業務フロー図とは?発注前に押さえたい書き方と5つのステップ

「業務フロー図を作ってきてください」——システム開発会社からそう言われたとき、何から手をつければいいか分からないという方は多いのではないでしょうか。
業務フロー図という言葉は知っていても、実際に一から作るとなると「記号の使い方が分からない」「どの業務から書けばいいか分からない」「どこまで詳しく書けばいいか分からない」という悩みが出てきます。
実は、業務フロー図を最初から完璧に作ろうとする必要はありません。基本の3記号と5つのステップを押さえれば、誰でも業務フロー図を作り始めることができます。
本記事では、業務フロー図の意味・メリット・基本記号・書き方ステップを、非エンジニアの方にも分かりやすく解説します。特に、システム開発の発注前に業務を整理したいという方に役立つ内容です。

目次
システム開発 完全チェックリスト――発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック集

この資料でわかること
こんな方におすすめです
業務フロー図とは何か|基本的な意味と目的

業務フロー図とは、「誰が」「いつ」「どんな作業を」「どういう判断で」行うかを、図と記号を使って可視化したものです。業務の流れ(フロー)を一枚の図で表現することで、複雑な業務プロセスを誰でも直感的に理解できる形に整理します。
たとえば、受注から請求までの業務プロセスを文章で説明しようとすると、長い文章が必要になりますが、業務フロー図として描くことで、業務の流れを一目で把握できるようになります。
業務フロー図とフローチャートの違い
「業務フロー図」と「フローチャート」は似た言葉ですが、使われる文脈が異なります。
フローチャートはプログラムの処理手順やアルゴリズムを表現するために使われることが多く、IT・エンジニアリングの分野で一般的です。一方、業務フロー図は「人が行う業務の流れ」を表現するために使われます。担当者・部門ごとのレーン(スイムレーン)を設けることが多く、「誰が何をするか」を視覚的に整理するのに適しています。
業務担当者が作成・活用する場合は「業務フロー図」という言葉が適切です。
業務フロー図が使われる主な場面
業務フロー図は、次のような場面で活用されます。
システム開発の要件定義・発注前の業務整理
開発会社に依頼する前に、現状の業務プロセスを整理する際に使われます。「現状(As-Is)のフロー」と「理想(To-Be)のフロー」を描くことで、何をシステム化すべきかが明確になります。
業務マニュアル・引き継ぎ資料の作成
新入社員への業務説明や担当者交代時の引き継ぎ資料として活用されます。文章だけのマニュアルに比べ、業務の全体像と流れが一目で伝わります。
業務改善・無駄の洗い出し
業務フロー図を描くことで、業務の重複や無駄な手順が可視化され、改善ポイントを発見しやすくなります。
業務フロー図を作るメリット|整理することで見えてくるもの
業務フロー図を作成することには、いくつかの重要なメリットがあります。
システム開発発注前に業務フロー図を整理する重要性
システム開発を依頼する際、開発会社が最初に求めるのが「現状の業務フロー」の整理です。なぜでしょうか。
業務フローが整理されていない状態でシステム開発を始めると、「作ってみたら使いにくかった」「重要な機能が漏れていた」「想定外の業務フローが後から出てきた」という問題が発生しやすくなります。こうした手戻りは、開発コストの増加や納期の遅延につながります。
業務フロー図を事前に作成しておくことで、次のメリットが生まれます。
- 開発会社との認識合わせがスムーズになる: 業務フロー図は「共通言語」になります。口頭での説明に比べ、認識のズレが格段に減ります
- 必要な機能の漏れが防げる: 業務の流れを可視化することで、システム化すべき機能・自動化できる手順が明確になります
- コスト・納期の見積もり精度が上がる: 業務の全体像が明確なほど、開発会社側も正確な見積もりを出しやすくなります
業務の属人化防止・引き継ぎへの活用
業務フロー図は、社内の業務標準化にも役立ちます。
「Aさんがいないと回らない」「Bさんしかやり方を知らない」という属人化が起きている業務も、フロー図に書き出すことで標準的な手順が明文化されます。担当者交代時の引き継ぎも、文章マニュアルだけより格段にスムーズになります。
業務フロー図に使う基本記号|3つ押さえれば始められる

業務フロー図では、国際規格(ISO・JIS)に準拠した記号が使われますが、最初から全ての記号を覚える必要はありません。まず以下の3つを押さえれば、業務フロー図は作り始めることができます。
必須の3記号
記号(形状) |
名称 |
意味 |
|---|---|---|
角丸四角形(楕円) |
端子 |
業務の「開始」と「終了」を表す |
四角形(長方形) |
処理 |
担当者が行う「作業・処理」を表す |
ひし形 |
判断 |
条件分岐(「はい/いいえ」の判断)を表す |
この3つを組み合わせるだけで、多くの業務プロセスを図として表現できます。
記号を使う際のポイント:
- 一枚の図の中で同じ記号の大きさ・形は統一する
- 矢印は原則として上から下、または左から右へ流れるように描く
- 記号の中には、作業内容を簡潔に文字で記述する(「受注入力」「承認確認」など)
スイムレーンとは(担当者別に整理する方法)
業務フロー図のもう一つの重要な概念が「スイムレーン」です。スイムレーンとは、水泳のコース(レーン)に見立てた区分のことで、担当者・部門ごとに縦(または横)の区切りを設けます。
たとえば、「営業担当」「事務担当」「管理者」の3名が関わる業務であれば、3本のレーンに分けて、各担当者が行う作業をそのレーン内に描きます。スイムレーンを使うことで、「誰が何をするか」と「担当者の切り替わり」が一目で分かる図になります。
業務フロー図の作り方|5つのステップで進める

