AI
2026.04.05

医療業界でのAI活用事例と導入の進め方|中小規模の医療機関が取り組める領域と手順を解説


医療業界でのAI活用事例と導入の進め方|中小規模の医療機関が取り組める領域と手順を解説

医療業界でのAI活用が注目を集めています。診断支援から事務作業の自動化まで、AIが医療の現場に変化をもたらしつつあります。しかし、日本の医療機関全体でみると、2025年時点でも72%がAIを未導入という状況です(日経リサーチ調査)。未導入の最大の理由は「費用対効果がわからない」(51%)であり、AI活用を始めるうえでの情報不足が大きな壁になっています。

この記事では、医療業界でのAI活用の主要領域と具体的な事例を整理した上で、「自院でどこから始めればよいか」「開発会社にどう依頼すればよいか」という判断の壁を乗り越えるための実践的な情報をお届けします。

石川瑞起
執筆者
秋霜堂株式会社 代表 石川瑞起
中学生でプログラミングを独学で習得し、HP制作やアプリ開発の事業を開始。 大学入学後に事業を売却し、トヨクモ株式会社へ入社。 3年間にわたり1製品の開発責任者を務めたのち秋霜堂株式会社を設立し、多数の企業をサポートしている。
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失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

失敗しないためのシステム開発の考え方と開発パートナー選定チェックリスト

この資料でわかること

システム開発で失敗しないための考え方と、開発パートナーを選定する際のチェックリストをご紹介します。

こんな方におすすめです

    医療業界でAIが活用されている主な領域

    医療AIの活用領域は多岐にわたりますが、実際に医療現場への実装が進んでいる領域は大きく4つに整理できます。それぞれの特徴と、中小規模の医療機関が着手しやすいかどうかを合わせて確認しましょう。

    診断支援AI(画像診断・レポート生成)

    X線・CT・内視鏡などの医療画像を解析し、病変の検出・鑑別を支援するAIです。内視鏡検査での大腸ポリープ検出、胸部X線での異常陰影検出などで実用化が進んでいます。

    精度の高さが求められる領域のため、医療機器プログラム(SaMD: Software as a Medical Device)として薬事規制の対象となる場合があります。高機能なシステムになるほど初期投資も大きくなるため、中小規模のクリニックより大病院・専門病院での導入が先行しています。

    業務効率化AI(カルテ自動入力・レセプト処理・シフト管理)

    医師と患者の会話を音声認識でリアルタイムに文字起こしし、電子カルテの入力を支援するAIや、レセプトのチェックを自動化するAI、複雑な条件を加味してシフトを自動作成するAIなどが含まれます。

    この領域は薬事規制の対象外となるケースが多く、クラウドサービスとして比較的低コストで導入できるものが増えています。中小規模の病院やクリニックが最初に取り組みやすい領域です。

    患者コミュニケーションAI(問診・予約・FAQ対応チャットボット)

    患者が来院前にスマートフォンで回答できるAI問診システムや、24時間対応のFAQチャットボット、予約受付の自動化などが該当します。月額1万円以下から利用できるサービスも登場しており、規模を問わず導入しやすい領域です。

    看護・介護支援AI(転倒検知・見守りシステム)

    病室のカメラ映像を解析して転倒や離床を検知するAIが、病院や介護施設への導入事例を増やしています。夜間の看護師コール削減や、少人数体制での安全管理向上に有効です。

    上記4領域を比較すると、業務効率化AI患者コミュニケーションAIが中小規模の医療機関にとって取り組みやすい領域です。診断支援AIは大きな効果が期待できる一方、薬事手続きや費用の面でハードルが高い場合があります。

    中規模病院・クリニックが医療AIを導入した具体的な事例

    大病院や研究機関の事例ではなく、実際に中規模病院やクリニックが取り組んだ事例を紹介します。

    カルテ入力支援AIで医師の記録時間を大幅削減

    恵寿総合病院(石川県)では、生成AIを活用した退院時サマリー自動作成ツールを導入しました。電子カルテ内の情報をAIが要約・下書き作成することで、1件あたり約15分かかっていた作業が約5分に短縮されました。年間換算で約540時間の医師工数削減につながっています。

    音声認識と生成AIを組み合わせたカルテ入力支援では、診察中の医師・患者間の会話をリアルタイムで文字起こしし、SOAP形式(主観的情報・客観的情報・評価・計画)でカルテを自動生成します。「患者の目を見ながら診療に集中できる時間が増えた」という現場の声も多く報告されています。

    問診・FAQ対応チャットボットで外来待ち時間を短縮

    ある中規模クリニックでは、来院前のAI問診システムを導入し、受付から診察開始までの待ち時間を平均20分から10分へと短縮しました。患者がスマートフォンで症状を入力すると、AIが問診結果を整理して医師のカルテに反映します。医師は事前情報を把握した状態で診察に入れるため、診察の質と効率が同時に向上しています。

