LLM でドラフトを量産できるようになった一方で、公開した文章が「AI が書いた感」で読者に見抜かれてしまう、という悩みを抱える方が増えています。前置きが長く、決まった言い回しを多用し、どこか他人事のように響く文章は、内容が正しくても読み飛ばされがちです。
この「AIっぽさ」を取り除くために、Claude Code 向けのスキルファイルや humanizer 系のリポジトリが次々と公開されています。ただ、選択肢が増えたぶん「どれを自分のプロジェクトに採用すればいいのか」が分かりにくくなりました。規則の細かさも対応プラットフォームも異なるため、名前だけでは違いが判断できません。
本記事で取り上げる「Stop Slop」(リポジトリ名 hardikpandya/stop-slop)は、その選択肢の一つです。AI が生成した文章特有の「らしさ」を取り除くためのスキルファイルで、GitHub で 7,000 を超えるスターを集めています。
本記事では、stop-slop が何をするものなのか、4 ファイルからなる仕組みと 8 つの執筆ルール、Claude Code などへの導入方法、そして類似 OSS との違いを解説します。最後に「どのような場面で向いているか・向かないか」まで整理し、自分のプロジェクトに採用すべきかを判断できるようにします。
stop-slopとは|AIっぽい文章を消すスキルファイル
stop-slop は、リポジトリの説明文(description)で「A skill file for removing AI tells from prose(散文から AI のクセを取り除くためのスキルファイル)」と定義されています(出典: hardikpandya/stop-slop(GitHub))。ポイントは「スキルファイル」という形態にあります。これは何かを計算したり変換したりする実行コードではなく、LLM(主に Claude)に与えるプロンプト規則集です。
リポジトリの言語表記が null であることからも分かるとおり、中身は Markdown が中心で、プログラムを動かすツールではありません。LLM に「こういう書き方は避けて、こう直しなさい」という指示を読み込ませることで、出力される文章から AIっぽさを減らす、という考え方です。
メンテナンス状況も採用判断では気になるところです。stop-slop は MIT ライセンスで公開されており、スター数は 7,042、フォーク数は 494 です。直近の更新(pushed_at)は 2026 年 3 月 17 日で、アーカイブ・フォーク・無効化のいずれのフラグも立っていません。個人開発者である Hardik Pandya 氏によるプロジェクトながら、一定の利用者を集め、更新も続いている状態だと読み取れます。
「AI tells(AIっぽさ)」とは何か
stop-slop が取り除こうとする「AI tells」とは、AI が生成した文章に現れがちな予測可能なパターンのことです。具体的には、本題に入る前の長い前置き、「一方で〜だが他方で〜」のような二項対比の多用、受動態の連発、em ダッシュ(—)への依存、どこか他人事のような遠景のナレーター視点などが挙げられます。
これらは一つひとつは間違いではありません。ただし積み重なると、読者に「機械が書いた文章だ」と感じさせ、内容を真剣に読んでもらえなくなります。stop-slop は、こうしたパターンを言語化して取り除くことを狙っています。
スキルファイルという形態
stop-slop は実行コードを持たないため、導入のハードルが低いという特徴があります。Claude Code のスキルとして読み込ませる、Claude Projects のナレッジに置く、あるいは API のシステムプロンプトに規則を組み込む、といった形で利用します(詳細はのちほど解説します)。
裏を返すと、stop-slop 単体では「この文章は何点か」を機械的に判定するわけではありません。あくまで LLM に判断を委ねる規則集である、という前提を理解しておくと、後述する類似 OSS との違いも掴みやすくなります。
stop-slopの仕組み|4ファイル構成と8つの執筆ルール
stop-slop は 4 つの Markdown ファイルで構成されています(出典: stop-slop/SKILL.md)。
| ファイル | 役割 |
|---|---|
SKILL.md | コア指示。8 カテゴリの執筆ルールと診断チェック、スコアリングを定義 |
references/phrases.md | 取り除くべき語彙・表現のリスト |
references/structures.md | 避けるべき構造パターンの一覧 |
references/examples.md | Before/After の変換例 |
中核となるのは SKILL.md で、ここに執筆ルールがまとまっています。3 つの reference ファイルは、禁止語彙・構造パターン・変換例という観点で SKILL.md を補完する位置づけです。LLM はこれらをまとめて参照しながら文章を直していきます。
8カテゴリの執筆ルール
SKILL.md の中心は、次の 8 つのカテゴリからなる執筆ルールです(出典: stop-slop/SKILL.md)。
| # | ルール | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | Cut filler phrases | 本題前の前置き・強調のクセ・余計な副詞を削る |
| 2 | Break formulaic structures | 二項対比・否定列挙・劇的な断片化・修辞的なお膳立てを避ける |
