開発会社から届いた提案書に「GraphQLを採用します」という記載を見て、「これはどんな技術なのか」「なぜ必要なのか」「追加のコストがかかるのか」と疑問を感じた経験はないでしょうか。
GraphQLは、近年のシステム開発で広く使われるようになったAPI技術の一つです。GitHubやShopifyなど、国内外の大手サービスが採用しており、スタートアップから大企業まで幅広いプロジェクトで利用されています。
しかし、技術の詳細を知らなければ、開発会社の提案が妥当かどうかを評価することは難しいものです。「なぜGraphQLにする必要があるのか」「REST APIのままではダメなのか」という疑問に答えられないまま、判断を迫られてしまうこともあります。
この記事では、GraphQLを非エンジニアにもわかりやすく解説します。REST APIとの違い、メリット・デメリット、どんなプロジェクトに向いているかを整理し、「外注プロジェクトでGraphQL採用を判断するための材料」を提供します。
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AI導入を検討しているが「何から始めればよいか分からない」中小企業の意思決定者に対し、導入プロジェクトの全体像を一気通貫で提示し、「自社でも着手できる」という確信と具体的な行動計画を持ってもらうこと。
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GraphQLとは?APIのクエリ言語をわかりやすく解説

GraphQLとは、APIに対してデータをリクエストするためのクエリ言語であり、その仕組みを定めたオープンソースの仕様です。2012年にMeta(旧Facebook)が社内向けに開発し、2015年にオープンソースとして公開されました(GraphQL Foundation - History)。
「クエリ言語」という言葉が難しく聞こえるかもしれませんが、要するに「必要なデータを指定してリクエストする方法」だと考えると理解しやすくなります。
APIとは?(GraphQLを理解するための前提知識)
APIとは「Application Programming Interface」の略で、異なるソフトウェア同士がデータをやり取りするための窓口です。
身近な例で説明すると、レストランで料理を注文するときに「メニュー」があります。お客さん(クライアント)はメニューから欲しいものを選び、ウェイター(API)に伝え、キッチン(サーバー)が料理を作って届けます。APIはこのウェイターの役割を果たします。
Webサービスやアプリでは、たとえば「ユーザー情報をデータベースから取得する」「決済処理を実行する」といった操作をAPIを通じて行います。
GraphQLの定義と特徴
GraphQLの最大の特徴は、「必要なデータを、必要な分だけ指定してリクエストできる」点です。
従来のREST APIでは、サーバーが「このエンドポイントではこのデータを返す」と決めていました。一方、GraphQLではクライアント(フロントエンド・アプリ)側が「これだけのデータが欲しい」と具体的に指定できます。
GraphQLが生まれた背景
Metaがモバイルアプリ(Facebook)を開発していた2012年頃、REST APIのある問題が顕在化しました。スマートフォンの普及により、PCとスマートフォンで必要なデータが異なるにもかかわらず、REST APIは同じデータを返してしまう。モバイル回線では不要なデータの通信が遅延に直結していたのです。
この課題を解決するために生まれたのがGraphQLです。クライアントが必要なデータを自由に指定できることで、通信の無駄を大幅に削減できるようになりました。
REST APIとGraphQLの違い

GraphQLをより深く理解するために、現在広く使われているREST APIと比較してみましょう。
REST APIとは(基本的な仕組み)
REST API(RESTful API)は、Webシステムにおいて最も普及しているAPIの設計方式です。各リソース(データの種類)ごとに専用のURL(エンドポイント)が用意されており、HTTPメソッド(GET/POST/PUT/DELETE)を使ってデータを操作します。
たとえば、ECサイトのAPIでは以下のようなエンドポイントが存在します。
