「DXを推進してください」
そう言われた担当者が、まず戸惑うのが横文字の多さです。「DX」「デジタル化」「IT化」だけでも紛らわしいのに、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」という用語まで登場すると、「結局何が違うの?」と混乱してしまうのも無理はありません。
実はこの3つの概念(デジタイゼーション・デジタライゼーション・DX)は、似ているようで根本的に異なります。そして、この違いを理解していないと、「DXに取り組んでいるつもりが、実はIT化しかできていなかった」という状況が起こります。
本記事では、3つの概念の定義と違いをわかりやすく解説し、「自社が今どの段階にいるか」を診断できるチェックリストを提供します。まず概念を正確に整理して、自社に必要な取り組みを見極めましょう。
中小企業 DX 推進ロードマップテンプレート

この資料でわかること
中小企業の DX 推進担当者・経営者が「どこから手をつければ良いか分からない」という状況を打破できるよう、業務棚卸し・優先度評価・実行計画を一貫して作成できるワークシート型ツールを提供する。
こんな方におすすめです
- DXロードマップの作り方が分からない
- 業務棚卸しから優先順位付けまでを体系的に進めたい
- 中小企業に合ったDX計画書のテンプレートが欲しい
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「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「DX」とは?3つの定義
3つの概念はそれぞれ「デジタル化の対象」が異なります。まずそれぞれの定義を押さえましょう。
デジタイゼーション(Digitization)とは
デジタイゼーション(Digitization)とは、アナログ情報をデジタルデータに変換することです。
「情報・データそのもの」がデジタル化の対象になります。業務フローや進め方は変わらず、「紙のデータがデジタルになった」という状態を指します。
具体例:
- 紙の請求書や帳票をExcelやPDFに変換する
- 手書きの日報をデジタルフォームで入力するようにする
- 名刺をスキャンしてデジタルで管理する
デジタイゼーションは、デジタル化の「第1ステップ」です。データがデジタルになっていない状態では、次のデジタライゼーションには進めません。
デジタライゼーション(Digitalization)とは
デジタライゼーション(Digitalization)とは、デジタル技術を活用して業務プロセスや業務フロー自体を変革することです。
「業務プロセス」がデジタル化の対象になります。情報をデジタルに変換するだけでなく、業務の進め方そのものが変わります。
具体例:
- 受発注業務をシステムで一元管理し、手入力・転記作業をなくす
- 社内承認フローをワークフローシステムで自動化する
- 在庫管理システムで在庫をリアルタイムに把握し、発注を自動化する
デジタライゼーションは、デジタル化の「第2ステップ」です。データがデジタルになっていれば(デジタイゼーション完了)、業務プロセスをシステムでつないで効率化することができます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織・企業文化を変革し、競争優位性を確立することです。
経済産業省は2018年のDX推進ガイドラインでDXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(出典: 経済産業省「DXレポート」2018年)
「ビジネスモデル・企業のあり方」がデジタル化の対象になります。業務効率化を超えて、新たな価値の創造・競争優位性の確立が目的です。
具体例:
- 蓄積したデータで需要予測を行い、顧客への自動提案を実現する
- デジタルプラットフォームを活用して新しい収益モデルを創出する
- データ分析により、これまで見えていなかった顧客ニーズを特定して新サービスを開発する
3つの概念の違いを整理する
「デジタル化の対象」が根本的に異なる
3つの概念を並べて比較すると、違いが明確になります。
デジタイゼーション | デジタライゼーション | DX | |
|---|---|---|---|
対象 | 情報・データ | 業務プロセス | ビジネスモデル |
目的 | データのデジタル変換 | 業務効率化・自動化 | 価値創造・変革 |
変化の範囲 | 部分的(情報単位) | 部門〜業務フロー | 企業全体・市場 |
難易度 | 低〜中 | 中〜高 | 高 |
3段階は「順序がある」関係
3つの概念は独立しておらず、デジタイゼーション → デジタライゼーション → DX という順序関係があります。