ここからが本記事の核心部分です。業務フロー図を実際に作る際は、以下の5つのステップで進めると、抜け漏れなく作ることができます。
ステップ1: 目的と対象業務を決める
まず、「何のために業務フロー図を作るか」と「どの業務を対象にするか」を明確にします。
目的が曖昧なまま作り始めると、必要な情報が抜けていたり、逆に不要な細かい情報まで描いてしまう原因になります。
目的の例:
- システム開発会社との打ち合わせのために、受注〜納品の業務を整理する
- 新入社員向けに、電話対応の手順を可視化する
- 業務改善のために、月次決算処理の全体像を把握する
対象業務は、一度に全社の業務を扱おうとせず、「この業務だけ」と範囲を絞ることが重要です。
ステップ2: 業務内容を洗い出す
対象業務に関わる担当者(当事者)にヒアリングしながら、業務の各手順を洗い出します。実際にその業務をこなしている人から話を聞くことが、抜け漏れを防ぐ最短ルートです。
洗い出しの方法:
- 「どんなきっかけでこの業務が始まりますか?」(業務の開始トリガーを確認)
- 「次に何をしますか?」(ステップを順番に追う)
- 「ここで判断が発生しますか?」(分岐の確認)
- 「この業務はどのように終わりますか?」(業務の終了を確認)
付箋や紙に一手順ずつ書き出し、後で並び替えると整理しやすくなります。
ステップ3: 順序・担当者・条件分岐を整理する
洗い出した業務手順を整理します。
- 順序: 各手順を時系列に並び替える
- 担当者: 各手順を「誰が」行うかを明確にする(スイムレーンの準備)
- 条件分岐: 「承認が通った場合」「在庫が不足している場合」など、複数の経路に分かれる箇所を洗い出す
「例外処理」(エラーや特殊なケースへの対応)も忘れずに確認しましょう。
ステップ4: 図に落とし込む
手順・担当者・分岐が整理できたら、実際に図として描きます。
ツール選択の目安:
- エクセル・パワポ: 最も手軽。図形挿入・矢印機能を使えば作成可能。共有・印刷もしやすい
- draw.io(Diagrams.net): 無料で使えるオンラインツール。業務フロー図の記号がテンプレートとして用意されており、作成効率が高い
- Miro・Lucidchart: オンラインホワイトボード型。複数人でリアルタイムに編集できる
最初はエクセルやパワポで手軽に試してみることをお勧めします。ツールにこだわりすぎず、まず一度描いてみることが重要です。
ステップ5: 関係者に確認して修正する
描いた業務フロー図を、実際にその業務に関わる担当者に確認してもらいます。
「実際の業務と違う手順がないか」「抜けている手順がないか」を確認します。最初から完璧な図を作ろうとせず、関係者のフィードバックを受けながら修正を重ねることが、正確な業務フロー図を作る近道です。
わかりやすい業務フロー図を作るポイント
作り方のステップを踏まえた上で、より「伝わる」業務フロー図にするためのポイントを紹介します。
1. 一枚に収める意識を持つ
業務フロー図は、可能な限り一枚(または見開き)に収めることを意識しましょう。複数ページにまたがると、全体像が把握しにくくなります。詳細な手順は別紙の手順書に委ね、フロー図は「大きな流れ」を表現することに集中します。
2. 表記ルールを統一する
一枚の図の中で「同じ意味の記号は同じ形を使う」「矢印の向きは一定方向にする」など、表記ルールを統一します。複数人で作成する場合は、事前にルールを決めておきましょう。
3. 経験者のレビューを受ける
業務フロー図を初めて作る場合は、その業務に精通した人か、業務フロー図の作成経験がある人にレビューを依頼することをお勧めします。作った本人が「抜け漏れなし」と思っていても、見落としている例外処理や担当者間の連携が抜けていることが多いためです。
4. 「完璧」を求めすぎない
業務フロー図は一度作ったら終わりではなく、業務の変化に合わせて更新し続けるものです。特に最初の一枚は、精度よりも「まず全体像を描く」ことを優先しましょう。80点の図を素早く作り、フィードバックで修正する方が、100点の図を追い求めて着手できないよりずっと価値があります。
まとめ|業務フロー図は「発注のための地図」
業務フロー図とは、業務の流れを「誰が・何を・どういう判断で」行うかを可視化した図です。本記事で解説した内容をまとめます。
- 基本記号は3つ: 端子(開始・終了)・処理(四角)・判断(ひし形)を押さえれば作れる
- スイムレーン: 担当者・部門ごとにレーンを分けることで「誰が何をするか」が明確になる
- 5ステップで進める: 目的を決める→洗い出す→整理する→図に落とし込む→関係者に確認する
- 完璧を求めない: まず全体像を描き、フィードバックで修正することが実践的なアプローチ
システム開発の発注を考えている方にとって、業務フロー図は「開発会社との対話を始めるための地図」です。整理された業務フロー図があれば、開発会社も的確な提案と見積もりを出しやすくなり、プロジェクトの成功確率が上がります。
「完璧でなくていい」——まずは一つの業務を選んで、3つの記号と5つのステップで描いてみましょう。最初の一枚が、開発プロジェクトの出発点になります。
システム開発 完全チェックリスト――発注前・発注中・完了後の3フェーズで使えるチェック集