| 3 | Use active voice | すべての文を「人間の主語が何かをする」構造にし、受動態を避ける |
| 4 | Be specific | 曖昧な断定や「every / always / never」のような極端表現を排除する |
| 5 | Put the reader in the room | 遠景のナレーター視点をやめ、読者への直接の呼びかけ・具体描写に変える |
| 6 | Vary rhythm | 文の長短を混ぜ、3 つ並列より 2 つに絞り、em ダッシュを避ける |
| 7 | Trust readers | 事実を直接述べ、過度な和らげ・正当化・手取り足取りな説明を省く |
| 8 | Cut quotables | 引用句(pull-quote)のように響かせる作為的な文を書き直す |
カテゴリ数が 8 つに抑えられているため、初見でも全体像を把握しやすいのが stop-slop の特徴です。あれもこれもと細かく規定するのではなく、「前置きを削る」「能動態で書く」「具体的に書く」といった、書き手なら腹落ちしやすい原則に集約されています。
11問の診断チェックと5軸スコアリング
SKILL.md には、書いた文章を点検するための仕組みも含まれています。一つは 11 問の診断チェックで、副詞の多用・受動態・無生物主語・Wh 語での文の開始・前置き・二項対比・文長のパターン・em ダッシュ・曖昧な断定・ナレーターとの距離・接続のクセといった観点をセルフチェックします。
もう一つはスコアリングです。Directness(直接性)・Rhythm(リズム)・Trust(読者への信頼)・Authenticity(自然さ)・Density(密度)の 5 軸をそれぞれ 1〜10 点で評価し、合計が 35/50 を下回ると改稿が必要、という目安が示されています(出典: stop-slop/SKILL.md)。規則を提示するだけでなく、点検の基準まで用意している点が、執筆ガイドとしての完成度を高めています。
Before/Afterで見るstop-slopの変換例
ルールだけでは、実際にどのくらい文章が変わるのかイメージしづらいかもしれません。references/examples.md には、Before/After の変換例が収録されています(出典: stop-slop/references/examples.md)。ここでは英語の原文から、どのパターンが取り除かれているかを読み解いてみます。
前置きを削る例では、次のように変換されています。
Before: Here's the thing: building products is hard...
After: Building products is hard. Technology is manageable. People aren't.出典: stop-slop/references/examples.md
「Here's the thing:」という本題前の前置き(throat-clearing)が消え、いきなり結論から短い文で畳みかける形に変わっています。8 カテゴリの「Cut filler phrases」と「Vary rhythm」が効いている例です。
ジャーゴン(業界の決まり文句)を置き換える例も分かりやすいでしょう。
Before: In today's fast-paced landscape, we need to lean into discomfort...
After: Move faster. Your competition is.出典: stop-slop/references/examples.md
「In today's fast-paced landscape(今日の変化の速い環境では)」という、AI 生成文に頻出するもったいぶった枕詞が落とされ、具体的で短い命令文に置き換わっています。
このほか、「It turns out that...」「The uncomfortable truth is...」といったヘッジ(言い逃げ的な言い回し)の削除や、「What if I told you that...」のような修辞的なお膳立ての削除も例示されています。いずれも、抽象的なルールが実際の出力でどう作用するかを示すサンプルとして機能しています。なお、収録されている変換例は英語の散文(prose)が対象である点には留意が必要です。
stop-slopの導入方法|Claude Code・Projects・APIでの使い方
stop-slop の README では、4 つの導入アプローチが紹介されています(出典: hardikpandya/stop-slop(GitHub))。いずれもドキュメントに記載された方法をもとに整理したものです。
Claude Code にスキルとして追加
最もシンプルなのは、リポジトリのフォルダをそのまま Claude Code のスキルとして追加する方法です。SKILL.md と 3 つの reference ファイルを含むディレクトリを読み込ませることで、執筆時に stop-slop の規則が参照されるようになります。
Claude Projects・カスタム指示・APIでの利用
Claude Projects を使う場合は、SKILL.md と reference ファイルをプロジェクトナレッジにアップロードします。プロジェクト内のやり取りで規則が共有されるため、チームで同じ執筆基準を運用したいケースに向きます。
このほか、SKILL.md のコアルールをカスタム指示にコピーして使う方法、API 呼び出しのシステムプロンプトに SKILL.md を組み込み、reference ファイルを必要に応じて読み込ませる方法も案内されています。どの方法も「コードを動かす」のではなく「規則を LLM に読ませる」という点で共通しており、既存の Claude ベースのワークフローに組み込みやすい構成です。
