「中間マージンを払っているのに、納品物の品質が期待を下回った」「打ち合わせはいつも営業窓口越しで、要望が実装側に正しく伝わっているのか分からない」「あとから、実際に作っていたのは別の会社だったと知った」——システム開発を外部に発注した経験のある担当者の多くが、一度はこうした違和感を抱えています。
その違和感の正体は、IT 業界に根深く残る「多重下請け構造」にあります。発注先の元請け企業が実作業を 2 次請け・3 次請けへと再委託していくこの構造では、各社が中間マージンを差し引くため、深い層にいくほど現場に渡る報酬は減り、発注者の要望は伝言ゲームのように薄まっていきます(ICD「多重下請け構造とは」)。
そこで次回の発注では「中間業者を減らして、作る人に直接発注したい」と考える担当者が増えています。ただ、いざ検討すると別の不安が頭をもたげます。「直接発注は本当にコスト・品質で得をするのか」「選定や管理の手間、人材が逃げるリスクが増えるだけではないか」。社内には「直接発注は管理が大変だ」という慎重論もあり、メリットだけでは説得材料になりません。
この記事では、多重下請けを避けて直接発注することのメリットを発注者目線で具体化したうえで、あえて目を背けがちなデメリットとリスクも正面から扱います。そのうえで「自社のこの案件なら直接発注が向くのか」を判断するための軸と、未経験でも辿れる進め方の 5 ステップまでをまとめました。読み終えたとき、社内の慎重論にも根拠を持って答えられる状態になることを目指します。
多重下請け構造とは|発注者から見た「見えないコスト」

まず、なぜ前回の発注で「割に合わない」と感じたのかを、構造の側から整理します。リスクの詳細な列挙はここでは深追いせず、発注者が実際に負担している「見えないコスト」の輪郭をつかむことを目的とします。
多重下請けの基本構造(発注者→元請け→下請けの連鎖)
多重下請け構造とは、発注者から業務を請けた元請け企業が、その作業の一部または全部を 2 次請け企業へ再委託し、2 次請けがさらに 3 次請け・孫請けへと委託していく、何層にもわたる再委託の連鎖を指します(ICD「多重下請け構造とは」)。
図にすると、発注者が見ているのは一番上の「元請け企業」だけですが、その下には次のような層が連なっていることがあります。
- 発注者(あなたの会社)
- 元請け企業(契約・請求の窓口)
- 2 次請け企業(一部の実作業を担当)
- 3 次請け・孫請け企業(実際にコードを書く現場)
契約上の相手は元請け 1 社でも、実際に手を動かしているのは数社下の現場、というのは IT 業界では珍しくありません。発注者から見ると「誰が作っているのか分からない」という感覚は、この構造から生まれています。
発注者が負担している中間マージンと、要望が薄まる「伝言ゲーム」
この構造で発注者が払うコストには、見積書に明記されない「見えないコスト」が二つあります。
一つは中間マージンです。再委託が一段増えるたびに、間に入る企業がそれぞれの取り分を差し引きます。下の層へいくほど現場が受け取る金額は少なくなるため、同じ予算でも実際の開発に投じられる原資は目減りします(ICD「多重下請け構造とは」)。「中間マージンの割に品質が低い」と感じたのは、支払った金額のうち相応の割合が中間の各社で消化され、現場の工数や単価に十分回っていなかった可能性があります。
もう一つは「伝言ゲーム」によるコストです。発注者の要望は、元請けの営業 → 元請けの開発担当 → 2 次請け → 現場、というように複数の手を経て伝わります。仕様の意図やニュアンスは、伝わる過程で少しずつ削れていきます。逆に、現場で生じた疑問や仕様の矛盾も、同じ経路を逆向きにたどるため、回答が返ってくるまでに時間がかかります。打ち合わせが常に窓口越しで遅い、認識のズレに気づくのが受け入れテストの段階になってから、といった事態はこの伝言ゲームの副作用です。
