「正社員エンジニアを採用しないのですか?」——シード期からシリーズA期のスタートアップ創業者・CTOであれば、投資家との面談や経営会議でこの問いを一度は受けたことがあるはずです。フリーランスや複業エンジニア中心の開発体制で進めることが直感的には正しいと感じているものの、いざ説明を求められると論拠が言語化できず、口ごもってしまう。そんな経験を持つ方は少なくありません。
実際のところ、スタートアップが正社員エンジニアを「採れないから」ではなく「戦略的に採らない」と選択することには、複数の合理的な理由があります。バーンレート、必要スキルの変化、MVP(最小実用プロダクト)の機会損失、ピボット時の柔軟性、解雇規制——これらはいずれもスタートアップ固有の経営環境に強く紐づいた論拠です。にもかかわらず、これらを体系的に整理した記事は意外なほど少なく、創業者は自力で論拠を組み立てなければなりません。
本記事では、スタートアップが正社員エンジニアを採らない5つの理由を、資金調達ラウンド別の体制設計と組み合わせて整理します。あわせて、投資家・共同創業者にこの経営判断をどう説明するか、3つの軸での論拠も提示します。記事末尾では、本文の論拠をそのまま経営会議・稟議に持ち込めるよう、ROI試算と稟議書テンプレートをまとめたお役立ち資料を案内します。
スタートアップが正社員エンジニアを採用しない経営判断の輪郭

まずおさえておきたいのは、「正社員エンジニアを採らない」という判断は、決して採用市場の弱者としての消極的選択ではないという点です。エンジニア採用市場が逼迫していることは事実ですが、それを主要な理由として位置づけてしまうと、「採用に成功した競合に追い抜かれるのではないか」という反論を招き、投資家・共同創業者を納得させることが難しくなります。
本記事が提示するフレームはその逆です。スタートアップという事業形態が固有に抱えるバーンレート(毎月の資金燃焼速度)、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)模索プロセス、ピボット可能性、エクイティ(株式)の希薄化リスク——これらの条件を前提に置くと、正社員エンジニアを採らないことが積極的な経営戦略として浮かび上がります。「採れないから仕方なく」ではなく、「採らないからこそ事業確度が上がる」というフレーム転換です。
以降の章では、5つの理由 → フリーランス活用が構造的に合致する理由 → 資金調達ラウンド別の体制設計 → 投資家・共同創業者への説明軸 → 採用への切り替え判断 → 運用上の注意点、という順で論拠を整理します。経営会議の資料や稟議書の参考材料として、必要な章だけを切り出して使える構造になっています。
スタートアップが正社員エンジニアを採用しない5つの理由

ここからは、その5つの理由を順に整理します。これらはどれも「採用市場の状況」ではなく「スタートアップという事業形態に内在する条件」から導かれる論拠です。
理由1|固定費がバーンレートを圧迫しランウェイを縮める
正社員エンジニアの雇用は固定費の積み上がりをもたらし、毎月のバーンレートを上昇させ、ランウェイ(資金が尽きるまでの月数)を縮めます。
具体的に試算してみます。年収700万円のエンジニアを1名正社員として雇用した場合、会社負担の社会保険料は給与額面のおおよそ15〜16%が目安です(マネーフォワード クラウド給与)。さらに採用コスト(エンジニア中途の平均は80〜120万円、ワンキャリア)、入社後3ヶ月のオンボーディング期間の生産性ロスを加えると、年間で1,000万円を超える固定支出となります。
スタートアップのシードラウンドの平均資金調達額は1.1億円・中央値は4,000万円というデータがあり(グローブ税理士事務所 2024年上半期)、ランウェイは12〜24ヶ月が目安とされています(Coral Capital)。この前提では、正社員エンジニア1名の採用は調達資金の10〜20%を1年間で消費する判断ということになります。フリーランスは月単位で稼働量を調整できますが、正社員はそれができません。事業の不確実性が高い段階で固定費を抱え込むことは、ランウェイの自由度を直接削る選択です。