前の段階が完了していなければ、次の段階には進めません。たとえば、データがデジタル化されていない(デジタイゼーション未完了)状態では、業務プロセスをシステムでつなぐ(デジタライゼーション)ことはできません。
「DXをいきなり目指そう」としてうまくいかない企業の多くは、前段階のデジタイゼーションやデジタライゼーションが不完全な状態でDXに挑んでいます。
IT化との関係
「IT化」という言葉もよく使われますが、IT化はデジタイゼーション〜デジタライゼーションの範囲をカバーする広義の概念です。
- IT化 ≒ デジタイゼーション〜デジタライゼーション
- DXはIT化の「延長線上にない」—— 目的が「効率化」から「変革・価値創造」に質的に変わります
「IT化を進めてきた企業がDXに取り組む」のは段階として自然ですが、IT化をいくら進めてもビジネスモデルの変革が起きなければDXとは言えません。
業種別・規模別の具体例
中小企業でよく見られる各段階の例
DXの文脈では大企業の事例が多く紹介されますが、中小企業も同じ段階を経ます。
デジタイゼーション段階でよくある取り組み:
- 紙の請求書・見積書をPDFメールに切り替える
- ExcelやGoogleスプレッドシートで顧客管理を始める
- 勤怠管理をタイムカードからクラウドサービスに移行する
- 在庫・売上データをPCで管理するようにする
デジタライゼーション段階でよくある取り組み:
- 受注〜請求〜入金をシステムで一元管理し、転記・二重入力をなくす
- 社内の稟議・承認フローをワークフローシステムで自動化する
- 在庫管理システムを導入し、発注タイミングを自動アラートで通知する
- 顧客対応履歴をCRMで管理し、担当者が変わっても情報が引き継げる体制を作る
DX段階でよくある取り組み:
- 蓄積した購買データで顧客ごとに自動化された提案を実施する
- データ分析から新たな顧客ニーズを特定し、新サービスを立ち上げる
- プラットフォームを構築して新たな収益モデルを創出する
よくある誤解と混乱ポイント
「IT化とデジタイゼーションは同じ」は正確ではない
IT化はより広義の概念です。デジタイゼーションは「情報のデジタル変換」に特化しており、IT化にはシステムの刷新(デジタライゼーション段階も含む)も含まれます。
混乱の原因は、どちらも「デジタルツールやシステムを使う」という点では共通しているからです。ただし、IT化をデジタイゼーション・デジタライゼーションの2段階をカバーするものとして理解しておくと整理しやすいでしょう。
「DXを目指すなら直接DXから始めればいい」は危険
DXに成功している企業は、まずデジタイゼーション、次にデジタライゼーションという段階を着実に進めています。
データがデジタル化されていない、業務フローがバラバラの状態でビジネスモデル変革に取り組んでも、変革の土台となるデータがなく、失敗しやすい状況になります。「DXアレルギー」を起こす企業の多くは、前段階をスキップしようとして挫折しています。
「DX化」という表現について
「DX」はすでに「トランスフォーメーション(変革)」を含んでいるため、「DX化」は「変革化」という意味の重複表現になります。正確には「DXを推進する」「DXに取り組む」が適切な表現です。
ただし、実務の現場では「DX化を進める」という表現も広く使われており、文脈上明らかな場合は許容されることがほとんどです。正式な文書や提案書では「DXの推進」「DX実現」などの表現を使うとより正確です。
中小企業 DX 推進ロードマップテンプレート

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中小企業の DX 推進担当者・経営者が「どこから手をつければ良いか分からない」という状況を打破できるよう、業務棚卸し・優先度評価・実行計画を一貫して作成できるワークシート型ツールを提供する。
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【チェックリスト】自社の現在地を診断する
3段階それぞれのチェックリストで、自社がどの段階にいるかを確認しましょう。チェックが入る項目が多い段階が「現在地」であり、チェックが入らない段階から取り組みを始める必要があります。
デジタイゼーション段階チェック
以下の3項目すべてに当てはまれば、デジタイゼーション段階は完了しています。
- □ 主要な業務データ(顧客情報・在庫・売上等)がデジタルで管理されている
- □ 主要な業務において、紙・手書きのプロセスが残っていない
- □ 必要なデータを探す際に、紙の書類や手書きノートを漁る必要がない