GET /users/{id}:ユーザー情報を取得GET /orders/{id}:注文情報を取得GET /products/{id}:商品情報を取得
シンプルで理解しやすく、Webエンジニアの間で標準的な手法として長年使われてきました。
REST APIのよくある課題(オーバーフェッチとアンダーフェッチ)
REST APIにはいくつかの課題があります。その代表的なものが「オーバーフェッチ」と「アンダーフェッチ」です。
オーバーフェッチ(過剰取得)とは、必要以上のデータを取得してしまうことです。
たとえば、画面にユーザーの「名前」と「メールアドレス」だけを表示したい場合でも、REST APIのユーザー取得エンドポイントは「名前・メールアドレス・電話番号・住所・生年月日・登録日・最終ログイン日」といった全フィールドを返します。使わないデータも通信されるため、モバイル環境では通信量が増え、表示速度に影響します。
アンダーフェッチ(過小取得)とは、1回のリクエストでは必要なデータが揃わず、複数回のリクエストが必要になることです。
たとえば、ECサイトの注文履歴画面に「注文情報」「商品情報」「ユーザー情報」を表示したい場合、それぞれのエンドポイントを順番に呼び出す必要があります。これにより通信回数が増え、ページ表示が遅くなることがあります(N+1問題とも呼ばれます)。
GraphQLによる解決方法
GraphQLはこれらの問題を解決します。クライアントが「欲しいフィールドだけ」を指定したクエリを送ることで、サーバーはそのデータだけを返します。
先ほどの例で言えば、GraphQLでは「名前とメールアドレスだけ欲しい」というクエリを書くと、それだけが返ってきます。また、注文・商品・ユーザー情報も1つのクエリで一度に取得できます。
GraphQLは1つのエンドポイント(通常は /graphql)にすべてのリクエストを集約するため、エンドポイントが増えすぎてAPIが複雑になるという問題も解消されます。
GraphQLのメリット
GraphQL採用によって期待できる主なメリットは以下のとおりです。
必要なデータだけを取得できる(通信効率の向上)
クライアントが欲しいフィールドを指定するため、不要なデータの転送が発生しません。特にモバイルアプリでは通信量の削減・表示速度の向上に直結します。
1回のリクエストで複数リソースを取得できる
異なる種類のデータ(ユーザー・注文・商品)を1つのクエリでまとめて取得できます。REST APIで発生しがちな「複数リクエスト待ち」による遅延を防げます。
スキーマによる型定義で開発品質が上がる
GraphQLでは「スキーマ」と呼ばれるデータ型の定義を使います。フロントエンドとバックエンドが同じスキーマを参照することで、「APIの仕様をめぐる認識のズレ」が起きにくくなり、開発効率と品質が向上します。
フロントエンドとバックエンドの並行開発がしやすい
スキーマさえ定義されていれば、フロントエンドとバックエンドを並行して開発できます。開発スピードの向上につながります。
APIのバージョン管理が容易
REST APIでは新しいフィールドを追加するたびに新バージョンのエンドポイントを作ることがありますが、GraphQLではスキーマにフィールドを追加するだけで対応できます(後方互換を保ちやすい)。
GraphQLのデメリット・注意点
GraphQLにはメリットだけでなく、注意すべき点もあります。発注側がリスクとして把握しておくべき内容を整理します。
学習コスト・実装コストがかかる
GraphQLはREST APIと比べて学習コストが高い技術です。スキーマ設計・クエリ言語の習熟・セキュリティ設計など、エンジニアが習得すべき内容が多く、REST APIで動いているシステムをGraphQLに移行するには相応の工数が必要です。スモールチームや経験者が少ない環境では、導入にかかるコストが見合わない場合があります。
キャッシュの制御が複雑になる
REST APIはHTTPキャッシュ(ブラウザやCDNによるキャッシュ)と相性がよく、パフォーマンスを出しやすい設計が可能です。GraphQLはPOSTリクエストを使うため、標準的なHTTPキャッシュが使いにくく、独自のキャッシュ戦略が必要になります(メルカリエンジニアリング - GraphQLを導入する時に考えておいたほうが良いこと)。
セキュリティ設計に追加の考慮が必要
