システム開発
2026.03.31

クラウド移行とは?メリット・手順・失敗しないポイントを徹底解説


クラウド移行とは?メリット・手順・失敗しないポイントを徹底解説

「クラウド移行を進めたいけれど、自社でも本当にできるのだろうか」「失敗したときのリスクが心配で、なかなか踏み切れない」——そのようにお感じの方は少なくありません。

上層部からDX推進を求められ、保守ベンダーからはサポート終了の通知が届き、それでも「何をどこから始めればいいか分からない」という状況で検索されているとしたら、この記事はまさにその疑問に答えるために書かれています。

クラウド移行とは何か、自社の状況に合った移行方法はどれか、具体的にどのような手順で進めるのか——「判断するための情報」を実務担当者目線で解説します。社内での検討会議に持ち込める内容を目指しました。

石川瑞起
執筆者
秋霜堂株式会社 代表 石川瑞起
中学生でプログラミングを独学で習得し、HP制作やアプリ開発の事業を開始。 大学入学後に事業を売却し、トヨクモ株式会社へ入社。 3年間にわたり1製品の開発責任者を務めたのち秋霜堂株式会社を設立し、多数の企業をサポートしている。
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    クラウド移行とは?オンプレミスとの違いを3分で理解する

    オンプレミスとクラウドの違い(比較表)

    クラウド移行を理解するには、まず「オンプレミス」と「クラウド」の違いを整理しておくことが大切です。

    オンプレミスとは、自社のサーバーや設備を社内(またはデータセンター)に設置・管理する従来型の IT 環境を指します。一方、クラウドとは、AWS(Amazon Web Services)・Microsoft Azure・Google Cloud などのクラウドプロバイダーが用意したインフラをインターネット経由で利用する仕組みです。

    比較軸オンプレミスクラウド
    初期コスト高い(サーバー購入・設置費用)低い(月額利用料)
    運用・保守自社で対応プロバイダーが担当
    拡張性限定的(追加機器が必要)柔軟(すぐにスペック変更可能)
    障害対応自社責任プロバイダーが一次対応
    場所の制約社内ネットワーク接続が前提インターネット環境があればどこからでもアクセス可
    SCROLL→

    クラウド移行の定義と対象範囲

    クラウド移行とは、現在オンプレミス環境で稼働しているシステム・データ・アプリケーションを、クラウド環境に移行するプロセスを指します。

    「クラウドサービスの新規導入(SaaS導入等)」とは異なり、すでに動いているシステムを「そのまま移す」または「改修しながら移す」という点が特徴です。

    移行の対象には、基幹業務システム(ERP・販売管理・在庫管理)、ファイルサーバー、メールサーバー、データベース、社内ポータルなど、様々なシステムが含まれます。全てを一度に移行する必要はなく、優先度をつけて段階的に進めることが一般的です。

    クラウド移行が求められている3つの背景

    「なぜ今クラウド移行なのか」——この問いに答えられると、社内への説明が格段に楽になります。背景には、単なる「流行」ではなく、具体的な課題があります。

    レガシーシステムの老朽化・保守費増大

    多くの企業で、10年以上前に構築されたシステムが今も現役で稼働しています。このようなレガシーシステムは、メンテナンスコストが年々上昇する傾向があります。

    保守対応できるエンジニアの高齢化・退職、対応ベンダーのサポート終了、部品調達の困難化——こうした問題が重なると、「壊れるまで使い続けるしかない」という状態に陥りやすくなります。クラウドへの移行は、このような負の連鎖を断ち切る手段として有効です。

    DX推進・AI活用の基盤としてのクラウド

    DX推進(デジタルトランスフォーメーション)やAI受託開発・AI活用を進めるためには、そのデータや処理基盤となるクラウド環境が欠かせません。

    総務省の令和6年版情報通信白書によれば、クラウドサービスを利用している企業(従業員100人以上)の割合は80.6%に達しています。AI・機械学習・データ分析ツールは、クラウド環境上での利用を前提としているものがほとんどです。オンプレミスのままでは、こうした最新技術の恩恵を受けにくい状況になっています。

    「2025年の崖」と今後のリスク

    経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、レガシーシステムの刷新が遅れると2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告されました。これが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。

    2025年を過ぎた今、「崖」に向かって走り続けているシステムが少なからず存在します。クラウド移行を先送りにするリスクは、年々大きくなっています。

    クラウド移行の主な種類(5R)と自社に合った選び方

    クラウド移行と一口にいっても、移行方法は複数あります。「どれが自社に合うか」を判断するために、代表的な5つの手法(5R)を理解しておきましょう。

    5Rとは(リホスト・リファクタ・リバイズ・リビルド・リプレイス)

    手法別名概要
    リホスト(Rehost)リフト&シフトシステムをほぼそのままクラウドに移す。最も簡単で移行コスト・期間が低い
    リファクタ(Refactor)再最適化クラウドの機能を活用できるよう、一部コードや設定を最適化する
    リバイズ(Revise)部分的な改修機能追加・修正を行いながらクラウドへ移行する
    リビルド(Rebuild)再構築クラウド環境を前提に、アプリケーションを一から再構築する
    リプレイス(Replace)SaaS移行既存システムを廃棄し、SaaSなどのクラウドサービスに完全移行する
    SCROLL→