多重下請けそのものが持つ法務・契約上のリスク(再委託条項や下請法対応など)については論点が広いため、本記事では深掘りしません。発注先の多重下請けをどう見抜き・防ぐかという観点は多重下請けのリスクと対策チェックリストに譲り、ここからは「そもそも中間業者を減らして直接発注する」という前向きな選択肢に話を進めます。
多重下請けを避けて直接発注する4つのメリット

ここからが本題です。多重下請けを避けて、実際に開発する人材・小規模パートナーへ直接発注すると、発注者にとって何が変わるのか。前回の発注で困った点がどう解消されるか、という観点で 4 つに整理します。
コスト効率(中間マージンの削減)
直接発注の最も分かりやすいメリットは、中間マージンが減ることです。元請け・2 次請けといった中間の各社が取っていた取り分が省かれるため、同じ予算でも実際の開発に充てられる原資が増えます。言い換えると、同じ支出でより多くの工数・より高いスキルの人材を確保しやすくなります。
ここで注意したいのは「直接発注=とにかく安くなる」という単純な話ではない点です。後ほど触れるように、中間業者が担っていた選定・管理・品質保証といった機能は、直接発注では発注者側に移ります。その手間を踏まえてもなお、中間マージンの削減分が上回るかどうかが、コスト面の本当の判断ポイントになります。多くの場合、継続的に発注する案件や、要件がある程度固まっている案件ほど、削減分のメリットが手間を上回りやすくなります。
要望が直接届く(コミュニケーションの短縮)
直接発注では、発注者と実装者の間に立つ層がなくなります。これにより、要望が実装する本人へダイレクトに届くようになります。
伝言ゲームが消えることの効果は、コスト以上に大きい場合があります。仕様の意図や優先順位を本人に直接説明できるため、認識のズレが起きにくく、起きても早い段階で修正できます。現場からの「この仕様はこう解釈してよいか」という質問にも、窓口を介さず即座に答えられます。結果として、手戻りが減り、開発のスピードと精度の両方が上がります。前回「窓口越しでしか要望が伝わらない」と感じた担当者にとっては、このメリットが直接発注を選ぶ最大の動機になることも少なくありません。
品質と進捗の可視性(誰が作っているかが分かる)
直接発注では「誰が作っているのか」が明確になります。実装を担う本人やチームと直接やり取りするため、スキルや経歴を事前に確認したうえで発注でき、進行中も誰がどの機能を担当しているかが見えます。
進捗の可視性も高まります。中間層を経由しないぶん、進捗報告が現場の実態とずれにくく、課題が発生したときにも事実を直接共有してもらえます。「順調です」という報告だけが上がってきて、終盤に問題が露呈する、といった事態を避けやすくなります。品質を管理しやすいというのは、品質が自動的に上がるという意味ではなく、品質に関する情報がリアルタイムに把握でき、必要なときに早く手を打てる、という意味です。
社内への知見・ナレッジ蓄積
見落とされがちですが、直接発注は社内に開発の知見が残りやすいというメリットもあります。
実装者と直接やり取りを重ねるなかで、技術的な判断の理由、仕様変更が及ぼす影響、運用上の注意点といった情報が、窓口で要約される前の形で社内に入ってきます。要件定義や仕様の詰めに発注側が深く関わるほど、その案件のシステムを自社で理解できる度合いが上がります。これは、将来の改修や別ベンダーへの引き継ぎ、あるいは内製化を検討する際の土台になります。中間業者を介した一括発注では、こうした知見はベンダー側に蓄積され、発注者の手元にはブラックボックス化したシステムだけが残りがちです。直接発注は、システムを「買う」だけでなく、システムを理解する力を社内に残す選択でもあります。
直接発注のデメリットとリスク|「手間が増える」を直視する

