「新しいシステム開発プロジェクトを任されたが、社内に開発できるエンジニアがいない」という状況は、多くの企業の担当者が直面している現実です。外注すべきなのか、採用すべきなのか、そもそもどんな技術が必要なのかも分からないまま進めることへの不安は少なくありません。
技術に詳しくない発注担当者が悩むのは、「何のスキルが必要か」「どこから調達すればいいか」「技術は何を選べばいいか」という3つの問いが、同時に答えが出ない状態で重なって出てくるからです。
本記事では、この3つの問いにステップ順で答えるための意思決定フレームを紹介します。外部エンジニアを活用して開発を進めたいと考えている発注担当者が、自信を持って次のアクションを取れるようになることを目的としています。
調達先の契約形態(SES・派遣・業務委託の違い)については別記事で詳しく解説していますので、本記事ではまず「何をどこから調達するか決めるプロセス」に集中して説明します。
社内スキルが不足しているとき、なぜ意思決定が難しいのか
「何が足りないか」が分からないと先に進めない
外部エンジニアの活用を検討する段階で、多くの発注担当者が最初にぶつかるのは「何のスキルが必要かが分からない」という壁です。
「Webシステムを作りたい」という目標はあっても、「フロントエンドエンジニアが必要なのか」「バックエンドも必要なのか」「インフラはどうするのか」といった具体的なスキル要件を言語化できないケースが多くあります。
この曖昧さが放置されたまま外注や採用が進むと、「発注してみたら思っていたものと違う」「採用した人のスキルがプロジェクトと合っていなかった」という失敗につながります。
技術選定と外部調達は連動して考える必要がある
もう一つの落とし穴は、「どの技術を使うか」と「どこから調達するか」を別々に考えてしまうことです。
たとえば、「最新の技術を使いたい」という理由だけで希少なプログラミング言語を選定した場合、それに対応できるエンジニアが市場に少なく、調達コストが大幅に高くなることがあります。逆に、開発会社が得意とする技術スタックに合わせることで、スムーズに開発が進むケースも多くあります。
技術選定と外部調達は、同時に考えることで最適解が見えてきます。
ステップ1: まず「何のスキルが必要か」を整理する
必要スキルの洗い出し方(技術に詳しくなくてもできる)
技術知識がない発注担当者でも、プロジェクトのアウトプットから逆算してスキル要件を整理することができます。
まず、「何を作りたいか」を明確にしましょう。社内業務の管理システムなのか、顧客向けのWebアプリなのか、スマートフォンアプリなのかによって、必要な技術領域が変わります。
次に、作りたいものをざっくりとしたカテゴリに分解します。たとえば「Webアプリを作りたい」であれば、以下のような構成が必要になります。
- フロントエンド: ユーザーが直接操作する画面部分(見た目・操作感)
- バックエンド: データの処理・ロジック部分(見えない部分)
- データベース: データの保存・管理
- インフラ: システムを動かすサーバー・クラウド環境
このカテゴリレベルで整理できれば、「どの領域に外部エンジニアが必要か」を発注先に伝えることができます。技術の詳細は、この段階では分からなくても構いません。
専門的に技術要件を整理したい場合は、技術選定から相談に乗ってくれる開発会社に初期相談することも有効です。
社内にある能力と不足している能力を分ける
次に、社内で対応できる部分と外部に依頼する部分を切り分けます。
「要件定義(何を作るかの整理)は社内担当者でできる」「設計・実装は外部エンジニアに依頼する」「テストや検収は社内で行う」というように、役割を明確にすることで、外部調達が必要なスコープが具体化されます。
社内のリソースと外部調達を組み合わせることで、コストを抑えながら必要なスキルを確保することが可能です。
ステップ2: 調達チャネルを選ぶ

必要なスキルと社内の役割分担が整理できたら、次はどこから調達するかを決めます。主な調達チャネルは3つです。
フリーランスエンジニア・SES・開発会社:3つのチャネルの使い分け
調達方法 | 向いているケース | 費用の目安 | 管理負担 |
|---|---|---|---|
フリーランスエンジニア | 特定スキルを短期間必要な場合 | 時間単価制・月単位 | 発注者側で指揮命令が必要 |
SES(システムエンジニアリングサービス) | 一定期間、チームの一員として稼働が必要な場合 | 月単価制 | 発注者側で指揮命令が必要 |
開発会社(受託開発) | 成果物として納品してほしい場合 | プロジェクト単位 | 開発会社が管理。発注者は要件と確認を担当 |
