レガシーシステムとは?「2025年の崖」のリスクと脱却へのポイントを解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる中、多くの企業で足かせとなっているのが「レガシーシステム」です。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を越え、2026年を迎えた今、そのリスクは現実のものとなりつつあります。
「うちは長年使っているシステムがあるから大丈夫」 そう思われている企業こそ、実は危険な状態にあるかもしれません。
本記事では、言葉は聞いたことがあるけれど実はよく分からない「レガシーシステム」の定義から、それが経営に与える深刻なリスク、そして無理なく新しい環境へ移行するための具体的な手順を解説します。

目次
作業時間削減
システム化を通して時間を生み出し、ビジネスの加速をサポートします。
システム開発が可能に
レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、単に導入から年数が経っているシステムのことではありません。古くても、今の業務にフィットしており、維持費も安く、誰でも直せる状態であれば、それは「安定したシステム」です。
一方で、「維持管理に高額なコストがかかる」「修正しようとすると他の機能が壊れるため柔軟に変えられない」「技術が古すぎて誰も全貌を把握していない(技術的負債)」 といった状態に陥り、経営や新しい取り組みの足を引っ張っているシステムが「レガシーシステム」と呼ばれています。
レガシー化のサイン「ブラックボックス化」と「スパゲッティコード」
では、自社のシステムがレガシー化しているかどうか、どう判断すればよいのでしょうか。代表的な危険信号が「ブラックボックス化」と「スパゲッティコード」です。
ブラックボックス化
システムの中身がどうなっているか、誰も分からない状態です。「設計書が存在しない(または古いまま更新されていない)」「詳しい担当者が退職してしまい、その人しか知らない仕様がある(属人化)」といった状況がこれに当たります。
スパゲッティコード
長年にわたり「とりあえず動けばいい」という継ぎ足しの改修を繰り返した結果、プログラムの命令文がスパゲッティのように複雑に絡み合ってしまった状態です。一本の麺(機能)を引っ張ると、関係ないところまで動いてしまい、思わぬ故障を引き起こします。
レガシーシステムへの対策が急務な理由
「だましだまし使えばいいではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、2026年現在、これ以上先送りできない外部環境の変化が訪れています。
経済産業省「2025年の崖」が警告する経済損失
経済産業省の「DXレポート」で指摘された「2025年の崖」という言葉をご存じでしょうか。これは、「既存の古いシステムを放置すれば、2025年以降、日本全体で年間最大12兆円の経済損失が生じる」という警告です。
2026年となった現在、この予測は現実味を帯びています。古いシステムが原因で新しいデジタル技術を取り入れられず、競争力を失う企業が増えているのです。これは遠い未来の話ではなく、まさに今起きている経営課題です。
参照:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省
迫りくるタイムリミット「2027年問題」と「2030年問題」
さらなる具体的な期限も迫っています。
SAP ERP保守終了への対応
多くの大企業が導入している基幹システムである「SAP ERP(ECC 6.0)」の標準的なサポート期限が2027年末に終了します。
Windowsのサポート終了と同様に、期限を過ぎるとセキュリティの欠陥が見つかっても修正されなくなることを意味します。安全に使い続けるためには、期限内の刷新が待ったなしの状況です。
2030年にはIT人材が約80万人不足する
もう一つの問題は「人」です。古いシステムでよく使われている「COBOL(コボル)」という昔のプログラミング言語を扱える技術者が、高齢化により次々と引退しています。一方で、若いエンジニアは現代的な技術を学ぶため、古い技術の担い手はいません。
2030年にはIT人材が約80万人不足すると言われており、お金を出しても「直せる人がいない」という事態が訪れます。
レガシーシステムが経営に与える問題点
システム部門だけの問題ではなく、レガシーシステムは会社全体の利益や信頼を損なう原因になります。
IT予算の大半が維持管理に消える
多くの日本企業では、IT予算の約8割が「今のシステムを動かし続けるため(現行維持)」に使われていると言われています。つまり「守りのIT」に割かれているリソースが大半なのです。
本来であれば、新しい顧客サービスを作ったり、業務を自動化したりする「攻めのIT」に投資すべきです。しかし、レガシーシステムは燃費の悪い旧車のように維持費がかさむため、未来への投資にお金が回せないという構造的な問題を抱えてしまいます。
システム障害のリスク増大と復旧の長期化
老朽化したシステムは、ハードウェアの故障やデータの不整合などのトラブルが起きやすくなります。さらに前述の「ブラックボックス化」が進んでいると、いざ障害が起きたときに「どこが原因なのか?」を突き止めるのに時間がかかります。
ECサイトや工場のラインが数日間停止すれば、その損害は計り知れません。レガシーシステムを抱えることは、いつ爆発するか分からない時限爆弾を抱えているのと同じです。
セキュリティリスクと法改正対応の遅れ
古いOSやミドルウェアを使い続けることは、泥棒に鍵を渡しているようなものです。最新のサイバー攻撃を防ぐ機能がないため、情報漏洩のリスクが高まります。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法など、近年は法改正が頻繁です。レガシーシステムは構造が複雑なため、こうした法改正に対応するための改修に膨大な費用と時間がかかり、対応が間に合わないリスクもあります。
データのサイロ化による経営判断の遅延
「営業部のデータはAシステム」「経理部のデータはBシステム」というように、データがバラバラに管理され、連携できていない状態を「サイロ化」(穀物を入れる貯蔵庫のように独立していること)と呼びます。
経営層が「今、会社全体で何が起きているか」をリアルタイムに把握できません。「売上の集計が出るのは翌月末」といったスピード感では、変化の激しい現代のビジネスにおいて致命的な判断の遅れを招きます。
なぜシステムはレガシー化してしまうのか?