社会保険料を含めた正社員とフリーランスのコスト構造の違いは、別記事フリーランスと正社員のコスト比較で詳細に整理しています。
理由2|必要スキルがフェーズ移行ごとに変わる
スタートアップの開発フェーズは、MVP構築 → PMF模索 → スケールという3段階で進行し、それぞれで必要なエンジニアリングスキルは大きく異なります。MVP構築では基本機能の素早い実装が、PMF模索ではデータ基盤・計測設計・LTV/CAC分析が、スケールではSRE・インフラ自動化・セキュリティが中心になります。
この変化は連続的ではなく、ある時点で「いままで必要だったスキル」が一気に不要になり、「次のフェーズで必要なスキル」が突然必要になるという、断続的な変化です。正社員1名の採用は、その人材のキャリアの継続性を会社が保証することを意味します。MVPフェーズでフロントエンドエンジニアを採用しても、PMF模索フェーズで必要なのがデータ基盤のスキルであれば、本人のキャリアパスと会社の必要スキルが衝突します。教育投資による再スキル化には時間がかかり、その間バーンレートは消費され続けます。フリーランス・複業エンジニアであれば、フェーズが変わったタイミングで必要スキルを持つ人材に入れ替えられます。
理由3|採用リードタイムでMVPの機会損失が膨らむ
エンジニア中途採用の選考期間は2週間〜1ヶ月、内定承諾から入社までさらに平均38日かかります(マンパワーグループ)。母集団形成・スクリーニング・面接・条件交渉まで含めると、実務的な採用リードタイムは3〜6ヶ月が珍しくなく、優秀層を狙う場合は14ヶ月かかった事例も報告されています(LAPRAS HR TECH LAB)。
スタートアップのMVP開発サイクルは、本来「仮説立案 → 実装 → リリース → 計測 → 学習 → 次の仮説」を2〜4週間で回すことが期待されます。採用リードタイム3〜6ヶ月という時間軸は、このサイクルを6〜12周分先送りすることを意味します。フリーランス・複業エンジニアであれば最短で1〜2週間で稼働開始できるケースが多く、即時の戦力化が可能です。MVP開発フェーズの本質は仮説検証のサイクル数の最大化にあり、採用リードタイムによる機会損失は事業確度に直接影響します。
理由4|ピボット時の固定費が経営判断の柔軟性を奪う
スタートアップは、PMFに到達できなかった場合に事業ドメインを大きく変更する「ピボット」を行うことがあります。ピボットは経営者の意思決定の質よりも、事業の不確実性そのものに由来する構造的事象です。
ピボット時、正社員エンジニアを抱えていると2つの問題が発生します。第一に、ピボット先で必要なスキルセットが採用時の想定と乖離します。第二に、後述する解雇規制下で雇用継続義務が経営判断の障害になります。フリーランスとの業務委託契約は、契約終了によって体制を再編できます。ピボット可能性のある事業段階で、この柔軟性は経営判断の自由度として極めて大きな価値を持ちます。
理由5|解雇規制と退職金リスクがエクイティの希薄化を加速する
日本の解雇規制は、整理解雇の4要件(人員削減の必要性/解雇回避努力/人選の合理性/手続きの妥当性)によって厳格に運用されています(厚生労働省 労働契約の終了に関するルール)。スタートアップであっても業績悪化を理由とした正社員の解雇は容易ではなく、実務的には希望退職パッケージ(割増退職金)の提示が必要になるケースがほとんどです。
希望退職パッケージは、退職する社員1人あたり月給の数ヶ月〜1年分の上乗せ支給が一般的です。年収700万円のエンジニアを1名整理する場合、200〜400万円の追加キャッシュアウトが発生し得ます。スタートアップにとってこのキャッシュアウトはエクイティ(株式)の追加調達によって賄わざるを得ないケースが多く、株主構成の希薄化を加速させます。一方、フリーランスとの業務委託契約は契約終了時のコストが原則ゼロです。撤退コストの低さは、事業の不確実性が高いスタートアップにおいて経営判断の選択肢を広げる重要な要素です。
フリーランス・複業エンジニア活用がスタートアップに合う構造的理由

ここまで「採らない」5つの理由を整理してきました。次に、その鏡像として「フリーランス・複業エンジニア活用」がスタートアップに構造的に合致する理由を整理します。「採らない」の対をなす論拠として、投資家・共同創業者への説明資料に組み込むと、経営判断の合理性をより強固に示すことができます。