    レセプトチェックAIで査定率を改善

    月に数千件のレセプト(診療報酬請求書)を処理している病院で、AIによる事前チェックを導入した事例があります。過去の査定データをAIに学習させることで、返戻・査定につながりやすい記載パターンを事前に検出します。査定率の改善とともに、レセプト担当者の残業時間の削減効果が報告されています。

    転倒・離床検知AIで夜間の負担を軽減

    100床規模の一般病棟に転倒・離床検知AIを導入した病院では、夜間のナースコール件数が約30%削減されました。カメラ映像をAIがリアルタイム解析し、危険な動作を検知した場合のみナースに通知する仕組みです。誤報を絞り込むことで看護師の負担を減らしながら、必要な場面では素早く対応できる体制を実現しています。

    医療AI導入前に確認すべき3つのポイント

    「事例はわかった。でも自院ではどうすれば?」という段階で多くの担当者がつまずきます。導入の検討を始める前に、以下の3点を整理しておくと、導入後の失敗リスクを大幅に減らせます。

    まず「最も困っている業務」を1つ特定する

    複数の業務を同時にAI化しようとすると、要件が複雑になり費用も膨らみます。「今、院内で最も時間がかかっていて、かつスタッフの不満が高い業務はどれか」を1つ絞り込むことが重要です。

    具体的な絞り込み方として、以下を試してみてください:

    • 各部門のスタッフに「1日の業務で最も時間がかかっていること」をヒアリングする
    • 残業が発生しやすい業務を業務日報・タイムカードから特定する
    • 「紙・手作業・転記・待ち時間」が多い業務をリストアップする

    電子カルテや既存システムとのデータ連携を確認する

    AIは既存のデータを活用することで効果を発揮します。導入前に「電子カルテのデータをAIが読み込めるか」「API(システム間のデータ連携機能)が提供されているか」を確認する必要があります。

    電子カルテのベンダーに「API連携は可能か」を問い合わせるとともに、AI導入を検討している開発会社や製品に「既存電子カルテとの連携実績があるか」を確認しましょう。

    現場スタッフへの合意形成を先に設計する

    医療AI導入が失敗する最大の原因の一つが「現場が使わない」です。どれほど高性能なAIを導入しても、現場のスタッフが使わなければ投資効果はゼロになります。

    導入前の合意形成として実践したいポイントは以下の通りです:

    • 早期から現場を巻き込む: 担当者だけでなく、実際に使う医師・看護師・事務スタッフの意見を要件に反映する
    • パイロット運用の設計: まず1つの部門・病棟で試験運用し、効果を確認してから全体展開する
    • 研修・フォロー体制を設ける: 導入直後のサポート体制がなければ、習熟する前に「使いにくい」と判断されてしまう

    医療AIシステムの開発を外部委託する場合の進め方

    市販のSaaSサービスでは自院の業務フローに合わない、既存システムとの連携が必要、独自のデータを活用したいという場合には、AI開発会社への開発委託(スクラッチ開発・カスタム開発)が選択肢になります。しかし「開発会社に何を頼めばいいか分からない」という声をよく聞きます。以下では、開発委託の流れと発注時のポイントを整理します。

    SaaS型と開発委託型の使い分け基準

    まず、SaaS型(市販サービス)と開発委託型のどちらを選ぶかを判断しましょう。

    比較軸

    SaaS型

    開発委託型

    導入スピード

    速い(数週間〜数ヶ月)

    遅い(数ヶ月〜1年以上)

    初期費用

    低い

    高い(数百万円〜)

    カスタマイズ性

    低い

    高い

    自院データの活用

    制限がある場合が多い

    柔軟に対応可能

    適しているケース

    汎用的な業務(問診・予約・FAQ等)

    独自の業務フロー・既存システムとの連携

    SCROLL→

    一般的な指針として、まずSaaS型から試し、自院のニーズに合わない部分が明確になった段階で開発委託を検討するアプローチが、リスクを抑えつつ効果を確認できる方法です。

    医療AI開発の要件定義で必ず決めるべき3項目

    開発委託を進める際、発注者側が事前に整理しておくべき要件定義の核心は以下の3点です。

    1. 解決したい業務課題と定量的なゴール 「カルテ入力を自動化したい」ではなく、「現在1件あたり10分かかっているカルテ入力を3分以内にしたい」というように、現状の課題と目標を数値で定義します。定量的なゴールがあると、開発会社も提案しやすく、導入後の効果測定も明確になります。

    2. 使用するデータの種類と取得方法 AIはデータを学習・活用することで機能します。「どのデータをAIに使わせるか」「そのデータは電子カルテから取得できるか」「個人情報の匿名化はどう行うか」を整理しておきます。

    3. 既存システムとの連携要件 電子カルテ・レセプトシステム・院内LAN・セキュリティ要件などとの連携が必要な場合、その仕様を開発会社に正確に伝える必要があります。電子カルテのAPIドキュメントを開発会社と共有できるよう、事前に電子カルテベンダーとの調整を進めておきましょう。

