システム開発が失敗する原因とは?フェーズ別に解説する防止策と発注側のチェックポイント

システム開発を外部に発注したものの、「完成したシステムが実際の業務に合わない」「納期が大幅に遅れて予算も膨らんだ」——こうした経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。あるいは、これからシステム開発を依頼しようとしている立場で、「自分たちは失敗しないために何をすればよいのか」と不安に感じている方もいるかもしれません。
システム開発の失敗は、決して珍しい出来事ではありません。国際的な調査機関であるStandish Groupの「CHAOS Report」によると、ITプロジェクトの成功率は約29%にとどまるとされています。日本国内の調査でも、プロジェクト規模が大きくなるほど成功率は下がり、3年を超えるプロジェクトの成功率は16%という報告もあります。
この記事では、システム開発が失敗する主要な原因をプロジェクトのフェーズ別に整理した上で、発注側として具体的に何をすれば失敗を防げるのかをチェックポイント形式で解説します。失敗事例のパターンを知るだけでなく、「自社のプロジェクトに当てはめたとき、今日から何を変えればよいか」が分かるよう構成しています。

目次
失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること
こんな方におすすめです
システム開発プロジェクトが失敗する本当の理由
「失敗」とはどのような状態を指すのか
システム開発の「失敗」は、大きく4つのパターンに分けられます。
- 納期遅延: 計画した期日までにシステムが完成しない
- 予算超過: 当初見積もりを大幅に超えたコストが発生する
- 要件未達: 完成したシステムが当初求めていた機能・品質を満たしていない
- 現場での不使用: 完成して稼働したものの、実際には使われないシステムになってしまう
このうち、最後の「現場での不使用」は特に深刻です。納期や予算の問題は数字で表れるため問題として認識されやすいのですが、「完成はしたが使われないシステム」は問題が表面化しにくく、気づいたときには多大なコストが無駄になっています。
成功率わずか約29%——なぜそれほど多くが失敗するのか
Standish GroupのCHAOS Reportをはじめ、複数の調査が示しているのは「ITプロジェクトの大半が何らかの問題を抱えて完了するか、中断される」という事実です。成功と判定されるのは、スコープ・コスト・スケジュールすべてを当初計画内に収めたプロジェクトのみです。
なぜこれほど多くのプロジェクトが失敗するのでしょうか。技術的な難しさも一因ですが、より根本的な問題が別にあります。
すべての失敗に共通する根本構造:認識ズレの放置
多くの失敗事例を分析すると、「発注側と開発側の認識ズレが途中で放置された」という共通構造が見えてきます。
開発側は「言われた仕様を実装すること」に集中し、発注側は「伝えた要望通りに作ってもらえるはず」と思い込む。この双方の思い込みが重なると、プロジェクトの終盤になってはじめて「想定と違う」という問題が表面化します。
この認識ズレは、プロジェクトのあらゆるフェーズで生まれます。「要件定義でどこまで決めるべきか」「進捗報告は何をもって完了とするのか」「追加要望はどう扱うのか」——これらのすべてで認識ズレが起きる可能性があります。
フェーズ別に見るシステム開発失敗の主要原因

【開始前】ベンダー選定・見積もり段階の落とし穴
プロジェクト開始前の段階で、すでに失敗の種がまかれていることがあります。
価格だけで選んでしまう問題
複数社に見積もりを取ったとき、最も安い金額を提示した会社に発注するケースがあります。しかし、見積もり金額が大きく異なる場合、その差は「含まれているスコープの解釈の違い」であることがほとんどです。安い見積もりには、追加作業が後から発生することを前提とした「甘い想定」が含まれていることがあります。
提案内容の精度を確認しない問題
提案書に書かれているのは「どんなシステムを作るか」の概要であり、細部の仕様は要件定義で詰めることになります。しかし、提案段階で「要件定義にどのくらいの時間・体制を割くか」を確認しないまま発注すると、後に「そこまでは含まれていませんでした」という事態が起きます。
【要件定義】最も重要で最も失敗しやすいフェーズ
要件定義は、プロジェクト全体の品質を決定する最重要フェーズです。経済産業省の研究やさまざまな調査で「開発の手戻りの50%以上が要件定義の問題に起因する」とされています。
発注側の関与不足による業務知識の欠落
自社の業務フローを最もよく知っているのは発注側です。しかし、要件定義を「開発会社に任せる」スタンスでいると、開発者は一般的な業務フローを想定してシステムを設計するしかありません。
「自社では例外処理がある」「この業務は繁忙期と閑散期で処理量が10倍違う」——こうした情報は、発注側が積極的に共有しなければ設計に反映されません。
「なんとなくのイメージ」が要件として通ってしまう問題
「使いやすいシステムにしてほしい」「今の業務を効率化したい」という要望は、そのままでは要件として機能しません。開発者が「使いやすい」と解釈したシステムと、発注者が「使いやすい」と感じるシステムは、まったく異なる可能性があります。
具体的な業務フロー、入出力データ、例外処理、画面遷移——これらが具体的な形で言語化されてはじめて、認識の共有が可能になります。
【開発・管理】進捗が見えないまま納期を迎えるリスク
要件定義が終わって開発フェーズに入ると、発注側は「あとは任せるだけ」という姿勢になりがちです。しかし、開発中の関与不足が後半のトラブルの主因になることがあります。
月1回の報告では問題発見が遅れる
進捗報告の頻度が低いと、問題が発覚するまでに多くの工数が無駄になります。「月1回報告で大丈夫」という認識は、開発会社側が「報告しなくてよい」と受け取るリスクがあります。
スコープクリープ(要件の膨張)の放置
「ついでにこの機能も追加してほしい」という追加要望は、開発中に頻繁に発生します。この要望が口頭で積み重なると、スコープが当初の想定から大幅に膨らみ、最終的に納期遅延・予算超過の原因になります。
変更要望が発生した場合は必ず「変更管理」として記録し、追加費用と納期への影響を確認する仕組みが不可欠です。
失敗事例から学ぶ——実際に何が起きたのか