固定費から変動費へ|資金調達ラウンドと整合する支出構造
フリーランス・複業エンジニアとの契約は、月単位で稼働量を調整できる変動費型の支出構造を持ちます。ランウェイが残り12ヶ月を切ったとき、正社員エンジニアの人件費は事実上削減できませんが、フリーランス契約であれば稼働日数を半減させる、または契約を一時停止することで、即時にバーンレートを圧縮できます。逆に、調達直後で資金が潤沢な期間には稼働を厚くして開発を加速できます。資金量と開発量のレバレッジを、ラウンドごとの実情に合わせて柔軟に調整できる点が変動費構造の強みです。
スキルセットを案件単位で組み替えられる|フェーズ非依存の体制
理由2で触れた「フェーズごとに必要スキルが断続的に変わる」という課題に対し、フリーランス・複業エンジニアの活用は構造的な解を提供します。MVP構築フェーズではフロントエンド/モバイル経験の豊富なエンジニアと契約し、PMF模索フェーズに入ったらデータエンジニア・SREの経験を持つエンジニアに切り替える——このような組み換えが、契約終了と新規契約の組み合わせで実現できます。教育投資による再スキル化を待つ必要がなく、その時点のフェーズに最適なスキルセットを即時に揃えられます。
複業エンジニア(週2〜3日)特化のスタートアップ活用論
特にスタートアップにとって有効なのが、複業エンジニア(週2〜3日稼働の副業エンジニア)の活用です。典型像は、大企業や成長企業に正社員として在籍しながら副業を行うシニアエンジニアです。10年以上のキャリアを持ち、本業で大規模システムや高負荷サービスの経験を積んでいるケースが多く、正社員として採用しようとすれば年収1,500万円以上のクラスに該当します。月額単価は概ね40〜80万円程度で、正社員1名分の年間固定費(採用費・社保込みで900〜1,200万円)と比較すると、コスト効率と経験値で優位です。同コストで2〜3名の複業エンジニアと契約することも可能で、複数のシニアによるレビュー・ペアプロが機能する品質面の利点もあります。
中小企業を主な対象とした記事ですが、複業エンジニア活用の実務ナレッジ(PMロール・スコープ管理・ナレッジ蓄積の仕組み)はスタートアップにもそのまま応用できます。詳細は複業エンジニアでの体制構築を参照してください。
資金調達フェーズ別の推奨開発体制

「採らない」判断は全期間維持するものではなく、ラウンドの進行に合わせて採用判断の境界線が変化します。シード期・シリーズA期・シリーズB以降の3つのフェーズで、推奨される体制と判断基準を整理します。
シード期|MVP構築フェーズの体制設計
シード期は、プロダクトのMVPを構築し、初期仮説の検証を行う段階です。シードラウンドの調達額は3,000万円〜1.5億円、ランウェイは12〜24ヶ月が目安です(StartupList)。
推奨体制は明確です。正社員はCTO・共同創業者などビジョン共有・意思決定の継続性が必要な役割に限定し、プロダクト開発は複業・フリーランスで賄います。採用活動には原則着手しません。採用リードタイムによる機会損失とバーンレートの圧迫が大きすぎるためです。シード期は事業の不確実性が最も高くピボット可能性も最も高い段階であり、この時期に正社員エンジニアの採用に踏み切るのは時期尚早です。
シリーズA|PMF模索フェーズの体制設計
シリーズAでは2〜5億円の調達が一般的で、PMFの確証を得て初期の事業拡大に着手するフェーズです。1人目の正社員エンジニア採用を検討する境界線になり得る段階ですが、次の3条件を満たした場合に限ります。
- PMF確度が一定水準を超えている(売上の継続成長、解約率の低位安定など複数指標で確認できる)
- 採用ポジションが2年以上の継続性を持つ(ピボットを経ても継続的に必要であることが見込まれる)
- 複業エンジニアでは代替不能な領域である(機密性や深い業務知識の社内蓄積が必要など、外部委託の構造的限界がある)
この3条件を満たさない場合、シリーズAでもフリーランス・複業エンジニア中心の体制を維持することが合理的です。「シリーズA = 採用開始」という機械的判断ではなく、PMF状況とポジションの継続性を個別に評価することが重要です。