    規模・予算・期間別の選び方目安

    どの手法を選ぶかは、以下の観点で判断します。

    リホスト(リフト&シフト)が向いているケース:

    • 移行の期限が決まっている(サポート終了・設備更新)
    • まずはクラウドに移してから最適化したい
    • 社内に移行専任のエンジニアが少ない

    リファクタ・リバイズが向いているケース:

    • クラウド環境の機能(自動スケーリング・マネージドサービス等)を活用したい
    • 既存システムに問題があり、移行と同時に改善したい
    • ある程度の期間・予算が確保できる

    リビルド・リプレイスが向いているケース:

    • 既存システムが大幅に老朽化しており、改修コストよりゼロから作り直す方が効率的
    • 業務プロセス自体を見直し、DX推進と一体で進めたい
    • 十分な期間・予算・社内体制がある

    迷った場合は、「まずリホストで移行→運用しながらリファクタ」という段階的なアプローチが現実的です。

    クラウド移行で得られる5つのメリット

    移行を決断するうえで、メリットを具体的にイメージできることは大切です。「一般論」ではなく、中小〜中堅企業の実務担当者が実感しやすい観点でまとめます。

    運用コスト・保守負担の削減

    クラウドへ移行すると、サーバーの物理的な管理(ハードウェアの交換・冷却設備の維持・障害時の駆けつけ対応など)が不要になります。クラウドプロバイダーがインフラの保守・更新を担うため、IT担当者はより本質的な業務に集中できます。

    また、利用した分だけ課金されるモデル(従量課金)のため、閑散期のリソース浪費を抑えることも可能です。

    柔軟なスケールアップ・ダウン

    オンプレミス環境でシステムの処理能力を上げるには、新しいサーバーを発注・設置する必要があり、時間とコストがかかります。クラウドなら、管理コンソール上で数分以内にスペックを変更できます。

    繁忙期だけ一時的にリソースを増やし、閑散期には減らすといった柔軟な運用が可能になります。

    DXおよびAI活用の基盤強化

    クラウド環境に移行することで、AI・機械学習・データ分析・IoT連携などの最新技術が利用しやすくなります。AWS・Azure・GCPはそれぞれAI/ML向けのマネージドサービスを提供しており、クラウド上のデータをそのまま活用できます。

    DX推進を本格化させるための「基盤づくり」として、クラウド移行はその第一歩となります。

    可用性・障害対応の向上

    クラウドプロバイダーは複数のデータセンターにデータを冗長化して保管するため、自然災害や障害発生時の事業継続性(BCP)が向上します。オンプレミス環境と比較して、システムの稼働率が高く、バックアップ体制も充実しています。

    セキュリティの強化

    「クラウドはセキュリティが不安」というイメージをお持ちの方もいますが、主要なクラウドプロバイダーは国際基準(ISO 27001・SOC 2等)の認定を取得しており、セキュリティへの投資規模はオンプレミス運用をはるかに上回ります。

    もちろん、利用側の設定ミスによるリスクもあるため、適切な設定と運用体制が必要である点は後述します。

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      クラウド移行の進め方(5ステップ)

      「何から始めればよいか」——これが最も多い疑問です。以下の5ステップを参考に、全体像を把握しておきましょう。

      Step1: 目標設定・現状把握

      まず「なぜクラウド移行するのか」という目的を明確にします。

      • コスト削減: 年間の保守コストを〇〇円削減したい
      • DX推進: データ分析基盤を整備し、業務効率化を実現したい
      • BCP対応: 災害時のシステム継続性を確保したい
      • リモートワーク対応: 社外からのアクセスを安全に実現したい

      目的が複数ある場合は優先順位をつけておくことで、後の判断が楽になります。

      Step2: IT資産の棚卸し・移行対象の選定

      現在稼働しているシステム・サーバー・ソフトウェアをリストアップし、「移行優先度」を決めます。

      移行優先度が高いシステム:

      • 保守期限が近い・サポート終了が迫っているもの
      • 独自開発ではなく汎用的なシステム(メールサーバー・ファイルサーバー等)
      • 他システムへの依存が少ないもの

      移行の難易度が高いシステム:

      • 長年にわたって独自改修が積み重なった基幹システム
      • 他のシステムと複雑に連携しているもの
      • 特殊なハードウェアに依存しているもの

      まずは「移行しやすいもの」から始め、ノウハウを蓄積しながら段階的に進めることが成功の鍵です。

      Step3: 移行方式・クラウドサービスの選定

      前述の5Rの中からシステムごとに移行方式を選びます。また、AWS・Azure・GCPのどのプロバイダーを利用するかも決定します。

      この段階では、現行システムと移行後のアーキテクチャを設計し、コスト試算も行います。専門的な判断が必要になるため、クラウド移行の経験があるシステム開発会社や専門ベンダーに相談することをおすすめします。