ここまでメリットを並べてきましたが、直接発注は良いことずくめではありません。社内の慎重論が指摘する「管理が大変になるのでは」という懸念は的を射ています。誠実に意思決定するために、直接発注で増える負担とリスクを正直に整理します。それぞれについて、後述の進め方でどう備えるかも併せて示します。
選定・管理の手間が発注者側に移る
これまで元請け企業が担っていた機能の多くは、実は「発注者の代わりに面倒を引き受ける」ことでした。人材の選定、契約手続き、進捗管理、品質チェック、トラブル対応——これらは中間マージンの対価でもあります。
直接発注に切り替えると、これらの機能は発注者側に移ります。スキルや実績を自分で見極めて人材を選び、契約や支払いの事務を整え、進行を自分でハンドリングする必要があります。社内に発注・管理を担えるリソース(時間とスキルを持った担当者)がどれだけあるかは、直接発注の成否を分ける現実的な前提条件です。この手間をどう下げるかは、のちほど進め方の章で具体的に扱います。
属人化と代替リスク
特定の個人やごく小規模なチームに直接発注すると、その人に依存する「属人化」が起きやすくなります。仕様の経緯やコードの背景がその人の頭の中にしかない状態になると、急な離脱や体調不良、他案件との兼ね合いで稼働が止まったとき、代わりを立てるのが難しくなります。
元請け企業に一括発注していれば、現場の誰かが抜けても会社として代替要員を手当てしてくれる、という安心感がありました。直接発注ではその受け皿が自前になります。属人化のリスクは、ドキュメントを残してもらう、コードや成果物を都度自社のリポジトリに集約する、可能なら複数人のチームや交代要員のいるパートナーを選ぶ、といった備えで緩和できます。
労務・偽装請負リスク(請負と準委任、指揮命令の線引き)
直接発注で最も注意したいのが、労務上のリスク、とくに「偽装請負」です。これは契約上は業務委託(請負や準委任)でありながら、実態として発注者が相手の作業に直接的・具体的な指揮命令を行っている状態を指し、法令上問題となります(東京労働局「偽装請負について」)。
ここを理解するには、契約形態の違いを押さえる必要があります。
- 請負契約:成果物の完成を目的とする契約。「このシステムを完成させて納品する」ことに対して報酬を払う形です。作業の進め方は受注者の裁量に委ねられます。
- 準委任契約:成果物の完成ではなく、業務の遂行そのものを目的とする契約。一定の専門性に基づく作業を継続的に依頼する形です。この場合も、業務の進め方は原則として受注者の裁量に委ねられ、発注者が具体的な指示・命令をすることはできません(ORO「準委任契約とは」)。
請負・準委任のいずれであっても、発注者が相手の働き方(作業の手順、勤務時間、作業場所など)を直接指揮命令すると、実態は労働者派遣に近づき、偽装請負と判断されるおそれがあります(アイエスエフネット「SES で偽装請負と判断されないために」)。直接やり取りができることは直接発注の大きなメリットですが、それは「要望や仕様を直接伝えられる」という意味であって、「相手を社員のように指揮命令してよい」という意味ではありません。この線引きを契約と運用の両面で守ることが、直接発注を安全に進めるうえで欠かせません。具体的な指示の出し方の工夫は、のちほどの進め方の章で触れます。
メリットとデメリットの整理|自社は直接発注に向くかの判断軸

ここまでのメリットとデメリットを並べて整理し、「どんな案件・どんな体制なら直接発注が向くのか」を自分で判断できる形に落とし込みます。
メリット・デメリット比較表
多重下請けによる従来型の一括発注(元請けにまとめて任せる発注)と、直接発注を、発注者目線の主要な観点で対比すると次のようになります。
観点 | 多重下請け型の一括発注 | 直接発注 |
|---|---|---|
コスト | 中間マージンが積み重なり、現場に渡る原資が目減りしやすい | 中間マージンが省け、同予算で投じられる原資が増えやすい |
要望の伝達 | 窓口を介した伝言ゲームで意図が薄まり、回答も遅い | 実装者に直接届き、認識のズレを早期に修正できる |