事例A: 「使われないシステム」が完成してしまったケース
ある製造業の会社が、在庫管理システムの開発を発注しました。要件定義は開発会社主導で進み、発注側の担当者は「こういうシステムを作りたい」というイメージを伝えたのみで、現場担当者へのヒアリングはほとんど行われませんでした。
完成したシステムは機能面では要件を満たしていましたが、現場の担当者が「入力項目が多すぎる」「操作手順が既存の業務フローと合わない」と感じ、結果的に以前の手動管理に戻ってしまいました。
発注側が見逃したこと: 現場ユーザーの実際の業務フローを要件定義に反映しなかったこと。「使う人が要件定義に参加する」ことの重要性を見落としていました。
事例B: 納期直前に仕様変更が発生し費用が2倍になったケース
あるサービス業の会社が基幹業務システムを開発中、開発終盤に「法改正に対応する機能を追加してほしい」という要望が発生しました。
口頭でのやり取りが続いた結果、どこまでが当初の契約範囲でどこからが追加なのかが曖昧になり、開発側と発注側の間で「含まれているはず」「含まれていない」というトラブルに発展しました。最終的には当初の見積もりの2倍近くのコストがかかりました。
発注側が見逃したこと: 変更要望の都度、書面による変更管理を行わなかったこと。口頭の合意を「契約」として扱わないルールを定めていなかったことが原因でした。
事例C: 品質問題が発覚したが「完成扱い」で納品されたケース
あるEC事業者が注文管理システムを開発し、テストも「完了」という報告を受けて本番稼働させました。しかし稼働直後から、特定の条件下でエラーが頻発する問題が発生しました。
後から判明したのは、テストが「正常系のシナリオのみ」で行われており、例外的な操作パターンや負荷テストが実施されていなかったことでした。発注側は「テスト完了」という報告を受けた際に、テスト内容を具体的に確認していませんでした。
発注側が見逃したこと: 「テスト完了」報告を受けた際に、テスト仕様書や実施結果を確認しなかったこと。検収基準を事前に定義していなかったことが根本的な問題でした。
発注側が実践できる失敗防止策——フェーズ別チェックポイント