      Step4: テスト環境での検証

      本番移行前に、テスト環境でシステムの動作確認・パフォーマンス検証を行います。

      • データの整合性確認
      • 既存の業務フローが正常に動作するか
      • 他システムとの連携が問題なく機能するか
      • セキュリティ設定が適切かどうか

      このステップを省略または簡略化すると、本番移行後に想定外の問題が発生するリスクが高まります。

      Step5: 本番移行・運用体制の整備

      テスト検証が完了したら、本番移行を実施します。移行中の業務停止時間を最小化するため、移行のタイミング(土日・深夜等)を計画します。

      本番移行後は「運用体制の整備」が特に重要です。クラウドのコスト最適化・セキュリティパッチ適用・バックアップ管理といった継続的な運用業務が発生するため、担当者と手順を明確にしておく必要があります。

      失敗しないための注意点と事前チェックリスト

      クラウド移行の失敗は、多くの場合「準備不足」に起因します。代表的な失敗パターンと、事前に確認すべきチェックリストを紹介します。

      よくある失敗パターン3選

      失敗パターン1: コスト超過

      クラウドの利用コストを過小評価するケースは非常に多いです。移行前の試算段階ではオンプレミスより安くなるはずが、実際に使い始めると予算を大幅に超過してしまうことがあります。

      主な原因は「不要なリソースが起動しっぱなし」「ストレージのコスト管理ができていない」「通信コストの試算漏れ」などです。移行後の月次コストレビューが不可欠です。

      失敗パターン2: セキュリティ設定ミス

      クラウドでは「設定」がセキュリティの鍵を握ります。ストレージの公開設定を誤ったまま本番稼働させてしまうといった事故が実際に起きています。「クラウドにしたからセキュリティは大丈夫」という誤解が根本原因です。

      失敗パターン3: 移行後の運用体制未整備

      「移行完了がゴール」と考えると、その後の運用で問題が続出します。クラウドには独自の運用ノウハウが必要であり、担当者不在・体制未整備のまま移行すると、日常の管理業務が回らなくなります。

      移行前の確認チェックリスト(7項目)

      以下の項目を確認してから移行計画を進めることをおすすめします。

      7項目すべてに「はい」と答えられる状態になってから本番移行に臨むことが理想です。

      自社で進めるか外部に委託するか?判断の目安

      クラウド移行を検討する際、多くの企業が直面する問いが「自社でやるか外部に頼むか」です。どちらが正解かは企業の状況によって異なります。

      自社対応に向いているケース

      以下に該当する場合は、自社での移行が比較的進めやすいです。

      • クラウド(AWS・Azure・GCP)の運用経験がある社内エンジニアがいる
      • 移行対象が比較的シンプル(SaaS移行・ファイルサーバーの移行など)
      • 移行の期限に余裕があり、試行錯誤できる時間がある

      外部委託(システム開発会社)が向いているケース

      次のような状況では、外部のシステム開発会社への委託を強くおすすめします。

      • 社内にクラウド専門の技術者がいない、または手が足りない
      • 基幹システム(ERP・販売管理・製造管理等)の移行が含まれる
      • 移行と同時にシステムの改修・再設計も行いたい
      • 移行スケジュールが厳しく、確実に進める必要がある

      クラウド移行は「設計ミスが後から大きなコストに跳ね返る」という性質があります。専門家のサポートを受けることで、失敗のリスクを大幅に下げることができます。

      また、おすすめシステム開発会社の記事も参考にしながら、自社の状況に合ったパートナーを選ぶことが大切です。

      委託先選びのポイント

      外部委託先を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

      • 移行実績(業種・規模が自社に近い事例があるか)
      • 移行後の運用保守まで対応できるか
      • プロバイダー(AWS・Azure・GCP)の認定資格を取得しているか
      • コスト試算の透明性・詳細さ

      「移行してからが本番」のクラウド運用を見据えた長期的なパートナー選びが重要です。

      まとめ:クラウド移行は「準備と判断基準」が成功の鍵

      クラウド移行とは、オンプレミス環境で稼働するシステム・データをクラウドへ移行するプロセスです。今回解説した内容を振り返ります。

      • 移行方法(5R): リホスト(最小コスト・短期間)からリビルド(最大効果・長期間)まで、自社の状況に合った選択が重要
      • メリット: コスト削減・スケーラビリティ・DX/AI活用基盤の整備・可用性向上・セキュリティ強化
      • 手順: 目標設定→IT資産棚卸し→方式選定→テスト検証→本番移行・運用整備の5ステップ
      • 失敗防止: コスト超過・セキュリティ設定ミス・運用体制未整備の3大失敗パターンを事前チェックリストで予防する

      「難しそう」「失敗が怖い」という気持ちは当然ですが、準備と判断基準を整えることでリスクは大幅に下げられます。

      クラウド移行はDX推進の第一歩でもあります。移行後にAIや最新技術をどう活用するかまで見据えた上で、クラウド移行の計画を立てることをおすすめします。

      自社での推進に不安がある場合や、移行と同時にシステムの改善・再構築を検討している場合は、ぜひ一度専門家へご相談ください。

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