類似OSSとの違い|humanizer・avoid-ai-writingとの比較
AIっぽさを取り除くスキルは stop-slop だけではありません。採用判断のためには、よく比較される 2 つのリポジトリとの違いを押さえておくと役立ちます。一つは blader/humanizer(約 21.5k スター)、もう一つは conorbronsdon/avoid-ai-writing です。
| リポジトリ | スター(概算) | 形態 | 対応プラットフォーム | 規則の粒度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| hardikpandya/stop-slop | 7.0k | Markdown スキル 4 ファイル | Claude Code / Projects / API | 8 カテゴリ + 5 軸スコア | シンプルで把握しやすい。英語の散文の質に特化 |
| blader/humanizer | 21.5k | Markdown スキル | Claude Code / OpenCode | 4 カテゴリ 30 パターン | Wikipedia「Signs of AI writing」準拠。2 パス監査・文体追従機能あり |
| conorbronsdon/avoid-ai-writing | 非公開 | Markdown スキル + Node.js 検出エンジン | Claude Code / Cursor / OpenClaw / Hermes / Copilot 等 多数 | 47+ tell・43 カテゴリ | 検出エンジンを同梱し移植性が高い |
違いを生む軸は、大きく 3 つに整理できます。
一つ目は規則の粒度です。stop-slop は 8 カテゴリと最もシンプルで、初見でも全体像を把握しやすい構成です。blader/humanizer は 30 パターン、avoid-ai-writing は 47 以上の AI tell と 43 カテゴリの判定を持ち、より網羅的に作られています。
二つ目は検出エンジン(コード)の有無です。stop-slop と blader/humanizer は純粋な Markdown のプロンプト規則で、判定は LLM に委ねます。一方 avoid-ai-writing は zero-dependency の Node.js 検出エンジンを同梱しており、コードベースで決定論的にパターンを検出できます。
三つ目は対応範囲です。stop-slop は Claude エコシステムを中心に据えてシンプルにまとめているのに対し、avoid-ai-writing は Cursor や Copilot をはじめ多数のエージェント・IDE に対応する移植性重視の設計です。blader/humanizer はその中間で、書き手の文体に合わせるボイスキャリブレーション機能を備えています。
stop-slopが向いているケース・向かないケース
以上を踏まえると、stop-slop が自分のプロジェクトに合うかどうかは、次のように判断できます。
向いているのは、次のようなケースです。
- Claude Code や Claude Projects を中心にドラフトを作成しており、Claude エコシステム内で完結させたい
- 規則が細かすぎると運用しきれないため、まずはシンプルで把握しやすい執筆ガイドから始めたい
- 英語の散文(ブログ・ドキュメントなど)の質を上げたい
- 5 軸スコアリングのような点検の目安を、執筆フローに取り入れたい
一方、次のようなケースでは別の選択肢を検討する余地があります。
- Cursor や Copilot など、多数の IDE・エージェントを横断して同じルールを使いたい場合は、移植性に優れた avoid-ai-writing が候補になります
- 書き手個人の文体に追従させたい場合は、ボイスキャリブレーション機能を持つ blader/humanizer が向きます
- コードによる決定論的な検出(CI に組み込むなど)を求める場合は、検出エンジンを同梱する avoid-ai-writing が適します
また、stop-slop の規則や変換例は英語の散文を前提にしている点には注意が必要です。日本語特有の「AIっぽさ」を厳密に除去したい場合は、ルールの考え方を参考にしつつ、日本語向けの調整を別途検討するとよいでしょう。
まとめ
stop-slop は、AI が生成した文章特有の「らしさ(AI tells)」を取り除くための、シンプルな規則ベースのスキルファイルです。4 つの Markdown ファイル、8 カテゴリの執筆ルール、11 問の診断チェックと 5 軸スコアリングという構成で、Claude Code・Claude Projects・API のいずれにも組み込めます。
スター数は 7,042、MIT ライセンス、直近の更新も 2026 年 3 月と、メンテナンス状況は健全に見えます。類似 OSS と比べると、規則が少なくシンプルで、Claude エコシステム中心・英語散文の質に特化している点が差別化軸です。網羅性や移植性、コードによる検出を重視するなら blader/humanizer や avoid-ai-writing が、シンプルさと把握しやすさを重視するなら stop-slop が、それぞれ候補になります。
導入を具体的に検討する際は、まず公式リポジトリの hardikpandya/stop-slop で SKILL.md の 8 カテゴリと変換例に目を通し、自分の執筆スタイルや既存ワークフローに合うかを確かめてみてください。