品質・進捗の可視性 | 誰が作っているか見えにくく、報告と実態がずれることがある | 担当者が明確で、進捗・課題をリアルタイムに把握しやすい |
社内への知見蓄積 | 知見はベンダー側に残り、システムがブラックボックス化しやすい | 仕様・技術判断の背景が社内に残りやすい |
選定・管理の手間 | 元請けが代行するため発注者の手間は小さい | 選定・契約・管理が発注者側に移り、手間が増える |
代替・継続性 | 会社として代替要員を手当てしやすい | 属人化しやすく、代替の受け皿は自前で用意する必要がある |
労務リスク | 発注者が現場と直接接しないぶん偽装請負のリスクは生じにくい | 指揮命令の線引きを誤ると偽装請負のリスクが生じる |
上半分(コスト・伝達・可視性・知見)が直接発注のメリット、下半分(手間・継続性・労務リスク)が直接発注で注意すべき点です。どちらに比重を置くべきかは、案件と自社の体制によって変わります。なお、外注以外の選択肢も含めて体制全体を見比べたい場合は、エンジニア採用・外注・部門委託の比較も判断材料になります。
直接発注が向くケース/向かないケースの判断軸
比較表を踏まえると、自社の状況を次の軸で点検することで、直接発注の向き不向きを判断できます。
直接発注のメリットが上回りやすいのは、次のようなケースです。
- 要件がある程度固まっている:作るものが明確なほど、実装者と直接詰める効果が大きく、手戻りも少なくて済みます。
- 継続的に発注する見込みがある:単発ではなく改修・運用も含めて長く付き合うなら、関係構築のコストを回収でき、知見蓄積のメリットも積み上がります。
- 社内に発注・進行管理を担える担当者がいる:選定・管理の手間を引き受けられる人的リソースがあることが前提です。
- コスト効率や、要望を直接伝えられることの優先度が高い:前回の発注でマージンや伝言ゲームに強い不満を感じたなら、直接発注の効果を実感しやすいでしょう。
逆に、従来型の一括発注のほうが無難なのは、次のようなケースです。
- 要件が固まっておらず、企画段階から丸ごと任せたい:要件定義から運用までを包括的に引き受けてくれる体制が必要な場合、発注者側の管理負荷が大きくなりすぎます。
- 社内に発注・管理を担う余力がない:手間が増えるデメリットが、コスト削減分を上回ってしまいます。
- 大規模で多人数・多工程を束ねる必要がある:取りまとめ役としての元請けの機能が効いてきます。
- 短納期の単発案件で、関係構築のコストを回収できない:継続性のメリットが働きません。
すべての案件で直接発注が最適とは限りません。「この案件は要件が固まっていて、社内に管理担当もいて、今後も改修が続く」のように複数の条件が揃うほど、直接発注の判断は妥当性を増します。
直接発注を失敗なく進める5ステップ

直接発注に踏み切ると決めたら、次は進め方です。発注の経験が浅くても辿れるよう、要件整理から継続化までを 5 つのステップに分けて示します。前章で挙げたデメリット(手間・属人化・労務リスク)への備えも、各ステップに織り込みます。
ステップ1 要件と発注範囲を整理する
最初にやるべきは、何を・どこまで発注するかを言語化することです。中間業者がいない分、要件の曖昧さがそのまま実装者の迷いになります。
- 実現したいこと(目的・解決したい課題)
- 必須要件と、あれば望ましい要件の区別
- 発注する範囲と、自社で担う範囲の線引き
- 想定スケジュールと予算の上限
ここで要件を固めきれない場合は、まず小さく要件定義だけを依頼し、設計が見えてから実装を発注する、という段階的な進め方も有効です。前章で「要件が固まっているほど直接発注が向く」と述べたのは、このステップの精度が後工程の手戻りを大きく左右するためです。
ステップ2 人材・パートナーを探す(探し方の選択肢)
次に、発注先となる人材・小規模パートナーを探します。主な選択肢は次の通りです。