クライアントがクエリを自由に組み合わせられるため、意図せず大量データを取得するクエリや複雑なクエリが投げられると、サーバーに高負荷がかかることがあります(N+1問題・複雑クエリ問題)。これを防ぐための「クエリ深度制限」「レート制限」などの仕組みを実装する必要があります。
小規模・シンプルなAPIには過剰なケースがある
シンプルなCRUD操作(作成・読み取り・更新・削除)のみを扱う小規模なシステムでは、GraphQLを導入するメリットより、実装の複雑さやコストが上回る場合があります。
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AI導入を検討しているが「何から始めればよいか分からない」中小企業の意思決定者に対し、導入プロジェクトの全体像を一気通貫で提示し、「自社でも着手できる」という確信と具体的な行動計画を持ってもらうこと。
こんな方におすすめです
- AI導入を検討しているが、何から始めればよいか分からない
- ベンダーの選び方や費用感がつかめず、判断できない
- 社内でAI導入の稟議を通すための資料が必要
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GraphQLが向いているプロジェクト・向いていないプロジェクト

GraphQLを採用すべきかどうかは、プロジェクトの性質によって異なります。
GraphQL採用が向いているプロジェクトの特徴
以下のような状況ではGraphQLの導入を前向きに検討する価値があります。
- 複数クライアント(Web・スマホアプリ・外部連携)が1つのバックエンドにアクセスする: 各クライアントに必要なデータが異なる場合、GraphQLで柔軟に対応できます
- UI変更・機能追加が頻繁に発生するサービス: フロントエンドの変更だけで対応できるケースが増えます
- BFF(Backend for Frontend)構成でマイクロサービスを束ねたい: GraphQLは複数サービスのデータを1つのAPIにまとめるのが得意です
- モバイルアプリの通信効率を重視したい: スマートフォンアプリでの通信量削減に効果的です
- GitHub・Shopifyのように外部開発者向けにAPIを公開する: GraphQLはAPIの自己文書化・型定義が充実しており、外部向けAPIに適しています
実際にGraphQLを採用している国内サービスとして、リクルートの「スタディサプリ」が挙げられます。複数クライアント(Web・iOS・Android)へのデータ提供と、頻繁なUI変更への対応を理由にGraphQLを採用し、導入後の知見をカンファレンス(DroidKaigi 2024)や技術雑誌(Software Design 2024年9月号)で発信しています(スタディサプリ Product Team Blog)。
REST APIのままで十分なプロジェクトの特徴
一方、以下のような状況ではGraphQLの恩恵が少なく、REST APIで十分なケースが多いです。
- シンプルなCRUD操作のみを扱う管理システム・社内ツール: データ構造がシンプルであれば、REST APIのほうが開発コストが低い
- クライアントが1種類(Webのみ)で、データ要件が固定されている: 柔軟なクエリが不要であればGraphQLの優位性が薄まります
- 短期間のプロジェクト・MVP開発: GraphQLのスキーマ設計に時間をかける余裕がない場合
- リアルタイムデータ配信が主体(WebSocket/SSE中心): GraphQLは対応できますが、設計が複雑化します
採用前に確認すべきポイント(発注者目線のチェックリスト)
開発会社からGraphQL採用を提案された際は、以下の点を確認することをおすすめします。
- なぜGraphQLが必要か、具体的な理由があるか: 「複数クライアントへの対応」「通信効率の改善」など、プロジェクト固有の理由があるはずです
- 開発チームにGraphQLの経験者がいるか: 経験者がいない場合、学習コストが見積もりに含まれているか確認が必要です
- REST APIと比べて追加コストはどのくらいか: GraphQL採用による工数増加を事前に把握しておきましょう
- 既存システムとの連携に影響はないか: REST APIで構築された既存の機能・外部連携への影響を確認します
開発を外注する場合のGraphQL採用判断

