。
いきなり全部を直営業に切り替える必要はありません。複業やエージェント案件と並走させ、リスクを抑えながら少しずつ比率を上げていけば、単発で終わらない「継続的に案件を取る仕組み」が育っていきます。まずは一巡、すでに自分を知っている相手への声かけから始めてみてください。
直営業の第一歩として最初の1件を取るまでの詳細なロードマップはフリーランスエンジニアの直接受注|コネゼロから始める5ステップ受注で詳しく解説しています。