3項目すべてにチェックが入った場合: デジタイゼーション段階は完了しています。次のデジタライゼーション段階に進みましょう。
チェックが入らない項目がある場合: まずデジタイゼーションに取り組むことが優先です。どの情報をデジタル化するかを特定し、ツール導入から始めましょう。
デジタライゼーション段階チェック
- □ 複数部門・複数システムのデータが連携されており、転記・二重入力がほぼない
- □ 定型的な業務フロー(承認・発注・請求等)がシステムで自動化されている
- □ リアルタイムで業務状況(在庫・受注・対応状況等)を把握できる仕組みがある
3項目すべてにチェックが入った場合: デジタライゼーション段階は完了しています。次のDX段階へのチャレンジを検討できます。
チェックが入らない項目がある場合: 業務プロセスのシステム化・連携が必要な段階です。業務フローを見直し、システム導入や既存システムの連携を進めましょう。
DX段階チェック
- □ 蓄積されたデータを活用して意思決定や顧客提案が自動化・最適化されている
- □ デジタル技術を活用して新サービス・新収益源を創出している
- □ ビジネスモデル自体が変革され、デジタル活用が競合との差別化要因になっている
3項目すべてにチェックが入った場合: DXが実現されている状態です。継続的な進化・改善を続けましょう。
チェックが入らない項目がある場合: デジタライゼーションが完了していれば、データ活用やビジネスモデル検討のフェーズに入れます。まずデジタライゼーション段階のチェックを完了させることが優先です。
自社の現在地に応じた次のステップ
デジタイゼーション段階の方へ
まずは主要なデータ・情報のデジタル化から着手します。ツールの選定・導入は比較的コストが低く、SaaS型のクラウドサービスを活用することで早期に始められます。
おすすめの取り組み:
- 会計・請求管理: freee、弥生会計、マネーフォワードクラウド
- 顧客管理: Salesforce(Essentials)、Zoho CRM
- 勤怠管理: MoneyForward勤怠、KING OF TIME
デジタライゼーション段階を目指す方へ
業務プロセスをシステムでつなぐ段階では、SaaSの組み合わせだけでは対応しきれないケースも出てきます。自社固有の業務フローをシステムで実現するためのオーダーメイド開発が必要になるのがこの段階です。
システム開発会社に相談するタイミング:
- 複数部門・複数システムを連携させたい
- 自社独自の業務フローをシステム化したい
- 既存SaaSでは要件を満たせないプロセス自動化が必要
秋霜堂株式会社では、デジタライゼーション段階のシステム開発支援を提供しています。業務フロー整理の段階から支援することが可能です。
なお、DXとIT化の違いや中小企業がDXを進める具体的な3つのステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ DXとは?わかりやすく解説|IT化との違いと中小企業が最初にすべき3ステップ
DXを目指す方へ
デジタライゼーションが完了している段階では、蓄積されたデータをどう活用するかがDXの起点になります。AI活用やデータ分析基盤の構築、新しいビジネスモデルの設計が議論のテーマになります。
まずはデジタライゼーション段階の完成度を確認し、データが蓄積されている状態を作ることが先決です。
まとめ
本記事のポイントを整理します。
- デジタイゼーション: アナログ情報をデジタルデータに変換(対象: 情報・データ)
- デジタライゼーション: デジタル技術で業務プロセス自体を変革(対象: 業務フロー)
- DX(デジタルトランスフォーメーション): データ・デジタル技術でビジネスモデルを変革(対象: ビジネスモデル・企業文化)
この3つはデジタイゼーション → デジタライゼーション → DXの順序で進む段階的な関係にあります。DXを目指すには、前の段階を着実に進めることが重要です。
チェックリストで自社の現在地を確認し、今取り組むべき段階から着手することが、DX推進の現実的な第一歩です。
秋霜堂株式会社は、デジタライゼーション段階のシステム開発から、DX実現に向けたデータ活用支援まで対応しています。自社の現在地が分かったら、次のステップについてお気軽にご相談ください。
会社紹介フッター
秋霜堂株式会社は、システム開発(Web開発・AI活用・業務システム)を専門とする会社です。構想段階からの伴走支援と、アジャイル型の開発スタイルで、デジタライゼーションからDX実現まで幅広くサポートしています。
中小企業 DX 推進ロードマップテンプレート

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