- 既存の伝手・紹介:過去に取引のあった個人や、信頼できる人からの紹介。実績や人柄が事前に分かる安心感があります。一方で、母数が限られ、希望スキルに合う人が見つかるとは限りません。
- マッチングプラットフォーム:開発人材やフリーランスと発注者をつなぐサービス。スキル・実績・稼働状況を比較しながら探せ、契約や支払いの仕組みが整っている場合が多いため、選定・契約・支払いといった「直接発注で増える手間」を下げられます。
- エージェント経由:人材を仲介する事業者を介する方法。手間は減りますが、仲介料が発生するぶん、直接発注のコストメリットは小さくなります。
前章で挙げた「選定・管理の手間が発注者側に移る」というデメリットは、探し方の選び方である程度コントロールできます。社内に選定リソースが乏しい場合は、スキルや実績が可視化され、契約・支払いの事務を肩代わりしてくれるプラットフォームを活用すると、直接発注のメリット(中間マージンの削減・直接のやり取り)を保ちながら手間だけを軽くできます。
ステップ3 契約形態を選ぶ(請負/準委任)
発注先が決まったら、契約形態を案件の性質に合わせて選びます。前章で触れた請負と準委任の違いが、ここで実務に効いてきます。
- 成果物の完成責任を負ってほしい(例:仕様が固まった機能を完成・納品してもらう)→ 請負契約が向きます。
- 一定の専門性で業務を継続的に担ってほしく、成果物の完成を一律には縛りにくい(例:運用改善や技術支援を継続的に依頼する)→ 準委任契約が向きます(ORO「準委任契約とは」)。
いずれの場合も、契約書には作業範囲・成果物・検収条件・報酬・知的財産権の帰属・秘密保持などを明記しておきます。そして繰り返しになりますが、契約形態にかかわらず、相手の働き方そのものを具体的に指揮命令しないことが、偽装請負を避けるうえでの前提です。属人化への備えとして、成果物やドキュメントを自社側に集約する取り決めも、この段階で契約に盛り込んでおくと安心です。
ステップ4 進行管理とコミュニケーションを設計する
直接発注では進行管理が発注者側の役割になります。ただし「管理」と「指揮命令」を混同しないことが重要です。
偽装請負を避けるには、個々の作業の手順や勤務時間を逐一指示するのではなく、達成してほしい成果やマイルストーン、期日、品質の基準を伝え、その実現方法は相手の裁量に委ねる、という形が基本です(東京労働局「偽装請負について」)。具体的には、次のような設計が有効です。
- 定例の進捗共有の場を設け、課題と次の一手を確認する(毎日の作業指示ではなく、成果ベースの確認)
- 仕様・要望はチケットやドキュメントで明文化し、口頭の伝言に頼らない
- 成果物を都度レビューし、認識のズレを小さいうちに修正する
直接やり取りできるメリットを活かしつつ、それを「成果と要望のやり取り」に保つことが、品質の可視性と労務リスク回避を両立させるコツです。
ステップ5 単発で終わらせず継続関係にする
最後に、良い相手と出会えたら、単発で終わらせずに継続関係を築くことを意識します。
直接発注のメリットの多くは、関係が続くほど積み上がります。相手が自社の事業やシステムへの理解を深めるほど、要望の伝達はさらにスムーズになり、品質も安定します。社内に蓄積される知見も増えていきます。逆に、毎回ゼロから選定・関係構築をやり直すと、選定の手間というデメリットばかりが繰り返されてしまいます。
継続を見据えるなら、適正な報酬で誠実に取引すること、属人化しすぎないようドキュメントや成果物を共有資産として残してもらうこと、そして将来的に体制を広げる場合に備えて、複数の信頼できるパートナーと薄く広くつながっておくことが、安定した発注体制につながります。
まとめ|多重下請けを避けて直接発注する判断を自社の言葉にする
最後に、本記事の要点を社内提案でそのまま使える形に整理します。