シリーズB以降|スケールフェーズへの移行
シリーズB以降は、確立したPMFを前提に事業をスケールさせるフェーズです。SRE・データ基盤・セキュリティ・コアプロダクトのアーキテクチャ責任者など、継続性と社内ナレッジ蓄積が事業競争力に直結する領域は、正社員採用の優先度が高まります。一方、新規事業探索や新機能の実験的開発については、シリーズB以降であってもフリーランス・複業エンジニアによる体制が依然として合理的です。
「採らない判断」を投資家・共同創業者にどう説明するか

ここからが本記事の核心セクションです。これまで整理してきた論拠を、3つの軸——バーンレート軸/スピード軸/撤退コスト軸——で体系化することで、経営会議や稟議書にそのまま転用できる形にまとめます。
バーンレート軸の論拠|キャッシュアウトの最適化
第一の軸は、バーンレートとランウェイへの影響を定量的に示すことです。正社員エンジニア1名(年収700万円)の年間総コストは、給与700万円+会社負担社会保険料約105万円+採用費80〜120万円+オンボーディング期間の生産性ロス(3ヶ月分の人件費 約175万円相当)を合計すると、おおよそ1,060〜1,100万円です。
これに対し、複業エンジニア(週2日稼働、月額50万円)を1名活用する場合、年間コストは概ね600万円。同レベルのシニアエンジニアであれば本業での経験値が高く、オンボーディングコストは大幅に圧縮されます。この比較は単純な金額比較ではなく、「同じ予算で正社員1名と複業2〜3名のどちらが事業確度を高めるか」という議論に持ち込むことができます。投資家にとって関心があるのはROI(投資収益率)であり、人数ではなく事業推進力です。
経営判断フレームワークの補完として、別記事エンジニア不足をフリーランス活用で解消する判断軸も参考になります。
スピード軸の論拠|MVP・PMFまでの時間価値
第二の軸は、時間価値の観点です。スタートアップの企業価値(時価総額)はPMF到達までの時間によって大きく変動します。同じビジネスモデルでも、PMFに6ヶ月で到達した会社と18ヶ月かかった会社では、その後の調達条件・希薄化率・採用力に決定的な差が生まれます。
採用リードタイム3〜6ヶ月分の時間損失は、MVP仮説検証サイクル6〜12周分の機会損失に相当します。投資家・共同創業者への説明としては、「正社員採用に時間を投じることで、現在の手元資金で実行できる仮説検証回数が確実に減少する」という形で提示します。これは採用判断を「コスト」ではなく「時間価値の機会損失」として再定義するフレームです。
撤退コスト軸の論拠|ピボット耐性の確保
第三の軸は、ピボット可能性を前提とした撤退コストの議論です。正社員エンジニアを抱えている場合、ピボットに伴う体制再編には希望退職パッケージ(年収の30〜50%相当の追加キャッシュアウト)が必要です。フリーランス・複業エンジニアとの業務委託契約は契約終了時のコストが原則ゼロ。この差は、ピボットという経営判断を「実行可能な選択肢」として保持できるかどうかの境界線です。
投資家への説明としては、「正社員採用は将来のピボット選択肢を狭める」「現段階での意思決定の柔軟性を最大化する選択として、業務委託中心の体制を維持する」という論理構成が有効です。事業確度を高める守りの論拠であると同時に、エクイティ希薄化を抑制する攻めの論拠でもあります。
正社員採用を始める判断タイミング
本記事は「正社員エンジニアを採用すべきではない」と一方的に主張するものではありません。スタートアップの成熟度に応じて、正社員採用に切り替えるべきタイミングは確実に存在します。
採用を検討すべきポジション・タイミングの目安
採用を検討するタイミングは、次の3条件のいずれかが揃った時です。第一にPMFが達成され事業の不確実性が大幅に下がったとき。第二に2年以上継続するコア領域(SRE、データ基盤、コアアーキテクチャ責任者など、社内ナレッジ蓄積が事業競争力に直結する領域)の場合。第三に機密性・知財管理上、外部委託に構造的限界がある場合(特許出願前の重要技術、機密性の高い顧客データを扱う領域など)。
これら3条件のいずれにも当てはまらないポジションについては、シリーズB以降であってもフリーランス・複業エンジニア中心の体制を継続することが合理的です。