フリーランスエンジニアやSESは、「このスキルを持つ人を一定期間確保したい」という場合に向いています。一方、「動くシステムを期日までに納品してほしい」という場合は、開発会社への受託発注が向いています。
選択時のチェックポイント3つ
調達チャネルを決める際は、次の3つを確認しましょう。
1. プロジェクト期間(短期か長期か)
1〜3ヶ月の短期スポット対応ならフリーランスが柔軟です。6ヶ月以上の中長期プロジェクトなら、SESや開発会社との継続契約が安定します。
2. 社内での管理負担(指揮命令が必要か)
フリーランスやSESを活用する場合、社内の担当者がタスクの指示や進捗管理を行う必要があります。社内にその役割を担える人材がいない場合は、プロジェクト管理まで含めて対応してくれる開発会社を選ぶほうがスムーズです。
3. 予算の柔軟性(月次変動か定額か)
稼働量に応じた月次精算が良い場合はフリーランス・SES、総額を固定したい場合は受託開発が向いています。
各調達方法の契約形態(SES・派遣・業務委託・請負の違いや法的な注意点)については、「SES・派遣・業務委託の違いとは?発注者が知るべき調達方法の選び方」で詳しく解説しています。
ステップ3: 技術選定と外部調達を連動させる

調達しやすい技術スタックを意識する
技術選定を行う際は、「その技術に対応できるエンジニアが調達しやすいか」を考慮することが重要です。
普及率の高い技術スタック(例: フロントエンドならNext.js・React、バックエンドならNode.js・Python、インフラならAWS)は、フリーランス・SES市場に人材が多く、比較的調達しやすい傾向があります。
一方で、特定の業界でしか使われないニッチな技術や、新しすぎてエンジニアが少ない技術を選定した場合は、採用・発注コストが高騰するリスクがあります。
「最先端の技術を使いたい」という希望は理解できますが、調達のしやすさもスコアリングに加えることで、プロジェクト全体がスムーズに進みます。
開発会社に技術選定を相談するという選択肢
技術選定の段階から専門家に相談できる開発会社も存在します。
たとえば秋霜堂株式会社のTechBandは、「何を作れば良いか」「どの技術を選べば良いか」という構想段階から伴走し、技術選定・要件定義・実装まで一貫して対応しています。技術に詳しくない発注担当者でも、プロジェクトの目的を伝えるだけで、最適な技術スタックと調達方針を提案してもらえます。
「自社でゼロから技術要件を整理するのが難しい」と感じる場合は、こうした伴走型のサービスを活用することも一つの選択肢です。
外部エンジニアを活用し始めたら意識すること
スキル移転と依存リスクの管理
外部エンジニアを活用する上で見落とされがちなのが、「ノウハウの社内蓄積」です。
外部エンジニアが担う技術的な知見やドキュメントが社内に残らないと、契約終了後に「次の開発を頼む先が分からない」「システムのことを誰も分からない」という状況になりかねません。
開発期間中から、以下のような情報を社内に残す仕組みを作っておくことが重要です。
- システムの設計書・仕様書
- 開発環境のセットアップ手順
- 運用・保守に必要なドキュメント
段階的に社内でも理解できる状態を作っていくことが、外部依存リスクを下げるポイントです。
発注担当者がプロジェクトに関与し続けることの重要性
外注したからといって「あとはお任せ」では、プロジェクトは失敗しやすくなります。
要件の変更や優先度の見直しは、プロジェクトの進行中に必ず発生します。そのたびに意思決定できる担当者が社内にいることで、スムーズにプロジェクトを進めることができます。
週次での進捗確認、成果物の確認、疑問点のやり取りといった関与を続けることが、外部エンジニアを上手く活用するための基本姿勢です。
まとめ
社内にエンジニアがいない状態でシステム開発を進める際は、次の3ステップで考えることで迷いを減らすことができます。
- スキル要件の整理: プロジェクトのアウトプットから必要な技術領域を洗い出し、社内と外部の役割を切り分ける
- 調達チャネルの選択: フリーランス・SES・開発会社の特性を理解し、期間・管理負担・予算の柔軟性で選ぶ
- 技術選定と調達の連動: 調達しやすい技術スタックを意識しながら技術を選定する
このプロセスを踏むことで、技術知識が少ない発注担当者でも、外部エンジニアを活用した開発プロジェクトを自信を持って進めることができます。
外部エンジニア活用をさらに戦略的に進めたい方には、「外部エンジニア活用の戦略立案ガイド(DX推進・内製化ハイブリッド戦略)」をご活用ください。自社の技術戦略における外部人材の位置づけを明確にし、具体的な活用計画を立てるための資料です。