開発会社にシステム開発を発注する際、GraphQL採用の提案を受けた場合の具体的な対処方法を解説します。
開発会社にGraphQL提案された際に確認すべきこと
「なぜGraphQLにするのか」を具体的に聞く
「最新技術だから」「流行っているから」という理由では不十分です。「複数のデバイス(Web・スマホアプリ)で異なるデータが必要になるから」「REST APIだと○○の機能が実装しにくいから」など、プロジェクト固有の理由があるはずです。明確な理由が説明できる開発会社は技術選定の判断ができていると言えます。
GraphQL経験者が開発チームにいるかを確認する
GraphQLは経験者がいると大きく開発効率が変わります。未経験者だけのチームでGraphQLを採用すると、学習コストが見積もり外で発生するリスクがあります。「過去にGraphQLを使ったプロジェクトの実績はありますか?」と質問してみましょう。
REST APIとの比較見積もりを依頼する
可能であれば、REST APIで構築した場合とGraphQLで構築した場合の双方の見積もりを依頼し、費用・期間・メリットを比較します。
GraphQL対応のコスト・期間への影響
GraphQL採用による追加コストは、プロジェクトの規模や開発チームのスキルによって大きく異なります。
一般的な目安として、GraphQL経験者がいる場合は初期の設計コストがやや増加(全体工数の5〜15%程度)しますが、機能追加・変更時のコストは下がる傾向があります。一方、チーム全体がGraphQL未経験の場合は学習期間(1〜2週間程度)が追加で発生することがあります。
重要なのは、「GraphQL採用が長期的な保守コスト削減につながるか」をプロジェクトの規模・期間・今後の機能追加計画も含めて判断することです。
GraphQLの導入事例
GraphQLは国内外の大手サービスで広く採用されています。主な事例を紹介します。
GitHub GitHubはREST APIに加え、GraphQL APIを公開しています。外部開発者がGitHubのデータに柔軟にアクセスできるよう、2016年からGraphQLを採用しています(GitHub GraphQL API)。
Shopify ECプラットフォームのShopifyは、店舗オーナーや外部アプリ開発者向けにGraphQL APIを提供しています。商品・注文・顧客などのデータを柔軟に取得できるため、多様なインテグレーションに対応しています。
スタディサプリ(リクルート) 国内の代表的な事例として、リクルートのオンライン学習サービス「スタディサプリ」があります。Web・iOS・Androidの複数クライアントに対して効率的なデータ提供を実現するために採用。DroidKaigi 2024やSoftware Design誌で実践知見を共有するなど、GraphQLの活用を積極的に推進しています。
まとめ
この記事では、GraphQLについて非エンジニアにもわかりやすく解説しました。重要なポイントをまとめます。
- GraphQLとは: APIのクエリ言語。クライアントが必要なデータを指定して取得できる仕組み(Meta開発・2015年OSS化)
- REST APIとの違い: REST APIは固定されたエンドポイントでデータを返すが、GraphQLはクライアントが欲しいデータを柔軟に指定できる
- メリット: 通信効率の向上・単一リクエストでのデータ取得・開発品質の向上・フロントとバックの並行開発
- デメリット: 学習コスト・キャッシュ制御の複雑化・セキュリティ設計の追加考慮
- 向いているプロジェクト: 複数クライアント対応・UI変更が頻繁・マイクロサービス環境
- 向いていないプロジェクト: シンプルなCRUD・短期MVP・クライアントが1種類で固定
開発会社からGraphQL採用の提案を受けた際は、「なぜGraphQLが必要か」「経験者がいるか」「追加コストはどのくらいか」を確認することが重要です。技術の詳細を完全に理解する必要はありませんが、提案の妥当性を評価できるだけの基礎知識を持つことで、開発会社との対話がよりスムーズになります。
システム開発の技術選定でお悩みの方は、秋霜堂株式会社にご相談ください。GraphQLを含むモダンな技術スタックの選定から実装まで、プロジェクトに最適な提案を行います。
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