フリーランスから正社員化する選択肢
正社員採用に踏み切る際、最初から外部採用するよりも、すでに業務委託として一定期間関わっているフリーランス・複業エンジニアの中から正社員化を打診するアプローチが、リスクの低い選択肢になります。業務委託期間中にスキル・働き方・カルチャーフィット・コミュニケーションスタイルが相互に確認できているため、ミスマッチによる早期離職のリスクが大幅に低下します。スカウト型の中途採用と比較すると、採用リードタイム・採用費・オンボーディングコストのすべてが圧縮されます。
フリーランスエンジニア活用で失敗しない3つの注意点
フリーランス・複業エンジニア中心の体制には、運用上の注意点もあります。投資家・共同創業者から「リスクは何か」と問われた際に備え、リスク管理の観点もあわせて整理します。
スコープ管理とPMロールの確保
最も多い失敗は、スコープ管理の不在です。「とりあえず開発をお願いする」という曖昧な依頼方法では、成果物の品質・納期・コミュニケーションコストが期待値からずれます。社内にプロダクトマネージャーまたはテックリードロールを確保し、要件定義・優先順位付け・進捗管理・品質確認のサイクルを回せる体制を作ることが必須です。創業者・CTOがこのロールを兼務するケースが多いですが、創業者の時間が逼迫している場合は、PMロールを担う複業人材を別途確保する選択肢もあります。
ナレッジ蓄積の仕組み化
フリーランス・複業エンジニアは契約終了後に社内を離れます。その時点で開発ナレッジが個人に閉じていると、属人化の解消ができず、新たな委託先・正社員へのオンボーディングコストが膨らみます。対策はドキュメント化とコードレビューの仕組み化です。アーキテクチャ・設計判断はDesign Doc(設計文書)として残し、READMEと運用手順書を新規参画者が自走できる粒度まで整備し、すべてのコード変更はプルリクエストとコードレビューを通します。
機密保持・知財管理の契約設計
フリーランス・複業エンジニアとの契約には、機密保持契約(NDA)と知的財産権の帰属について明確な条項を含めることが必須です。コア技術や事業アイデアそのものが競争優位の源泉となるスタートアップでは、契約設計の不備は致命的なリスクになります。機密保持義務、成果物の著作権・特許権の会社帰属、競業避止義務の範囲と期間、副業の場合の本業企業との競業関係の事前確認——これらを契約書テンプレートとして準備しておくと、新規契約のたびの交渉コストを削減できます。
まとめ|「採らない判断」を経営の武器にする
スタートアップが正社員エンジニアを採らない判断には、(1)固定費がバーンレートを圧迫しランウェイを縮める、(2)必要スキルがフェーズ移行ごとに変わる、(3)採用リードタイムでMVPの機会損失が膨らむ、(4)ピボット時の固定費が経営判断の柔軟性を奪う、(5)解雇規制と退職金リスクがエクイティの希薄化を加速する、という5つの理由があります。
これらはいずれもスタートアップという事業形態に内在する条件から導かれる論拠です。「採用市場の弱者だから採れない」のではなく、「採らないからこそ事業確度が上がる」という能動的経営判断として、投資家・共同創業者に提示することができます。シード期からシリーズA初期はフリーランス・複業エンジニア中心の体制でランウェイとピボット耐性を最大化し、PMF達成後・シリーズB以降に継続性が高くコア競争力に直結する領域から段階的に正社員採用に移行していく——このフェーズ別の体制設計が、スタートアップにおける合理的なエンジニアリング組織戦略です。
ここまで整理してきた5つの理由・フェーズ別の体制設計・投資家への説明論拠を、実際の経営会議や稟議書に落とし込む際の試算フォーマットと文書テンプレートを、お役立ち資料『外部エンジニア活用のROI・コスト試算ガイド(稟議書テンプレート付き)』にまとめています。正社員雇用とフリーランス・複業エンジニア活用の年間総コスト試算シート、ランウェイへの影響シミュレーション、経営会議で使える稟議書テンプレート(決裁者向け要約・3つの説明軸別の論拠ブロック)が含まれており、本記事の論拠をそのまま社内資料化する際の具体的なフォーマットとしてご活用いただけます。