多重下請けを避けて直接発注するメリットは、発注者目線で次の 4 つに集約されます。中間マージンの削減によるコスト効率、要望が実装者へ直接届くことによる手戻りの減少、誰が作っているかが見える品質・進捗の可視性、そして開発の知見が社内に残ることです。これらは、前回の発注で感じた「マージンの割に品質が低い」「窓口越しで要望が届かない」「誰が作っているか見えない」という不満の、ちょうど裏返しになっています。
一方で、直接発注には選定・管理の手間が発注者側に移ること、属人化と代替リスク、そして指揮命令の線引きを誤ると生じる偽装請負リスクという、無視できないデメリットもあります。メリットだけで判断せず、これらの手間とリスクを引き受けられる体制があるかを併せて点検することが、誠実な意思決定につながります。
向き不向きの判断軸は、要件が固まっているか・継続発注の見込みがあるか・社内に管理担当がいるか・コスト効率や直接のやり取りの優先度が高いか、の 4 点です。これらが揃うほど、直接発注のメリットがデメリットを上回りやすくなります。なお、直接発注は外注の一形態であり、自社採用や部門ごとの委託といった他の体制とも比較したうえで選ぶのが理想です。体制全体の選択肢を整理したい場合はエンジニア採用・外注・部門委託の比較も参考にしてください。進めると決めたら、要件整理 → 人材・パートナー探し → 契約形態の選択 → 進行管理の設計 → 継続関係化、という 5 ステップで段取りを組めば、未経験でも大きな失敗を避けられます。
「自社のこの案件なら、直接発注のメリットが手間とリスクを上回る」と自分の言葉で説明できるようになれば、社内の慎重論にも根拠を持って向き合えます。そのうえで、選定や契約の手間を下げる手段としてマッチングプラットフォームを検討すれば、直接発注のメリットを保ちながら、踏み出すハードルを下げられるはずです。
よくある質問
- 直接発注にすれば、必ず費用は安くなりますか?
必ず安くなるとは限りません。中間マージンは削減できますが、これまで元請けが担っていた選定・契約・進行管理の手間が発注者側に移ります。継続発注や要件が固まった案件では削減分が手間を上回りやすく、コストメリットを実感しやすくなります。
- 直接発注と従来の一括発注、どちらを選ぶべきか迷っています。判断のポイントは?
「要件が固まっているか」「継続発注の見込みがあるか」「社内に発注・進行管理を担える担当者がいるか」「コスト効率や直接のやり取りの優先度が高いか」の4点で点検してください。条件が揃うほど直接発注が向き、揃わないなら一括発注が無難です。
- 直接発注は請負契約と準委任契約のどちらにすべきですか?
仕様が固まった機能の完成・納品を求めるなら成果物責任を負う請負契約、運用改善や技術支援など業務の遂行を継続的に依頼するなら準委任契約が向きます。いずれも作業範囲・検収条件・知的財産権の帰属を契約書に明記してください。
- 直接発注で「偽装請負」にならないために、何に気をつければよいですか?
相手の作業手順・勤務時間・作業場所などを具体的に指揮命令しないことが基本です。要望や仕様は直接伝えてよいですが、達成すべき成果や期日・品質基準を示し、その実現方法は相手の裁量に委ねる形に保つことで偽装請負を避けられます。
- 特定の個人に直接発注すると、その人が抜けたときに困りませんか?
属人化のリスクは実在しますが、備えで緩和できます。ドキュメントを残してもらう、成果物やコードを都度自社のリポジトリに集約する、可能なら複数人のチームや交代要員のいるパートナーを選ぶ、といった取り決めを契約段階で盛り込んでおくと安心です。
- 直接発注の経験がなく、人材探しや契約の手間が不安です。負担を減らす方法は?
スキルや実績が可視化され、契約・支払いの事務を肩代わりしてくれるマッチングプラットフォームの活用が有効です。中間マージン削減と直接のやり取りというメリットを保ちつつ、選定・契約・支払いの手間だけを軽くでき、未経験でも踏み出しやすくなります。