ベンダー選定・契約前に必ず確認すること
ベンダー選定と契約の段階で以下の点を確認してください。
見積もり確認のチェックポイント
- 見積もりに含まれるスコープと含まれないスコープが明記されているか
- 追加要望が発生した場合の変更管理プロセスが契約に含まれているか
- 開発体制(PM・SE・エンジニアの人数)と担当者のプロジェクト経験が確認できるか
- 要件定義フェーズにどれだけの時間と体制を割くか明示されているか
ベンダー評価のチェックポイント
- 過去の類似プロジェクトの実績と、失敗した場合の対応事例を確認したか
- 問い合わせへのレスポンス速度と、コミュニケーション姿勢を評価したか
- 下請けへの再委託がある場合、どのような管理体制をとるかを確認したか
要件定義を失敗させないための発注側の役割
要件定義は「開発会社に任せるもの」ではなく、「発注側が主体的に参加するもの」です。
要件定義フェーズのチェックポイント
- 実際にシステムを使う現場担当者が要件定義の場に参加しているか
- 「誰が・いつ・どの画面で・何の操作をするか」が具体的なユースケースとして整理されているか
- 例外処理・エラーケース・繁忙期の負荷を要件に含めているか
- 要件定義の成果物(要件定義書)を発注側が内容を理解した上でサインオフしているか
- 優先度の低い要件と高い要件が区別されており、予算・工期に応じてスコープ調整が可能な設計になっているか
開発中に発注側が維持すべき関与スタンス
開発フェーズでも、発注側の継続的な関与が成功の鍵になります。
開発中の関与チェックポイント
- 進捗報告の頻度と形式(週次・隔週など)を契約時に合意しているか
- 進捗報告では「完了した作業」だけでなく「残作業と現時点のリスク」も確認しているか
- 追加・変更要望は必ず書面(メール・課題管理ツール)で記録し、影響範囲(費用・工期)の確認を経てから対応を依頼しているか
- 中間成果物(設計書・プロトタイプ)のレビューに積極的に参加しているか
検収・リリース前に確認すべき品質チェック
最終工程の検収は、「完成した」という報告を鵜呑みにせず、発注側として主体的に確認する機会です。
検収のチェックポイント
- テスト仕様書が存在し、テストで確認した項目と結果が記録されているか
- 正常系だけでなく、異常系・例外系のシナリオもテストされているか
- 本番と同等の負荷環境でのパフォーマンステストが実施されているか
- 検収基準(どの条件を満たせば「完成」とするか)が契約時に合意されているか
- 稼働後の保守・障害対応の体制と連絡先が明確になっているか
システム開発会社との協力関係が成否を分ける

「発注したから任せる」が最大のリスクになる理由
システム開発の発注は、「商品を注文して届けてもらう」ような買い物とは本質的に異なります。開発の対象となるシステムは、発注の時点では形がなく、プロジェクトを通じて双方で作り上げていくものです。
「任せる」というスタンスは、開発会社側からすると「要件を決めてもらえない」「フィードバックがもらえない」という状態を意味します。これは開発者の判断で仕様を埋めていくことを意味し、発注者の意図から乖離していく原因になります。
業務知識は発注側にあり、技術的な実現方法は開発側にあります。それぞれの強みを持ち寄って協働することが、プロジェクト成功の前提条件です。
成功するプロジェクトに共通する発注側の関与パターン
成功するプロジェクトに共通しているのは、発注側の担当者が「プロジェクトの共同オーナー」として振る舞っていることです。具体的には以下のような関与パターンが見られます。
意思決定の迅速さ: 設計上の選択肢が生じたとき、開発側からの問い合わせに速やかに回答できる体制を整えている
現場と経営の橋渡し: 要件定義で決めた内容を現場担当者・上長に共有し、開発後の「使われないシステム」リスクを事前につぶしている
変化への柔軟な対応: 開発途中で要件変更が必要になったとき、「変更の影響を評価した上で意思決定する」プロセスを持っている
問題の早期共有: 「問題を言いにくい」雰囲気にせず、開発側が懸念事項を早めに共有できる関係を作っている
このような関与スタンスは、特別な技術知識を必要としません。プロジェクト管理の基本的な姿勢として、発注側が実践できることです。
まとめ——失敗を防ぐために今日からできること
システム開発の失敗は、技術的な問題よりも「認識ズレの放置」「発注側の関与不足」によって起きることが大半です。この記事でご紹介した要点を最後に整理します。
- 失敗の定義を認識する: 納期遅延・予算超過だけでなく「使われないシステム」も失敗
- ベンダー選定では価格だけでなく体制・実績・コミュニケーションを評価する
- 要件定義には発注側が主体的に参加し、現場ユーザーを巻き込む
- 開発中は週次〜隔週での進捗確認を維持し、変更要望は必ず書面で管理する
- 検収時はテスト仕様書と実施結果を確認し、検収基準を事前に合意しておく
- 開発会社との関係を「任せる・任される」ではなく「共同オーナー」として構築する
システム開発を成功させるために最も重要なのは、発注側が「プロジェクトの当事者」として関与し続けることです。技術的な判断は開発会社に委ねながらも、業務要件・意思決定・関係構築において発注側がリーダーシップを発揮することが、プロジェクト成功の確率を大きく高めます。
システム開発の依頼先選びや、要件定義の進め方でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。秋霜堂では、発注側の立場に寄り添ったプロジェクト推進をサポートしています。
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秋霜堂株式会社について
秋霜堂は、Web開発・AI活用・業務システム開発を手がけるシステム開発会社です。要件定義から設計・開発・運用まで一貫してご支援しています。
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