最初から使いにくいシステムを作ろうとした企業はありません。では、なぜ結果としてレガシー化してしまうのでしょうか。
過度なカスタマイズと「部分最適」の罠
システムを導入する際、「現場の使い勝手を変えたくない」という理由で、パッケージ製品(既製品)に対して過剰なカスタマイズを行ってしまうケースがよくあります。
また、各部署が自分たちの都合だけで個別にシステムを導入する「部分最適」も原因です。「全体としてどうつながるか」を考えずに増築を繰り返した家のように、会社全体で見ると複雑怪奇なシステムになってしまうのです。
ベンダーロックインと社内ノウハウの空洞化
「システムのことは全部システム開発会社にお任せ」という丸投げ体質も大きな原因です。
開発も保守も全て外部に依存してきた結果、社内に「このシステムがどう動いているか」を知る人がいなくなります。このような事態を「ベンダーロックイン」と呼びます。
こうなると、開発会社から「改修には高い費用がかかります」と言われても言いなりになるしかなく、自社でシステムの主導権を持てなくなってしまいます。
レガシーシステムから脱却するためのポイント
では、どうすればこの状況から脱却できるのでしょうか。全てを一度に捨てる必要はありません。
マイグレーションとモダナイゼーションの違い
まず、目指すべきゴールを明確にしましょう。
マイグレーション(移行)
現在のシステムを、新しい環境へそのまま「引っ越し」することです。老朽化対策にはなりますが、中身は古いままなので、ビジネスの変化には強くなりません。
モダナイゼーション(近代化)
今のビジネスに合わせて、システムを「作り変える」ことです。スマホアプリのように必要な機能をすぐ追加できたり、他社サービスと連携しやすくしたりと、中身を現代的に刷新することを指します。
目指すべきは単なる引っ越しではなく、「モダナイゼーション」です。
システム刷新の選択肢「7R」フレームワーク
システムを新しくする方法にはいくつかの段階があります。代表的なものを紹介します。
リホスト(Rehost)とリプラットフォーム(Replatform)
これらは「引っ越し」に近い手法です。 自社内のサーバールームにあったシステムを、AmazonやGoogleなどが提供するクラウドに移すことを指します。プログラムの中身は大きく変えないため、比較的短期間・低コストで実施でき、ハードウェアの故障リスクから解放されるメリットがあります。
リファクター(Refactor)とリビルド(Rebuild)
これらは根本的な「作り直し」です。 使いにくいプログラムを整理して綺麗に書き直したり(リファクター)、クラウドのメリットを最大限活かせる技術でゼロから作り直したり(リビルド)します。コストはかかりますが、将来的な変更のしやすさや処理スピードは劇的に向上します。
生成AIを活用したモダナイゼーション
2026年の現在、注目されているのが「生成AI」の活用です。 昔の技術者が書いた複雑なプログラムをAIに読み込ませ、「これは何の処理をしているのか」という解説書(仕様書)を自動で作らせたり、現代的なプログラミング言語へ自動翻訳させたりする手法です。
人間が手作業で行うと何年もかかる解析作業を大幅に短縮し、移行コストを下げることが可能になっています。
レガシーシステムの脱却を成功させるための組織・人材戦略

システムの刷新は、技術だけの問題ではありません。組織のあり方も変えていく必要があります。
経営層のコミットメントと「デジタルガバナンス・コード3.0」
システム刷新には多額の費用と、一時的な業務フローの変更という痛みが伴います。現場だけの判断で進めるのは不可能です。
経済産業省が定める「デジタルガバナンス・コード」でも触れられているように、経営層が「会社をどう変えたいか」というビジョンを示し、そのためにシステム刷新が必要だと断言するリーダーシップが不可欠です。
必要なDX人材の確保と「共創」関係の構築
すべてを外部業者に丸投げするのをやめ、社内にもシステムの目利きができる人材を育てることが重要です。 また、開発会社を単なる「発注先」と見るのではなく、ビジネスを共に成長させる「パートナー」として対等な関係を築くことが、プロジェクト成功の鍵となります。
レガシー脱却は「守り」ではなく「攻め」の投資である
レガシーシステムの刷新は、単なる「老朽化した設備の交換」ではありません。これから先の10年、20年を企業が生き残り、成長していくための土台作りです。
「コストがかかるから」と先延ばしにすればするほど、リスクと改修費用は膨れ上がります。まずは自社のシステムがどのような状態にあるのか、現状の可視化を行うことから始めてみてはいかがでしょうか。
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※システム改修については「システム改修とは?実施のタイミングや依頼のポイントを徹底解説」の記事でも解説していますので、ぜひ併せてお読みください。
作業時間削減
システム化を通して時間を生み出し、ビジネスの加速をサポートします。
システム開発が可能に