    PoC(小規模実証)から本番導入までのステップ

    医療AIの開発委託は、いきなり本番システムを開発するのではなく、段階的に進めることが成功の鍵です。

    ステップ1: PoC(概念実証) まず小規模な実証システムを開発し、技術的な実現可能性と業務への適合性を検証します。費用は本番開発の10分の1程度で済む場合が多く、「本当にこのAIで解決できるか」を低リスクで確認できます。PoCの期間は通常1〜3ヶ月程度です。

    ステップ2: パイロット運用 PoCで有効性が確認できたら、1つの部門や病棟でパイロット運用を行います。実際の業務フローに組み込んで使用することで、本番展開前に改善点を洗い出せます。

    ステップ3: 本番開発・全体展開 パイロット運用の結果を踏まえ、本番システムを開発・全体展開します。この段階から運用・保守契約の内容も合わせて確認しましょう。

    開発会社選定時に確認すべきポイント

    医療AIの開発を依頼できる会社を選ぶ際は、以下の点を確認することをおすすめします。

    • 医療業界の開発実績: 医療システム特有のセキュリティ要件(ISMS・医療情報ガイドライン準拠)や、電子カルテとの連携経験があるか
    • PoCから本番まで一貫して対応できるか: PoC専門会社と本番開発会社が別々になると、引き継ぎコストやリスクが増える
    • 保守・運用の体制: 本番稼働後の問題対応やアップデートに対応できる体制があるか
    • 費用の透明性: 追加費用の発生条件・変更対応の費用感などを事前に確認する

    医療AI活用における注意点・よくある失敗パターン

    技術的に実現できても、医療AI活用には特有の注意点があります。導入前に知っておくべき代表的な失敗パターンを解説します。

    現場スタッフが使わないAIになるリスクと対策

    医療AI導入の失敗事例で最も多いのが「導入したが現場が使わなくなった」というケースです。特に以下のような状況が起きやすいです。

    • ベテランスタッフのアナログ習慣との摩擦(「以前のやり方の方が早い」)
    • 操作が複雑でトレーニングコストが高い
    • AIの出力結果を信頼できず、結局手で確認・修正している

    対策として有効なのは、前述の「早期からの現場巻き込み」と、導入後も継続的な改善サイクルを持つことです。AIの出力精度は使うほど改善していく場合が多く、初期段階の「使いにくさ」を乗り越えるためのサポート体制が必要です。

    医療データのセキュリティ・個人情報保護の基本

    医療データは個人情報の中でも特に取扱いに注意が必要な「要配慮個人情報」です。医療AIの開発・運用においては、以下の点を確認してください。

    • 厚生労働省の医療情報ガイドライン準拠: 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)に準拠した開発・運用が求められます
    • クラウドサービス利用時のデータの所在: 患者データがどのサーバーに保存されるか、海外サーバーを経由しないかを確認します
    • 匿名化・仮名化の設計: AIの学習に使用するデータの匿名化・仮名化の方法を、法的要件を踏まえて設計する必要があります

    医療機器としての薬事規制への注意

    AIが「診断」や「治療の支援」に直接関わる場合、医療機器プログラム(SaMD)として薬事規制の対象になる場合があります。

    具体的には、「この画像に病変がある可能性がX%」という診断支援機能を持つAIは、医療機器としての承認・認証が必要になる場合があります。一方、「カルテの文書を整理する」「シフトを自動作成する」といった業務効率化AIは、一般的に薬事規制の対象外です。

    開発委託する際は、開発しようとしているAIが薬事規制の対象になるかどうかをPMDA(医薬品医療機器総合機構)の相談窓口で確認するか、医療機器開発の知見がある会社に確認することをおすすめします。

    まとめ:医療AI活用の始め方

    医療業界でのAI活用は、「大病院や先進施設のもの」から「中小規模の医療機関でも取り組めるもの」へと変わっています。

    記事で解説した通り、取り組みやすさの観点では業務効率化AI(カルテ入力・レセプト処理)患者コミュニケーションAI(問診・予約)が最初の一歩として選ばれるケースが多いです。

    「医療AI活用の最初の一歩」として、今日からできることを3つ挙げます。

    1. 自院の「最も困っている業務」を1つ書き出す:現場スタッフへのヒアリングや業務記録の確認から始めましょう
    2. 同規模施設の活用事例を2〜3件調べる:この記事で紹介した事例を参考に、自院の状況と近いケースを深堀りしてみてください
    3. AI開発・医療システム開発の経験がある会社に相談してみる:無料相談を受け付けている会社が増えています。「何が実現できるか」「費用はどのくらいか」を具体的に確認するだけでも、社内での検討が一気に進みます

    医療AIの活用は、技術の問題よりも「どの業務からどう始めるか」という判断と、適切なパートナー選びが成否を左右します。ぜひ一歩踏み出してみてください。

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